第1節 原子力発電所事故関連

1.原子力規制

(1)原子力規制委員会の発足

平成23年3月11日の東北地方太平洋沖地震と津波に伴い発生した東京電力福島第一原子力発電所の重大事故の教訓を踏まえ、原子力利用の「推進」と「規制」を分離し、規制事務の一元化を図るとともに、専門的な知見に基づき中立公平な立場から、独立して原子力安全規制に関する業務を担う行政機関として、24年9月19日、環境省の外局として原子力規制委員会が発足しました。原子力規制委員会は、内閣総理大臣が任命した委員長及び4人の委員から構成され(25年2月15日に国会同意)、その事務局機能は原子力規制庁が担います。「原子力に対する確かな規制を通じて、人と環境を守ること」を組織の使命として掲げ、5つの活動原則とともに、原子力規制委員会の組織理念として決定しています。

25年3月現在の定員は473名(図121-1-1)、24年度予算(補正後)は37,755百万円です(なお、内閣府において、別途、原子力防災関連予算21,842百万円(補正後)を計上)。24年9月19日から25年3月末日までに、原子力規制委員会を35回開催し、必要な審議、評価、決定等を行いました。

【第121-1-1】 原子力規制委員会 組織図

【第121-1-1】 原子力規制委員会 組織図

(2)原子力施設の安全確保に向けた取組

東京電力福島第一原子力発電所の安全確保

東京電力福島第一原子力発電所の安全確保及び同1~4号機の廃炉に向けて、平成24年11月7日に核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和32年法律第166号。以下「原子炉等規制法」という。)に定める「特定原子力施設」として指定し、「措置を講ずべき事項」を提示しました。これを受け平成24年12月7日に東京電力から提出された実施計画について、原子力規制委員会委員、原子力規制庁職員、外部有識者等から成る「特定原子力施設監視・評価検討会」において認可に向けて検討を進めています。また、原子力災害対策特別措置法(平成11年法律第156号)に基づき東京電力から原子力規制委員会に報告があったもののうち、3号機使用済燃料プール内への鉄骨落下、停電による使用済燃料プール代替冷却システム等の一部設備の停止等、施設の安定的な運転に影響を与える可能性のある事象や放射性物質を含む水の系外への漏えいなどの事象については、原子力規制委員会が再発防止策等の妥当性について確認しました。

規制基準等の見直し

平成24年6月に原子炉等規制法が改正され、重大事故(シビアアクシデント)対策の強化や、最新の技術的知見を取り入れ、既設の施設にも新規制基準への適合を義務づける制度(バックフィット制度)の導入等を行うこととなりました。このうち、改正法に基づき25年7月までに施行する必要のある発電用軽水型原子炉に係る新規制基準等の策定に関しては、原子力規制委員会委員、外部有識者、原子力規制庁職員等から成る検討チームを3つ設け、東京電力福島第一原子力発電所事故の教訓や国際原子力機関(IAEA)等の国際基準を踏まえ、検討を行いました。25年2月には、重大事故対策を取り入れ、地震・津波対策等を強化した新規制基準の骨子案を取りまとめ、パブリックコメントを実施しました。

また、核燃料施設等についても、平成25年12月までの施行に向けて、新規制基準等の策定作業を開始しました。

敷地内破砕帯の調査

旧原子力安全・保安院の指示により追加調査を行っている原子力発電所の敷地内の破砕帯については、平成24年10月以降、関西電力大飯発電所、日本原子力発電敦賀発電所及び東北電力東通原子力発電所において、順次現地確認を行い、活断層であるかどうかの評価のための検討を行いました。これらの現地調査・評価は、担当委員及び関係学会からの推薦を受けた者から成る有識者会合を発電所ごとに設けて実施しました。

全国の原子力施設の安全性の点検

平成25年3月現在の原子力発電所の運転状況等は図121-1-2のとおりです。

原子力施設の安全を確保するために、電気事業法に基づき、18施設(実用発電用原子炉全17施設、研究開発段階炉[建設中]全1施設)で定期検査を実施しており、また、原子炉等規制法に基づき、5施設(加工施設2施設、研究開発段階炉[廃止措置中]1施設、再処理施設1施設、廃棄物管理施設1施設)で施設定期検査を実施しました。また、同法に基づき、保安規定遵守状況を確認する検査(保安検査)を、62施設について行いました(加工施設全6施設、試験研究用原子炉全6施設、試験研究用原子炉[廃止措置中]全8施設、実用発電用原子炉全17施設、実用発電用原子炉[廃止措置中]全2施設、研究開発段階炉[建設中]全1施設、研究開発段階炉[廃止措置中]全1施設、再処理施設全2施設、廃棄物管理施設全2施設、廃棄物埋設施設全2施設、核燃料物質使用施設全15施設)。

また、原子炉等規制法に基づき報告のあった事故・故障等は7件(実用発電用原子炉4件、試験研究炉及び使用施設3件)でした。

【第121-1-2】 全国の原子力発電所とその運転状況(平成25年3月31日現在)

【第121-1-2】 全国の原子力発電所とその運転状況(平成25年3月31日現在)

(3)危機管理体制の整備及び事故時の影響緩和のための取組

原子力災害対策の体制整備

東京電力福島第一原子力発電所事故の経験と教訓を踏まえた新たな原子力災害対策を構築するため、平成24年9月19日の原子力規制委員会の設置に合わせ、原子力基本法(昭和30年法律第186号)、原子力災害対策特別措置法等の関連法令が改正され、政府の新たな原子力災害対策の枠組みが構築されました(図121-1-3)。

原子力災害対策に係る施策は、政府全体が一体的に取り組み、これを推進することが必要です。このため、政府全体の原子力防災対策を推進するための機関として、内閣に「原子力防災会議」が設置され、原子力規制委員会委員長が会議の副議長に位置づけられました。また、大量の放射性物質の放出等、原子力緊急事態が発生した場合に設置される「原子力災害対策本部」においては、原子力規制委員会委員長がその副本部長に位置づけられ、原子力施設の安全に係る技術的・専門的事項の判断については、原子力規制委員会が一義的に担当することとなりました。

また、このような新たな原子力災害対策の体制整備に伴い、平成24年9月6日、我が国の防災に関する方針をまとめた防災基本計画の原子力災害対策編が改正されました。さらに、原子力災害発生時の対応について、原子力規制委員会を含めた関係省庁の具体的な活動要領を定めるため、10月19日に開催された第1回原子力防災会議において、原子力災害対策マニュアルが了承されました。同マニュアルにおいては、政府としての具体的な要員配置や対応手順等が定められ、原子力規制委員会は、総理大臣官邸(以下「官邸」という。)内に設置される原子力災害対策本部の事務局の中枢となり、情報収集・情報発信、事業者の事故収束活動の監督、避難等の周辺住民に対する防護措置に係る専門的判断等を行うこととされました。

【第121-1-3】 政府の原子力防災体制

【第121-1-3】 政府の原子力防災体制

原子力災害対策指針の策定

原子力災害対策特別措置法では、原子力規制委員会は、事業者、国、地方自治体等による原子力災害対策の円滑な実施を確保するため、原子力災害対策指針を定めることとされています。このため、原子力規制委員会において、発足後速やかに同指針の議論を開始し、平成24年10月31日に同指針を策定しました。

その後も、緊急時における防護措置の判断基準やそれに応じた防護措置、スクリーニングや安定ヨウ素剤の予防服用等の被ばく医療等について、内容の充実を図るべく、原子力規制委員会委員、外部有識者、原子力規制庁職員等から成る検討チームを設け、検討を行いました。それを受けて、原子力規制委員会において、平成25年1月30日には、原子力災害対策指針の改定原案を取りまとめ、パブリックコメントを行った上で、2月27日、同指針を改定しました。同指針を踏まえた、関係地方公共団体における地域防災計画の策定の支援を進め、また、防災資機材やオフサイトセンターの整備支援に必要な予算措置を計上して、地域における原子力災害対策の体制整備を図りました。

原子力規制委員会の緊急時対応への取組

平成24年9月19日の平成24年度第1回原子力規制委員会において、警戒事象(原子力発電所立地市町村における震度5弱以上の地震の発生や立地都道府県における大津波警報の発令等)が発生した際の原子力規制委員会の対応について定めた、「原子力規制委員会初動対応マニュアル」を決定しました。また、緊急時における情報連絡を円滑かつ確実なものとするため、国、地方公共団体、事業者における各拠点が接続されたテレビ会議システム、衛星回線を活用した通信システムなどを整備しました。

平成24年10月25日に宮城県沖で地震が発生(石巻市で震度5弱を観測)した際には、上記マニュアルに沿って原子力規制委員会委員長以下、委員及び原子力規制庁幹部がERC(原子力規制庁緊急時対応センター)に参集し、原子力規制委員会原子力事故警戒本部を設置して緊急時対応を行いました。また、10月5日には、原子力規制委員会委員が、自衛隊及び警察の協力を得て、日本原燃株式会社・六ヶ所再処理施設への現地参加訓練を行ったほか、11月には原子力規制委員会委員及び原子力規制庁幹部等を対象とした参集訓練を実施しました。また、12月には課長級以下の原子力規制庁職員を対象とした通信機器の習熟訓練及び官邸の危機管理センターとの情報伝達訓練を実施しました。

また、事故の際に適切に環境モニタリングが実施できるよう、放射線モニタリング対策官事務所にモニタリングカーを配備するとともに、平成24年10月19日、原子力緊急事態における原子力規制委員会の応急対策に関して技術的事項の検討に関する支援を行う緊急事態応急対策委員を任命しました。

放射線モニタリング

原子力規制委員会の発足に伴い、放射線モニタリングについては、同委員会がその司令塔機能を担うこととなりました。放射線モニタリング結果について、1週間ごとに解析し、1ヶ月ごとに解析結果をとりまとめ、評価・公表しました。

核物質防護

核物質防護(核セキュリティ)に関しては、平成24年9月19日から平成25年3月31日までに、45件の核物質防護規定の変更認可を行ったほか、41件の核物質防護規定の遵守状況の検査、29件の特定核燃料物質の運搬に関する取決めの締結に関する確認証の交付を行いました。また、平成25年3月4日、「核セキュリティに関する検討会」を開催し、(1)個人の信頼性確認制度の導入、(2)核物質輸送時の核セキュリティ対策、(3)盗取対策等の放射性物質及び関連施設の核セキュリティ、の3つの課題を優先して検討することとしました。

(4)原子力規制行政に対する信頼の確保に向けた取組

原子力規制委員会及び検討チーム等の会議の議事、議事録及び資料の原則公開、委員3人以上が参加する規制に関わる打合せの概要、被規制者との面談の概要等の原則公開、行政文書の積極的公開、報道機関に対する幅広く積極的な記者会見(定例は原子力規制委員会委員長/週1回、原子力規制庁報道官/週2回)等を行い、意思決定過程の透明性の確保に努めました。また、意思決定に関与する者の中立性を確保するため、原子力規制委員会委員の在任期間中の行動規範や外部有識者の選定に当たっての要件等を定めました。

また、実効ある規制事務を遂行するためには職員の資質向上を図ることが重要であり、原子力安全規制に関する専門研修等に加え、職員の使命感の向上を図るための研修、原子力工学の知識の維持・向上のための研修等を実施しました。

国際社会からの信頼確保や連携・協力も重要課題であり、2012年10月に、原子力規制委員会委員が米国、英国及びフランスの原子力規制機関及び国際原子力機関(IAEA)を訪問し、新設された原子力規制委員会の概要及び原子力規制の取組状況等について説明するとともに、今後の連携・協力の在り方等について意見交換を行いました。また、2012年12月に日本政府とIAEAが共催した「原子力安全に関する福島閣僚会議」の専門家会合において、原子力規制委員会委員長が基調講演を行うとともに、同会議の開催期間中に、米国、英国、フランス、ドイツ、カナダ、ロシア、韓国、ベトナム及びベラルーシの原子力規制機関とそれぞれ会談を行い、米国及びフランスとの間で原子力安全の協力に関する従来の二国間取決めが引き続き有効なものであることを確認するための覚書にそれぞれ署名しました。また、米国、英国及びフランスの原子力規制機関のトップとしての豊富な経験をはじめ、国際的な幅広い活動歴を有する3名の有識者を国際アドバイザーに委嘱し、12月14日、東京において原子力安全に関する意見交換を行いました。

2.東京電力福島第一原子力発電所1~4号機の廃炉に向けた取組

(1) 廃炉に向けた取組の実施

東京電力福島第一原子力発電所の廃炉に向けては、原子力災害対策本部の下に設置された政府・東京電力中長期対策会議において、平成23年12月21日に決定された「東京電力福島第一原子力発電所1~4号機の廃止措置に向けた中長期ロードマップ」に基づき、1~4号機の使用済燃料プールからの燃料の取り出しや、1~3号機の原子炉圧力容器及び原子炉格納容器からの燃料デブリ(燃料と被覆管等が溶融し再固化したもの)の取り出し等、中長期に亘る取組が進められています。

【第121-2-1】 東京電力福島第一原子力発電所
1~4号機の廃止措置に向けた中長期ロードマップ

【第121-2-1】 東京電力福島第一原子力発電所1~4号機の廃止措置に向けた中長期ロードマップ

(2) 廃炉対策推進会議の設置

平成25年2月8日、原子力災害対策本部の下に、東京電力福島第一原子力発電所廃炉対策推進会議が新たに設置されました。同会議は政府・東京電力中長期対策会議に代わって、福島復興の大前提である東京電力福島第一原子力発電所の廃炉の加速化に向け、燃料デブリ取り出し等に向けた研究開発体制の強化を図るとともに、現場の作業と研究開発の進捗管理を一体的に進めていくために設置されました。

平成25年3月には、廃炉対策推進会議の第1回を開催し、1~4号機それぞれに異なる状況であることを踏まえ、号機毎に具体的な作業工程などを明らかにした上で、平成25年6月を目途に、燃料デブリ取り出しのスケジュールの前倒し等を含む中長期ロードマップの見直しを開始しました。また、研究開発に関する取組の強化に向け、研究拠点施設整備の加速化や、研究開発運営組織の設立準備に着手しました。

(3) 個別テーマの取組状況

原子炉の冷却

1~3号機の原子炉には、注水冷却を継続しており、安定状態の監視を継続しています。原子炉の状態は、温度や圧力等の計測により監視していますが、状態監視を保管する観点から、1,2号機の原子炉格納容器の内部調査を行い、温度、水位、線量等の状況の把握を行いました(1号機:平成24年10月、2号機:平成24年1月・3月)。また、監視強化のため、1号機には温度計と水位計を追加設置(平成24年10月)。2号機には代替温度計の設置を行いました(平成24年9月)。

滞留水処理

建屋への地下水流入により増え続ける滞留水は、セシウム等を除去した上で、再度原子炉の冷却に用いるとともに、余剰水をタンクに貯蔵しています。建屋への地下水流入抑制対策としては、山側から流れてきた地下水を建屋の上流で揚水し、建屋内への地下水流入量を抑制する「地下水バイパス」の設置等を進めています。また、滞留水の安全な保管のため、タンクに貯留している滞留水に含まれる放射性物質をより一層低く管理する「多核種除去装置」の設置を進めるとともに、必要となるタンク容量を確認しながら、計画的にタンクを増設することとしています。

加えて、汚染水処理について、平成25年4月に明らかになった地下貯水槽からの漏えい事故等も受け、これまでの対策を総点検し、汚染水処理問題を根本的に解決する方策等を検討するため、同月、廃炉対策推進会議の下に汚染水処理対策委員会を創設しました。また、汚染水処理を含めた福島第一原発の廃炉の着実な実施に向けて、経済産業省と原子力規制委員会が協力・連携を図り、政府一丸となって取り組む一環として、廃炉対策推進会議には、田中原子力規制委員長が規制当局の立場から参加するとともに、汚染水処理対策委員会にも原子力規制庁の参加を得ることとしています。

放射線量低減及び汚染拡大防止

追加的に放出される放射性物質及び事故後に発生した放射性廃棄物からの放射線による敷地境界線上での実効線量を1mSv/年未満とする目標は、ガレキや伐採木の遮へい機能を有した保管施設への移動等を進めた結果、平成25年3月末に達成しました。また、敷地内の除染については、平成24年5月には免震重要棟執務エリアの非管理区域化を実現し、平成24年10月には、作業員が多く立ち入る場所を優先的に行う中長期実施方針をまとめ、これに基づき引き続き線量低減に努めています。

海洋汚染の拡大防止に対しては、万一汚染水が地下水に漏えいした場合の汚染拡大防止を目的とした1~4号機の既設護岸の前面への遮水壁設置工事を進めると共に、港湾内海底の放射性物質の拡散防止のため、海底土を固化土により被覆(平成24年3月~7月)等しました。港湾内の海水放射性物質濃度については、1~4号機取水路前面の開渠内において「線量限度等を定める告示」に定める濃度限度未満とする目標を、達成していないことから、有識者の参加を得た検討会において原因究明や浄化対策を進めています。

使用済燃料プールからの燃料取り出し

4号機使用済燃料プールからの燃料取り出しが当面の最優先課題であり、平成25年11月の取り出し開始に向けて作業を進めています。平成24年12月には建屋上部のガレキの撤去を完了し、平成25年1月には燃料取り出しカバーの鉄骨建て方工事を開始しました。また、平成24年8月には、燃料棒の状態を確認するため、4号機プールから新燃料を試験的に取り出し、調査を行いました。

3号機についても、燃料取り出しに向けて、建屋上部のガレキの撤去作業を進めています。3号機は4号機に比べ線量が高いため、作業は主に遠隔操作で行われています。

また各号機から取り出した燃料を保管するため、共用プールの復旧を行い、十分に冷えた燃料を保管する乾式キャスク仮保管施設の設置を進めています。

燃料デブリ取り出し

1~3号機原子炉からの燃料デブリ取り出しに向けては、様々な技術的課題を克服するため、研究開発を進めています。例えば、原子炉建屋内での作業に向けて、被ばく線量を低減させるため、汚染状況や除染技術を整理した上で、遠隔除染装置の開発を進めており、平成25年3月には、東京電力福島第二原子力発電所において実証試験を実施しました。今後東京電力福島第一原子力発電所の実機に適用する予定です。

平成24年11月からは、炉内状況をシミュレーションする解析コードの高度化に向けた研究開発について、OECD/NEAの協力の下、国際プロジェクトとして、国内外の叡智を活用して実施しています。

また、研究開発を強化・加速するため、(独)日本原子力研究開発機構と連携して、遠隔操作機器・装置の開発や実証、運転員訓練等を行う遠隔操作機器・装置の開発実証施設(モックアップセンター)や、放射性物質の分析・研究施設の整備に向けた準備を進めると共に、平成25年3月には、新しい研究開発運営組織の設立準備に着手しました。

放射性廃棄物処理・処分

敷地内で発生している放射性廃棄物のうち、ガレキや伐採木等については放射線量や材質等によって可能な限り分別して保管、管理しています。また、今後の廃棄物の発生量や放射能レベルに応じて適切かつ効率的に管理していくための管理計画を、平成25年3月にまとめました。事故後の廃棄物は、破損した燃料に由来した放射性核種が付着していることや、処分設備の性能に影響を与える塩分を多く含む等、従来の原子力発電所で発生する廃棄物と異なるため、日本原子力研究開発機構等と協力し、廃棄物の性状把握等の研究開発を実施するとともに、平成25年3月には、安全な放射性廃棄物処理・処分の見通しを得るために必要な研究開発計画をまとめました。

要員確保・作業安全確保

長期にわたる廃炉に向けた作業を遂行するために、作業員の線量管理を確実に実施し、また、継続的に作業環境や労働条件の改善を行っています。現場のニーズを把握するため、年2回、作業員の方に対して労働環境全般についてのアンケートを実施することとしており、平成24年5月と平成25年3月におこなったアンケートの結果も踏まえ、労働環境の改善を進めています。

3.原子力損害賠償

(1) 原子力損害賠償紛争審査会における原子力損害の範囲の判定等に関する中間指針等

政府は2011年3月11日の東京電力福島第一、第二原子力発電所事故に関して、原子力損害賠償を円滑に進められるよう、原子力損害の範囲など当事者による自主的な解決に資する一般的な指針の策定等の業務を行うため、原子力損害の賠償に関する法律に基づき2011年4月11日に「原子力損害賠償紛争審査会」を設置しました。

同審査会においては、被害者の迅速な救済を図るため、原子力損害に該当する蓋然性の高いものから順次、指針として提示することとしています。

同審査会は、同年4月28日には政府等による指示等に基づく損害の範囲を示す第一次指針を策定し、その後、第二次指針(同年5月31日)及び第二次指針追補(同年6月20日)の策定により、指針で示す原子力損害の範囲等を拡大し、同年8 月5 日には、原子力損害の範囲の全体像を示す中間指針を策定しました。その間、各省庁に加え、地方公共団体、事業者団体等からヒアリングを行うとともに、専門委員による各分野の被害状況調査を行い、被害状況等の把握に努めました。

その後、同審査会では、同年12月6日に自主的避難等に係る損害に関する中間指針第一次追補、2012年3月16日、政府による避難区域等の見直し等に係る損害についての中間指針第二次追補、2013年1月30日、農林漁業・食品産業の風評被害に係る損害についての中間指針第三次追補を策定しました。2013年3月末までに同審査会は31回開催されています。

<原子力損害賠償紛争審査会 委員>

  • 大谷 禎男 弁護士/駿河台大学 法科大学院 教授
  • 大塚 直 早稲田大学大学院 法務研究科 教授
  • 鎌田 薫 早稲田大学総長、早稲田大学大学院 法務研究科 教授
  • 草間 朋子 東京医療保健大学 副学長
  • 高橋 滋 一橋大学 副学長・教授
  • 中島 肇 桐蔭横浜大学 法科大学院 教授/弁護士
  • 能見 善久 学習院大学 法務研究科 教授
  • 野村 豊弘 学習院大学 法学部 法学科 教授
  • 米倉 義晴 放射線医学総合研究所 理事長

農林漁業・食品産業の風評被害に係る損害についての中間指針第三次追補の概要

2011年8月に中間指針策定後、食品中の放射性物質の新たな基準値や食品以外の農林産物の暫定許容値等の設定に伴い、新たな品目・区域に対して出荷制限指示等がなされています。そのため、広範な地域及び産品で買い控え等の被害が確認されており、中間指針に明示された品目・区域に加え、風評被害として認められる類型を追加することとしました。中間指針第三次追補で追加された項目は以下のとおりです。

  • 農産物(茶及び畜産物を除き、食用に限る)……岩手、宮城
  • 茶……宮城、東京
  • 林産物(食用に限る)……青森、岩手、宮城、東京、神奈川、静岡、広島(広島はしいたけに限る)
  • 牛乳・乳製品……岩手、宮城、群馬
  • 水産物(食用及び餌料用に限る)……北海道、青森、岩手、宮城
  • 家畜の飼料及び薪・木炭……岩手、宮城、栃木
  • 家畜排せつ物を原料とする堆肥……岩手、宮城、茨城、栃木、千葉

(2) 原子力損害賠償紛争審査会における指針に明示されていない損害に対する賠償

前述のとおり、原子力損害賠償紛争審査会の策定する指針は、原子力損害の蓋然性の高いものから順次提示していますが、東京電力株式会社(以下「東京電力」という。)には、指針に明記されていない損害についても個別具体的な事情に応じた柔軟な対応を求めています。東京電力の対応の一例として、具体的には、2011年9月から2012年3月までの精神的損害について、指針で明記された精神的損害額の上乗せ(月一人あたり5万円を10万円)、旧緊急時避難準備区域における高校生以下の方に対する精神的損害の適用期間の延長、自主的避難等に係る損害の賠償地域の拡大(福島県県南地域及び宮城県丸森町)、自主的避難等に係る損害に対する追加賠償、観光風評被害の賠償地域の拡大(千葉県、青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県)等を行っています。

(3) 避難指示区域の見直しに伴う賠償の実施

避難指示区域の見直しに伴う賠償基準の考え方

2012年3月に、原子力損害賠償紛争審査会が避難区域等の見直し等に係る損害についての中間指針第二次追補を策定しました。この指針を踏まえて賠償の実施主体である東京電力が具体的な賠償金支払いの詳細を定めた宅地・建物等の賠償基準を策定することとされていました。

しかしながら、宅地・建物等の賠償基準は今後の避難指示区域の見直し及び被災者の生活再建に密接に関わるものであることから、政府としても、被害を受けた自治体、住民の意見や実情を聴取し、2012年7月20日に東京電力が策定する賠償基準に反映させるべき考え方について取りまとめを行い、これを公表しました。

<「避難指示区域の見直しに伴う賠償基準の考え方」の概要>

(ア) 避難指示解除のタイミングや、個別の不動産の事故前の価値を勘案した不動産の賠償

帰還困難区域では、事故前の価値の全額を賠償します。居住制限区域・避難指示解除準備区域は解除までの期間に応じて賠償します。解除が事故時点から6年以上経過後の場合は事故前価値の全額、事故時点から3年で解除された場合は半額を賠償します。

(イ) 避難指示解除までの期間に応じた精神的損害の一括払い

帰還困難区域で600万円、居住制限区域、避難指示解除準備区域については、一人当たり月額10万円を基準に、避難指示解除の見込み時期に応じて一括で支払います。

(ウ) 営業損害・就労不能損害の一括払い

農林業で5年分、その他の業種で3年分、給与所得で2年分とします。

(エ) 家族構成に応じた家財の賠償の定額払い

大人2名、子ども2名の世帯なら、帰還困難区域で約670万円、居住制限区域及び避難指示解除準備区域で約500万円とします。

(オ) その他

旧緊急時避難準備区域における家屋の補修・清掃費用の定額払い、早期帰還者、滞在者への精神的損害賠償の遡及、営業損害の一括払い等を行います。

避難指示区域の見直しに伴う賠償基準の公表と受付開始

東京電力では、2012年3月16日に策定された中間指針第二次追補及び同年7月20日に政府の方針として公表された避難指示区域の見直しに伴う賠償基準の考え方を踏まえ、同年7月24日に「避難指示区域の見直しに伴う賠償基準の実施について」を公表しました。

その後、基準詳細や実施方法等の検討、調整を経て、2012年9月25日に、精神的損害や就労不能損害等の賠償金を数年分一括して支払う包括請求方式、2012年12月26日に、償却資産及び棚卸資産の賠償、2013年3月29日に宅地・建物・家財等の賠償の受付を開始しました。田畑、山林については、東京電力において、具体的な基準の検討作業を行っています。

(4) 原子力損害賠償紛争解決センターの取り組み状況

原子力損害賠償紛争審査会は、今回の東京電力福島第一、第二原子力発電所事故により被害を受けた方々の原子力事業者(東京電力)に対する損害賠償請求について、円滑、迅速、かつ公正に紛争を解決することを目的として、同審査会の下に「原子力損害賠償紛争解決センター」を設置し、2011年9月、東京都港区と福島県郡山市の2 カ所において業務を開始しました。同センターにおいては、紛争の当事者(被害者または原子力事業者)の申立てにより、仲介委員が申立人と相手方の双方から事情を聴き取って損害の調査・検討を行い、双方の意見を調整しながら、和解案を提示する、和解の仲介業務を実施しています。

同センターでは、2012年2月以降、多くの申立に共通すると思われる問題点に関して一定の基準を示す「総括基準」を順次策定・公開しており、2013年3月末までに14本の総括基準を策定・公開しています。また、センターで実施されている和解仲介の結果を広く周知し、今後の賠償を円滑に進めていく上での参考とするため、和解実例を順次公開しています。

更に、2012年7月には、和解仲介の申立てに関して出来る限り被害者の方々の居所等の近くで話し合いを実施する等、きめ細やかな対応を実施するため、福島県内の各地域(県北・会津・いわき・相双)に同センター福島事務所の支所を設置しました。また、同年8月には、業務体制の拡充に伴い、同センター第一東京事務所を開設し、当初の東京事務所は第二東京事務所として存続しています。

被害者の方々がより迅速に和解の仲介を受けられるよう、センターになされた申立の迅速な処理に向けた対応は喫緊の課題であり、関係機関と協力して、設立当初は19名であった調査官を200名規模まで増員する体制強化等に取り組んでいます。

<総括基準>

  • 基準1 避難者の第2期の慰謝料について
  • 基準2 精神的損害の増額事由等について
  • 基準3 自主的避難を実行した者がいる場合の細目について
  • 基準4 避難等対象区域内の財物損害の賠償時期について
  • 基準5 訪日外国人を相手にする事業の風評被害等について
  • 基準6 弁護士費用について
  • 基準7 営業損害算定の際の本件事故がなければ得られたであろう収入額の認定方法について
  • 基準8 営業損害・就労不能損害算定の際の中間収入の非控除について
  • 基準9 加害者による審理の不当遅延と遅延損害金について
  • 基準10 直接請求における東京電力からの回答金額の取扱いについて
  • 基準11 旧緊急時避難準備区域の滞在慰謝料等について
  • 基準12 観光業の風評被害について
  • 基準13 減収分(逸失利益)の算定と利益率について
  • 基準14 早期一部支払の実施について

(5) 原子力損害賠償補償契約に関する法律に基づく措置

政府は、原子力損害賠償補償契約に関する法律に基づき、原子力損害賠償補償契約を原子力事業者と締結しており、地震、噴火等により原子力損害が発生した場合には、この契約に基づく補償金を支払うこととなっています。

今般の事故を受け、政府は、2011年11月、原子力損害賠償補償契約に基づき、東京電力福島第一原子力発電所分の1,200億円を東京電力へ支払いました。

(6) 原子力損害賠償支援機構の設立の背景

2011年3月11日の東日本大震災により、東京電力福島原子力発電所事故による大規模な原子力損害の発生を受け、2011年6月14日に「東京電力福島原子力発電所事故に係る原子力損害の賠償に関する政府の支援の枠組みについて」が閣議決定され、東京電力福島原子力発電所事故に係る原子力損害の賠償に関する政府の支援の枠組みについて政府として、これまで原子力政策を推進してきたことに伴う社会的な責任を負っていることに鑑み、

①被害者への迅速かつ適切な損害賠償のための万全の措置

②東京電力福島原子力発電所の状態の安定化・事故処理に関係する事業者等への悪影響の回避

③電力の安定供給

の三つを確保するため、「国民負担の極小化」を図ることを基本として、損害賠償に関する支援を行うための万全の措置を講ずることが確認されました。

こうしたことを受け、2011年8月10日に原子力損害賠償支援機構法及び関連する政省令が公布・施行され、原子力事業に係る巨額の損害賠償が生じる可能性を踏まえ、原子力事業者による相互扶助の考えに基づき、将来にわたって原子力損害賠償の支払等に対応できる支援組織を中心とした仕組みを構築するため、同年9月12日に原子力損害賠償支援機構が設立されました。

なお、原子力損害賠償支援機構法の附則において、原子力損害賠償の実施状況等を踏まえ、原子力損害の賠償に関する法律の改正等の抜本的な見直しをはじめとする必要な措置を講ずるものとされています。

(7) 原子力損害賠償支援機構の枠組み

原子力損害賠償支援機構(以下、機構)を中心とした原子力事業者による相互扶助の枠組みは以下のようになっています。

原子力事業者からの負担金の収納

原子力損害が発生した場合の損害賠償の支払等に対応するため、損害賠償に備えるための積立てを行います。

機構は、機構の業務に要する費用として、原子力事業者から負担金の収納を行います。

機構に、第三者委員会的な組織として「運営委員会」を設置し、原子力事業者への資金援助に係る議決等、機構の業務運営に関する議決を行います。

機構による通常の資金援助

原子力事業者が損害賠償を実施する上で機構の援助を必要とするときは、機構は、運営委員会の議決を経て、資金援助(資金の交付、株式の引受け、融資、社債の購入等)を行います。

機構は、資金援助に必要な資金を調達するため、政府保証債の発行、金融機関からの借入れをすることができます。

機構による特別資金援助

(ア) 特別事業計画の認定

機構が原子力事業者に資金援助を行う際、政府の特別な支援が必要な場合、原子力事業者と共に「特別事業計画」を作成し、主務大臣の認定を求めます。

特別事業計画には、原子力損害賠償額の見通し、賠償の迅速かつ適切な実施のための方策、資金援助の内容及び額、経営の合理化の方策、賠償履行に要する資金を確保するための関係者(ステークホルダー)の協力の要請、経営責任の明確化のための方策等について記載します。

機構は、計画作成に当たり原子力事業者の資産の厳正かつ客観的な評価及び経営内容の徹底した見直しを行うとともに、原子力事業者による関係者に対する協力の要請が適切かつ十分なものであるかどうかを確認します。

主務大臣は、関係行政機関の長への協議を経て、特別事業計画を認定します。

(イ) 特別事業計画に基づく事業者への援助

主務大臣の認定を受け、機構は、特別事業計画に基づく資金援助(特別援助)を実施するため、政府は機構に国債を交付し、機構は国債の償還を求め(現金化)、原子力事業者に対し必要な資金を交付します。

政府は、国債が交付されてもなお損害賠償に充てるための資金が不足するおそれがあると認めるときに限り、予算で定める額の範囲内において、機構に対し、必要な資金の交付を行うことができます。

機構は、政府保証債の発行等により資金を調達し、事業者を支援します。

(ウ) 機構による国庫納付

機構から援助を受けた原子力事業者は、特別負担金を支払います。

機構は、負担金等をもって国債の償還額に達するまで国庫納付を行います。

ただし、政府は、負担金によって電気の安定供給等に支障を来し、または利用者に著しい負担を及ぼす過大な負担金を定めることとなり、国民生活・国民経済に重大な支障を生ずるおそれがある場合、機構に対して必要な資金の交付を行うことができます。

(エ) 損害賠償の円滑化業務

機構は、損害賠償の円滑な実施を支援するため、(ⅰ)被害者からの相談に応じ必要な情報の提供及び助言を行うとともに、(ⅱ)原子力事業者が保有する資産の買取り及び、(ⅲ)賠償支払の代行(原子力事業者からの委託を受けて賠償の支払、国または都道府県知事の委託を受けて仮払金※の支払)を行うことができます。

※平成二十三年原子力事故による被害に係る緊急措置に関する法律案に基づく国による仮払金

(8) 特別事業計画策定の経緯と支援の経過

①2011年11月4日に特別事業計画を認定(緊急特別事業計画の認定)

②2012年2月13日に認定特別事業計画の変更認定(緊急特別事業計画の一部変更認定)

③2012年5月9日に認定特別事業計画の変更認定(総合特別事業計画の認定)

④2013年2月4日に認定特別事業計画の変更認定(総合特別事業計画の一部変更認定)

機構は、東京電力による賠償金の速やかな支払を確保するため、2012年5月に認定特別事業計画(総合特別事業計画)の変更を行いました。当該計画においては、その時点での要賠償額の見通し2兆5,462億7,100万円から、原子力損害の賠償に関する法律第7条第1項に規定する賠償措置額として既に東京電力が受領している1,200億円を控除した金額2兆4,262億7,100万円を、損害賠償の履行に充てるための資金として、2013年度までに交付することとしていました。しかしながら、その後、新たな賠償基準の策定等により、要賠償額の見通しが3兆2,430億7,900万円となったため、機構は2013年2月に、認定特別事業計画の変更(総合特別事業計画の一部変更)を行いました。当該計画により、機構は東京電力に対し、当該要賠償額から上記1,200億円を控除した3兆1,230億7,900万円を損害賠償の履行に充てるための資金として交付することとしています。なお、交付の時期については、すでに機構が交付した2 兆428 億円(2013年3月29日時点)を控除した金額を、2013 年度までに交付する予定です。加えて、被害者から、3年を経過した時点で東京電力が時効を援用し、損害賠償請求権がを行使できなくなるとの懸念が挙がっていることから、東京電力は、(ⅰ)消滅時効の起算点については、事故発生時ではなく、東京電力が請求受付を開始した時とすること、(ⅱ)被害者の方々が東京電力からダイレクトメール等を受領した場合、当該ダイレクトメール等を受領した時点から、再び新たな時効期間(3年間)が進行すると考えていることを明記しました。

また、原子力損害賠償支援機構法第38条第1項の規定に基づき、機構の業務に要する費用に充てるため各電力会社が負担する負担金については、2013年3月29日に、2012年度一般負担金年度総額を1008億465万円と決定しました。

(9) 賠償の実績及び業務の改善

賠償に向けた体制の整備及び賠償の実績

東京電力は、2011年4月15日に国の「原子力発電所事故による経済被害対応本部」において、原子力災害対策特別措置法の規定に基づき、当面の必要な資金を「仮払補償金」として支払いするよう決定がなされたことを受け、同日、仮払補償金の開始を公表しました。また、同社は原子力損害賠償紛争審査会による中間指針(2011年8月5日)を踏まえ、同年8月30日に個人の本賠償、2011年9月21日に法人・個人事業者の本賠償の開始を公表するとともに、本賠償の対象、賠償額の算定基準等を提示しました(法人・個人事業者については、同年9月21日に発表)。個人・事業者ともに同年9月に請求書送付・受付(一次請求:同年3~8月分)を開始し、同年10月5日に本賠償の支払いを開始しました。2013年3月29日までに、仮払補償金、本賠償合計で約1兆8,934億円の支払いが行われています(仮払:約1,498億円、本賠償:約1兆8,934億円)

東京電力は2013年1月1日付で「福島復興本社」を福島県双葉郡「Jビレッジ」内に設立し、福島県にある全ての事業所の復興関連業務を統括し、原子力事故で被災された方々への賠償等について迅速かつ一元的に意思決定をし、福島県の方々に具体的な進捗状況等を報告し関係諸団体の方々からの意見を伺う等、体制の強化を図っています。

さらに原子力損害賠償請求権の消滅時効について、被害者から懸念が挙がっていることから、特別事業計画の一部変更において、東京電力が送付する請求用書類や請求を促すダイレクトメールを被害者が受領している限り、事故から3年経過しても東京電力が消滅時効を主張できる状態とはならないとの認識を明確化することや、被害者による請求のサポートを行うこと等を明記しました。

<総合特別事業計画(2013年2月4日一部変更認定)のポイント>

(ア) 東京電力の取組と関係者の協力

  • 国と東京電力の双方には、厳しい状況をともに連帯して乗り越えていく重い責務
  • 東京電力はあらゆる手段を総動員し、「賠償・廃止措置・安定供給」の責任を果たす
  • 国はエネルギー政策や原子力政策全体についての責務と相まって、責任を果たしていく
  • 国家的難題に直面しているという認識の下、関係者全ての持てる力を結集することが必要

(イ) 東京電力の新経営体制

(ⅰ)原子力損害賠償支援機構が東京電力の総議決権の2分の1超を取得(「一時的公的管理」)するとともに、追加的に議決権を取得できる転換権付無議決権種類株式を引き受けることで、潜在的には総議決権の3分の2超の議決権を確保。

(ⅱ)会長以下役員の退任、顧問制度全廃、退職慰労金の受取辞退 等

(ウ) 合理化の深掘り

10年間で3.3兆円超のコスト削減を行う。

(ⅰ)人件費(10年間で12,758億円削減)

(ⅱ)資材・役務経費(10年間で6,641億円削減)

(ⅲ)買電・燃料調達に係る費用(10年間で1,986億円削減)

(ⅳ)その他経費(10年間で9,687億円削減)

(ⅴ)資産売却

不動産:電気事業資産以外は原則全て売却(2,472億円相当(時価ベース))

有価証券:2011年度から原則3年以内に3,301億円相当の有価証券を売却

子会社・関連会社:2011年度から原則3年以内に119社中45社1,301億円相当を売却

(エ) 料金改定

【前提】燃料費等増を合理化の徹底により圧縮した上で、必要最小限の料金改定(3年原価とし、柏崎刈羽原発の2013年度4月以降の順次稼働を収支計画の前提として置く)

(ⅰ)規制部門で10.28%料金引上げ(原価算定期間の3年間)を収支計画の前提として置く(注:電気事業法に基づく経済産業大臣認可が必要であり、査定の結果8.46%になった)。

(ⅱ)自由化部門は16.39%料金引上げ(査定の結果、14.90%になった)「自由化料金については、総原価洗替えの結果を反映し4月からの差額を割り引く」旨明記。

(オ) 賠償コスト・廃炉コスト

(ⅰ)避難指示区域の見直しに伴う賠償基準等の新基準を踏まえ、約7,000億円を積み増し(総額約3.2兆円)。加えて、損害賠償請求権の消滅時効に係る東京電力の対応等を明記。

(ⅱ)除染は、予算執行の進捗、国からの求償等合理的な見積もりが可能になるまで計上せず。

(ⅲ)廃炉コストは、「ロードマップ」に対応した積上げによる費用を今後見積もり。

(カ) 事業改革(東京電力の方向性・改革の段取り)

(ⅰ)入札による競争や外部事業者等との連携を通じた最適需給の実現

(ⅱ)社内カンパニー(燃料・火力、送配電、小売)(「自前主義」から「外部連携」へ)LNG発電コスト低減に焦点:調達集約化、インフラ共同運用、IPP入札

(ⅲ)国際標準に準拠したスマートメーターのオープンな調達、企業連携による省エネサービス

(キ) 金融機関・株主責任、財務基盤強化

(ⅰ)金融機関:自律的な資金調達力の回復まで与信を維持、主要取引機関は融資1兆円追加

(ⅱ)機構による株式の引受け:株主総会後、払込金額総額1兆円

(ⅲ)既存株主:株式の希薄化、当面の間無配

4.原子力被災者支援

東京電力福島第一原子力発電所事故後、未だ多数の居住者等が避難を余儀なくされ、あるいは、事業者が生産及び営業を含めた事業活動の断念を余儀なくされています。政府では、これまで復興庁を中心にこうした被災者への支援策を講じてきました。

具体的には、2011年12月26日の原子力災害対策本部決定に基づく避難指示区域等の見直しを順次進めたほか、2012年7月20日には避難指示区域の見直しに伴う賠償基準の考え方を取りまとめ、できるだけ早く帰還する、あるいは新たな土地に移住して生活を再建するといった個人の選択に可能な限り資するような賠償の考え方を示しました。2012年7月13日には、同年3月に成立した福島復興再生特別措置法に基づき、福島復興再生基本方針を取りまとめ、政府が一体となって原子力災害の被災者に十分寄り添いつつ、原子力災害からの福島の復興及び再生に関する施策の総合的な推進を図るための基本的な方針を示しました。同方針に即して、2013年3月19日には、「避難解除等区域復興再生計画」を策定しました。本計画は、避難対象12市町村の避難解除等区域の復興・再生を図るため、インフラ、生活環境、産業再生等について中長期的な取組方針を示すとともに、国、県、市町村において講じる具体的取組内容を取りまとめたものです。

こうした各種制度整備と並行し、2013年2月1日には福島に「福島復興再生総局」、東京に「福島復興再生総括本部」、を新たに設置し、復興庁の司令塔機能を強化しつつ、復興大臣トップのいわゆる「福島・東京2本社体制」としました。これにより、省庁縦割りの弊害を排し、現地で即断即決するとともに現地で解決できない課題は東京で迅速かつ確実に処理し、ただちに現場にフィードバックするよう、原子力災害からの復興に関する政府の体制が強化されたところです。

強化された体制の下で、被災自治体と住民への支援に関する各種の施策も講じられています。

まず、平成24年度補正予算・25年度予算により、「福島ふるさと復活プロジェクト」を措置しました。これは、帰還加速・区域の荒廃抑制、長期避難者の生活拠点形成、定住促進の3つを柱とし、新たな支援策を講じるものです。

また、今後1,2年で帰還を目指すことが可能となる区域において、避難指示を待つことなく必要な取組を速やかに実行し、さらには前倒しすることで、避難住民の早期帰還・定住を実現することをねらいとする「早期帰還・定住プラン」を福島復興再生総括本部において取りまとめました(平成25年3月7日)。

さらに、「東京電力原子力事故により被災した子どもをはじめとする住民等の生活を守り支えるための被災者の生活支援等に関する施策の推進に関する法律(子ども・被災者支援法)」の趣旨も踏まえ、福島県を中心とした原子力災害の被災者が安心して生活できるようにするとともに、将来を担っていく子供が元気に成長できるための取組を関係省庁において検討、整理し、「原子力災害による被災者生活支援パッケージ」として公表しました(平成25年3月15日)。

他方、原子力災害による風評被害について、復興大臣の下で省庁横断的に「原子力災害による風評被害を含む影響への対策パッケージ」を取りまとめました(平成25年4月2日)。同パッケージに基づき、風評被害への対策として,被災地における放射線の状況を的確に把握・発信することに加え,被害を受けている農林水産業や観光業における新たな需要創出への支援等を関係省庁の連携により実施しています。

平成24年11月に実施した第6次航空機モニタリングの結果によれば、東京電力福島第一原子力発電所周辺の空間線量率は1年間で約40%減少している傾向にあります。政府としては、本格的な除染の実施やインフラ復旧に加え、原子力災害による被災者の支援と、避難住民の帰還に向けた環境整備を引き続き行っていきます。

【第121-4-1】 福島対応体制の抜本強化について

【第121-4-1】 福島対応体制の抜本強化について

(1) 避難指示区域等の見直し

2011年12月26日、原子力災害対策本部は、東京電力福島第一原子力発電所の原子炉の「冷温停止状態」等が確認され、原子力発電所の安全性が引き続き確保されることが確認されたことから、警戒区域は解除の手続きに入ることが妥当である旨決定しました。また、避難指示区域については、関係者と協議した上で、放射線量を基準として、以下の三つの区域に見直すことを決定しました。

避難指示解除準備区域

年間積算線量が20mSv以下となることが確実であることが確認された区域。同区域においては、当面の間は、引き続き避難指示は継続されることとなりますが、除染、インフラ復旧、雇用対策等の復旧・復興のための支援策を迅速に実施し、住民の一日でも早い帰還を目指します。

居住制限区域

年間積算線量が20mSvを超えるおそれがあり、住民の被ばく線量を低減する観点から引き続き避難を継続することが求められる区域。同区域においては、将来的に住民が帰還し、コミュニティを再建することを目指し、除染やインフラ復旧等を計画的に実施します。

帰還困難区域

5年間を経過してもなお年間積算線量が20mSvを下回らないおそれのある、現時点で年間積算線量が50mSv超の区域。同区域は将来にわたって居住を制限することを原則とし、同区域の設定は少なくとも5年間固定します。(第121-4-2)。

区域見直しの実施については、原子力災害対策本部で決定され、施行日が定められます。2013年3月末日時点で、警戒区域及び計画的避難区域の対象11市町村のうち区域見直しを終えた市町村は、川内村、田村市、南相馬市、飯舘村、楢葉町、大熊町、葛尾村、富岡町及び浪江町の9市町村です1

また、区域見直しを実施した市町村からの強い要望を踏まえ、原則として宿泊が禁止されている避難指示解除準備区域等において年末年始に対象地域の住民向けの特例宿泊を実施しました。これは、短期間の宿泊であれば、①被ばくのリスクが極めて小さいこと、②最低限必要なインフラ(上下水道等)が整っている地域もあること、③防犯、防火等に最低限必要な体制を確保できることなどから、線量測定や防犯・防火対策の強化等所要の措置を講じた上で避難指示区域内(避難指示解除準備区域及び居住制限区域のうち、市町村が適当と認めた地域)での宿泊を可能としたものです。年末年始の特例宿泊では、南相馬市原町区、飯舘村、川内村及び田村市の合計574人(171世帯)の住民の方々が区域内のご自宅で年末年始を過ごされました。

【第121-4-2】 避難指示区域と警戒区域の概念図(2013年3 月7日現在)

【第121-4-2】 避難指示区域と警戒区域の概念図(2013年3 月7日現在)

【第121-4-3】 区域の見直しについて

【第121-4-3】 区域の見直しについて

(2) 警戒区域等への一時立入り

東京電力福島第一原子力発電所から半径20km 圏内は警戒区域に設定され、当該区域への立入りが制限されることとなりました。他方で、着の身着のままで避難を余儀なくされた住民から、自宅への一時立入り等に係る強い要望が寄せられました。これを受け、立入りを行う住民の安全確保を大前提に2011年5月10日から当該区域への一時立入りを実施することとなりました。また、避難指示区域の見直しにより新たに帰還困難区域に設定された地域についても、例外的に、可能な限り住民の意向に配慮した形で住民の一時立入りを実施することとしています。これまで、七巡目までの一時立入りを実施し、延べ102,814世帯、233,106人(2013年3月末日現在)の住民が立入りを行っています。

【第121-4-4】 警戒区域等への一時立ち入り

【第121-4-4】 警戒区域等への一時立ち入り

(3) 除染の実施

東日本大震災に伴う原子力発電所の事故によって放出された放射性物質による環境の汚染が生じており、これによる人の健康または生活環境に及ぼす影響を速やかに低減することが喫緊の課題となっています。こうした状況を踏まえ、2011年8月に「平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法」(以下「放射性物質汚染対処特措法」)が公布されました(2012年1月1日全面施行)。

2011年11月には「放射性物質汚染対処特措法に基づく基本方針」を閣議決定し、環境の汚染の状況についての監視・測定、事故由来放射性物質により汚染された廃棄物の処理、土壌等の除染等の措置等に係る考え方が取りまとめられ、関係者の連携の下、事故由来放射性物質による環境の汚染が人の健康または生活環境に及ぼす影響が速やかに低減されるよう、また、復興の取組が加速されるよう、同方針に基づき取り組むこととしています。

放射性物質汚染対処特措法に基づき、国が除染を実施する除染特別地域においては、市町村ごとに策定する特別地域内除染実施計画に従って事業を進めることとしており、現在、福島県下の11市町村を指定してます(2013年3月末現在)。2013年3月末までに、福島県の9市町村(田村市、楢葉町、川内村、南相馬市、飯舘村、川俣町、葛尾村、浪江町、大熊町)について、同計画を策定し、準備の整った市町村から計画に基づき本格除染を実施しています。また、除染特別地域以外の地域についても、放射性物質汚染対処特措法に基づいて「汚染状況重点調査地域」を指定しています。指定した市町村等は、除染の実施計画を策定します。国、都道府県、市町村等は、それに基づいて、除染等の措置等を実施しています。

汚染状況重点調査地域については岩手県、宮城県、福島県、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県内の合計101市町村が指定されています(平成24年12月現在)。平成25年3月現在、94市町村が計画を策定済みであり、除染作業が進められています。

環境省においては、放射性物質汚染対処特措法が2012年1月に全面施行されたことに伴い、福島県等における除染等を推進するために、福島環境再生事務所を開所するなど、体制の整備を行っているところです。また、福島県及び環境省では、除染等に関する専門家を市町村等の要請に応じて派遣するとともに、除染のボランティア活動等の関連情報の収集・発信を行うための拠点として、国、福島県、関係機関、関係団体等の連携を図る除染情報プラザを開設しています。

(4) 健康管理調査の支援等

福島県民の皆様の中長期的な健康管理を可能とするため、国では、平成23年度(2011年度)第二次補正予算により、福島県が創設した「福島県民健康管理基金」に782億円の交付金を拠出し全面的に県を支援しています。福島県では、この基金を活用して、全県民を対象に県民健康管理調査を実施し、被ばく線量の把握や健康状態を把握するための健康診査等を行うこととしています。特に、震災時点で18才以下であった全ての方を対象に甲状腺の超音波検査を実施しています。この他に、ホールボディカウンターによる検査や、中学生以下の子ども及び妊婦に対する個人線量計(ガラスバッジ等)の貸与などを実施しています。

これまで本節で述べてきた施策に加え、既設原子力発電所の安全性向上の為の研究開発として、東京電力福島第一原子力発電所の事故を踏まえ、国においては既設原子力発電所の更なる安全対策高度化に向けた課題(緊急時対応に資する資機材等の集中管理、シビアアクシデントにも耐えられる計装・計器等の開発等)の技術開発を実施しています2

なお、事業者は、例えば総合資源エネルギー調査会総合部会電気料金審査専門委員会において、原子力発電所のさらなる安全性向上対策として、平成25年から平成27年の間に、関西電力は1,950億円程度、九州電力は1,283億円程度、東北電力は1,392億円程度、四国電力は440億円程度の原子力発電所に係る安全対策のための設備投資(津波・浸水対策、電源の確保、免震棟設置など)を行うことを示しています。

1
その後、5月7日の原子力災害対策本部において、双葉町の区域見直しが決定され、これにより、警戒区域の全域が解除された。
2
第三部第7章3.(4)原子力に関する技術への取組 参照