第3節 石油・LPG

本節では、東日本大震災による石油・LPGの被害状況、対応及び明らかになった課題について述べることとします。

1.石油・LPG供給関連施設等の大規模被災による供給力低下

(1) 製油所、油槽所等、供給拠点の機能停止

今次震災により東北・関東地方にある9製油所のうち、東北地方で唯一の製油所であるJX日鉱日石エネルギー株式会社仙台製油所をはじめ6製油所が被災しました。また、臨海部を中心に港湾や道路が津波により大きな被害を受け、タンクローリーが多数被災するとともに、主要供給拠点である塩釜油槽所の受入港湾にタンカーが着桟できない状況となるなど、被災地における石油製品の安定供給に支障を来しました。

また、東北各県及び茨城県のLPガス供給基地は、9基地中7基地が被災しました。そのうち5基地は4月下旬までに稼働を再開しましたが、2基地は7月31日現在も出荷不能です(第113-1-1)。

【第113-1-1】供給基地の被災・復旧状況(7月31日現在)

また、被災3県(岩手、宮城、福島)に160箇所ある充塡所も28箇所が使用不可能になりました。

ガソリン・灯油・軽油等の石油製品の流通網については、道路・鉄道事情が大幅に悪化し、交通網が分断状況となったことに加えて、タンクローリーも津波により多数被災するなどしたため、油槽所からサービスステーション(SS)へのガソリン等の安定的な輸送が困難な状況となりました。また、サービスステーション(SS)についても津波の影響で給油設備が被害を受けたこと等により、岩手や宮城の一部地域ではすべてのサービスステーション(SS)が営業不能になった市町村もありました。

2.復旧への取組

(1) 被災地からの個別燃料供給要請への対応

震災発生直後の被災地からの供給要請対応

震災発生直後より、資源エネルギー庁、石油連盟、全国石油業共済協同組合連合会、石油元売各社は協力の上、24時間体制の対応体制を構築し、被災地の災害対策本部を通じて、医療機関や警察、消防等各方面からの差し迫った石油製品供給の要請に対応しました。

LPガスの供給確保と避難所等へのLPガス供給

供給基地が多数被災したため、東北地方の供給基地の最大限の利用と、他地域からの長距離輸送を行うなどの体制の強化により、供給を確保しました。また、避難所等に6800人分のLPガス及び約2.6万台のカセットコンロ等を無償提供しました。

(2) 包括的な供給プランの策定(東北地方(被災地)及び関東圏でのガソリン・軽油等の供給確保)

【第113-2-1】包括的な供給プラン

タンクローリーの追加投入

津波等による多数のタンクローリーの被災により、油槽所からガソリンスタンド等への石油製品の安定的な輸送が困難となったため、経済産業大臣からの要請に基づき、石油元売各社は4月中旬までに約300台のタンクローリーを全国から被災地へ追加投入しました。

西日本の製油所等からの大量転送

東北・関東地方にある製油所の被災により、我が国の石油精製能力が震災前の7割にまで低下しました。

石油元売各社は、3月17日の経済産業大臣からの要請に基づき、西日本の製油所の稼働率をほぼ能力上限まで引き上げることで石油製品を増産し、その増産分を東北地方の出荷拠点にタンカー等で大量に転送しました。

太平洋側油槽所の早期機能回復

太平洋側の油槽所が多数被災し、出荷困難な状況に陥りました。中でも塩釜油槽所では、複数の石油元売会社の油槽所が集積しており、早期の復旧が必要な状況でした。各社が設備の復旧を進めるとともに、関係機関の協力の下、近隣海域の掃海や周辺道路の回復が進んだことにより、3月19日に製品出荷が開始され、3月21日には震災発生後の第一船が入港するなど、早期機能回復が図られました。

また、被害が比較的少なかった石油元売会社の油槽所を被害が大きかった他の石油会社と共同利用するなど、対策を講じ、被災地への石油供給の重要拠点となりました。

優先給油と緊急重点サービスステーション(SS)の選定

石油販売業界への要請を通じて、消防・警察車両等の緊急車両への優先給油を実施しました。加えて、緊急車両への燃料供給を確実にするため、3月18日に東北圏で178箇所、関東圏で161箇所の緊急重点サービスステーションを選定し、3月21日に東北圏で207箇所、関東圏で187箇所を追加して選定しました。

福島原発周辺地域への重点供給

原発周辺地域の住民の方々がガソリン不足による自主避難が困難となっている状況を踏まえ、タンクローリーにより燃料を供給するように、資源エネルギー庁より関係業界に要請を行いました。

鉄道による輸送ルートの確保

東北地方への石油製品の供給のため、盛岡、宇都宮、郡山等へタンク貨車による鉄道輸送を実施しました。

ドラム缶による大量輸送

ガソリンスタンドの被災が大きいなど、石油製品の供給不足が特に著しい地域への重点供給対策として、石油連盟及び石油元売各社は約9,000本(石油連盟からの約2,000本の無償提供を含む)のドラム缶による石油製品の大量輸送を実施しました。

関東・東北地方に向けた製品の転送・在庫取り崩し等

今次震災により、関東・東北地方にある9製油所のうち、6製油所が稼働停止となり、うち3製油所については早期の復旧が見込まれたことから、復旧までの燃料供給を確保するために、経済産業大臣からの要請に基づき、石油元売各社は、西日本及び稼働中の関東地方の製油所の石油製品の在庫取り崩し等を実施しました。

事業者間連携による円滑な供給体制

石油元売会社間での石油製品の融通や、設備の共同利用などの柔軟な対応により円滑な供給体制を構築しました。

備蓄による対応

(ア) 民間備蓄義務日数の引き下げ

石油会社による石油製品の在庫の取り崩し、事業者間・地域間の相互融通を円滑化することにより、我が国全体としての石油の安定的な供給を確保するため、石油備蓄法に基づき、3月14日に3日分(約126万KL)、同21日に22日分(約924万KL)、合計25日分(約1050万KL)の民間備蓄義務を1ヶ月間引き下げることとしました。また、4月21日には、被災地への石油の安定供給に万全を期すため、さらに1ヶ月間、引き下げを延長することとしました。

(イ) 国家備蓄石油の交換

生産を停止していた鹿島石油株式会社鹿島製油所が6月4日に生産を再開したものの、桟橋設備の損傷が大きく、当面原油の受入に支障が生じることから、同製油所内の国家備蓄原油を生産に活用し、代わりに、グループ企業のJX日鉱日石石油基地株式会社喜入基地(鹿児島)にある同量の原油の所有権を国に移転する国家備蓄原油の交換を実施しました。

(ウ) 国家備蓄LPガスの放出

輸入船の座礁により入荷が困難になった民間輸入基地の出荷を継続させるため、当該輸入基地に隣接する神栖国家石油ガス備蓄基地から当該輸入基地に向けてLPガスを約4万トン放出しました(国家備蓄の量は、他の民間基地にある同量のLPガスを取得したため、減少していません)(第113-2-2)。

【第113-2-2】国家備蓄LPガスの放出

(3) エネルギー供給施設の復旧等の支援

被災地での簡易サービスステーション(SS)設置等支援

地震・津波によって営業不能となったサービスステーションが復旧するまでの間、仮営業のために移動式給油機やタンクコンテナの設置等の支援を行っているところです。

被災地サービスステーション(SS)の早期復旧支援

被災地域において給油設備に損壊等の被害を受けたサービスステーションの早期立ち上げを促すため、給油設備の補修や全壊したサービスステーションの撤去、安全点検の支援を行っているところです。

被災地サービスステーション(SS)向け資金繰り対策

震災により経営が悪化している被災地域のサービスステーションの資金繰り対策として、全国石油協会が保証人となりサービスステーションが金融機関から資金を調達する際に、金融機関に対して借入債務を保証しているところです。

特定被災地向け石油供給支援

津波等による損壊で通常の信用取引が困難な被災地域にあるサービスステーションの売掛債権の未回収リスクを国が負担することで、当該地域への石油製品の安定供給を支援しているところです。

油槽所機能の復旧

被災地等への石油製品供給の重要拠点となる太平洋側の油槽所機能の早期復旧を図るため、平成23年度一次補正予算において、必要な支援措置を講じました。

被災ガス、LPガス関連設備の復旧支援

地震や津波により、被災3県(岩手、宮城、福島)の28箇所の充塡所が使用不可能になりました(第113-2-3)。そのうち、中小企業者の所有で特に重要な10箇所程度の充塡所につき、設備復旧の支援を行っているところです。

【第113-2-3】充塡所の被災状況

3.明らかになった課題

(より一層強固な石油・ガスの安定供給体制の整備)

今回の震災での経験を踏まえ、石油基地等の災害対応能力や、物流機能の強化を行うなど、災害時にも確実に石油製品を供給できる体制の整備について検討をしてまいります。

(参考)海外からの支援

・中国(石油製品)

緊急支援物資として、ガソリン1万トン及びディーゼル油1万トンを受け入れることになり、ガソリン等を乗せた船舶は、4月2日及び3日、それぞれ日本に到着しました。

・クウェートからの原油の提供

4月27日にオタイビ・駐日クウェート大使が海江田大臣、中山政務官を表敬訪問し、復興支援として500万バレルの原油を提供するとの申し出がありました。

・サウジアラビア(LPG)

サウジアラビア王国から我が国に対し申し出のあった寄附により、(社)エルピーガス協会に「サウジLPガス災害支援基金」が設立され、仮設住宅一戸当たり最大3万円まで、LPガス料金を補助しているところです。また、2009年4月にサウジアラビアと岩谷産業が設立した緊急時LPガス支援基金により、避難所等に2.2万台のカセットコンロ等を無償提供しました。