第1節 電力

本節では、東日本大震災による電力の被害状況、対応及び明らかになった課題について述べることとします。

1.原子力災害

原子力発電所事故に関しては、一刻も早い事態の収束に向けて、今なお総力を挙げた取組がなされていることに加え、事故の調査・検証については、「東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会」において行われているところです。

本項では、そうした段階における取りまとめになりますが、現時点(平成23年7月末頃)での生じた被害と講じた措置について記載しています。

(1) 生じた被害

東京電力福島第一原子力発電所事故の状況

(ア) サイトの状況

2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震時、東京電力福島第一原子力発電所では、1号機が定格電気出力一定運転中、2号機及び3号機は定格熱出力一定運転中であり、4号機、5号機及び6号機は定期検査中でした。地震により、運転中であった原子炉はすべて緊急停止しましたが、その後、地震と津波による被害のため、6号機を除いて全交流電源喪失となりました。続いて、1号機から3号機において非常用炉心冷却装置による注水が不能となり、原子炉圧力容器への注水ができない事態が一定時間継続しました。このため、各号機の炉心が露出し、炉心溶融に至ったものと推定されています。さらに、燃料被覆管のジルコニウムと水蒸気との反応により水素が発生し、1号機及び3号機では、原子炉圧力容器や原子炉格納容器からの漏えい等により放出された水素が原因と思われる爆発が原子炉建屋上部で発生しました。定期検査のために炉心燃料がすべて使用済燃料プールに移動されていた4号機においても原子炉建屋で水素が原因とみられる爆発があり、2号機では原子炉格納容器のサプレッションチェンバー室付近と推定される場所で水素爆発と思われる衝撃音が確認されています。また、1号機、2号機及び3号機では、原子炉格納容器圧力が上昇し、原子炉格納容器が圧力上昇により破損することを防ぐために原子炉格納容器ベント操作が行われました。これらによって環境に大量の放射性物質が放出され、国際原子力・放射線事象評価尺度(INES)のレベル7と暫定評価(4月12日)される深刻な事故となりました。

(イ) 放射性物質の環境への放出

福島第一原子力発電所の原子炉からの放射性物質の大気中への総放出量はヨウ素131について約1.6×1017ベクレル1、セシウム137について約1.5×1016ベクレルと推定されています(原子力安全・保安院による試算)。また、原子炉の冷却のために外部から注水した水の一部が原子炉格納容器から漏出し、原子炉建屋やタービン建屋内部の溜まり水となり、その一部については海水中に流出していたことが判明し、海水中への放射性物質の総放出量は約4.7×1015ベクレルと推定されています。周辺住民等の汚染検査については、福島県内でスクリーニングを受けた者215,759人(7月31日までの人数)については、ほとんどの者がスクリーニングレベルである100,000cpm以下でした。なお、102名がスクリーニングレベルである100,000cpmを越えていたので、除染を行いました。

(ウ) 避難の状況

福島原子力発電所の事故状況に応じ、必要に応じて原子力安全委員会の意見を聴いた上で、避難区域及び屋内退避区域が原子力災害対策本部長である内閣総理大臣により定められ、福島県知事及び関係市町村長に指示されました。3月15日の時点で、東京電力福島第一原子力発電所の半径20km圏内及び東京電力福島第二原子力発電所半径10km圏内が避難区域と、東京電力福島第一原子力発電所の半径20km~30km圏内が屋内退避区域とされました。その後、東京電力福島第二原子力発電所に係る避難区域については4月21日に半径8km圏内と変更されました。

加えて、福島第一原子力発電所の半径20km圏内については、住民の安全確保に万全を期すため、原子力災害対策本部長が、福島県知事及び関係市町村長に対し、同区域を警戒区域に設定することを4月21日に指示しました。4月22日午前0時以降、当該区域に消防隊、警察、自衛隊等の緊急事態応急対策に従事する者以外の者が、市町村長の許可なく立入りを行うことは禁止されています。なお、避難区域内の被災者は、事故発生時に緊急に避難したため、必要な物資を持ち出せなかった者が大半であり、自宅への一時立入の強い要望があることから、警戒区域の設定にあわせ、5月10日から住民の一時立入及び6月1日から自家用車の持ち出しのための一時立入を実施しています(7月31日時点で住民の一時立入は累計14,946世帯25,432人、自家用車の持ち出しは累計2,522世帯2,536人が実施)。

また、環境モニタリングのデータから、東京電力福島第一原子力発電所の半径20km圏外の場所でも放射性物質が高いレベルで蓄積されてきている場所があることが明らかになったため、4月10日に原子力安全委員会の意見を聴いた上で、4月22日には、20km圏外の一定の区域を「計画的避難区域」として新たに設定するとともに、従来、屋内退避区域とされてきた20kmから30km圏内の地域のうち「計画的避難区域」以外の区域については、今後なお、緊急時に屋内退避や避難の対応が求められる可能性が否定できないことから、「緊急時避難準備区域」として設定することが関係自治体の長に指示されました。これによって、計画的避難区域内の居住者等は避難のための計画的な立退きを行い、また緊急時避難準備区域内の居住者等は常に緊急時に避難のための立退き又は屋内への退避が可能な準備を行うように指示されました。

さらに、計画的避難区域の外にも、事故発生後1年間の積算被ばく線量が20ミリシーベルト2を超えると推定される空間線量率が続いている地点が局地的に存在することから、6月14日に原子力安全委員会の意見を聴いた上で、原子力災害対策本部は6月16日に、当該地点を「特定避難勧奨地点」とし、居住住民に対して注意喚起及び避難の支援、促進を行う対応方針を示しました。

これに基づき、原子力災害現地対策本部は、福島県及び伊達市、南相馬市、川内村との協議を踏まえ、6月30日に伊達市の104地点(113世帯)、7月21日に南相馬市の57地点(59世帯)、8月3日に南相馬市の65地点(72世帯)及び川内村の1地点(1世帯)に対して「特定避難勧奨地点」を設定し、それぞれ伊達市、南相馬市、川内村に通知しました。

【第111-1-1】警戒区域、計画的避難区域、緊急時避難準備区域及び
特定避難勧奨地点がある地域の概要図

【第111-1-1】警戒区域、計画的避難区域、緊急時避難準備区域及び

その他の原子力施設の状況

東京電力福島第二原子力発電所においては、定格熱出力一定運転中であった1号機から4号機は地震によりすべて緊急停止しました。地震により外部電源が1回線による受電となり、津波の襲来により、1号機、2号機及び4号機の残留熱除去系などが被害を受けました。しかし、機能を有していた配電盤からの仮設ケーブルを接続すること等により交流電源を確保し、海水系ポンプの復旧等により残留熱除去系を運転し、3月14日には1号機及び2号機が、15日には4号機が冷温停止状態となりました。なお、3号機については残留熱除去系が機能喪失には至らず12日に冷温停止となりました。

東北電力東通原子力発電所では、1号機が定期検査中であり、地震により外部電源が喪失しましたが、非常用ディーゼル発電機により給電が行われました。東北電力女川原子力発電所では、1号機と3号機が定格熱出力一定運転中、2号機が原子炉起動操作中であり、地震により3基とも緊急停止しました。地震により外部電源が1回線による受電となり、非常用ディーゼル発電機による給電が行われました。津波の襲来により、2号機及び3号機の海水系ポンプなどが被害を受けましたが、原子炉隔離時冷却系などにより原子炉への給水を行い、3月12日にはすべての原子炉が冷温停止となりました。また、日本原子力発電東海第二発電所は定格熱出力一定運転中であり、地震により緊急停止しました。外部電源は全て喪失しましたが、非常用ディーゼル発電機が起動し、3月15日に原子炉は冷温停止となりました。

日本原燃六ヶ所再処理工場では、地震により再処理工場の外部電源が喪失しましたが、非常用電源による給電が行なわれ、震災による大きな影響はありませんでした。

(2) 講じた措置(対応)

原子力施設の安全確保に向けた措置

(ア) 事故の収束に向けた取組み

原子力災害対策特別措置法第15条の緊急事態に該当する旨の通報を東京電力から受け、3月11日19時03分には、内閣総理大臣は、原子力緊急事態宣言を発令し、原子力災害対策本部及び原子力災害現地対策本部を設置しました。3月15日には、原子炉施設における災害事象に係る現状把握、その制御に係る応急措置等について、政府と原子力事業者が一体となり、情報を共有しながら、必要な対応を判断し指示を出していく体制を取ることを目的として、「福島原子力発電所事故対策統合本部(現:政府・東京電力統合対策室)」を設置し、事故の収束に向けて全力をあげて取り組んでいます。

また、放射性物質により汚染された農産物、飲料水等に関する対応としては、災害対策本部等が飲食物の摂取制限措置の検討を開始するめやすとして、原子力安全委員会が示していた数値を、厚生労働省は、3月17日、食品中の放射性物質に関する暫定規制値とし、これを上回る食品については食品衛生法第6条第2号に当たるものとして食用に供されることのないよう関係自治体に通知しました。暫定規制値を超えた品目については、生産地域の広がりがあると考えられる場合、原子力災害対策本部長である内閣総理大臣が出荷制限等を関係自治体に指示しました。水道水については、厚生労働省が、3月19日以降、放射性物質の濃度が暫定規制値を超えた場合は、飲用を控えるよう広報することを都道府県関係部局及び水道事業者等に依頼するとともに、関係地方自治体等によるモニタリング結果を公表しています。

事故の収束に向けては、4月17日に東京電力が取りまとめた「福島第一原子力発電所・事故の収束に向けた道筋」(以下「道筋」という。)が着実かつ極力前倒しされて実施されるよう、検討作業のフォローアップや必要な安全性の確認を行ってきました。5月17日には、原子力災害対策本部が「東京電力福島第一原子力発電所事故の収束・検証に関する当面の取組のロードマップ」を公表し、事故の収束までの政府の取組を示しました。また、5月17日及び6月17日には、東京電力が道筋の改訂版を取りまとめ、窒素封入や循環冷却システムの設置・運転などの原子炉・使用済燃料プールの安定的な冷却に向けた取組み、汚染水処理設備の設置などの放射性物質で汚染された水の閉じこめ、保管・処理・再利用の取組み、飛散防止剤や原子炉建屋カバリングの設計・導入支援などの大気・土壌での放射性物質の抑制に向けた取組み、空間、土壌、海水等の体系的なモニタリングの実施等の取組みを行いました。7月19日には、道筋のステップ1の目標が概ね予定通りに達成されたことが確認されると共に、ステップ2に進むにあたり、東京電力だけでなく政府もより一体となり事故収束に取り組む観点から、東京電力の「道筋」と政府の「ロードマップ」を統合した「東京電力福島第一原子力発電所・事故の収束に向けた道筋当面の取組のロードマップ(改訂版)」を発表しました。ステップ2の目標である「放射性物質の放出が管理され、放射線量が大幅に抑えられている」状態の達成に向けて着実に取り組んでまいります。

(イ) 全国の原子力施設の安全性・安心を高める取組み

3月30日、原子力安全・保安院は、各電気事業者等に対し、緊急安全対策の実施を指示し、全交流電源喪失等対策が適切に措置されていることを確認しました。また、4月9日には非常用ディーゼル発電機に関する安全対策を、4月15日には外部電源の信頼性確保対策を指示し、それぞれ実施状況について確認しました。5月1日には、再処理施設の緊急安全対策の実施を指示し、適切に対策がとられていることを確認しました。

また、中部電力浜岡原子力発電所については、文部科学省の地震調査研究推進本部の評価によれば、30年以内にマグニチュード8程度の想定東海地震が発生する可能性が87%と極めて切迫しており、この地震による大規模な津波の襲来の可能性が高いことが懸念されることから、政府は、5月6日、国民の安全を最優先に考慮して安全側の判断にたち、想定東海地震による津波に十分耐えられる防潮堤設置等の中長期対策を終えるまでの間、全ての号機の運転を停止すべきと判断して、これを中部電力に要請しました。同社はこれを受け入れ、5月14日までに全ての号機の運転を停止しました。

原子力安全・保安院は、さらに、万一シビアアクシデントが発生した場合でも迅速に対応する観点からの措置の実施を各電気事業者に対し6月7日に指示し、適切に実施されていることを立入検査等により確認しました。また、中長期的措置として行うこととしている措置についても、その実施状況を立入検査・審査等により厳格に確認するとともに、各電気事業者等に対して今後とも必要な改善に継続的に取り組むことを促すことにより、シビアアクシデントの対応に関する措置の一層の充実を図ることとしました。

このように、我が国の原子力発電所については、従来以上に慎重に安全性の確認が行われていますが、他方、定期検査後の原子力発電所の再起動に関しては、国民・住民の方々の十分な理解が得られているとは言い難い状況から、政府は、原子力発電所の更なる安全性の向上と、安全性についての国民・住民の方々の安心・信頼の確保のため、欧州諸国で導入されたストレステストを参考に、原子力安全委員会が関与する新たな手続き、ルールに基づく安全評価を実施することとしました。これを受け、原子力安全・保安院は、既設の原子力発電所に関する具体的な評価手法及び実施計画を取りまとめ、原子力安全委員会に報告し、その妥当性の確認を受け、7月22日に各電気事業者等に対して、原子力発電所の安全性に関する総合評価を行い、その結果について報告をすることを求めました。

原子力被災者への対応

(ア) 原子力被災者の生活支援

東京電力福島第一原子力発電所事故では、政府による避難、屋内退避の指示などにより、多数の住民らが、避難その他の行動を余儀なくされ、あるいは、生産及び営業を含めた事業活動の断念を余儀なくされるなど、東京電力福島第一原子力発電所から半径約30km圏内を中心に福島県全体のみならず周辺の各県も含めた広範囲に影響を及ぼす事態に至りました。

3月29日には、原子力被災者への生活支援を強化するため、原子力災害対策本部の下に原子力被災者生活支援チームが設置され、避難受入れ態勢の確保、除染体制の確保、被災地への物資等の輸送・補給、被ばくに係る医療の確保、環境モニタリングと正確・迅速な情報提供などを行ってきました。5月17日には、原子力災害対策本部は「原子力被災者への対応に関する当面の取組方針」及び「原子力被災者への対応に関する当面の取組のロードマップ」を策定・公表し、これらに基づき、応急仮設住宅の確保、計画的避難の実施、住民の健康管理、がれき・汚泥の処理や、放射線量等分布マップの作成、農地土壌の除染技術開発に関する実証試験の実施などの取組を行っています。

(イ) 原子力損害賠償

東京電力福島第一原子力発電所事故により損害を受けた被害者を迅速、公平かつ適正に救済するため、「原子力損害の賠償に関する法律」に基づき設置された原子力損害賠償紛争審査会は、4月28日に「東京電力株式会社福島第一、第二原子力発電所事故による原子力損害の範囲の判定等に関する第一次指針」を、5月31日に第二次指針を、6月20日に第二次指針追補を、8月5日に中間指針を策定しました。また、政府としては、これまで、当面の資金を必要としている被災者の方々に対して、順次、東京電力により仮払いが行われるよう要請してきました。さらに、政府は、原子力被災者への迅速かつ適切な損害賠償のために万全の措置をとるため、原子力損害賠償支援機構法案を国会に提出し、同法案は8月3日に成立しました。

事故原因の究明、教訓の抽出及び共有

(ア) 事故調査

今回の事故はシビアアクシデントに至り、原子力安全に対する国民の信頼を揺るがし、原子力に携わる者の原子力安全に対する過信を戒めるものとなりました。このため、今回の事故を徹底的に検証して教訓を汲み取り、国内原子炉施設の安全性の確保のための抜本対策を講じていくとともに、今回の事故の教訓を国際的にも共有し、世界の原子力発電の安全性の向上に役立てていくことが重要です。

国内での事故調査としては、原子力安全と原子力防災を中心に事故の評価や得られた教訓を取りまとめた暫定的な事故報告書として、原子力災害対策本部がIAEA閣僚会議に対する日本国政府の報告書を取りまとめ、6月7日に公表しました。本報告書では、シビアアクシデントの防止策の強化、シビアアクシデントへの対応策の強化、原子力災害への対応の強化、安全確保の基盤の強化及び安全文化の徹底について28項目の教訓を掲げ、具体的な対策を示しました。また、政府は、事故への対応の全体について検証するため、「東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会」の開催を決定しました(5月24日閣議決定)。この検証委員会においては、従来の原子力行政からの「独立性」、国民や国際社会に対する「公開性」、技術的な問題のみならず制度的な問題まで含めた検討を行う「包括性」を基本として、事故に関する政府の対応などを厳格に検証することとしています。

国際機関による事故調査としては、IAEAと日本政府との合意により、IAEAは東京電力福島第一原子力発電所における事故に関する事実を収集し、初期的な教訓を特定し、これらの情報を世界の原子力コミュニティに公表するために暫定的な調査を行いました。5月24日から6月2日までIAEAの専門家チームが来日し現地調査を含む調査を行いました。調査結果は6月17日に公表され、同月20日から24日までに開催されたIAEA閣僚会議で報告されました。

(イ) 国際社会との情報共有

事故の状況を国際社会に正確かつ迅速に伝達すること、そしてそこから得られる教訓を、国際社会と共有していくことは我が国の責務です。福島事故直後のIAEA特別理事会をはじめ、IAEAとの共催による東京電力福島第一原子力発電所の事故と国際的な初期対応に関するサイドイベント、仏政府・経済協力開発機構(OECD)原子力機関(NEA)共催の福島セミナー等、可能な限り機会を捉え、福島事故の詳細及び現状の説明を行っているほか、G8サミットでは菅総理大臣、IAEA閣僚会議では海江田経済産業大臣より本件の情報提供を含むスピーチを行いました。今後の進捗についても、国際社会に対し、可能な限り速やかに、あらゆる情報を提供していきます。

【第111-1-2】IAEAでスピーチする海江田大臣

【第111-1-2】IAEAでスピーチする海江田大臣

2.電力需給

(1) 被害状況

震災による供給力の低下や停電の発生

(ア) 供給力の低下

3月11日の東日本大震災の発生を受け、原子力発電所の自動停止や火力発電所の被災等により、東日本における供給力が大幅に低下しました。

東京電力の供給力は、約2,100万kWが欠落(約5,200万kWから約3,100万kWへ約4割減)しました。この結果、東京電力管内のこの時期のピーク時の想定需要量約4,100万kWに対し、約1,000万kWの大幅な供給力不足が発生しました。東北電力の供給力は、約500万kWが欠落(約1,400万kWから約900万kWへ約3.5割減)し、供給力が低下しました。

(イ) 停電の発生

震災による変電所などの流通設備への影響等により、東京電力及び東北電力管内を中心に広範囲にわたり停電が発生しました。

東北電力管内において約466万戸、東京電力管内において約405万戸の停電が、地震発生直後に発生しました。

(2) 対応

計画停電の実施

東京電力管内における未曾有の供給力不足に対する方策として、いわゆる「総量規制」(一定期間の電気の消費総量を制限するという方法)では、ピーク時の需要量が供給力を上回らないようにする手段とはたりえないと判断され、ピーク時における電力の需給バランスを適切に保ち、予測不能な広範囲にわたる停電を回避するため、系統の変電所に則した需要のかたまり毎に順次停電させる計画停電による対応が行われることとなりました。

計画停電の実施に当たっては、ライフライン等の国民生活に与える影響を可能な限り少なくするようにしつつ、3月14日の夕方に一部地域で初めて実施されました。その後、電力需要が増加するにつれ、計画停電実施地域も拡大しました。3月17日には、気温の低下等から電力需要が朝から急激に増加した結果、需給バランスの逼迫懸念が高まり、そのままの状態が続けば夕方から夜にかけてのピーク時に需給バランスが崩れる恐れがあったため、午後に経済産業大臣他から一層の節電が呼び掛けられました。結果的に、国民や産業界の節電努力により電力需要は抑制され、需給バランスが崩れる事態は回避されました。

計画停電は、3月14日以降、計10日間(延べ32回)実施されましたが、4月8日の「第4回電力需給緊急対策本部(5月16日より電力需給に関する検討会合に改組)」において、計画停電は、「実施が原則」から「不実施が原則」の状態へ移行する旨が示されました。

計画停電は、実施当初、管内需要家を5グループに分け、グループごとに、あらかじめ定められた時間割(6:20~22:00の間を5コマに分け、一回につき最大3時間)に従い、各グループに属する地域に対する電力供給を順次停止するという仕組みでしたが、予見性の確保、需給の状況に関する一層の情報提供、国民生活や産業活動への影響をより少なくするため、以下の改善措置を講じました。

  • 翌日分のみの計画公表から1週間分の計画公表とする(3月15日~)。
  • 午前分の実施の有無は前日夜に、午後分の実施の有無は当日2時間前に公表する(3月18日~)。
  • 当日の供給力と1時間ごとの電力需要量をほぼリアルタイムで東京電力及び経済産業省のホームページで公表する(3月22日~)。
  • 当初5グループとなっていた計画停電の対象地域を更に細分化(5グループの中にそれぞれ5つのサブグループを設けた。)、どのサブグループから実際に停電が行われるのか、順番がわかるようにして予見性の向上を図る(3月26日実施)。

なお、東北電力管内でも3月16日以降計画停電を実施する可能性がありましたが、実際には1度も実施されませんでした。

【第111-2-1】東京電力管内における計画停電の実施回数

【第111-2-1】東京電力管内における計画停電の実施回数

夏期の電力需給対策

震災後直ちに立ち上がった官房長官を本部長とする「電力需給緊急対策本部」において、夏期の電力需給対策等について議論が積み重ねられ、第5回電力需給緊急対策本部(5月13日)において、「夏期の電力需給対策」がとりまとめられ、対策が講じられました。

(ア) 供給面の対策と今夏(2011年夏)の供給力見通し

東京電力管内及び東北電力管内の供給力については、被災した火力発電所の復旧及び長期停止火力発電所の立ち上げ等の取組による積み増し及び被災地を多く抱える東北地方の状況を考慮した東京電力から東北電力に最大限の電力の融通を行うこととしました。また震災により失われた東京電力及び東北電力の発電設備の供給力を補うために同社が行う発電設備の設置事業については、災害復旧事業に該当するため、環境影響評価法の適用除外となることを確認しました。さらに、火力発電所の定期検査時期の延長を認める運用を実施し、また、電力の供給力を強化するため、自家発電設備等の新増設・増出力に対する支援などが行われました。

これにより、今夏の供給力の見通しは、東京電力で5,380万kW(7月末)、東北電力で1,370万kW(8月末)となりましたが、それぞれの管内における想定需要に達しませんでした。このため、最低限必要な需要抑制率は、東京電力で▲10.3%、東北電力で▲7.4%となりました。

【第111-2-2】最大限の融通を行った場合の需給バランスの比較

  東京電力管内 東北電力管内
想定需要(抑制基準) 6,000万kW 1,480万kW
供給力見通し(融通後) 5,380万kW 1,370万kW
必要な需要抑制率3 ▲10.3% ▲7.4%
(イ) 需要抑制の目標4

需要抑制の目標は、余震等による火力の復旧の遅れ、再被災等を踏まえて、供給力と需要が一致するギリギリではなく、一定の余裕を持ったものとすることが適当です。

こうした観点から、東京電力管内及び東北電力管内の全域において目標とする需要抑制率を▲15%とし、これを達成するための大口需要家・小口需要家・家庭の部門ごとの需要抑制の目標については、同じ目標を掲げて国民・産業界が一丸となり、平等に努力してこの夏を乗り切るとの考え方の下、均一に▲15%とされました。

(ウ) 需要面の対策

需要抑制の目標を達成するため、政府は、大口需要家(契約電力500kW以上の事業者)対策として、電気事業法第27条に基づく電気の使用の制限や電力需給対策に関する規制制度の見直しを、小口需要家(契約電力500kW未満の事業者)対策として、「節電行動計画の標準フォーマット」を活用した節電取組の周知、並びに戸別訪問及び出張節電説明会を行いました。また、家庭対策として、「家庭の節電対策メニュー」の作成・周知を行う等、節電促進に資するコンテンツを広く国民に提供しました。さらに、横断的な取組として、節電の総合的なポータルサイト「節電.go.jp」の構築、一層の節電行動を促す情報提供など、国民各層への積極的な広報・啓発活動を行いました。

ⅰ.大口需要家
(電気事業法第27条の活用)
契約電力500kW以上の大口需要家における対策として、電気事業法第27条に基づき、今夏の電力需要が増加する見込みの期間・時間帯において、電力使用制限(昨夏の同期間における使用最大電力から15%削減)が実施されています。15%削減に向けては、既に多くの大口需要家に自主的な節電の取り組みを進めていただいているところ、この措置はこうした自主的な取り組みを尊重し、需要抑制の実効性及び需要家間の公平性を担保するため、補完的な措置として発動されました。電気の使用の制限期間は、東京電力管内は7月1日~9月22日9時~20時(平日のみ)、東北電力管内は7月1日~9月9日9時~20時(平日のみ)とされました。
(電力需給対策に関する規制制度の見直し)
大口需要家等が抜本的な需要抑制対策を実施できるよう、一時的な対応も含め、関係する規制制度の見直しを行う必要があります。このため、政府においては、独占禁止法の運用の明確化及び自家発電施設の定期事業者検査の弾力化など、既に結論を得た取組を実施しました。また、その他の取組についても引き続き検討を重ねることといたしました。

ⅱ.小口需要家
小口需要家向けには、目標達成に向けた具体的な取組として、自主的な節電行動計画を作成・公表いただくため、主要8業種の「節電行動計画の標準フォーマット」(第111-2-3)を作成しました。さらに、個々の需要家の特性等に応じた節電行動計画を策定していただくため、節電サポーター(電気主任技術者)による戸別訪問を実施するとともに、出張節電説明会を開催し周知を図りました。また、個々の需要家の節電行動計画を政府の節電ポータルサイト「節電.go.jp」で公表していただいた場合には、「節電宣言ステッカー」を事業所等に掲示いただくことで節電への取組を周知していただきました(第111-2-4)。

【第111-2-3】「節電行動計画の標準フォーマット」の例

【第111-2-3】「節電行動計画の標準フォーマット」の例

【第111-2-4】「節電宣言ステッカー」

【第111-2-4】「節電宣言ステッカー」

ⅲ.家庭
家庭向けには、家庭における節電を促すため、節電の具体的取組を「家庭の節電対策メニュー」として取りまとめました(第111-2-5)。家庭における継続的な節電を支援するため、節電メニューの作成、節電実績の「見える化」機能等を盛り込んだ参加型ウェブサイト「家庭の節電宣言」を設置しました(第111-2-6)。

【第111-2-5】「節電.go.jp」での節電対策メニュー

【第111-2-5】「節電.go.jp」での節電対策メニュー

【第111-2-6】家庭の節電宣言

【第111-2-6】家庭の節電宣言

また、小中学生の節電への理解を促進するため、小中学生向けの教材を作成し、「節電教育」を実施しました。

ⅳ.横断的取組等
国民各層に向けた横断的取組として、節電の総合的なポータルサイト「節電.go.jp」の構築や、電力需給状況のリアルタイムの「見える化」(でんき予報)、電力需給のひっ迫を知らせる「電力需給逼迫警報」の整備などの措置を講じました。また、新聞、テレビ、インターネットなど多様な媒体を活用した広報活動を展開しました。

さらに、従来から訴求しているクールビズの取組をさらに徹底した「スーパー・クールビズ」の推進、高機能繊維製品(衣服、肌着、インテリア用品、寝具など)に着目し、それらの活用による節電を提案する「COOLBIZ TECH」事業の実施等に取り組みました。

また、政府の対策として「政府の節電実行基本方針」を定め、府省毎に節電実行計画を策定し、使用最大電力を▲15%以上抑制するよう取り組みました。

西日本5社の今夏の需給対策

西日本5社(関西電力・北陸電力・中国電力・四国電力・九州電力)については、定期検査等を終了見込みの原子力発電所が再起動すれば、予備力10%前後となりますが、再起動できない場合には、西日本5社合計で予備率が▲2.3%となります。これに対し、各社の供給力追加措置の結果、西日本5社全体で予備率は1.7%、60Hzエリア(西日本5社、中部電力(中西日本6社))全体での予備率2.1%を確保できる見通しが立ちました。しかし、関西電力大飯原子力1号(118万kW:調整運転中)が7月16日に、さらに中国電力三隅火力(100万kW)が7月18日に、トラブルで停止したことにより、西日本5社全体で、予備率は▲1.2%、60Hzエリア(中西日本6社)全体での予備率は▲0.0%との見通しとなりました。

このような西日本の電力管内における需給逼迫による停電の発生を回避するため、「第1回電力需給に関する検討会合」(7月20日)において、「西日本5社の今夏の需給対策」が取りまとめられました。

(ア) 供給面

供給面では、自家発電設備の活用等による供給力の積み増し努力の継続、日々の電力系統の運用における更に機動的な相互の融通を行うことで、需給バランスを確保できるような対応を行うこととなりました。

(イ) 需要面

ⅰ.関西電力管内

管内の自治体又は自治体の連合により節電に対する積極的な取組みがなされてきており、また、関西電力による節電要請も行われてきている中、前述の供給力低下の新たな事態を迎え、発電所のトラブル等のリスクも考慮し、今夏のピーク期間・時間帯(目安は7月25日~9月22日の平日の9時~20時)において、全体として▲10%以上を目途に節電に取り組むこと、この具体的な節電への取組みに当たっては、管内自治体等の取組みを十分踏まえて行うこと等といたしました。

ⅱ.他の電力の管内

他の電力の管内については、国民生活及び経済活動に支障を生じない範囲での節電等に取り組むことといたしました。

ⅲ.政府

政府としては、事業者(大口・小口需要家)向けには、「夏期の電力需給対策について」(2.(2)②参照)で示した節電行動計画の標準フォーマットで具体的な「節電アクション」をわかりやすく示すとともに、節電ポータルサイトの活用を図る等の支援・広報活動を、また、家庭向けには、「夏期の電力需給対策についてで示した「家庭の節電対策メニュー」を活用した広報活動を行うことといたしました。

自家発設備の活用状況について

経済産業省においては、自家発設備の活用状況についてのアンケート調査を7月に行いました。その結果、「余剰があり電気事業者に売電可」とする回答は114万kWであり、これに未回収分を推計加算したところ、自家発全体で128万kWが売電可能と推計されました。

2011年冬及び2012年の夏の電力需給見通し

原子力発電所が定期検査に入り、かつ、原子力発電所の再起動が行われないと仮定した場合、2011年冬の予備率は、東日本で▲1.1%、中西日本で▲0.4%、2012年夏の予備率は、東日本で▲10.4%、中西日本で▲8.3%と想定されています。今後、政府として予算措置や規制・制度改革等、需給安定策の具体化を図るとともに、2011年秋を目途に、エネルギー需給工程表をより具体化していくこととしています。

(3) 明らかになった課題

原子力の安全性確保

原子力の活用については、事故の徹底検証を行うとともに、より高い安全性を確保することが大前提です。ストレステストを参考にした新たな安全評価の導入等を示した「我が国原子力発電所の安全性の確認について(2011年7月11日)」の政府方針に従って対応するとともに、事故の検証結果や教訓を踏まえて、安全規制を強化します。原子力発電所の再稼働については、安全の確保及び地元自治体との信頼関係の構築が大前提であり、地元自治体に対しては、政府が前面に立って安全対策等について丁寧に説明し、その理解を得るべく努力していきます。

周波数変換所や連系線の容量不足

東日本大震災発生直後においては、東日本(50Hz帯)の電力不足に対して、西日本(60Hz帯)からの余剰電力の融通を十分に行うことができず、計画停電を余儀なくされました。これは周波数変換所や連系線の容量不足(現状100万kW)が一因です。今後は、連系能力の抜本的強化等が必要と考えられます。

電力需給逼迫の産業への影響回避

東日本大震災は、日本経済が以前から抱えていた構造的な課題を改めて浮かび上がらせただけではなく、電力需給の逼迫とコスト上昇懸念など今後の経済成長を制約するおそれのある新たな要因を生じさせました。

東日本大震災による原子力発電等の停止によって、今夏は例年にない節電・ピークシフトが必要な状況となりました。また、火力発電等によって原子力発電を代替する場合には、LNGや石油を追加的に調達する必要があり、燃料コストの上昇等が懸念されます。

【第111-2-7】連系線と運用容量

【第111-2-7】連系線と運用容量

※図表中 中部電力-東京電力間の連系線運用容量が100万kWとなっている。

(出典)
「電力の安定供給と環境適合について」(2007年第28回電気事業分科会資料)

COLUMN

夏期最大電力使用日の需要構造推計(東京電力管内)

(出典)
夏期最大電力使用日の需要構造推計(東京電力管内)平成23年5月 資源エネルギー庁

1.我が国の電力需要構造の推計

電力需要がピークを迎える夏期の時間別の電力需要構造については、これまで詳細なデータが存在しなかったため、資源エネルギー庁が、東京電力管内の産業(大口・小口)、業務(大口・小口)、家庭の各部門について、電力需要がピークを迎える夏期の一日の需要構造を推計しました(※産業・業務部門の大口とは、契約電力500kW以上、小口とは契約電力500kW未満を指します)。

電力需要のピーク値を、昨年東京電力管内で最大電力需要を示した際(2010年7月23日)の需要の実績から6,000万kW程度と想定し、産業、業務、家庭による全体の需要構造の推計を行い、家庭と業務については、部門内の業種や時間別に使用する機器構成まで、より詳細に需要構造の推計を取りまとめました。

この結果、14時時点の約6,000万kWの内訳は、業務用が最も多く2,500万kW、続いて家庭用1,800万kW、産業用が1,700万kWと推計しました。

【第100-C-1】夏期最大ピーク日の需要カーブ推計

【第100-C-1】夏期最大ピーク日の需要カーブ推計

(注)
1.送電ロス分約10%を含む
2.ここで「14時」とは、14~15時の平均値を指す。以下同じ。
●全体需要カーブの推計手順

①14時断面の東電管内の電力需要構造5をベースに、家庭部門、業務部門(大口・小口)の1日の需要カーブを推計(業務部門については2.「業務部門の推計」、家庭部門については3.「家庭部門の推計」に詳説)。

②昨年ピーク日における大口(産業・業務合計)の24時間の電力需要推移6から、①で求めた業務部門の大口分を差し引いて産業部門の大口を導出。

③小口産業の需要カーブは、業務部門と同様、日中を中心とした操業形態が多いと想定されるため、業務部門と同様の需要カーブを示すと仮定し、14時時点の小口産業の電力需要と業務部門の1日需要推移を基に推計。

④各部門別(産業・業務については大口・小口別)の数値を合計し、全体の需要カーブを作成。なお、昨年の東電の最大需要日(2010年7月23日)の実績カーブと形状・水準とも概ね一致(誤差は0~数%程度)。

2.業務部門の推計

業務部門は、14時断面での電力需要が最も多い部門であり、全体の約4割程度と推計しました。電力使用が大きく使用の形態が特徴的な業態については、前提を置きつつ需要構造の推計を行いました。本段落においては、特に需要の大きいオフィスビルの電力需要推計について示しました。

(1)推計の前提

業務部門の8業種(オフィスビル、卸・小売店、食品スーパー、医療機関、ホテル・旅館、飲食店、学校、製造業)について、床面積、人数、主要機器の消費電力等、様々な前提に基づいて推計を行いました。

例えばオフィスビルについては下記のような前提に基づき、推計を行いました。

例)オフィスビルの場合

  1. 東京電力管内の床面積:1億5,600万m2
  2. 事業所数:89万事業所
    オフィスワーカー人数:750万人
  3. 床面積当たりの最大電力需要:55W/m2
  4. 主な機器・設備の想定
    照明 :13W/m2 (事務所)、8W/m2(共用部)
    パソコン :59W/台 (オフィスワーカー1人あたり1台)
    FAX :58W/台 (オフィスワーカー30人あたり1台)
    プリンタ :90W/台 (オフィスワーカー10人あたり1台)
    コピー機 :398W/台 (オフィスワーカー13人あたり1台)
    冷蔵庫 :140W/台 (1事業所当たり0.5台)
    エレベータ :3,000W/台 (10事業所当たり1台)
(2)推計の手順

(ⅰ)業種別、用途別(空調、照明等)の電力消費量推計

日本エネルギー経済研究所推計の業種別・用途別消費量(年間)をベースとして、東京電力管内の電力消費量を日本全体の約35%と想定し、夏期における電力消費量(月間)を用途別に推計しました。

(ⅱ)各業種における時間別電力需要(需要カーブ)の推計

一般社団法人日本サステナブル建築協会(JSBC)などの建築物のエネルギー消費に関するサンプル調査を参考に、夏期における需要カーブを推定しました。具体的には、(ⅰ)で推計した月間電力消費量を考慮しつつ、東京電力管内全体の需要カーブのボリューム(高さ)を調整。さらに、動力照明の需要カーブから機器・設備別の電力消費量を推計しました。

(推定の考慮事項)

  • 業種別(サンプルの事業規模と平均的な事業規模の差異)
  • 用途別(冷房・給湯・厨房・動力照明)/平日・休日の別
  • 営業時間帯の差異(商業統計などを参照)
  • 照明、パソコン、プリンタ、冷蔵庫、ショーケース、エレベータなどの積み上げ
  • 機器の保有台数、時間別の稼働率等
(3)推計の結果

(ⅰ)業種別、用途別(空調、照明等)の電力消費量推計結果

●業種別

平日14時断面の需要構成をみてみると、業種別では、オフィスビルが40%、卸・小売店(食品スーパーを除く)が22%、食品スーパー、医療機関が各々7%、以下、ホテル・旅館が5%、飲食店4%、学校(小中高)2%などとなりました。

【第100-C-2】業種別

【第100-C-2】業種別

●用途別

用途別の構成をみてみると、平日14時断面では、空調が42%と最も多く、次いで照明27%、OA機器8%、ショーケース・冷蔵庫6%、エレベータ・エスカレータ3%、厨房0.5%、給湯0.1%などとなりました。

【第100-C-3】用途別

【第100-C-3】用途別

(ⅱ)各業種における時間別電力需要(需要カーブ)の推計結果

①オフィスビル

平日14時断面での電力需要は約900万kWと推計しました。

電力需要構成(14時断面)は、空調が48%、照明が24%、パソコン7%などとなりました。

【第100-C-4】時間帯別電力需要・14時断面の電力需要構成

【第100-C-4】時間帯別電力需要・14時断面の電力需要構成

②卸・小売店(食品スーパーを除く)

平日14時断面での電力需要は約500万kWと推計しました。

電力需要構成(14時断面)は、空調が48%、照明が26%、冷凍冷蔵(冷蔵庫、ショーケース等)が約9%となりました。

③食品スーパー

平日14時断面での電力需要は約170万kWと推計しました。

電力需要構成(14時断面)は、ショーケースが28%、空調が25%、照明が24%などとなりました。

④医療機関

平日14時断面での電力需要は約160万kWと推計しました。

電力需要構成(14時断面)は、空調が38%、照明が37%などとなりました。

⑤ホテル

平日14時断面での電力需要は約120万kWと推計しました。

電力需要構成(14時断面)は、照明が31%、空調が26%、エレベータ8%などとなりました。

⑥飲食店

平日電力需要は、12時断面で約120万kW、20時断面で約190万kWと推計しました。

電力需要構成(20時断面)は、空調が46%、照明が29%、厨房が13%などとなりました。

⑦学校(小中高)

平日14時断面での電力需要は約130万kWと推計しました。

電力需要構成(14時断面)は、照明が69%、空調が7%などとなりました。

3.家庭部門の推計

家庭部門は、14時時点での需要全体の約3割程度と推計しました。世帯毎の需要構造を世帯平均、在宅世帯、非在宅世帯の別に、前提を置きつつ推計しました。

(1)推計の前提
  1. 東電管内の世帯数:1,900万世帯
  2. 個人在宅率:社会人は平日、学生は休日(夏休み)として算出
  3. 世帯当たりの電力需要:843W(14時)、1,158W(20時)
  4. 主な家電機器の想定7(定格消費電力の世帯平均)
    エアコン:831W/台(世帯当たり2.6台)
    照明  :543W/世帯
    冷蔵庫 :268W/台(世帯当たり1.2台)
    テレビ :141W/台(世帯当たり2.4台)

【第100-C-5】人在宅率の推移(推計)

【第100-C-5】人在宅率の推移(推計)

(2)推計の手順

①世帯数・世帯類型

  • 東京電力管内世帯数 1,900万世帯(総務省:住民基本台帳ベース)
  • 世帯類型によって、家電機器の保有率やライフスタイルが異なることから、1人世帯、2人世帯、3人以上世帯に分けて推計

②気象条件8

  • 2010年の最大ピーク需要(5,999万kW)を記録した7月23日の気温条件を想定

③各機器の時間別電力消費

  • 時間別電力消費:Σ(定格消費電力×負荷率×世帯保有台数×使用率)×世帯数
  • 算定に用いた機器(定格消費電力はストック平均を想定)
    エアコン、冷蔵庫、照明、テレビ、扇風機、炊飯器、電気ポット、電子レンジ、オーブントースター、IHクッキングヒーター、換気扇、食器洗い乾燥機、洗濯機、洗濯乾燥機、浴室乾燥機、掃除機、アイロン、高効率給湯器、DVD、ブルーレイ、パソコン、ルーター、ドライヤー、空気清浄機、火災報知機、インターフォン、熱帯魚水槽、温水洗浄便座、換気扇(24時間換気)、待機電力(ガス温水器など)
  • 時間毎の気温変化によるエアコン、冷蔵庫の負荷率変化を考慮
  • 各機器の世帯保有台数は内閣府「消費動向調査」等をもとに想定
  • 世帯類型別の在宅率や生活時間(テレビ視聴、家事など)をもとに、時間別の機器使用率を推計(NHK放送文化研究所「2010年国民生活時間調査」を参考)
(3)推計の結果

需要構成をみてみると、14時断面でエアコンが47%、冷蔵庫が20%、テレビ、照明が各々4%などとなり、20時断面でエアコンが37%、冷蔵庫が15%、照明が12%、テレビが8%などとなりました。

【第100-C-6】家庭部門全体

【第100-C-6】家庭部門全体

世帯毎の需要構造

①全世帯平均

需要構成をみてみると、14時断面でエアコンが53%、冷蔵庫が23%、テレビ、照明が各々5%などとなり、20時断面でエアコンが42%、冷蔵庫が17%、照明が14%、テレビが10%などとなりました。

【第100-C-7】全世帯平均

【第100-C-7】全世帯平均

②在宅・非在宅別

在宅・非在宅別の需要カーブは以下のとおりとなりました。

【第100-C-8】在宅・非在宅別

【第100-C-8】在宅・非在宅別

4.節電の取組とその効果(出典:「小口需要家の節電行動計画の標準フォーマット」)

小口需要家の取組を促すため、「節電行動計画の標準フォーマット」を活用した節電取組の周知が行われました。

この標準フォーマットで示された業務部門における主要業種の基本アクションとその節電効果として示されたものは以下のとおりです。

※節電効果は、消費電力に対する節電効果の想定割合の目安であり、空調については、電気式空調を想定しています。一定の条件の元での試算結果ですので、各々の建物の利用状況により削減値は異なる等の注意点があります。

①オフィスビル

  基本アクション 建物全体に対する節電効果
照明
  • 執務エリアの照明を半分程度間引きする。
13%
  • 使用していないエリア(会議室、廊下等)は消灯を徹底する。
3%
空調
  • 執務室の室内温度を28℃とする(または、風通しなど室内環境に配慮しつつ、28℃より若干引き上げる。)。
4%(+2℃の場合)
  • 使用していないエリアは空調を停止する。
2%
OA機器
  • 長時間席を離れるときは、OA機器の電源を切るか、スタンバイモードにする。
3%

②卸・小売店

  基本アクション 建物全体に対する節電効果
照明
  • 店舗の照明を半分程度間引きする。
13%
  • 使用していないエリア(事務室、休憩室等)や不要な場所(看板、外部照明、駐車場)の消灯を徹底する。
2%
空調
  • 店舗の室内温度を28℃とする(または、風通しなど室内環境に配慮しつつ、28℃より若干引き上げる。)。
4%(+2℃の場合)
冷凍冷蔵
  • 業務用冷蔵庫の台数を限定、冷凍・冷蔵ショーケースの消灯、凝縮器の洗浄を行う。
1%

③食品スーパー

  基本アクション 建物全体に対する節電効果
照明
  • 店舗の照明を半分程度間引きする。
11%
  • 使用していないエリア(事務室、休憩室等)や不要な場所(看板、外部照明、駐車場)の消灯を徹底する。
2%
空調
  • 店舗の室内温度を28℃とする(または、風通しなど室内環境に配慮しつつ、28℃より若干引き上げる。)。
1%(+2℃の場合)
  • 使用していないエリア(事務室、休憩室等)は空調を停止する。
1%
冷凍冷蔵
  • 業務用冷凍・冷蔵庫の台数を限定、冷凍・冷蔵ショーケースの消灯、凝縮器の洗浄を行う。
5%

④医療機関(病院・診療所等)

  基本アクション 建物全体に対する節電効果
照明
  • 事務室の照明を半分程度間引きする。
4%
  • 使用していないエリア(外来部門、診療部門の診療時間外)は消灯を徹底する。
4%
空調
  • 病棟、外来、診療部門(検査、手術室等)、厨房、管理部門毎に適切な温度設定を行う。
1%
  • 使用していないエリア(外来、診療部門等の診療時間外)は空調を停止する。
1%
  • 日射を遮るために、ブラインド、遮熱フィルム、ひさし、すだれを活用する。
1%

⑤ホテル・旅館

  基本アクション 建物全体に対する節電効果
照明
  • 客室以外のエリアの照明を半分程度間引きする。
13%
空調
  • 使用していないエリア(会議室、宴会場等)は空調を停止する。
1%
  • ロビー、廊下、事務室等の室内温度を28℃とする(または、風通しなど室内環境に配慮しつつ、28℃より若干引き上げる。)。
1%(+2℃の場合)

⑥飲食店

  基本アクション 設備ごとの節電効果
照明
  • 使用していないエリア(事務室等)や不要な場所(看板、外部照明等)の消灯を徹底し、客席の照明を半分程度間引きする。
40%
空調
  • 店舗の室内温度を28℃とする(または、風通しなど室内環境に配慮しつつ、28℃より若干引き上げる。)。
8%(+2℃の場合)
厨房
  • 冷凍冷蔵庫の庫内は詰め込みすぎず、庫内の整理を行うとともに、温度調節等を実施する。
3%

⑦学校

  基本アクション 建物全体に対する節電効果
照明
  • 教室、職員室、廊下の照明を間引きする
16%(約4割減の場合)
  • 点灯方法や使用場所を工夫しながら体育館の照明を1/4程度間引きする。
2%
1
記号Bq。放射能の単位。1秒間に原子核が崩壊する数を表す。
2
記号Sv。人間が放射線を浴びた時の影響度を示す単位(1シーベルト=1000ミリシーベルト)。
3
需要抑制目標は、基準となる想定需要から抑制比率という形で設定。基準としては、東京電力では6,000万kW、東北電力では1,480万kWという昨年並みのピークを想定した需要を使用。
4
被災者・被災地は需要抑制がより困難であり、東北電力管内全体でより余裕をもった目標とすることが妥当であるため、供給力と需要が一致する抑制率は東京電力に比べて低いが、目標とする抑制率は東京電力と同じとしている。
5
産業(大口・小口)、業務(大口・小口)、家庭に分類。
6
東京電力(株)のデータに基づいている。
7
上記は定格消費電力であり、実際の電力消費量は気温変動等に伴う負荷率により変動する。
8
東京:34.9℃(14時台平均、参考:熊谷:37.3℃、前橋:37.6℃)