第2節 ガス事業制度

1.ガス事業制度改革

(1)これまでのガス事業制度改革について

ガス事業については、1994年、1999年、2003年及び2006年の四度にわたり制度改革が行われています。

小売自由化範囲拡大等にかかる制度改革について

1994年の制度改革においては、これまでの一般ガス事業者による地域独占供給を見直し、大口需要家を対象としたガスの小売自由化等を実施しました。

この制度改革により、年間契約ガス使用量200万m3以上(46MJ換算)の大口需要家は、ガスの供給者を選ぶことが可能となり、料金やその他の供給条件も当事者間の自由な交渉によるものとなりました。

1999年の制度改革においては、小売自由化範囲の拡大(年間契約ガス使用量100万m3以上(46MJ換算)に拡大)、接続供給(託送)制度の法定化、料金規制の見直し(供給約款料金の引き下げについて認可制から届出制へ移行)等を実施しました。また、公正・有効な競争を確保するという観点から、2000年3月、「適正なガス取引についての指針」が制定されました。

2003年のガス事業制度改革では、川上から川下まで一貫した体制でガスを供給する体制を維持した上で、新たに、ガス導管事業をガス事業法上に位置付けるとともに、ガス導管の託送ルールを充実・強化し、ガス小売自由化範囲を年間契約ガス使用量50万m3以上まで拡大しました。

更に、託送供給の中立性・透明性の確保や、LNG基地の有効利用促進の観点から、2004年8月、「適正なガス取引についての指針」が一部改定されました。

2006年のガス事業制度改革では、2003年のガス事業制度改革に係る検討結果を踏まえ、自由化範囲の拡大にあたり、供給者選択の仕組みが実効的に機能するよう、自由化範囲の担保方法、託送供給制度の充実・強化、自由化領域の顧客に対する供給義務のあり方の仕組みの整備、新規の導管設置による利益阻害性判断基準等に係る対応について審議がなされ、2007年4月より小売自由化の範囲を年間契約ガス使用量が10万m3以上の需要家まで拡大しました。

ガス料金制度改革について

2008年10月、原料価格の急激かつ大幅な変動といった環境変化を踏まえ、ガス事業の健全な発達及び需要家利益の保護の観点から、原料費調整制度等の小売規制ガス料金に関する制度の見直しを集中的に検討すべく、都市熱エネルギー部会の下に料金制度小委員会が新たに設置され、必要な見直しが行われました。2009年1月の本部会において取りまとめられた報告書により、原料費調整制度については、原料価格変動をより迅速に反映させるとともに、料金変動を平準化するために、料金反映までの期間を1ヶ月短縮し、2ヶ月とした上で、3ヶ月分の平均原料価格を毎月反映する仕組みとし、2009年5月から順次移行することとなりました。

ガス事業制度改革の成果

このようなガス小売の部分自由化の結果、自由化領域における新規参入等によって競争が活発化し、電気、石油等の他のエネルギー市場との競争に加え、ガス対ガスの競争が進展しています。

これにより、2008年度において、大口供給が総ガス供給量に占める割合は、約6割となっていますが、このうち、一般ガス事業者以外による新規参入は、28社225件(2009年3月末現在。国産天然ガス事業者、電力会社、商社等)となっていて、全大口供給量に占める割合は約12.2%(2008年度実績)となっています。

経営面では1995年以降、販売量あたりの事業費用をみるとLNG輸入価格の上昇傾向等を受けて原材料費が上昇しているものの、労務費等の削減努力により、全体として販売量当たりの事業費用は低減してきており、都市ガスの平均販売単価は低下傾向にあります。

(2)都市ガスの高カロリー化

高カロリー化とは、都市ガス事業者が、供給ガスを低カロリーガス(ナフサやブタン等の改質ガス)から天然ガス等の高カロリーガスに転換することをいいます。高カロリー化には、①需要家のガス機器選択幅の拡大による利便性の拡大、②化石燃料の中で最も二酸化炭素排出量の少ない天然ガスの普及、③長期的なコストダウン等の供給基盤の強化のメリットがあります。ガス機器は、特定のガス種に適合しているため、ガスを高カロリー化する場合には、ガス機器を調整する必要があり、多大なコストがかかります。高カロリー化は、その意義や多大なコスト負担等を踏まえて、政府による財投、補助金等の財政的支援が行われています。

現在、一般ガス事業者211事業者中、208事業者が高カロリー化を実施しており(2009年3月末現在。実施中を除く。)、未実施の事業者も2010年までの高カロリー化に取り組んでいます。

2.2009(平成21)年度においてガス事業に関して講じた施策

(1)ガス事業の更なる小売自由化の必要性等の検討について

総合資源エネルギー調査会都市熱エネルギー部会において、これまでのガス事業制度改革に関する評価・検証において整理された今後の検討課題について具体的な審議を行うため、2008年6月に制度改革検討小委員会を設置しましたが、制度改革検討小委員会における検討課題のうち、規制料金制度(原料費調整制度)に関する課題については料金制度小委員会に移管し、これを含めたガス料金に関する制度の見直しを優先して検討を行いました。今後、家庭用を含む「小売自由化範囲の拡大」等の今後の残された検討課題について、引き続き検討を行う予定です。

(2)ガス料金制度の検討について

2009年1月に取りまとめられた「総合資源エネルギー調査会都市熱エネルギー部会中間とりまとめ」において掲げられた「今後の具体的検討課題・論点」について審議を行い、2009年6月に「中間取りまとめ(第二次)」として、以下の事項について検討した結果を取りまとめました。

料金認可プロセスの合理化について

一般ガス事業において、原価項目のうち総原価全体に占める割合が相当程度小さく、合理的かつ簡便的に過年度実績や経済指標等に基づいた原価項目毎の算定フォーミュラを設定できるものについては、申請上の額が「現行料金原価上の額」及び「フォーミュラにより算出した額」のいずれも上回らない(控除項目については下回らない)ものについて、諸元や計算過程の正誤に関する確認のみを行うことにより、審査方法を合理化することとしました。

規制小売料金の妥当性の定期的評価について

規制小売料金の妥当性の定期的な確認・評価は、まずはガス事業者自身が行うことが求められていますが、行政においても、ガス事業法第十八条の変更認可申請命令権を有していることから、事業者が行う定期的評価、及び行政として把握する情報(規制小売部門の料金原価、事業年度ごとの財務諸表、部門別収支等)に基づき、規制小売料金の妥当性の定期的評価を毎年適切に実施することが必要とされています。このため今回、「一定期間の長期にわたり料金改定を実施していない事業者」及び「規制小売部門において営業赤字が生じている事業者」についての評価結果を公表することとしました。

推計値を用いた料金反映までの期間の更なる短縮について

2009年5月から順次移行されている新しい原料費調整制度の移行期間完了後(平成22年4月以降)の適切な時期における導入を目指して検討を進めていくこととしました。

新エネルギーの見える化について

「エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律」の成立を踏まえ、ガス事業者(大手3社)において、バイオガスの利用を進めていくこととされていますが、今後具体的な制度設計の状況を踏まえ、必要に応じて引き続き検討していくこととしました。

(3)低炭素社会におけるガス事業のあり方について

昨今、エネルギー・環境政策を取り巻く情勢が急速に変化している中、エネルギーセキュリティの確保や地球温暖化問題への観点から、ガス事業における課題を示すとともに課題を克服するための具体的な政策等の検討を行うため、新たに低炭素社会におけるガス事業のあり方に関する研究会を2009年4月に開催しました。需要・供給の両側の有識者からヒアリング等を行い、6月に中間報告書のとりまとめを行うとともに、7月に開催しました総合資源エネルギー調査会都市熱エネルギー部会において、報告書(政策提言)としてとりまとめ、今後、ガス事業が取り組むべき中長期シナリオとして、方向性を提示しました。

【第372-2-1】低炭素社会におけるガス事業のあり方について

【第372-2-1】低炭素社会におけるガス事業のあり方について