第4節 再生可能エネルギーの導入拡大に向けた新たな政策展開

これまで国内外における再生可能エネルギーの導入動向を中心に紹介してきましたが、こうした実態を踏まえ、我が国で講じている再生可能エネルギーの導入拡大に向けた新たな政策展開を紹介します。

1.再生可能エネルギー等の導入拡大に向けた立法措置

我が国のエネルギーをめぐる情勢を踏まえた非化石エネルギー(再生可能エネルギー、原子力等)の導入促進の重要性の高まりにより、総合資源エネルギー調査会における検討を踏まえ、国内政策措置の新たな展開として立法措置を講ずることとしました。

具体的には、石油への過度な依存体質からの脱却を図ることを目的としたこれまでの石油代替エネルギー施策を見直し、非化石エネルギーの開発及び導入の促進を図るため石油代替エネルギー法9を改正しました。

また、それに加え、電気事業者や熱供給事業者、石油事業者、ガス事業者といったエネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用と化石エネルギー原料の有効な利用を促進することを目的としたエネルギー供給構造高度化法10を制定しました。

(1)エネルギー供給構造高度化の推進の必要性

エネルギー需給のあり方については、これまでも様々な提言がなされてきたところです。「エネルギー基本計画」、「長期エネルギー需給見通し」、「低炭素社会づくり行動計画」などは、今後目指すべきエネルギー需給構造を示唆するもので、そこに示されている社会システムの変革や先進的技術の実用化及びその普及の実現に向けた方策を検討していくことが重要です。

こうした提言や昨今の我が国のエネルギーをめぐる情勢等を踏まえ、総合資源エネルギー調査会総合部会において、エネルギー供給構造の高度化に向けた検討を行い、以下のような提言11がなされました。

とるべき政策手法について

我が国のエネルギー供給は、これまで石油代替エネルギー法や省エネ法12、その他エネルギーに関する政策によって、国が示す方向性の下で民間事業者がそれぞれ取り組んできたことから、民間の創意工夫ややる気を活かした取組を最大限引き出すような制度設計が重要です。こうした国の関与の方策としては、法令に基づき行政措置を講ずる規制的手法、補助金や税制支援等の経済的インセンティブを活用する経済的手法等があります。今後、中長期的に一定のレベルに属したエネルギー需給構造への変革という観点から、新たに省エネ法を参考とした適切なポリシーミックスによる誘導的規制の枠組みを導入するべきであると考えられます。

なお、こうした誘導的規制を講じる対象としては、エネルギー供給事業者とエネルギー使用者とが考えられますが、今般講じるべき措置はいずれも、一次エネルギー源の選択、あるいは、エネルギー転換方法の改善と転換技術の開発といった措置になることから、その実施に当たっては、経済的及び技術的な制約があると考えられるエネルギー使用者ではなく、エネルギー供給事業者を対象とするのが適当です。

エネルギー供給事業者は、電気、石油製品、都市ガス等を供給するのが大半のケースですが、取組を求める事業者としては、そうした考え方からすれば、一次エネルギー源の選択または転換方法の改善と転換技術の開発といったプロセスにおいて決定するのに必要な経営力や資金力、技術力を有している者とするのが適当です。その際、中小事業者については、その実態を十分に勘案する必要があります。

また、エネルギー供給構造の高度化のためには、エネルギー供給事業者における相当程度の投資や取組などを伴うことになることから、単にエネルギー供給事業者だけにそれらを任せるのでは実現が困難な場合があります。したがって、官民一体となって取り組むべき課題と考えられることから、国や地方公共団体についても役割や責任を一層明確化する必要があります。

考慮すべき事項について

エネルギー供給事業者に対する誘導的規制措置の導入に当たっては、

  • 非化石エネルギーの導入や化石燃料の利用の高度化に向けた具体的な目標は、技術開発が段階的に進行し、技術的かつ経済的に最適なタイミングで、国全体として実現すべき姿と整合性がとれた形で設定するとともに、各事業者が最大限努力するものであって、技術的かつ経済的に達成可能なものとなるように、各エネルギーの特性を勘案した内容とすること、
  • エネルギー供給事業者のこれまでの取組は、個社ごとに様々であることから、そうした実態に十分配慮した制度となるよう、セクターごとの目標達成に向けて各事業者が取り組むことを容認すること、
  • 災害や外部的な要因により、企業の取組努力が及ばなかった場合など、やむを得ない事情等が発生した場合については行政処分を行わないなど、特別に考慮すること、
  • 制度設計に当たり、事業者に対する二重規制とならないよう、あるいは、事業者の同一の取組が省エネやエネルギー源の転換の履行手段としてダブルカウントされないよう、省エネ法やRPS法等とも一体的に実施していくことが可能となる法体系の整備を行うこと、

といった点を十分に考慮する必要があります。

(2)エネルギー供給構造高度化に向けた取組

我が国のエネルギー供給については、将来にわたって、現実的には一定程度化石燃料に依存せざるを得ない状況ですが、こうした中、我が国のエネルギー供給構造を高度化していくためには、

  • 革新的太陽光発電や先進的原子力発電などの技術開発、オイルサンドやメタンハイドレート等の非在来型資源や未利用エネルギーの開発などを推進すること、
  • 化石燃料への依存度を低減していくために、非化石エネルギーの導入を拡大すること、
  • 有限な化石燃料の生産性を徹底的に高めるために、その高度かつ有効な利用を推進すること、

といった取組を講じる必要があります。

(3)エネルギー供給構造高度化に向けた制度設計

石油代替エネルギー法の改正

(ア)ねらい

前述のとおり石油代替エネルギー法に基づく石油代替エネルギー施策により、石油依存度は低減してきましたが、石油に加え、石炭や天然ガスを含めた化石燃料に対する依存度については依然として高い水準です。

他方で近年の世界のエネルギー需要の急増等を背景に、今後は従来どおりの質・量の化石燃料を確保していくことが困難となることが困難となることが懸念されていることから、石油への依存体質の脱却を図ることを目的としたこれまでの石油代替エネルギー施策を見直し、非化石エネルギーの開発及び導入の促進を図るため、石油代替エネルギー法を改正することとなりました。

(イ)改正内容

改正内容については、法律名を「非化石エネルギーの開発及び導入の促進に関する法律」(非化石エネルギー法)に改めるとともに、支援の対象を石油代替エネルギーから原子力や再生可能エネルギー等の「非化石エネルギー」に変更しました。

本改正を踏まえ、国は非化石エネルギー供給目標を策定・公表し、エネルギーを使用して事業を行う全ての者に対し、非化石エネルギーの導入指針を策定・公表した上で、必要に応じ、指導・助言を行うということになります。

【第124-1-1】非化石エネルギー法における「非化石エネルギー」の定義

規定内容 具体例
化石燃料(原油、石油ガス、可燃性天然ガス及び石炭並びにこれらから製造される燃料(その製造に伴い副次的に得られるものであつて燃焼の用に供されるものを含む。)であつて経済産業省令で定めるものをいう。以下同じ。)以外の物であつて、燃焼の用に供されるもの バイオ燃料  等
化石燃料を熱源とする熱以外の熱(前号に掲げる物の燃焼によるもの及び電気を変換して得られるものを除く。) 地熱、太陽熱  等
化石燃料を熱源とする熱を変換して得られる動力(以下「化石燃料に係る動力」という。)以外の動力(熱又は電気を変換して得られるものを除く。) 水力、風力、波力  等
化石燃料に係る動力を変換して得られる電気以外の電気(動力を変換して得られるものを除く。) 太陽光発電  等

エネルギー供給構造高度化法の創設

(ア)ねらい

総合資源エネルギー調査会総合部会の提言にもあるとおり、エネルギー供給事業者に対し、非化石エネルギーの導入拡大及び化石燃料の高度かつ有効な利用を図るべき誘導的規制措置として、エネルギー供給構造高度化法を創設しました。

エネルギー供給構造高度化法は、太陽光や原子力、風力、水力、地熱等の非化石電源、バイオマスエネルギーの利用拡大や、太陽光発電による電気の一定価格以上での買取りなどの取組を通じて、電気事業者や熱供給事業者、石油事業者、ガス事業者といったエネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用を促進することを目的としています。

(イ)制度内容

その内容については、まず、経済産業大臣が、エネルギー供給事業者に対して、それぞれ事業を行う際の留意事項として、非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用を総合的かつ計画的に促進するための基本的な理念や方向性を示す「基本方針」を策定し、公表します。

次に、経済産業大臣は、

  • エネルギー供給事業者が非化石エネルギー源の利用または化石エネルギー原料の有効な利用を総合的かつ計画的に促進するために取り組むべき措置について事業別に定める「判断の基準」を策定し、公表するとともに、
  • エネルギー供給事業者のうち、非化石エネルギー源の利用または化石エネルギー原料の有効な利用が技術的かつ経済的に可能な一定規模以上の特定事業者に対し、取り組むべき措置に関する計画の作成・提出を義務づけ、
  • さらに、提出された計画に基づく特定事業者による取組の状況が「判断の基準」に照らして著しく不十分な場合には、当該特定事業者に対し、勧告・命令を行う、

ということになります。

【第124-1-2】エネルギー二法の概観

【第124-1-2】エネルギー二法の概観

COLUMN

石油代替エネルギー施策の概観

ⅰ)石油代替エネルギー法の制定

1970年代の二度のオイルショックを踏まえ、過度な石油依存構造から転換するため、1980年に石油代替エネルギー法が制定されました。それ以降、我が国では、この石油代替エネルギー法に基づき、官民が一体となって、石油から石油以外のエネルギーへの転換を目指し、技術開発とその導入促進に向けた支援措置を中心とした施策に積極的に取り組んでまいりました。

ⅱ)石油代替エネルギー施策による効果

そうした石油代替エネルギー施策の結果、石油代替エネルギー法が制定された当時の長期エネルギー需給暫定見通しにおいては、石油依存度を第一次オイルショック時(1973年度)の8割から、1990年までに5割に引き下げるという努力目標がありましたが、実際には1990年度時点で約54%、2000年には5割を下回る水準にまで低減しました。

特に、電力分野においては、火力発電所の燃料転換や大型化、燃焼技術の向上等により発電の高効率化を図るとともに、原子力発電所の増設へと電源開発の軸を移すことにより、石油依存度の大幅な低減を実現しました。

しかし、これらの取組にもかかわらず、一次エネルギー供給に占める化石燃料の割合は、依然として8割と高水準で推移しているのが現状です。

【第124-1-3】我が国のエネルギー供給の推移

【第124-1-3】我が国のエネルギー供給の推移

【第124-1-3】我が国のエネルギー供給の推移(xls形式:44KB)

(出所)
資源エネルギー庁「総合エネルギー統計」、「電源開発の概要」をもとに作成

ⅲ)施策見直しの必要性

官民一体となった石油代替エネルギー施策への取組は、石油依存度を大きく低減させるという効果を発揮しました。

他方、一次エネルギー供給に占める化石燃料の割合は依然として高水準で、再生可能エネルギーや原子力といった非化石エネルギーの利用拡大と化石燃料の一層効率的な利用が求められています。また、エネルギーの安定供給を図るというエネルギー政策基本法の考え方を踏まえると、石油の利用を単に抑制するのではなく、エネルギー源の多様化に向けた取組の強化を図る必要があります。

さらに、世界のエネルギー需給構造の中長期的な変化や地球環境問題を解決するための低炭素社会の実現の必要性を十分に踏まえた対応が必要です。

こうした観点から、石油代替エネルギー法に基づくこれまでの施策の見直しが必要であるとの機運が高まりました。

2.再生可能エネルギーの導入飛躍に向けた取組の方向性

我が国は、これまで導入支援による需要拡大、研究開発支援による低コスト化・高性能化、電力会社による電力買取等の自主的取組、RPS法といった規制などにより、再生可能エネルギーの導入を進めてきました。加えて、2009年11月から太陽光発電の余剰電力買取制度を開始していて、一定の成果をあげてきているといえます。以下では再生可能エネルギー導入飛躍のために現在進められている取組内容及び今後の視点の方向性について紹介します。

(1)太陽光発電の普及拡大

太陽光発電については、再生可能エネルギーの中でも特に潜在的な利用可能量が多く、エネルギー自給率の低い我が国の国産エネルギーとして重要な位置づけを占める可能性があります。エネルギーセキュリティの確保や地球温暖化対策の観点のみならず、経済・産業の育成という観点からも、我が国における新エネルギーの中でも、その導入拡大には大きな期待が寄せられているところです。

エネルギー供給構造高度化法においては、その枠組みの中で、太陽光発電の余剰電力買取制度を位置づけています。具体的には、太陽光発電システムによって作られた電力のうち、自家消費されずに余った電力を電気事業者が従来の二倍程度の価格で買い取る制度として、2009年11月1日より開始したものです。

買取りに要した費用は、電気使用量に応じ、電気を使用する全員で負担する「全員参加型」の制度となっていて、太陽光発電の一層の導入拡大を推進し、世界に先駆けた低炭素社会の実現を図っていくこととしています。

また、太陽光発電を含めた再生可能エネルギーについて、各エネルギー源の特性に合わせて固定価格買取制度等の規制や公的支援、民間企業等による自主的取組等を組み合わせ、導入拡大が進む環境を整備することが不可欠です。

現在、「再生可能エネルギーの全量買取に関するプロジェクトチーム」を立ち上げ、更なる環境整備に向けて、国民負担のあり方、電力系統安定化対策などの多様な論点を踏まえつつ、再生可能エネルギーの全量買取制度のあり方について、関連業界からのヒアリング、国民からの意見募集、再生可能エネルギーの欧州海外調査等を行うなど、検討を進めています。

【第124-2-1】太陽光発電の余剰電力買取制度の概要

【第124-2-1】太陽光発電の余剰電力買取制度の概要

導入当初は住宅用(10kW未満)は48円/kWh、それ以外は24円/kWh。自家発電設備等を併設している場合は、それぞれ39円/kWh、20円/kWh。

COLUMN

再生可能エネルギーの全量買取制度の検討

1.趣旨

再生可能エネルギーの導入拡大に向けて、特に、技術革新や産業育成等の高い政策効果が見込まれる太陽光発電については、2009年11月1日から「太陽光発電の買取制度」を開始しましたが、更なる環境整備に向けて、国民負担のあり方、電力系統安定化対策などの多用な論点を踏まえつつ、同月に再生可能エネルギーの全量買取制度のあり方について検討を行うことを目的に、「再生可能エネルギーの全量買取に関するプロジェクトチーム」(以下、「プロジェクトチーム」という。)を立ち上げました。

2.検討内容

「再生可能エネルギーの全量買取制度」は、再生可能エネルギーによる電気を電気事業者が一定の価格で買い取ることを義務付ける制度で、既に諸外国では導入され、再生可能エネルギーの導入拡大に寄与しています。

再生可能エネルギーはコストが高いという課題があり、コスト低減のための研究開発支援や、導入費用の一部を支援する補助金や税制支援を講じてきました。中長期的な視点でコストの大幅低減を目指した技術開発を進めていますが、短中期的に再生可能エネルギーの導入拡大を考える際には、導入コストをいかに負担するかが最も重要な課題です。

また、太陽光発電や風力発電は出力が不安定といった課題があり、導入拡大に伴って電力系統安定化対策が必要になります。

こうした点を踏まえ、再生可能エネルギーの全量買取制度の検討に当たっては、コストの負担及び電力系統安定化対策とのバランスを適切に図ることを基本としています。

【第124-2-2】再生可能エネルギーの全量買取制度の検討イメージ

【第124-2-2】再生可能エネルギーの全量買取制度の検討イメージ

プロジェクトチームでは、2010年3月に提示した再生可能エネルギーの全量買取制度のオプション等を踏まえ、具体的には、

  • 買取対象(再生可能エネルギー源の種類、設備の規模、新設の設備のみか既存の設備も含むか等)
  • 買取価格及び買取期間(導入見通し・目標量、化石燃料とのコスト差、先進各国の事例等を基準に設定)
  • 負担のあり方(適正な負担の水準、費用負担の方法、地域間格差等)
  • 他の制度とのバランス(RPS法を始めとする他法令、補助金や税制等の支援措置等)
  • 電力系統安定化対策と負担(再生可能エネルギー源ごとの出力の特徴、系統安定化対策とコスト等)
  • 環境価値等(CO2削減の費用対効果、純国産エネルギーとしての価値等)

といった点に着眼して、国民負担をできる限り抑えつつ、再生可能エネルギーの導入拡大を目指す買取制度の構築を進めています。

【第124-2-3】プロジェクトチームにおけるこれまでの検討状況

2009年
11月6日 第1回プロジェクトチーム会合
-現状分析、論点整理
-制度に関する意見募集を実施
11月下旬~12月下旬 意見をもとにヒアリング(全5回)
2010年
1月上旬~中旬 欧州海外調査(ドイツ、スペイン、イタリア、英国)
1月28日 第2回プロジェクトチーム会合
-ヒアリング結果報告、海外調査報告等
3月3日 第3回プロジェクトチーム会合
-買取費用の分析・試算、意識調査結果報告等
3月24日 第4回プロジェクトチーム会合
-オプション案の提示等
3月31日~5月31日 オプションに関する意見募集を実施
4月~5月 オプションの説明のための地域フォーラムを全国21箇所で開催

(2)次世代エネルギー・社会システムの構築

我が国はエネルギーセキュリティやCO2削減を目指す上で、原子力と並んで重要なエネルギー源として再生可能エネルギーの導入促進を図っています。しかしながら、再生可能エネルギーは制御が困難で、出力が不安定であるため、大量導入された場合には地域的な電圧変動問題や周波数が不安定化するリスクがあり、現在の電力供給システムでは十分な受け入れ体制が整っているとは言い難い状況です。

また、需要面においても電気自動車など次世代自動車の普及や家庭の電化の進展等で今後電力需要の拡大も見込まれております。

【第124-2-4】太陽光発電等の再生可能エネルギー大量導入時の課題

【第124-2-4】太陽光発電等の再生可能エネルギー大量導入時の課題

(出所)
再生可能エネルギーの全量買取に関するプロジェクトチーム資料(2010年3月)

こうした課題に対応するため、従前より関連の研究会等13が経済産業省内で開催されてきたところですが、一体的な検討を行い統一的な方向性を示すため、相互の連携を図ることを目的に、2009年11月、経済産業省のプロジェクトチーム(「次世代エネルギー・社会システム協議会」)を立ち上げ、各研究会での検討状況の整理や関係企業からのヒアリングを行っており、主な論点は以下のとおりです。

日本型スマートグリッドの構築に向けて

再生可能エネルギーが大量に導入された場合においても安定供給を確保できる強靱な電力ネットワークと地産地消モデルの相互補完ができる「日本型スマートグリッド」14の構築のため、2020年に向けた系統対策を進めるとともに、電力ネットワーク全体と地産地消の相互補完関係を見据え、技術的課題や社会コスト最小化の観点から検証を進めることが必要です。

【第124-2-5】日本版スマートグリッドの構築

【第124-2-5】日本版スマートグリッドの構築

【第124-2-6】次世代エネルギー・社会システムのイメージ

【第124-2-6】次世代エネルギー・社会システムのイメージ

次世代エネルギー・社会システム構築の必要性

2020年を見据えた電力系統対策、需要サイドのエネルギーマネジメントによる「地産地消」といった電気の有効利用に加え、廃熱の有効利用(エネルギーの「面的利用」)も含めることにより、更なるエネルギー利用効率の向上及びCO2の削減が可能になります。さらに、電気や熱の地域間での融通により一層の省エネ・CO2削減が可能となる余地があることから、こうしたシステムの構築に向けた検討が急務となっています。

次世代エネルギー・社会システム構築に向けた実証事業の必要性

こうしたシステムの構築に向け、需要家の行動パターンや天候など我々の生活を構成する様々な要素に関する実データの収集とそのデータを適切にマネージする情報通信システムを開発する必要があります。開発を進めるためには各プレーヤーが個々に取組を進めるのではなく、産業・住民・自治体が一体となって取組に参加し、実際の地域でこれらの実証を行い、民生・運輸部門のCO2削減を「見える化」することが必要です。

次世代エネルギー・社会システムの国際展開

これらの「エネルギーインフラづくり」「都市づくり」に必須の要素である省エネ・新エネ関連機器やIT機器等は国際競争力上、我が国が強みを持った分野であり、これら分野への世界的な需要が高まっていることから、海外需要の獲得のための国際展開は不可欠です。

グローバルに展開できる国際標準の策定の必要性

我が国の優れた関連技術を海外のインフラ市場に展開するためには技術的なルール化(=標準化)が必須です。こうした標準化で先行しているアメリカと日米共同実証プロジェクト等を通じて標準化のための共同開発を行うとともに、スマートグリッドに関連した国際標準化ロードマップを策定し、戦略的な標準化を進めることが必要です。

(3)規制改革

再生可能エネルギーの導入の促進を図るため、その政策手法として新たな規制及び規制緩和の実施が挙げられます。こうした視点は「新成長戦略(基本方針)(2009年12月30日閣議決定)」でも示されており、再生可能エネルギーやそれを支えるスマートグリッドの構築のための一つの手法として規制改革が挙げられています。

現在、行政刷新会議に規制・制度改革に関する分科会が設置され、規制・制度改革の重点分野が検討されており、環境・エネルギー分野(グリーンイノベーション)については、専門のワーキンググループにおいて、再生可能エネルギーの導入促進、スマート・コミュニティの構築に向けた対応、森林・林業の再生、住宅・建築分野での省エネルギー促進、リサイクルの促進に係る改革の方向性について議論が深められています。

(4)技術開発

従来の新エネルギー政策においても技術開発は市場拡大とともに、政策の基軸でした。例えば、古くは1974年に開始された「サンシャイン計画」以降の太陽電池関連技術開発は、世界トップクラスの生産量を誇る我が国の太陽光発電産業の発展の基盤となったと評価されます。この成果は、30年後の我が国における太陽光発電の成長に結びついたものであり、こうした観点から中長期的視点の下、20~30年後の成果を目指した技術開発プロジェクトを着実に推進することは極めて重要です。

現在、再生可能エネルギー源別に様々な研究開発、実証が進められており、例えば、非シリコン系太陽電池の開発、シリコンの皮薄化による薄型太陽電池の開発、洋上風力発電、セルロース系エタノールの開発等が取り組まれています。

【第124-2-7】新エネルギー等の導入拡大イメージ

【第124-2-7】新エネルギー等の導入拡大イメージ

【第124-2-8】現在進められている再生可能エネルギーの研究開発・実証研究の例

エネルギー源 利用形態 研究開発・実証が進められている主な技術
太陽光 太陽光発電 結晶Si太陽電池、薄膜Si太陽電池、化合物結晶系太陽電池、有機系材料太陽電池、太陽光発電システム技術(インバータ制御等)
太陽熱 太陽熱利用 太陽熱発電技術、太陽熱集熱システム
風力 風力発電 洋上風力発電
水力 水力発電 中小規模水力発電
地熱 地熱発電 地熱バイナリー発電、マイクロ地熱発電
大気熱、地中熱 温度差エネルギー利用 次世代ヒートポンプ
バイオマス バイオ燃料 セルロース系エタノール製造
バイオディーゼル ディーゼル用バイオ燃料製造
バイオガス 発酵効率向上、不純物除去
その他 海洋エネルギー発電 波力発電、潮汐・潮流発電、海洋温度差発電
9
正式名称は、「石油代替エネルギーの開発及び導入の促進に関する法律」。
10
正式名称は、「エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律」。
11
総合資源エネルギー調査会総合部会「エネルギー供給構造の高度化を目指して」(2009年2月)
12
正式名称は、「エネルギーの使用の合理化に関する法律」。
13
①次世代送配電ネットワーク研究会、②蓄電池システム産業戦略研究会、③低炭素社会におけるガス事業のあり方に関する研究会、④次世代エネルギーシステムに係る国際標準化に関する研究会、⑤ZEBの実現と展開に関する研究会、⑥次世代自動車戦略研究会、⑦スマートコミュニティ関連システムフォーラム
14
「スマートグリッド」とは、電力需給両面での変化に対応し、電力利用の効率化を実現するために、情報通信技術を活用して効率的に需給バランスをとり、生活の快適さと電力の安定供給を実現する電力送配電網のこと。