わかりやすい「エネルギー白書2009」の解説

解説2:原油価格変動による経済への影響

(1)消費国経済への影響

原油価格の高騰は消費国において、物価上昇、家計圧迫、企業収益悪化、投資減退などの影響をもたらしました。経済的に大きな打撃を受けた民衆の暴動が発生した国や、燃料補助金などの財政出動を実施した国もあります。一方、原油価格下落は、物価下落、家計負担軽減などプラスの影響をもたらしましたが、世界的な景気後退によってマクロ経済が悪化しており、こうした影響を実感しにくい状況にあります。

国名 原油価格高騰の影響
EU
  • 2008年5月~6月、漁民らによるストライキが活発化。EUは7月に20億ユーロの緊急漁業支援を決定。
米国
  • 2008年5月、中小トラック事業者らが燃料の値下げを求めて1週間にわたる全国規模の抗議行動。
中国
  • 2008年7月の生産者物価指数が前年同月比10%増と12年ぶりに高い水準に。
  • 電力価格が固定される中、石炭価格の上昇により発電量が減少。
韓国
  • 2008年6月、トラック運転手の労働組合が燃料価格の引き下げや運賃値上げを求めて全国でストライキ。物流が混乱。
ベトナム
  • 物価が急上昇。2008年6月の消費者物価は前年同月比26%増。
インドネシア
  • 2008年5月、石油燃料価格の値上げに対し、ジャカルタ等で抗議デモが発生。

(2)我が国経済への影響

原油価格の高騰を受けて、我が国が輸入する原油価格も上昇しました。日本の原油輸入量と輸入額の推移を見ると、第2次石油ショック以降、省エネルギーや代替エネルギー導入等が進展したことで石油依存度は低下し、輸入総額に占める原油輸入額の割合は15%前後で安定的に推移してきました。しかし、原油価格の上昇により輸入額が急増したことで2005年以降は20%超の水準で推移しました。2007年度の輸入総額に占める割合は約23%まで上昇し、2000年度と比較すると約9兆円の増加となっています。

2008年について月別に見ると、我が国へ到着した原油価格は、8月に9万円/KLを越えるまで上昇しましたが、その後急落し、輸入額も減少しています。月別の原油輸入額は、ピークになった2008年8月の約1.8兆円から2009年2月には約0.5兆円まで減少しています。

(3)企業収益への影響

次に、原油価格の変動が我が国の企業収益に与えた影響について分析します。

過去5年間の日本企業の前年同期比の収益増減を見ると、原油価格の上昇局面では原価要因による収益悪化、原油価格の下落局面では原価要因による収益改善の傾向が見られます。原油価格が100ドルを突破した2008年には、原価要因による収益悪化傾向が顕著に表れ、原油価格高騰が影響を及ぼしたものと考えられます。

(4)業種毎の経営安定化策

原油等のエネルギー価格が大きく変動する中で、各企業等では経営安定化に向けて高じた対応を講じましたが、多くの業種で収益悪化等の問題は回避できませんでした。

国名 影響 対応
石油精製
  • 石油製品の価格高騰が需要減少の一因
  • 原油調達コストを製品価格に反映するタイムラグ等のために収益が悪化
    (下落局面では先安感から買い控え)
  • 出能力の強化
  • 需要減少に対応した減産
電力・ガス
  • 原燃料価格を料金に反映するタイムラグのために収益が悪化
  • 原燃料費調整制度の見直し
自動車
  • 燃料価格高騰が販売減の一因
  • 低燃費車指向の高まり
  • 低燃費車、次世代型自動車の開発に注力
運輸(陸運)
  • 軽油等の値上がりにより収益悪化
  • 荷主に対する運賃値上げ交渉
  • サーチャージ制度の導入
化学
  • 価格転嫁が進まず、収益を圧迫
    (下落後は顧客から値下げ要求が強まっている)
  • 価格決定方式の変更を検討
製紙
  • 価格転嫁が進まず、収益を圧迫
  • 重油使用量を削減する計画の推進
漁業
  • 燃料の高騰による経営難
  • 200867月の一斉休漁
  • 近距離漁場への変更
  • 経済スピードでの航行
  • 集魚灯の方式変更