第3節 原油価格高騰への対応策                                     

 ここでは、これまでの原油価格高騰の要因と影響に関する議論を踏まえ、今後の対応策の方向性についていくつかのポイントを簡単に提示します。その中では、短期的な対応と中長期的な対応の二つに大きく分けることができます。

 

1需給ファンダメンタルズへの対応                             

1エネルギー需給構造の転換、消費国間の連携

 中長期的な対応策としては、国内的な対応と国際的な対応とに分けることができます。

国内的な対応として重要なことは、原油価格高騰に対してもより抵抗力を持つエネルギー需給構造を構築するということです。この観点から、需要面の対策として省エネルギーの一層の推進が必要です。省エネ効果の高い設備導入支援など即効性のある対策も含め講じていくことが重要です。また、供給面の対策として、新エネルギーや原子力など石油代替エネルギーの一層の開発・導入を推進していくことが必要です。太陽光発電、風力発電、バイオマスエネルギーといった新エネルギーについては、先進的な導入事業や技術開発への支援などの対策が有効です。原子力については、安全確保の徹底を前提としながら、原子力エネルギーに対する国民の信頼回復を図り、電力自由化の環境下にありながらも必要な投資を適切なタイミングで行えるような環境を作っていく必要があります。天然ガスについても、石油同様、資源と消費の地理的な偏在が拡大し、その取引形態もよりグローバル化していくことが考えられ、そのような情勢の変化に伴う調達戦略を構築していく必要があります。低コストでの生産が可能であり、世界に豊富な埋蔵が存在する石炭についても、重要なエネルギー源として、炭素回収・隔離技術や発電部門における石炭ガス化複合発電などの技術開発を通じたクリーン利用を促進することが重要です。

 次に国際的な対策としては、まず我が国としては海外の主要エネルギー消費国や産油国との連携を深めていくことが重要です。特に、今後高いエネルギー需要の伸び率を維持していくと考えられるアジア消費国との間では、省エネルギー・新エネルギー分野や石炭・原子力分野、緊急時対策として石油備蓄制度の整備などの分野で協力活動を進めていくことが重要です。このような協力活動を通して、国際エネルギー需給の緩和や有事の際のパニック行動を抑制しやすくなり、究極的には我が国とっても大きなメリットをもたらすことが考えられるからです。特に、上記のような分野においては、1970年代の石油ショック以降、我が国は十分な経験やノウハウが蓄積されています。そのような知見を他の消費国と共有することを通して、国際的なエネルギー協力活動における我が国のリーダーシップを発揮していくことが可能となります。

また、需要の価格弾力性を減退させる効果をもつ新興国におけるエネルギー補助金制度の見直し等市場規制改革なども重要です。

 

2供給源の多様化、供給サイドの投資不足の解消

 我が国における供給源の多様化を図るため、我が国の技術力、産業力などを活かした戦略的・総合的な資源外交を展開するとともに、資源国との相互依存関係を強化していくことが必要です。また、供給サイドの投資不足を解消するために、貿易保険の活用やJBICとの連携を通じた上流開発投資を促進していくことが重要です。

 産油国との間においては、将来の需要の伸びに見合った形での着実な開発・生産投資と十分な余剰生産能力の確保、需要に見合う機動的な生産の増大等を働きかけていくことが最も重要です。その中では、消費国の需要動向に関する情報の整備とその共有を介した関係強化を図ることが大きな役割を果たすことになると考えられます。これは、産油国にとっての将来の需要動向に関する不確実性を可能な限り排除することを通して、産油国側も増産投資に向けた決断を行いやすくなるからです。これまで我が国が培ってきた産油国との良好な関係に基づいた二国間外交チャンネルやIEAIEFInternational Energy Forum)などの多国間枠組みを通して、このような働きかけを継続していくことが重要です。

 さらには、原油以外のエネルギー源として、オイルサンド、GTL、メタンハイドレード等の開発促進のため、技術開発を推進していくことも重要です。

 

【第113-2-1】 原油価格高騰に関する需給ファンダメンタルズへの対応策

 

2.プレミアムへの対応策                                   

1供給国における不安要因の改善

 石油需給の逼迫状況や産油国における地政学的リスク等が投資・投機の材料視され、原油価格市場で過敏に反応していることを踏まえ、産油国において、国内・国際紛争の抑制・安定化、供給方針に関する透明性の向上等が図られることが重要です。

 

2投資・投機マネーの流入への対応

12.に示したとおり、現在の国際原油市場においては金融的な要因がますます大きな影響を及ぼすようになってきたといわれていますが、現時点ではこの金融的な要因がもたらす影響について必ずしも十分な情報・知見が蓄積されているとはいえません。このため、このような金融的な要因が本当に現在の高価格の要因となっているのかどうかも含めて、慎重な検証・分析を行う必要があり、そのためにはその金融的な要因に関する基礎的な情報を収集する必要があります。

このような問題意識から、我が国の提案により、IEAにおいて、原油価格形成の金融的側面について実態解明を進めるための調査が開始されました。本年317日には、IEAが原油価格形成に関する専門家会合を開催し、産油国・消費国のエネルギー専門家、金融・先物市場の専門家及び規制当局等が一堂に会し、活発な議論が行われました。

この中で、先物取引に関するデータ開示については、透明性の向上と分析材料を提供するという点でメリットがあり、価格形成メカニズムの解明のためにも一層のデータ開示が重要との考えが大勢を占めました。他方において、データの収集・開示にはコストも伴うことから、過度な規制や報告義務は、先物市場から相対取引等への逃避を促進するとの指摘もありました。IEAとしては、今後も分析を行い、レポートをまとめることとしています。

 このような金融的要因そのものに焦点を当てた対応策を進める一方で、需給ファンダメンタルズに関する情報整備という観点からの取組も等しく重要となります。各国の石油需要や供給の動向についての正確且つタイムリーな需給に関する情報が市場に提供されることによって、根拠のない投機行為やパニック行動などをより抑制していくことができるようになると考えられるからです。この分野においては、既にIEFや国連統計局、APECIEAOPECなどが参画したJODIJoint Oil Data Initiative)という活動が進められており、今後もこの活動を積極的に支援していくことが重要です。

 現在の石油市場が国際的に統合されたものである以上、これらの取組は言うまでも無くわが国単独で進められるべきものではありません。効果的な対応策を展開していくためにも、各国のエネルギー政策担当機関やIEAOPECなどエネルギー関連の国際機関のみならず、各国の金融政策担当機関やG7IMFなどといった金融の分野における国際的な枠組みなども積極的に活用しながら取り組みを進めていく必要があります。

 

【第113-2-2】 原油価格高騰に関するプレミアムへの対応策

 

台形: COLUMN国際会議を通じたメッセージの発信

本年4月にローマで開催された11回国際エネルギーフォーラム(IEFにおいては、世界の主要産油国・消費国(74カ国)及び国際機関(13機関)の代表が原油情勢等を中心に議論しました。

甘利経済産業大臣は、基調スピーチにおいて、「現在の原油価格は異常な水準であり、これは、産油国、消費国双方にとって望ましいものではない。とりわけ、資源に乏しい途上国の状況は切実である。石油市場の安定のため、産油国が需要動向に機敏に反応していつでも増産するなど、必要なメッセージを市場に発することや、原油先物市場や投機資金の透明性を高めて、投機資金の行動に冷静さを促すことが重要である」とのメッセージを発信しました。さらに、同大臣は、日本のイニシアティブにより、@投資拡大のための情報提供、Aエネルギー統計整備、B産油国等との省エネ推進等を行っていくことを表明しました。

 

開催国・共同開催国による議長総括(骨子)は以下のとおりです。

【原油価格

ü         参加閣僚は現行の油価の水準に懸念を表明。

ü         途上国を含め、世界経済の成長を確保するという観点から、原油価格は、産油国・消費国双方にとって、受け入れ可能なレベルでなければならない。

ü         原油価格の変動の激しさは、将来の投資にネガティブな影響。

ü         石油データの整備は、市場の透明性向上、価格変動の減少を導き、ひいては投機の余地を抑制。

省エネルギー

ü         エネルギー効率の向上は、消費国のみならず産油国にとっても有益。行動計画の作成、セクター別アプローチの採用などによる効果的な推進が重要。

【投資環境整備

ü         エネルギー投資に悪影響を及ぼす不確実性や不当な政治介入を遮断するためには、エネルギー市場の透明性、より安定的な法規制の枠組み、より予測可能なエネルギー政策が必要。

さらに、甘利経済産業大臣と産油国との二国間会談では、サウジアラビア・ナイミ石油鉱物資源大臣より、「今後も供給ショートは決してさせずいつでも増産できる用意がある。また、そのための必要な投資(5年間で約910億ドル)を行っていく」という力強いメッセージがありました。イラク・シャハリスターニ大臣より、「市場の期待に応えるべく増産をしっかり行っていく」との発言がありました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 第1章エネルギーを巡る課題と対応


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