第2章第2節 3.石炭 (1)資源の分布 石炭の可採埋蔵量は約9,091億トンで、このうち、瀝青炭と無煙炭が約4,788億トン、亜瀝青炭と褐炭で約4,303億トンです(石炭の分類については下記コラム参照)。 石炭の持つメリットとしては、石油、天然ガスに比べ地域的な偏りが少なく、世界に広く賦存していることを挙げることができます。更に我が国にとっては中国、オーストラリア、インドネシアなど環太平洋地域において石炭が多量に産出されることも大きなメリットになっています。また、可採年数(=可採埋蔵量/年産量)が155年(BP統計2006年版)と石油などのエネルギーより長いのも特徴です(第222-3-1)。 ![]() Excel形式のファイルはこちら
(2)石炭生産の動向 2005年の世界の石炭生産量(褐炭を含む)は58億7,400万トンと見込まれています(対前年比8.3%増)。このうち、褐炭を除いた原料炭、一般炭及び無煙炭の生産量は、49億7,000万トン(対前年比9.6%増)と全体の85%を占めています。 2005年の石炭生産量を国別シェアで見ると、中国(37.9%)とアメリカ(17.5%)の2カ国で世界の生産量の半数以上となる55.4%を占めています。更に、インド、オーストラリア、ロシア、南アフリカまでの上位6カ国の生産量を合計するとそのシェアは78%を超えます。また、2005年において石炭生産量が1億トンを超えると見込まれる上位9カ国のうち、2001年と2005年を比較して石炭生産量が減少しているのはポーランドとドイツの2カ国で、残りの7カ国では増加しています。ポーランド、ドイツともに生産量の減少は、内需が減少傾向にあるのに加え、輸入が増加傾向にあるためです(ポーランドは輸出も減少しています)(第222-3-2)。 ![]() Excel形式のファイルはこちら 石炭生産量が世界第1位の中国は1996年をピークに減産傾向にありましたが、これは中国政府が石炭需給バランスの確保と石炭価格の安定を目的に、小規模炭鉱を中心に違法な採掘を行っている炭鉱や赤字の炭鉱を閉山したためです。しかし、2001年以降、国内需要の急拡大に応えるため、大幅に生産が伸びています。第2位のアメリカは、石炭を石油に次ぐ重要なエネルギーと位置付けてきましたが、近年の天然ガス価格の急騰により石炭への注目度は更に高まっています。他方、旧東ドイツ地域では、国産褐炭に一次エネルギーの70%を依存していましたが、1990年の両ドイツ統合後、効率が悪く環境負荷の高い褐炭の生産量は減少しました。 近年、中国とインドネシアが石炭供給国として台頭し、我が国を始め、韓国、台湾などアジア域内各国への石炭輸出を拡大し、石炭の供給国としての存在感を増しています。インドネシアでは、国営炭鉱と採掘権を持つ中小炭鉱により、小規模な生産が行われていましたが、1980年代初めに生産分与方式が導入されたことにより炭鉱開発に外国資本が参入し、1990年代に入り生産と輸出が拡大しています。 (3)石炭需要の動向 2005年の世界の石炭消費量(褐炭を含む)は59億200万トンと見込まれており、そのうち、褐炭を除いた原料炭、一般炭及び無煙炭の消費量は49億9,000万トン(対前年比7.1%増)、褐炭の消費量は9億1,200万トン(同0.5%増)となります。 2005年の石炭消費の国別シェアは、中国(36.9%)、アメリカ(17.3%)の2カ国で世界の石炭消費量の半数以上(54.2%)を占めています。中国は、1996年をピークに石炭消費量は減少していましたが、2001年を底に再び増加に転じ、2005年の消費量は21億7,900万トンで、対前年比で15.3%も増加しています。我が国の2005年の石炭消費量は、1億7,800万トンで、インド、ドイツ、ロシアに続き世界第6位(褐炭を除くとインドに続き世界第4位)の地位にあります(第222-3-3)。 ![]() Excel形式のファイルはこちら (4)石炭貿易の動向 2005年の世界の石炭輸出量(褐炭を除く)は、7億7,100万トンと見込まれています。最大の輸出国であるオーストラリアは世界の輸出量の30.0%を占め、次いでインドネシアが14.0%、ロシアが9.8%と続き、以下、南アフリカ、中国、コロンビア、アメリカの順となっています。この上位7カ国で世界の石炭輸出量の85%以上を占めています。インドネシアの輸出量が順調に伸びているのに対して、中国では国内需要の急拡大により需給が逼迫したことからこれまでの輸出量を維持することができず、2003年には第2位(9,400万トン)であった輸出量が2004年には第3位(8,700万トン)、2005年には第5位(7,200万トン)にまで減少しています(第222-3-4)。 ![]() Excel形式のファイルはこちら 輸出量を一般炭、原料炭別に見ると、2005年の一般炭輸出量は5億6,600万トン、原料炭輸出量は2億600万トンと、一般炭が原料炭の約3倍の輸出量となっています。輸出国別では、インドネシアが一般炭の最大の輸出国となり、世界の一般炭輸出量の19.1%を占め、以下、オーストラリアが18.8%、中国が12.7%、南アフリカが11.6%、ロシアが11.2%、コロンビアが9.9%と続きます。一方、原料炭の最大の輸出国はオーストラリアで、世界の原料炭輸出量の60.7%を占め、以下、カナダの12.7%、アメリカの12.6%と続き、これら3カ国で全体の86%を占めています。 オーストラリアが多くの石炭を輸出している理由としては、高品位の石炭が豊富に賦存すること、石炭の生産地が積出港の近くにあること、鉄道や石炭ターミナルのインフラが他の輸出国と比較して整備されていること、石炭消費の伸びが著しいアジア市場に近いことなどが挙げられます。 一方、輸入国としては我が国が最大の輸入国であり、2005年には1億7,800万トン(石炭貿易量の全体の22.8%)の石炭輸入が見込まれています。我が国以外では、韓国7,700万トン(9.9%)、台湾6,100万トン(7.9%)などが主な輸入国ですが、以下、イギリス、ドイツ、インドと続きます(第222-3-5)。 ![]() Excel形式のファイルはこちら 近年、韓国、台湾などアジア諸国では電力需要の増加に伴い石炭火力発電所での石炭消費が増加し、日本、韓国、台湾の3カ国で3億1,600万トン(40.6%)を輸入しています。2005年には石炭需要の拡大が著しい中国の石炭輸入量が、初めて2,000万トン台を大きく上回り、2,500万トンを記録することが見込まれています。 一般炭、原料炭別に輸入国を見ると、双方とも我が国が最大の輸入国であると見込まれています。以下、一般炭では台湾、韓国、イギリス、ドイツ、アメリカと続き、原料炭では韓国、インド、ブラジル、中国、ドイツと続きます。 2005年の世界の主な石炭貿易フローを見ると、石炭が我が国を中心とするアジア地域とヨーロッパ地域へ流れており、石炭市場はアジア市場とヨーロッパ市場の2つに大きく分かれていることが分かります(第222-3-6)。 ![]() (5)石炭価格の推移 石炭取引における価格交渉では、いわゆるベンチマーク価格が、1980年代後半以降、世界的に参照価格として広く採用されてきました。これは最大の輸出国であるオーストラリアの石炭シッパー※2と最大の輸入国である我が国の鉄鋼会社や電力会社との協議により決定される年間協定価格です。ベンチマーク価格方式では、代表的銘柄についてFOB価格を決め、その他の銘柄のFOB価格はベンチマーク価格を基準に品位の変動幅にスライドして決めていました(なお、一般炭については、熱量以外の品質差は基本的に加味しない、いわゆる熱量等価方式でした)。 しかし、1996年度に入ると我が国の電力業界における規制緩和が一段と進んだため、電力事業者のコスト削減の一環として一般炭の競争入札が急速に展開されるようになりました。その結果、一般炭のベンチマーク価格取引のウェイトは減少傾向に向かい始め、中部電力とオーストラリア石炭会社4社で合意された1997年度価格が実質的に一般炭最後のベンチマーク価格となりました。1998年度以降、電力各社は各石炭シッパーと個別に交渉し、ベンチマーク価格に替わって独自の契約価格を設定するようになっています。一方、原料炭は1996年度の価格交渉から、従来のベンチマーク方式からシッパー別、銘柄別に価格決定が行われることになりました。 ※2: 石炭シッパー:石炭出荷主のこと。 ちなみに1995年度までは、強粘結炭※3についてはBHP社のグニエラ炭の価格がベンチマークとされ、他銘柄もグニエラ炭の価格に合わせる仕組みでした。更に、2001年度からの価格交渉では、ロシア炭、中国炭など長期契約が続いている一部を除き、強粘結炭の共同商談がなくなり、準強粘結炭や非微粘結炭※4と同様に鉄鋼各社が相対交渉するようになりました。 ※3:強粘結炭:強固なコークスを作る際に必要な石炭。 ※4:非微粘結炭:コークスに適した性質である軟化溶融や固化する性質の弱い石炭。 一般炭(日本向け長期契約ベース)FOB価格は、2003年夏以降の世界的な石炭需給逼迫を受け2003年末から石炭スポット価格が急騰し、その後も高止まりしたことから、2004年度、2005年度と急上昇しました。2004年度の価格(以下、石炭価格についてはUS$/トンをドルと表示する)は42.00ドル(6,700kcal/kgAD、前年度比15.25ドル高)、2005年度は53.00ドル(同、前年度比11.00ドル高)前後で決着しました。2006年度の価格交渉は、スポット価格が2005年秋から大きく変動する中で進められ、需要側と供給側の需給に対する見方が異なり、提示価格に大きな開きがあったことから交渉が難航、長期化しました。2006年7月に入り一部の電力とシッパーが52.50ドル(同、前年度比0. 50ドル安)で妥結したと報じられ、他の価格交渉もこの価格を基準に前年度並の価格で決着を見ています(第222-3-7)。 ![]() Excel形式のファイルはこちら 一方、原料炭価格も世界的な石炭需給の逼迫を受け2004年度、2005年度と急上昇しました。2004年度の原料炭価格は、強粘結炭(グニエラ炭)が57.20ドル(前年度比11.00ドル高)で、非微粘結炭(ハンターバレーブレンド炭)が40.80ドル(前年度比10.00ドル高)で決着しました。2005年度の強粘結炭(グニエラ炭)価格は2004年度の2倍を超える126.20 ドルで妥結し、非微粘結炭(ハンターバレーブレンド炭)価格も強粘結炭価格の上昇に引きずられて急騰し79.25ドルで妥結しました。2005年度において豪州やカナダなどでの増産により需給状況が改善されたことから、2006年度の原料炭価格は値を下げており、強粘結炭(グニエラ炭)の価格は前年度より11.20ドル安い115.00ドルとなっています。非微粘結炭は需給が急速に緩んだため、前年度より20〜25ドル安い53〜58ドルで決着しました。 電力用以外の一般炭の取引では、従来からベンチマーク価格を採用せずに、年度契約あるいは取引毎に価格を取り決めるスポット価格が一般的です。一般炭スポット価格は、市場原理に基づき決定され、ベンチマーク価格よりも先行する形で推移しています(第222-3-8)。 ![]() Excel形式のファイルはこちら 石炭の価格と他の化石エネルギーの価格を同一の発熱量(1,000kcal)当たりのCIF価格で比較すると、石炭の価格が原油、LNG、LPガスの価格よりも低廉かつ安定的に推移していることが分かります(第222-3-9)。 ![]() Excel形式のファイルはこちら 1980年代前半では石炭の価格優位性は非常に高いものでしたが、1986年度以降その価格差が縮小しました。しかし、1999年度以降再び価格差は増大し、石炭の優位性が増しています。 また、2003年以降、原油価格の上昇に合わせて他の化石エネルギーの価格も上昇していることがわかります。
|