第1部 エネルギーを巡る課題と対応


第2章第1節


6.原子力を巡る状況

(1)ウラン資源を巡る状況

 天然ウランについては、中国等の需要増加の見通し、解体核高濃縮ウランや民間在庫等のウラン二次供給の減少等からウラン価格が急騰しています。中長期的に供給不足が生じる懸念もあり、その獲得競争が国際的に激化しています。


〔1〕世界の天然ウラン市場の現状

 世界のウラン鉱山は、Cameco(カナダ)、AREVA NC(旧COGEMA)(フランス)、ERA(オーストラリア)等の主要8 社で、世界の天然ウラン生産の約8 割を担い、我が国企業が保有する権益は極めて限定的です。 また、現在、世界のウランは、消費量の6割程度しか鉱山開発による供給が行われておらず、残りを二次供給により補っているのが現状です。今後、中国、インド等の原子力発電の推進による世界的なウラン需要の増加等に加えて、解体核ウランの民生供給に係る米露間契約の終了(2013年)等によるウラン二次供給減少から、10年後にも需給逼迫が懸念され、世界的なウラン獲得競争は更に激化していきます(第121-6-1)。


このような状況を受け、近年、ウラン価格が急騰しています。その一方で、需要の拡大や価格の上昇による投資環境の改善を背景に、世界的な天然ウラン増産に向けた動きも見られます(第2部第2章第2節4.原子力を参照)。


〔2〕我が国のウラン資源を巡る状況

 我が国では自主資源開発のため、1954年からウランの国内探査を行い、通商産業省工業技術院地質調査所が岡山県の人形峠や岐阜県の東濃地域でウラン鉱床を発見し、その後の探鉱は、原子力公社、動力炉・核燃料開発事業団(動燃:現日本原子力研究開発機構)へと受け継がれてきました。1998年までに84トンのウランを生産しましたが、以後は生産を中止し、現在は、全量を輸入に頼っています。海外のウラン鉱山に関する利権確保の方法としては、既にウラン資源の賦存が確認されている探鉱済鉱区に生産開発段階から参画して利権を確保する方法と探鉱段階からの権益参画の大きく分けて2 つが存在します。我が国では、前者について民間による開発参加が旧金属鉱業事業団(MMAJ)による支援の下で進められ、後者については旧動燃による調査探鉱開発により行われてきましたが、旧動燃は動燃改革の流れを受け2000 年に調査探鉱開発から撤退しました。
 現在、海外ウラン資源開発?や日豪ウラン資源開発?などの民間事業者が主体となって海外ウラン鉱山開発に権益参加をして、開発輸入を行っています。また例えば、我が国の電気事業者は、カナダ、オーストラリアなどから主として長期購入契約により天然ウランを確保している他、東京電力及び出光興産によるカナダのシガーレイク鉱山、関西電力及び住友商事によるカザフスタンのウェスト・ムインクドュック鉱山、海外資源ウラン開発によるニジェールのアクータ鉱山など、我が国企業による自主開発を進めています。


〔3〕ウラン資源確保戦略の展開

 需給の逼迫が懸念される中、安定的にウラン資源を確保するためには、今後とも供給国の多様化に努めるとともに、ウラン鉱山開発・探鉱プロジェクトへの参画など、自主開発輸入の比率を高めるためにも資源外交の強化、石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC:MMAJと石油公団が統合・改組された組織)による探鉱事業へのリスクマネー供給、日本貿易保険や国際協力銀行等政策金融による支援などが重要です。
 特に、我が国のウラン輸入先は、豪州、カナダで6割を占める状況にあり、供給源多様化の観点から中央アジアからの供給ルートを開拓することが重要です(第121-6-2)。

カザフスタンのウラン資源埋蔵量は世界第2位(全世界の約5分の1)にも拘わらず、我が国のカザフスタンからのウラン輸入量は1%に満たないため、カザフスタンからのウラン供給拡大の潜在性は大きなものです。他方、カザフスタンは、ウラン鉱山開発に加えて、国内の原子燃料加工工場の活用等、より高度な関係を築ける国との協力関係拡大を志向しています。このため、2006年8月に小泉総理(当時)がカザフスタンを訪問した際に、原子力分野における戦略的パートナーとなることに両首脳間で一致し、ウラン鉱山共同開発や核燃料加工役務分野での協力、カザフスタンにおける軽水炉導入への協力、等を内容とする「原子力の平和的利用の分野における協力の促進に関する覚書」に署名しました。さらに、2007年4月に甘利経済産業大臣が訪問した際には、原子力分野における広範で戦略的な協力関係の構築等を図ることに一致するとともに、企業トップを含む100名以上の民間人が同行し、20を超える原子力分野の協力案件に関係者間で合意しました。
 ウラン資源埋蔵量世界第10位であるウズベキスタンについても、2006年8月に小泉総理(当時)が訪問し、ウラン取引・開発が有望な分野となり得ること等について首脳間で一致しました。また、2007年4月に甘利経済産業大臣が訪問した際には、ウランを始めとするエネルギー資源協力等の強化に合意しました。
 さらには、ウラン資源埋蔵量世界第1位である豪州についても、同年10月に日豪エネルギー高級事務レベル会合を開催し、ウラン資源開発を通じた関係強化の認識を共有しました (第121-6-3)。



(2)原子力プラントメーカーの変遷

〔1〕世界の現状

 1979年の米国スリーマイル島事故、1986年の旧ソ連チェルノブイリの原子力発電所事故を契機として、世界的に原子力に長い期間、逆風が吹く厳しい時代となり、世界的に原子力発電所の新規建設は低迷していました。しかしながら、近年の地球温暖化対策やエネルギー安定供給等の観点から、新増設が停滞していた米国やフィンランド等でも原子力発電所欧米各国での原子力発電所の新増設に向けた動きが見られ、英国政府も原子力発電所の新規建設(更新)に向けた方針へと転換しています。また、経済発展により電力需要が急増している中国やインドでは、原子力発電所建設計画の着実な進展が見られ、世界の原子力発電所の新規建設需要は、今後拡大の方向にあるといえます。 一方で、欧米の原子力プラントメーカーにおいては、長期間にわたった需要低迷期において、総合産業である原子力産業として必要な企業規模を維持していくために、メーカー間で国境を越えた再編・集約化が進行しました。(第121-6-4)。


この結果、海外の原子力産業は寡占化してきています。
 こうした状況の中で、米国のゼネラル・エレクトリック(GE)、ウェスチングハウス(WH)及び仏国のアレバ(AREVA)は、それぞれESBWR(簡易型沸騰水型原子炉)、AP1000(改良型静的安全加圧水型原子炉)、EPR(欧州加圧水型原子炉)といった新型軽水炉を開発中であり、これを武器として世界中で売り込み合戦を展開しています。


〔2〕我が国原子力プラントメーカーのこれまでの状況

 1980年代以降の長い原子力の冬の時代においても、我が国では原子力の利用・開発を持続し、少ないながらも新規建設が継続されてきたため、我が国のメーカーは設計、製造、建設技術面で優位性を有しており、また、これらを支えるコア部品では強い裾野産業を有しています。このため、米国等のメーカーにおける新型炉開発においても、我が国のメーカーは重要なパートナーとなっています。 我が国メーカーが「世界市場で通用する規模と競争力を持つよう体質を強化すること」(「原子力政策大綱」)が政策上の目標とされています。
 一方で長引く経済成長の鈍化やエネルギー間競争の激化、省エネルギー対策、人口減少等による電力需要の伸び悩みにより、今後20〜30年にわたり、国内における原子力発電所の新規建設は低迷すると予想されていますが(第121-6-5)、2030年前後からの原子力発電所の大規模な代替建設需要が発生する見込みです。この大規模な代替建設が円滑に実現されるよう、原子力分野の技術・産業・人材の厚みを維持・発展する必要があります。このため、2006年度から「第3次軽水炉改良標準化計画」以来約20年ぶりとなる国家プロジェクトとしての次世代軽水炉の開発に、官民一体で取組むこととしており、本格開発段階に向けたフィージビリティ調査を進めています。加えて、米国をはじめとする欧米各国や中国等のアジア各国における原子力発電の需要増加により、原子力発電所の建設計画数が増加してきているため(第121-6-6)、我が国原子力プラントメーカーの国際展開の推進も図ってきています。





 第2章エネルギーを巡る環境変化と各国の対応


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