第1部 エネルギーを巡る課題と対応 

4.ガス体エネルギー

(1)エネルギー政策上の位置付け
 天然ガスは、中東以外のアジア、オーストラリア等の地域にも広く分散して賦存するとともに、他の化石燃料に比べ相対的に環境負荷が少ないクリーンなエネルギーであり、安定供給の確保及び環境保全の両面から重要なエネルギーです(第133-4-1)。このため、石油、石炭、原子力等の他のエネルギー源とのバランスを踏まえつつ、天然ガスシフトの加速化を推進しています。

【第133-4-1】二酸化炭素排出量等の比較

【第133-4-1】二酸化炭素排出量等の比較
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 また、LPガスも、PM(粒子状物質)の排出がない等、環境負荷が相対的に小さく、天然ガスとともにクリーンなエネルギーです。また、2004年に発生した新潟県中越地震のような災害時におけるエネルギーの安定供給の確保に資する等、国民生活に密着した分散型エネルギーの一つです。このため、LPガスを都市ガスとともにガス体エネルギーとして一体的にとらえるとともに、事業者の競争環境の整備等を通じ、より一層のガス利用者の利益の増進を図ることとしています。

(2)最近の取組
〔1〕メタンハイドレートの開発
 新たな国産エネルギー資源として期待されるメタンハイドレートについては、国が主体となって中長期的な視点で、着実に技術開発や基礎試錐等を拡充していくことが重要です(第133-4-2)。

【第133-4-2】日本近海のメタンハイドレート分布

【第133-4-2】日本近海のメタンハイドレート分布

 このため、現在、2016年度までに商業的産出のための技術を整備することを目標に、資源量評価に関する研究、生産手法開発に関する研究、環境影響評価に関する研究等を実施しています。

〔2〕サハリン・プロジェクト
 サハリンは、大規模な石油・天然ガスの埋蔵量が確認されており、我が国に地理的に極めて近く、供給源の多角化にも有効です。そのため、国はプロジェクトに参加する我が国の企業に対する支援等を行ってきました。現在、我が国企業の参画するサハリンI、サハリンIIという2つのプロジェクトが既に開発段階に移行しており、生産される石油・天然ガスが経済性のある形で我が国に供給されることになれば、エネルギー安定供給上、大きな意義があります(プロジェクトの詳細は、第1部第3章第4節1.に記載)。

COLUMN
メタンハイドレートとは

 メタンハイドレートとは、低温・高圧の条件下で、水分子の結晶構造の中にメタン分子が取り込まれた氷状の固体物質(理論化学式:CH4・5.75 H2O)のことで、1m3のメタンハイドレート(メタンハイドレート結晶構造の空間に完全に隙間なくメタンが取り込まれている場合)を分解すると、水:0.8m3とメタンガス:172m3(大気圧下、0度C)と、非常に大量のメタンガス(天然ガスの主成分)を得ることができます(第133-4-3)。

【第133-4-3】メタンハイドレート結晶構造の一部を構成する5角12面体

【第133-4-3】メタンハイドレート結晶構造の一部を構成する5角12面体

 自然界におけるメタンハイドレートは、陸域では高緯度地域の凍土下部に、海域では水深の深い海域の海底下(海底下からは数百mの深さで、石油・天然ガスよりは浅部)に賦存しており、世界中に賦存していると推測されています。また、我が国の周辺海域にも、我が国の天然ガス消費量の約100年分に相当する量が賦存しているとの試算もあります。
 資源エネルギー庁では、1995年度からメタンハイドレートに関する調査研究を開始し、2000年1月に静岡県御前崎沖「南海トラフ」にて試錐を行い、海洋では世界で初めて砂層中のメタンハイドレートを確認しました(第133-4-4)。

【第133-4-4】南海トラフで取り出されたメタンハイドレート試料

【第133-4-4】南海トラフで取り出されたメタンハイドレート試料

 メタンハイドレート(天然ガス)は、他の化石燃料に比べて、環境負荷が少ないクリーン・エネルギーであるとともに、我が国周辺海域にも相当量が賦存しているとの試算もあり、将来の国産エネルギーとして大きく期待されています。しかしながら、メタンハイドレートは、地中に固体で存在し、井戸を掘っても自噴しないため、新たな採取技術の開発が必要であること、我が国周辺海域にどのくらい存在しているか調査が不十分であること等から、エネルギー資源として活用するには中長期的な取組が必要です。
 このため、資源エネルギー庁では、産学官の英知を結集し、アメリカ、カナダ等とも協力しつつ、中長期視点でメタンハイドレート開発のための取組を推進しています。

〔3〕GTL、DMEの開発
 GTL(ガス・トゥ・リキッドの略)は、天然ガス等を原料として、単品ではなく軽油・灯油・ナフサ等の連産品として製造されます。常温では液体の合成炭化水素です。特徴としては、物性が軽油と類似してセタン価が高く、既存の軽油インフラでの利用可能性があるため、軽油代替のディーゼル自動車用燃料として使用可能なこと、また、硫黄分や芳香族分を含まないため燃焼させても硫黄酸化物(SOx)の発生がなく窒素酸化物(NOx)や粒子状物質(PM)の排出量も低減できること等が挙げられます(第133-4-5)。

【第133-4-5】GTLの合成方法

【第133-4-5】GTLの合成方法

 一方、DME(ジ・メチル・エーテルの略)は天然ガス、石炭等を原料として製造されるエーテルであり、常温で気体であるが、容易に(6気圧以上または−25度度C以下)液化するものです。現在は主としてスプレー噴射剤として使用されています。特徴としては、物性がLPガスと類似しており既存のLPガスインフラでの利用可能性があるため、発電用、工業用、家庭用のLPガス代替としての用途が想定されていること、セタン価が高いためディーゼル用燃料としての可能性も有していること、また、硫黄分を含まないため燃焼させても硫黄酸化物(SOx)や粒子状物質(PM)が発生せず、窒素酸化物(NOx)の発生も低く抑えられること、等が挙げられます(第133-4-6)。

【第133-4-6】DMEの合成方法

【第133-4-6】DMEの合成方法

 天然ガスは気体のため液体燃料に比べて輸送・貯蔵が難しく、現在の天然ガス開発プロジェクトは、LNG化かパイプライン輸送に適合するプロジェクトのみに限られています。こうした中、天然ガスから液体燃料を製造する新たな利用技術であるGTLやDMEは、これまで開発の対象とならなかった未開発ガス田に対する新たな開発手法として、我が国のエネルギーの安定供給に資するものと期待されています(第133-4-7)。

【第133-4-7】世界の主要なGTLプロジェクト(単位:千B/D)

【第133-4-7】世界の主要なGTLプロジェクト(単位:千B/D)
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〔4〕産ガス国との関係強化
 石油・天然ガス分野のみならず幅広い分野において、産油・産ガス国との共同技術研究、研修生の受入れ・専門家の派遣等の人的交流事業、産油・産ガス国への直接投資促進事業等の施策を、引き続き積極的に実施しています。

〔5〕LPガス
 我が国のLPガス需要の約77%が海外からの輸入で賄われており、さらにそのうち約84%を中東に依存していることから、LPガスの安定供給のためのLPガス供給(輸入)ソースの多角化を図るためにこれまで様々な調査を実施してきています。
 具体的には、世界の新しいLPガスソースの開発等供給多様化調査として、オーストラリア、ナイジェリア、アルジェリア、北海地域(イギリス、ノルウェー)等において、我が国へのLPガス輸出可能性等を調査し、安定供給に資する方策の検討を行ってきました。
 これらの調査等を通じて、近年これらの地域から我が国へ供給されるLPガスが増加(1995年度:約47万トン(全輸入量に占めるシェア約3%)→2003年度:約220万トン(同約16%))していますが、引き続き今後もより一層の供給多様化・安定供給を図っていくことが重要です。
 LPガスは我が国における国民生活を支える重要なエネルギーである一方、その供給基盤は脆弱であることから、安定供給の確保に資することを目的として、LPガス関係諸国との協調と対話の促進を図るため、毎年LPガス国際セミナーを開催しています。

 第3節 エネルギー源の多様化

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