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11.08.12
茨城県神栖市。鹿島港南海浜地区の護岸に7基の風車が立っています。青い海を背景に、白い風車が一列に並ぶその眺めは壮観です。しかし景色に近づいて行くとさらに目を見張ることになります。風車は護岸の先、海上に立っていました。
ウィンド・パワーかみす洋上風力発電所は、2010年6月に運転を始めた日本初の本格的洋上風力発電所。ダウンウィンド型という、プロペラを風下側につけた方式で、風車は海を背に陸に向かってプロペラを回しています。この風車1基の発電出力は約2千キロワット。総出力1万4千キロワット。全7基で約7千世帯の年間使用電力量をまかなえるそうです。
海面からの高さ60mという風車を見上げながら、この発電所を設置した株式会社ウィンド・パワーいばらきの小松ア衛社長にお話をうかがいました。
「国内には他にも洋上風力発電はありますが、ここが本格的洋上風力発電所と言っていただけるのは、国内で初めて外洋に設置されたことと、海外の洋上風力では一般的な風車タワーと一体型の*モノパイル基礎であること、そして国産の風車であるからだと考えています」。
これまで国内に設置された風車の約8割はヨーロッパ製です。台風や落雷が少なく風も安定したヨーロッパと、台風や落雷も津波もある日本。それだけに日本の気象や自然災害に対応した日本製の風車は待望されていました。
東日本大震災では、震度6の巨大地震と、4〜5メートルの津波被害を受けました。しかし「この地域の地盤が強固であったということでしょうね。津波がきても、漂着ゴミは多かったですが、風車への被害はほとんどありませんでした」。発電設備と構造体の安全確認ののち、3月14日の夜7時には再稼働させることができたそうです。まさに日本製の風車が強みを見せた結果と言えそうです。
*モノパイル基礎:海底面に大口径の鋼管杭を基礎地盤まで1本打込んで基礎とする設置方式
株式会社ウィンド・パワーいばらきの小松崎衛社長
7基の脇にあらたに8基設置する第二計画も2012年初頭から始まるそうです。「さらに、護岸から沖合500mから4000mの範囲に、さらに大きな風車を100基程度設置する計画があります。この新エネ・メガサイト(仮)建設が実現すれば、総出力は50万〜100万キロワット。原子力発電や火力発電と同規模のものになるため、再生可能エネルギーを導入し推進する上で大きな一歩になると思います。」現在はその建設のため、海域の海洋調査がすすめられています。
洋上風力発電機の設置方法は「着床式」と「浮体式」の2つあります。日本の海は浅瀬が少ないため、沖合での風力発電機の設置には、海底に直接埋め込む「着床式」は困難で、海に浮かして設置する「浮体式」になるかと考えられます。 しかし、神栖市南浜周辺の沖合を実際に計測してみると、沖合5000mまでの平均水深は約15mほど。「調査してみると日本にも実際には遠浅の地域は多くあるんですね。洋上風力発電が発達しているヨーロッパよりも、この海域は水深が浅くて建てやすいんです」。そのため、計画では100基すべて「着床式」で建設予定。これでコストもかなり抑えられます。
洋上風力発電は海上に設置するため、陸上の風力発電で懸念される騒音や振動の問題は大幅に軽減されています。風の音と波の音が、風車の音をかきけすのだそうです。この地区ではテレビ電波や無線への影響も出ていないとのこと。
「日本の狭い国土では内陸部に風力発電機を設置するには無理も限りもあります。でも島国である日本は海岸線が長い。ならばそこを利用していこう、というのが私たちの発想なのです」。
風車の間近にいても、確かに風車自体の音は聞こえません。風が強くなればなるほど、風車の音はかき消されていきます。
「洋上風力発電は、安全であり、環境によく、国内で生産し調達可能なエネルギーのため電力自給率が上がる。そして国内メーカーの生産で雇用も促進できます。部品点数が多いので、関連産業への波及効果を高められるのです。最初から100%の国産はむずかしいかもしれませんが、現在も国内メーカーによる大きな風力発電機の開発や部材メーカーへの技術指導がすすんでいます」。
再生エネルギーが電力自給率ばかりか雇用を増やし基幹産業へと発展する未来も見えてきます。
「今までの化石燃料による発電では、需要が増えると燃料の消費量が増えるため全体的な価格が高くなります。しかし風力発電のように、燃料を必要としない再生可能エネルギーでは普及すればするほどコストダウンができます。実際に太陽光発電ではかなりのコストダウンがはかられたように」。
茨城の海から、日本のエネルギー事業を変える風が吹きはじめているようです。