ISO50001(エネルギーマネジメントシステム)


導入活用のポイント

 ISO50001は適切な"Plan-Do-Check-Act"(PDCA)プロセスの導入による着実なエネルギー管理を行うことができ、国内外でビジネスチャンスを広げることも可能なツールですが、規格の特徴とも言える重要なポイントをよく理解しておくと節電や省エネにいっそう上手に活用することができます。
 導入活用のポイントは大きく2つあります。
 第一のポイントは、エネルギーパフォーマンスの評価と改善を行うエネルギーレビューのプロセスが重要な管理のポイントとなります。 第二のポイントは、トップマネジメントがエネルギーパフォーマンスの継続的改善やEnMSの改善を図るためにレビューし、エネルギー管理を行う組織活動の適合性の確認と評価が重要なポイントとなります。

導入活用のポイント ポイント その1:エネルギーレビューのプロセス ポイント その2:活動の適合性の確認と評価

<ポイントその1>エネルギーレビューのプロセス

これまでのマネジメントシステムは継続的な改善の仕組みができていることは保証するものの、結果としてのパフォーマンスレベルを問うものではありませんでした。ISO50001では、エネルギーパフォーマンス及びEnMSの継続的改善を達成することを要求しており、経営指標の向上にもつながる、より高い実効性が期待できるマネジメントシステムです。このためエネルギーパフォーマンスの評価と改善を行うエネルギーレビューのプロセスが重要な管理のポイントとなります。
エネルギーレビューとは、データや情報に基づいて組織のエネルギーパフォーマンスを決定することと、そのエネルギーパフォーマンスの改善の機会を特定することです。このエネルギーレビューに相当するプロセスは、省エネ法のエネルギー使用合理化のための枠組み・管理手法(以後、スキームという)と下図のように対比させることができます。 すなわち、エネルギーレビューのプロセスは原単位の管理分析、評価、改善に相当し、事業者が原単位管理を推進する際のエネルギーパフォーマンス改善の手順・方法論として有効に活用することができます。
エネルギーレビューの要求事項は、

a)エネルギーの使用及び使用量を、測定及びその他のデータに基づき、分析

  • 現時点のエネルギー源を特定…(1)
  • 過去及び現在のエネルギーの使用及び使用量を評価…(2)

b)エネルギーの使用及び使用量の分析に基づき、著しいエネルギーの使用の領域を特定

  • エネルギーの使用及び使用量に著しく影響を及ぼす、施設、設備、システム、プロセス、及び組織で働く又は組織のために働く要員を特定…(3)
  • 著しいエネルギーの使用に影響を及ぼすその他の関連変数を特定 …(4)
  • 特定された著しいエネルギーの使用に関係する施設、設備、システム及びプロセスの現在のエネルギーパフォーマンスを決定 …(5)
  • 将来のエネルギーの使用及び使用量を予測(将来のエネルギーパフォーマンスを推計)…(6)

c)エネルギーパフォーマンスを改善するための機会を特定し、優先度を決め、記録…(7)

となっており、エネルギーレビューはデータ及び他の情報に基づいて組織のエネルギーパフォーマンスの決定と、そのエネルギーパフォーマンスの改善の機会の特定を導くことです。
エネルギーレビューの要求事項は、省エネ法でいう原単位の管理分析、評価、改善に相当し、事業者が原単位管理を推進する際にエネルギーパフォーマンス改善の手順・方法論として有効に活用することができます。

エネルギーレビューに関する省エネ法と要求事項の関連(括弧内番号は要求事項と対応) エネルギー使用状況の把握(1)(2) エネルギーパフォーマンス指標の決定(原単位の分母の変数、気象条件等による正規化モデル式(3)(4) エネルギーパフォーマンスの算定(5) 省エネ診断(改善提案)(7) 省エネ改善対策(7) エネルギー使用のプロセスと測定(1)(2) エネルギー使用に影響の大きいプロセスの特定(3)(6) エネルギー使用に影響を及ぼすその他関連変数の特定(4) エネルギーパフォーマンスの決定(数値算定)(5) エネルギーパフォーマンスの改善の機会の特定(7)

エネルギーレビューに関する省エネ法と要求事項の関連(括弧内番号は要求事項と対応)

上記の要求事項(1)~(7)については以下のようなエネルギー管理が求められる。

(1)(2)エネルギー使用のプロセスごと測定分析

組織のエネルギー使用量の測定を行い、エネルギー源を特定し、どれだけのエネルギーが使用されているか、過去から現在までのエネルギー使用量の履歴(トレンド)を評価します。すなわち、増加傾向なのか減少傾向なのか、全体に占めるエネルギー源ごとの使用量の割合がどうか、使用量の大きな変動の原因は何かなど分析します。
設備単位または設備群単位、作業工程単位によるきめ細かいエネルギー管理を徹底し、BEMS/FEMSをエネルギー管理の中核となる設備として位置づけ、系統別に年・季節・月・週・日・時間単位等でエネルギー管理を実施し、数値・グラフ等で過去の実績と比較した消費動向等が把握できるよう検討します。
自動のデータ測定システムが無い場合には、月々の電気料金請求書、契約使用料超過請求書、計測メーターの読取などを基にエネルギー分析を行います。

(3)(4)エネルギー使用に影響を及ぼすプロセスと変数の特定

エネルギーパフォーマンスに大きな影響を与えるエネルギーの使い方か、多量のエネルギー使用量か、エネルギーパフォーマンス改善の余地があるかに基づき、「著しい領域」を特定します。改善の余地のある対象プロセスの特定は、各種の同一セクターや製品別の原単位比較やベンチマーク比較などによっても特定できます。
影響を及ぼす変数としては、工場等の操業条件(原料、生産量、要求品質、周囲条件)によりエネルギー使用量が変動することが多いので、統計分析ツール等を活用して変数を特定します。ビル建物に対しては、延床面積、従業員数、営業時間、PC台数、空調温度、外気温度などが影響を及ぼす変数と考えられます。
また、要員の知識や技能が十分でないことにより、エネルギーの無駄のない設備運転が確保されていない場合もあるので、運用基準の確立や教育訓練の実施により対処します。

(5)エネルギーパフォーマンスの決定

施設、設備、システム、プロセスなど上記で特定された領域(複数領域でも可)に対して、エネルギー効率、エネルギー消費量、影響を及ぼす変数に配慮して定めた原単位など、組織が定めたエネルギーパフォーマンス指標(EnPI)に基づき、エネルギーパフォーマンスを算定します。

(6)将来のエネルギーの使用および使用量の予測

将来の製品計画、生産計画、需要動向など勘案してエネルギー使用状況を推計します。生産数量が将来大きく減少するようなら、エネルギー使用量が減少し、またはエネルギーパフォーマンスの改善余地が少なくなるなどによって著しいエネルギーの使用の領域も見直されます。

(7)エネルギーパフォーマンス改善の機会の特定

改善の機会は、エネルギーパフォーマンスの測定と観察に基づいて行うエネルギー診断等により決定します。エネルギー診断は組織内部の人材、またはコンサルなど外部専門機関に託してもよい。改善提案、省エネ量、実施コストなど勘案して優先順位をつけます。

<ポイントその2>活動の適合性の確認と評価

トップマネジメントがエネルギーパフォーマンスの継続的改善やEnMSの改善を図るためにレビューし、エネルギー管理を行う組織活動の適合性を自己宣言するための基礎になる内部監査が重要なポイントとなります。
省エネ法では、内部監査そのものを規定していませんが、エネルギーの使用の実態を把握し、取組方針の順守状況を確認、評価、改善を行うことが求められています。これは、工場等の総合的エネルギー管理における内部点検といえるものです。
内部点検要件のうち、点検範囲、点検プログラム、点検基準、点検チームの選定が重要なポイントになります。事業者が省エネ法スキームの厳守や判断基準の順守の自己宣言のためにも、ISO50001へスムーズに移行するためにも、内部点検による厳格な運用に慣れておくのがよいでしょう。
マネジメントシステム監査の指針を定めたJIS Q 19011では、監査プログラムの管理、内部監査の実施、監査員の力量及び評価についての手引きが提供されています。内部監査は「第一者監査」と呼ばれ、マネジメントレビュー及びその他の内部目的のために、その組織自体又は代理人によって行われ、その組織の適合を自己宣言するための基礎としてもよいとされています。

以下は内部監査に具備すべき要件として、内部監査活動プロセスに対する要件と監査員の力量評価に対する要件について、省エネ法の管理手法を活用する視点から解説します。

<内部監査活動プロセスの要件>

監査活動は、監査の開始→文書レビューの実施→現地監査活動の準備→同実施→監査報告書の作成、承認及び配付→監査の完了→監査のフォローアップの実施 で進められます。(下表)


(1) 内部監査の開始
内部監査の開始に当たっては、組織としての内部監査規定のようなものがあればこれを参考にするとよいでしょう。
各プロセスにおいて行うべき内容を以下に示します。
1)監査の目的:適合の程度の判定、マネジメントシステムの有効性評価、マネジメントシステムの改善可能な領域の特定などの明確化
2)監査の範囲:場所、組織単位、活動、プロセス、領域境界、期間の明確化
3)監査の基準:マネジメントシステム要求事項への適合性の判定の基準、業界の行動規範などの明確化
4)監査チームの選定:規模と構成、目的達成に必要な力量、技術専門家の参画、独立性の確保などの明確化
監査チームメンバーには私情に流されず独立性を確保するため、監査を受ける部門や製品セクターと利害関係の無いことが重要です。

(2)文書レビューの実施
現地監査に先立って、マネジメント文書、記録、過去の監査報告書のレビューを行います。
エネルギーマネジメントシステム文書を中心にレビューを行って、事前に疑問点や確認点をチェックリストに含めておくとよいでしょう。

(3)現地監査活動の準備
誰がいつどこを監査するかの監査計画を作成します。監査の際に誰にどの様な質問をするのか記述した作業文書(チェックリスト)を作成します。

(4)現地監査活動の実施
現場の監査では、得られた情報から評価や所見を導くことを行います。
1)情報の収集及び検証:面談、活動観察、文書調査などサンプリングと監査証拠
時間的に全数検査はできないため、抜き取り的な検査となります。合理的な結論を導くためには、できるだけ客観的で本質的な証拠を見つけて評価と所見につなげるとよいでしょう。
2)監査基準に基づく評価
ISO50001のEnMSの内部監査の要求事項では、

  • この規格の要求事項を含めて、エネルギーマネジメントのために計画された取決め事項に適合している
  • 設定されたエネルギー目的及び目標に適合している
  • 効果的に実施、維持され、エネルギーパフォーマンスを改善している

が要求されています。
評価は取決め事項に適合しているか、目的及び目標に適合しているか、エネルギーパフォーマンスの改善につながっているかに基づいて行われます。
3)監査所見の作成
4)監査結論の作成:是正・予防・改善処置の必要性の提示 認証受審のための外部監査と異なり、内部監査ではコンサル行為を行っても構いません。必要なアドバイスに基づき改善につながることが肝要です。

(5) 監査報告書の作成、承認及び配付

(6)監査の完了

(7)監査のフォローアップの実施:是正処置の完了と有効性の検証
監査指摘を受けた部門は対応策を検討し、期間を決めて改善策を講じなければなりません。

表 内部監査活動プロセスの要件

内部監査プロセス
活動内容
留意点
(1) 内部監査の開始監査の目的、監査の範囲、監査の基準、
監査チームの選定
・内部監査規定の活用
・監査を受ける部門や製品セクターと
 利害関係の無い人
(2) 文書レビューの実施 現地監査に先行 ・エネルギーマネジメントシステム文書を
 中心にレビュー
(3) 現地監査活動の準備監査計画の作成、
作業文書(チェックリスト)の作成
・重点を置くべき監査箇所の選定
・監査項目やポイントを整理
(4) 現地監査活動の実施 情報の収集及び検証、監査基準に基づく評価、
監査所見の作成、監査結論の作成
・全数検査に代わる抜き取り的な検査
・本質的な証拠を見つけて評価
・コンサル行為も可
・アドバイスに基づき改善
(5) 監査報告書の作成、
   承認及び配付
- -
(6) 監査の完了--
(7) 監査のフォローアップの実施 是正処置の完了と有効性の検証 ・対応策の検討
・期間を決めた改善

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