再生可能エネルギー導入事例

14.02.21 岩手県葛巻町の取り組み

企業や自治体の再生可能エネルギー拡大の取り組み

14.02.21

岩手県葛巻町の取り組み

「エネルギー自給率100%」のまちづくりを目指す
■北緯40度ミルクとワインとクリーンエネルギーの町くずまき

葛巻町は美しい自然豊かな酪農と林業の町。現在では、牛の頭数、牛乳生産量とも東北一の酪農郷です。21世紀の「食料・環境・エネルギー」問題に貢献するため、酪農と林業の振興を図るとともに風力発電や太陽光発電、バイオマスエネルギー等のクリーンエネルギーの導入を積極的に推進しています。町全体が一体となって省エネルギーに取り組んでおり、視察・見学可能な再生可能エネルギー施設も大変充実しているため、視察ツアーには年間300組・4000人も訪れるとか。今回はお話を伺いながらそれぞれを訪ねました。

風力発電所のそばではホルスタインがのんびりと草をはんでいます。

風力発電所のそばではホルスタインがのんびりと草をはんでいます。

■農業に新たな魅力を「畜ふんバイオマスシステム」

乳牛飼育頭数10,000頭を誇る「東北一の酪農郷」である葛巻町では、日量400t以上もの家畜排泄物が発生しています。この家畜排泄物を最大限に利用し、適正に管理するため、くずまき高原牧場内に「畜ふんバイオマスシステム」が導入されています。
これは畜産活動から発生する温室効果ガス「メタン」の抑制を目的としており、エネルギーと良質な肥料を生産し、理想的な循環サイクルが出来上がっています。

    このシステムの主な利点として、
  • ・大気に環境汚染ガスを放出することなく有機物を分解するので、悪臭の発生が少ない
  • ・ミネラルはそのまま残り、即効性の高い良質の有機肥料として有効利用できる
  • ・バイオガスを燃料に、発電機、ボイラーで電気、熱エネルギーを回収し、施設内で有効利用できる
  • などが上げられます。

牛舎内で過ごす育成牛たち

牛舎内で過ごす育成牛たち

こちらの牧場では育成牛2000頭のうち、200頭分の畜ふん13t/日が処理できます。酪農家は点在しているので、大きい施設1つより小さめの施設をそれぞれに作った方が効率的だそうです。

バイオマスシステムのしくみがわかりやすく解説されています。

バイオマスシステムのしくみがわかりやすく解説されています。

■注目のリサイクルシステム「畜ふんバイオガスプラント」

平成16年当時、畜ふんをエネルギーの資源として使うのは国内では大変めずらしかったそうです。家畜排せつ物は、有機物や窒素、リンを多量に含み、土壌改良材や有機性肥料として高い価値があります。畜産経営から発生するふん尿に関する環境問題を見事に解決してくれる有効策なのです。

この建物内で固体と液体の分離などの前処理工程が行われます。

この建物内で固体と液体の分離などの前処理工程が行われます。

更に牧場の畜ふんだけではなく、発酵を促進させるため葛巻町内の生ごみが毎日400~600㎏、こちらに運ばれて処理されています。見学時、ちょうど生ごみが処理されている最中でした。

生ごみが入れられ、分離粉砕機にかけられます

生ごみが入れられ、分離粉砕機にかけられます

こちらは固液分離機。家畜排泄物は発酵した後は、ほとんどにおいがしません。

こちらは固液分離機。家畜排泄物は発酵した後は、ほとんどにおいがしません。

処理されたものはそれぞれの場所につながれたパイプによって運ばれていきます。

処理されたものはそれぞれの場所につながれたパイプによって運ばれていきます。

■酪農郷としての責任

このシステムにおいては採算性より臭いなどの適正処理に重点をおいたとのことですが、しっかりとクリーンエネルギーとして利用されています。発酵槽から排出された消化液は液肥として春・夏に散布、家畜のための牧草やとうもろこしを育てています。発生したバイオガスはコージェネ設備を利用することで電気と温水を同時に取り出すことができます。取り出した電気は施設内の電力に、熱は発酵槽の温度を保つため利用されています。

左の白い丸い建物がガスホルダー、右の赤い建物がメタン発酵槽。

左の白い丸い建物がガスホルダー、右の赤い建物がメタン発酵槽。

メタン発酵槽は330m3で常に中温に保たなければなりません。取材時は約30℃でした。

メタン発酵槽は330m3で常に中温に保たなければなりません。取材時は約30℃でした。

このようなことから畜ふんバイオガスプラントは、食糧とエネルギ-生産・農業に新たな魅力を求めた酪農の方々からも期待されています。

■暮らしに活かす太陽光発電

葛巻町内では葛巻中学校、くずまき高原牧場、25箇所のコミュニティーセンター等に太陽光発電を導入しています。総出力は475kW。
全面改築が予定されていた葛巻中学校には50kWの太陽光発電システムを導入。生徒や地域住民に対し地球環境保全の重要性や新エネルギーへの関心を高めた環境教育を図るため設置されました。太陽電池モジュールで発生した電気は葛巻中学校の昼間に消費する電力20%ほどをまかなっています。

冬は雪がつもるため、土台の高さを1メートルくらい上げ、パネル設置にも角度をつけています。雪深い地方ならではの工夫です。

冬は雪がつもるため、土台の高さを1メートルくらい上げ、パネル設置にも角度をつけています。雪深い地方ならではの工夫です。

くずまき高原牧場に設置されている太陽光発電設備は「くずまき交流館プラトー」の電力の一部となっています。また、照明器具も消費電力の少ないLED照明に交換されており、省エネルギー化しています。
町内の避難所に指定しているコミュニティーセンター等でも平成22年末の雪害や平成23年3月11日に発生した東日本大震災における長期的な停電を教訓に、非常用電源としても利用できる太陽光発電設備を導入しました。 悪天候時や夜間でも電気を使用できるよう蓄電池も整備され、町民の安全・安心の確保に努めています。

■高原に吹く風をエネルギーに変える風力発電

葛巻町では二カ所の牧場で、合計15基の風力発電機が稼働しています。発電総出力は22,200kW。一般家庭が使う消費電力の16,000軒分です。 エコ・ワールドくずまき風力発電所は平成11年6月に建設され、発電した電力は東北電力に売電しています。この風力発電は観光資源としても役立っています。
グリーンパワーくずまき風力発電所は、希少動植物に配慮し、当初28基だった計画を現在の12基に変更し、自然との共生を目指したモデル的なウィンドファームとなっています。

冬季のメンテナンス時はなんとスノーモービルを使って向かうようです。雪国ならではですね。

冬季のメンテナンス時はなんとスノーモービルを使って向かうようです。雪国ならではですね。

二カ所とも標高1,000mを超える山間高冷地で稼働していて、世界でも珍しいことのようです。これが実現したのも昭和50年代に酪農振興のために整備された道路・送電線・風況データがあったからこそ。山岳部での風力発電を可能にするためのインフラが既に整備されていたのです。これらは現在も牧場としての本来の機能を維持しながらエネルギーの線産基地となっています。葛巻町の風力発電は「酪農」という土台の上に成り立っているのです。

関連リンク
葛巻町役場:クリーンエネルギーの取り組み
くずまき高原牧場

 

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