再生可能エネルギー導入事例

10.10.14 京セラ ソーラーエネルギーセンター見学記【前編】

2010年度

10.10.14

京セラ ソーラーエネルギーセンター見学記【前編】

京セラが語る、「太陽光発電」概論

太陽光発電システムの導入が国内でも急ピッチで進んでいます。今回は、太陽光発電の分野で確かな足跡を残してきた京セラを訪ね、その足取りを長年支えてきた「京セラ ソーラーエネルギーセンター」を見学しました。 前編では本多潤一・前所長による太陽光発電ガイダンスを、後編では同センターで実施しているフィールドテストや住宅用太陽光発電システム施工研修をご紹介します。

京セラ ソーラーエネルギーセンターとは

京セラソーラーエネルギーセンターは、海外から来訪する要人や研修生の利便性を考慮し、成田国際空港からほど近い千葉県佐倉市に設立されました。京セラが太陽電池の研究・開発を始めてから約10年が経った1984年のことです。

「当時は世の中にほとんど市場がなく、ニーズは海外の電気のないところにありました。太陽電池がまだ知られていなかったので、多くの人に見てもらうための展示場として作られましたが、太陽光発電をシステムとして初めて組み上げた施設でもありました。システムを動かして実際に使いながら、設計基準の検討や系統連系の研究を進めてきました。国内初の系統連系の太陽光発電システムを出荷したのも、ここでした」

1984年から2010年3月まで同センターに勤務していた前所長の本多潤一さんが、同センターの四半世紀に及ぶ歩みを振り返ります。

センターでは設立当初から毎年10数カ国100~200人の海外研修生を受け入れてきました。2008年からは、国内での住宅用太陽光発電システムの急速な普及を受け、施工者を養成する一般向け研修もスタート。たくさんの太陽電池に囲まれた同センターは、設立以来、国内外に向けた太陽光発電の普及啓発の拠点として、自社PRにとどまらない社会貢献を続けてきました。

エネルギーセンター外観

1984年に設立された「京セラ ソーラーエネルギーセンター」

いま一度「太陽光発電」を知る

ソーラーエネルギーセンターの先駆的な取り組みにも表れているように、京セラは太陽光発電の創成期から、ソーラーエネルギー事業に力を入れてきました。同センター前所長の本多さんの話から、いま一度、太陽光発電の全体像を見直してみましょう。

本多潤一さん

京セラ ソーラーエネルギーセンターの前所長・本多潤一さん

まず太陽電池の種類についてです。太陽電池には、結晶シリコンのほか、電卓などによく使われてきたアモルファスシリコンや、アモルファスシリコンと微結晶シリコンの組み合わせからできた薄膜タンデム型、あるいはCIS系など、さまざまな種類があります。材料によって主にシリコン系と化合物系に分けられますが、よく普及してきたのは、シリコン系の中でも「結晶シリコン」と呼ばれるタイプです。結晶シリコンには単結晶と多結晶があり、2009年の出荷量で圧倒的に多いのは多結晶シリコン型です。

現在の主な太陽電池の材料による分類図

出典:独立行政法人産業技術総合研究所「太陽電池の分類」
http://unit.aist.go.jp/rcpv/ci/about_pv/types/groups.html

太陽電池モジュールの写真

「多結晶シリコン型」の太陽電池モジュール

次に太陽電池の仕組みです。そもそも、光が当たっただけで、どうして発電できるのでしょうか? その原理の発明は古く、既に1954年にはアメリカで、最初の太陽電池が誕生していました。
「難しく言えば難しくなりますが、原理は簡単です。ややこしいことは何もありません」
と本多さん。多結晶シリコン太陽電池を例に挙げ、明快な解説を始めました。

「太陽電池の基となる薄い板(以下、ウエハー)は、原料のシリコン粒を鋳造(ちゅうぞう)して作ります。ウエハーに金属の電極などを付けた「セル」は正極と負極を持ち、直列、並列につなぐことができます。一般に屋根に載せるパネルは、複数のセルをつないで屋外設置用にパッケージ化した「モジュール」を指します。

ウエハーのわずか約300μm(=0.3mm)の厚さの中に、2種類の半導体の層があります。太陽光を受ける表側にあるNシリコンは厚さ約0.5μmしかない非常に薄い層、全体の厚みのほとんどを占めているのは、裏側にあるPシリコンの層です。太陽光はウエハーの表面で一部は反射され、一部がウエハーに吸収されます。吸収された光の一部は熱に変わるため、電気を生み出すのは、その残りのエネルギーです。

太陽光は、ウエハーの中のシリコン原子にエネルギーを与えます。すると、シリコン原子の中で原子核の周りを安定して回っていた電子のうち、いくつかが軌道を外れて自由電子となります。しかし、自由電子はN層とP層の境目(P/Nジャンクション)を双方向に移動することができません。ここがポイントです。

電子(-)と正孔(+)のうち電子のみに着目すると、P層で生じた電子はN層には入れるけれど、N層で生じた電子はP層側に入れないため、N層ばかりに電子が集まりバランスが崩れます。そのため、ウエハーの表(N層)と裏(P層)をつなぐ回路を外部に取り付けておけば、多くなったN層の電子は回路を伝ってP 層へと移動します。こうして、光が当たると電流(電子の動きとは逆方向に流れる)が生じるのです」

太陽電池のしくみ図

出典:一般社団法人太陽光発電協会「太陽電池のしくみ」
http://www.jpea.gr.jp/11basic04.html

以上のような仕組みで、光から電気を生み出します(京セラ研究レベルでの150mm×155mmサイズの多結晶シリコンセル変換効率は最大18.5%)。ただし、電子はすぐに正孔と再結合してしまうため太陽電池は蓄電ができません。太陽光が遮られたら電気は流れなくなります。この弱点を補うため、システムに蓄電池を組み込んだり、「系統連系」という仕組みを利用したりしています。

系統連系は、電力会社が発電所でつくった電気を自家発電した電気と併用するために、電流の流れを双方向にコントロールする仕組みです。
「考えようによっては、系統そのものが巨大な蓄電池代わりになっているといえます」(同氏)。
系統連系なら自動的に、太陽光発電が足りないときは電線から電気を補い(買電)、余ったときは電線に電気を送りだします(売電)。売電価格は、2009年 11月にスタートした余剰電力の買取制度(※1)によって従来制度の倍額となり、日本における住宅用太陽光発電普及の大きな推進力となっています。

※1 資源エネルギー庁「買取制度ポータルサイト」http://www.enecho.meti.go.jp/kaitori/index.html

太陽光発電システムの現状

続いて、太陽電池の普及について見てみます。現在、日本に限らず、世界中で太陽光発電の導入が進んでいます。最初は宇宙や砂漠など、インフラが整わない場所での独立型の利用が主流でしたが、系統連系や「スマートグリッド」(※2)など、電力供給のネットワーク化により、利用の可能性が大きく広がりつつあります。 「太陽光発電は、どの先進国でも似たようなステップを踏んで普及してきましたが、先頭を走っているのは日本だと思います。制度の柔軟性や、いろいろな経験の多さから、日本は普及の社会実験のトップランナーといえるでしょう」
長年、国内外で太陽光発電の発展を見つめてきた本多さんの見解です。

太陽電池そのものは発電するときに二酸化炭素を排出しませんが、太陽電池を作るプロセスで排出しているため、トータルで見れば排出量ゼロとは言えません。しかし、化石燃料を使った発電に比べれば、二酸化炭素の排出量が非常に少ないのは確かです。かつては、原油価格の高騰などを受けて一時的あるいは局地的な代替エネルギーとして注目されましたが、最近ではメガソーラー(出力1000kW以上の大規模太陽光発電)の導入事例も増えており、太陽光発電システムは世界中で積極的に採用されるクリーンエネルギーの代表格になりました。

「太陽光発電産業は、従来主役であったパネルメーカーから、着実にその裾野を広げつつあります」
本多さんが指摘するように、国内でも太陽光発電のシステムインテグレーター(企画、設計、設置から保守、点検まで一貫して請け負う企業)が立ち上がり、メガソーラー導入などを各地で進めています。市場が成長した結果、太陽光発電の歴史は次のステージに上がろうとしています。

※2 資源エネルギー庁「スマートグリッドに関する国際標準化ロードマップについて」
http://www.meti.go.jp/press/20100128003/20100128003.html

世界に広がる太陽光発電

多くの先進国で太陽光発電システムの普及を後押ししているのは、行政による各種制度です。日本の補助制度は1992年の「公共施設等用太陽光発電フィールドテスト事業」に始まりました。1994年には「住宅用太陽光発電モニター事業」が開始され、一時期トーンダウンしたものの現在は再び拡大路線となり、国や地方自治体などから支給される補助金が導入コストの負担を和らげています。さらに、2009年秋以降は前出の制度による売電の単価アップで新たな魅力が加わり、今や、太陽光発電の導入件数は住宅用を中心に急増中です。2010年度上半期(1~6月)の太陽電池のセルとモジュールの国内26社の合計出荷量は、前年同期比2.6倍と好調で、過去最多の41万263kWをマークしています。国内出荷の内訳を見ると、9割が住宅用です(※3)。

国別で見たとき、近年、生産量の伸びが著しいのは、中国や台湾などのアジア諸国です。
「しかし、どこの国で作ったのかより、どこのメーカーで作ったのかが大事です。ブランドが重視される傾向があります」(同氏)。
日本で生産される太陽電池は、国内利用が増えた今でも、その多くは海外に輸出されています。輸出は為替レートの影響を強く受けますが、2010年度上半期は、出荷量全体の64.3%が輸出されました(前年同期比1.8倍 ※3)。

京セラはソーラーエネルギー事業開始当時から、人類・社会への貢献を理念に掲げ、海外、特に無電化地域のある途上国に目を向けてきました。これまで JICA(独立行政法人国際協力機構)などと協力して出荷した大量の太陽電池は、世界各地で活躍しています。たとえば、ある村ではパネルを高く掲げたポールの下に人々が集い、携帯電話の電池に太陽光でチャージをしています。また、小舟の屋根に取り付けられたパネルは、ラジオや蛍光灯の電源として水上生活をする人々の毎日を支えています。寒さ暑さなど過酷な環境に耐え得る良質な太陽電池の需要は、世界の隅々にまで広がっています。

※3 一般社団法人太陽光発電協会「平成22年度第1四半期 太陽電池セル・モジュール出荷統計について」
http://www.jpea.gr.jp/pdf/t100826.pdf

京セラ ソーラーエネルギーセンターの庭には、長年稼働し続けている貴重な太陽光発電システムがあります。また同センターでは一般向けの施工研修も開催しています。後編では、同センターが継続してきたフィールドテストと、住宅用太陽光発電システムの普及を受けて始まった研修についてご紹介します。

京セラ ソーラーエネルギーセンター見学記 バックナンバー(全2回)
京セラ ソーラーエネルギーセンター見学記【前編】
京セラ ソーラーエネルギーセンター見学記【後編】

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