第1節米国の「シェール革命」による変化

1.「シェール革命」とはなにか

シェールオイル・シェールガスのシェール(Shale)とは、頁岩(けつがん)という、泥が固まった岩石のうち、薄片状に剥がれ易い性質を持つ岩石のことです。

太古の海や大河の河口では、水中のプランクトンや藻類などの有機物が、死後に沈降、堆積し、バクテリアによる分解作用を受け変質して腐食物質(ケロジェン)に変化します。ケロジェンを含んだ堆積物がさらに地下深くに埋没すると、地熱や圧力により化学変化して石油分やガス分ができます。

頁岩からなるシェール層の石油分やガス分は、外部に移動する一方で、シェール層の岩石の隙間に残っていることがあります。地下の比較的浅い部分のシェール層の中には石油混じりの資源が、さらに深くなれば熱分解が進んでガスがあると考えられています。これらが、シェールオイルやシェールガスであり、これらの生成反応は数千万年から数億年という長い時間をかけて行われてきました。

米国において、従来は経済的に掘削が困難と考えられていた地下2,000メートルより深くに位置するシェール層の開発が2006年以降進められ、シェールガスの生産が本格化していくことに伴い、米国の天然ガス輸入量は減少し、国内価格も低下していきました。これが、いわゆる「シェール革命」であり、エネルギー分野における21世紀最大の変革であるとともに、世界のエネルギー事情や関連する政治状況にまで大きなインパクトを及ぼしています。

【第111-1-1】シェールガスとシェールオイル

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(注)
「シェールオイル」は「オイルシェール」(地中に埋もれた有機物が石油や天然ガスに化学変化する前のケロジェン<油母>と呼ばれる高分子有機物を多く含む頁岩)との混同を避けるため、「タイトオイル」と表記されることもありますが、「シェール革命」によって増産されている原油であることを明確にするため、本白書では「シェールオイル」と表記します。なお、厳密に言えば「タイトオイル」は「シェールオイル」と「タイトサンドオイル(浸透率の低い砂岩に含まれる原油)」をあわせた呼び名のため、本白書内の統計などでは、「シェールオイル」に「タイトサンドオイル」が含まれることがあります。

【第111-1-2】米国における主なシェールガス・シェールオイル生産地域

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(出典)
米国エネルギー省情報局(EIA)「Drilling Productivity Report」2015年

2.「シェール革命」を可能にしたもの

(1)技術的要因

「シェール革命」とまでいわれた、2006年以降のシェールガス・シェールオイルの開発ブームは、以下の3つの技術の確立が無ければ実現しませんでした。

1つ目は、石油やガスが閉じ込められた岩石の層に沿った掘削を可能とする「水平坑井」(水平掘技術)です。従来は垂直あるいは斜めに掘削する坑井が主流でしたが、水平坑井を採用することで、岩石との接触面積がより広くなり、一坑井当りの生産量は数倍に増加しました。

【第111-2-1】水圧破砕技術の概要

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(出典)
石油技術協会 創立70周年記念出版物「石油天然ガス資源の未来を拓く-最前線からのメッセージ(創立70周年記念出版物委員会著)」

2つ目は、「水圧破砕」です。 これは、石油やガスが存在する地層に圧縮した液体を流し込んで圧力をかけ(フラクチャリング)、それによって生じた人工的な割れ目(フラクチャー)により、石油やガスの流れにくさを改善する技術であり、 浸透率の低い岩石から生産を行うためには不可欠なものです。

シェールガスの水平坑井は1,000メートル以上の長さがあります。例えば、水圧破砕作業では、まず水平坑井の最も先端の部分で毎分70バレルの流体と砂を圧入してフラクチャリングを行い、その後約120メートル間隔で順々に手前側に戻りながら同じ作業を繰り返して多段階のフラクチャリングを進めていきます。この間隔は、圧入量や浸透率等によって異なります。

流体は、化学添加剤を1%程度混ぜた水を使用します。また、1坑井あたりの水圧入量は、地質、間隔、水平長等によって異なりますが、7,000 ~ 18,000キロリットルと大量であり、この水の確保も重要となります。

そして3つ目は、「マイクロサイズミック」です。フラクチャー形成の際に発生する地震波を観測・解析し、フラクチャーの進展を検知する手法で、石油やガスの回収率向上に貢献しています。

これら3つの技術は、地下資源の開発などで、それぞれ昔から使用されていたものですが、それらを改良・高度化しながら技術を組み合わせることで、「シェール革命」は可能となりました。

【第111-2-2】「シェール革命」を可能にした3つの技術革新

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(出典)
JOGMEC資料等を基に作成

(2)コスト要因

「シェール革命」以前は、シェールガスは生産コストが高く、市場性がないと判断されていました。正確な生産コストを算出することは、掘削技術が開発あるいは発展途上であること、生産地域ごとに生産量や坑井の深度などが異なること、関連する会社が情報を非公開にしていることなどから難しいものの、通常の天然ガスの生産コストが約1ドル/百万BTUであるのに対し、シェールガスの生産コストはその数倍であると考えられていました。

それが、2004年に原油価格が高騰を始めると、状況が大きく変化しました。原油価格に連動していた天然ガス価格も大きく上昇し、2005年の米国内の天然ガス価格は前年を3ドル近く上回る8.86ドル/百万BTUに達しました。これにより、シェールガスの生産は採算に見合うものとなり、開発が進められていきました。

シェールガスの増産に伴い、米国内の天然ガス価格は、徐々に原油価格の動向と乖離していきます。その動きが決定的になったのは、石油大手各社が開発に乗り出して増産が本格化する2008年以降です。国際的な天然ガス価格は、世界的な景気後退の影響もあって急落しましたが、その後値上がりに転じた国際的な天然ガスの価格に対して、米国内の天然ガス価格は、現在も低い水準で推移しています。

BPのデータでは、米国のシェールガスの最大、最小及び平均損益分岐点となる価格は、それぞれ、8.1ドル/百万BTU、2.65ドル/百万BTU、4.85ドル/百万BTUとなっており、米国内の天然ガスの市場価格は、平均損益分岐点をほぼ下回る状況にあります。

【第111-2-3】国際的な天然ガス価格とシェールガスの損益分岐点

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(出典)
BP資料

そのため、米国のガス生産者は、原油に近い価格で販売できるコンデンセート油(天然ガス採取の際に地表で凝縮分離した軽質液状炭化水素)などのNGLが併産されるシェールガスの開発を進め、利益を確保しています。

米国内で天然ガスとNGLの両方を産出する井戸の割合は2007年の37%から2012年には56%に増加し、天然ガスと併産されるNGLの量は2008年には天然ガス全体の4.5%だったのに対し、2013年には5.2%となりました。

米国エネルギー省(DOE)によれば、2008年から2013年までの間に、天然ガスと併産されるNGLの量は年間7%のペースで増加しています。

マサチューセッツ工科大学(MIT)では、主要なシェールガス生産地域である米国北東部のマーセラスにおいて、2009年における生産条件で80ドル/バレルのコンデンセート油が並行して得られるとした場合のシェールガスの損益分岐点を試算しています。

それによると、下図のとおり、併産されるコンデンセート油の量が0の場合、ガスの損益分岐点は4ドル/百万BTUとなりますが、ガス100万立方フィートあたり50バレルのコンデンセート油が併産される場合には、ガスを0ドルで販売しても採算がとれることになります。

【第111-2-4】NGLが併産される場合の損益分岐点試算例

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(注)
横軸は100万立方フィートのガスに併産されるコンデンセート油の量(バレル)であり、この量によって縦軸であるガスの損益分岐点(ドル/百万BTU)が変化する。
(出典)
MIT資料

(3)その他要因

米国では世界に先駆けて「シェール革命」といわれる状況が生じましたが、30年以上前から、シェールガスの掘削技術開発に関する資金投入や規制緩和を行うなど、米国政府による支援もそれを可能にした要因の一つです。

また、米国では過去150年にわたる石油生産国としての地質構造に関わるデータが充実していたことや、シェール開発のための周辺技術が確立し、それを提供する掘削サービス関連企業及び熟練技術者が国内に多数存在し、厚みのある産業構造をいち早く形成することが可能であったことも、シェールガスの短期間での商業化とその後の増産に大きく寄与しています。

さらに、米国には伝統的にハイリスク・ハイリターンの新しいベンチャー企業に資本を提供する資本市場が整備されていることや、地下資源の所有権が土地を所有する個人に帰属しているため、土地所有者が採掘権を売却することで大きな利益を得られることなども、シェール開発を容易にしています。

3.米国内のエネルギー動向の変化

(1)生産量

①天然ガス増産

シェールガスの生産増により、2006年から米国の天然ガス生産量は増加を始め、2011年には1973年を上回り過去最大となりました。

2013年の生産量は24.3兆立方フィートに達し、米国は今や世界最大の天然ガス生産国となっています。

【第111-3-1】米国の天然ガス生産量

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(出典)
EIA統計

【第111-3-2】米国の地域別のシェールガス生産量

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(出典)
EIA統計

【第111-3-3】米国の原油生産量

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(出典)
EIA統計

【第111-3-4】米国の地域別のシェールオイル生産量

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(出典)
EIA統計

②原油増産

「シェール革命」の結果、現在、米国は世界最速のペースで原油生産の拡大を進める生産国となっています。

米国の原油生産量は1970年に約960万バレル/日でピークに達した後に減少を続け、2008年には1947年以降最低となる500万バレル/日を記録しました。当時、米国の原油生産量はさらに減少し、輸入原油への依存度がさらに増大すると予想されていました。

しかし、シェールオイルの生産増により、原油生産量は2009年から毎年大幅に増加し、2013年には約750万バレル/日、2014年には約870万バレル/日となりました。米国エネルギー省情報局(EIA)は、2015年の原油生産量は約940万バレル/日に達すると予想しています。

米国の原油生産量に占めるシェールオイルの割合は、2008年の12%から2012年には35%へと上昇しています。

(2)輸出入

①LNG輸出拡大

米国は、現在でも天然ガスの輸入国であり、主にカナダからパイプライン経由で天然ガスを、トリニダード・トバゴやイエメンなどから液化天然ガス(LNG)を輸入しています。

しかし今後、シェールガスの増産により、輸入量が減少するとともに、輸出量が増加し、2020年までには天然ガスの純輸出国になると予想されています。

米国の天然ガス輸出にはエネルギー省(DOE)の認可が、実際の輸出施設の建設には連邦エネルギー規制委員会(FERC)の認可が必要であり、従来は、メキシコなどのFTA締結国に対してのみ、長期契約によるパイプライン経由の天然ガス輸出が行われてきました。

シェールガスの増産が進んだ2011年5月、本土48州で生産されたLNGの非FTA締結国向け長期輸出に関する申請が初めて認可され、メキシコ湾沿岸に位置するサビンパスLNGプロジェクト(Sabine PassLNG)が天然ガス輸出を行う権限を得ました。

その後2015年5月までに、7件の非FTA締結国向けLNG輸出プロジェクトが認可されました。このうち、フリーポート、コーヴポイント、キャメロンの各プロジェクトには日本企業も関与しており、非FTA締結国の一つである日本向けの長期的なLNG輸出が開始されることになります。

非FTA締結国へのLNG輸出に関しては、連邦議会内で認可プロセスを短縮化する議論も行われており、今後の動向も注目されます。

【第111-3-5】米国の天然ガスの生産量、消費量と輸入・輸出量の推移と見通し

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(出典)
EIA統計

②原油輸出入動向

シェールオイル生産量の堅調な増加により、米国の輸入原油への依存度は減少しています。2013年10月には、1993年以降で初めて米国の原油生産量が原油の輸入量を上回りました。

【第111-3-6】米国が認可した主な非FTA締結国向けLNG輸出プロジェクト(2015年5月時点)

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(出典)
DOE and FERC

【第111-3-7】米国の原油生産量、消費量、輸入量

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(出典)
EIA統計

増産されているシェールオイルは軽・中質油に分類される原油であるため、主に軽質油が中心であったアフリカからの原油輸入量が減少しています。米国メキシコ湾沿岸の精製所市場ではアフリカ原油は姿を消しており、大西洋岸の精製所でも少量の輸入にとどまっています。

一方、中東のサウジアラビアやクウェートは、米国における原油輸入シェアを拡大させています。

【第111-3-8】米国の原油輸入先上位10か国の変化

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(出典)
EIA統計を基に作成

1973 ~ 74年に実施された中東産油国による原油禁輸措置に対応するために、1975年に制定されたエネルギー政策及び保全法(Energy Policy andConservation Act)(EPCA)の各条項を受け、米国の原油の輸出は厳重に規制されています。商務省産業安全保障局(BIS)の認可があれば輸出は可能ですが、カナダ国内での消費や使用を目的とする輸出や、パイプラインで輸送されないアラスカ原油の海上からの輸出など、認可が与えられるのは特定のケースに限られています。

シェールオイルの増産を受け、米国の石油会社、特に精製施設を持たない小規模の独立系石油会社は、国際市場価格が国内販売価格より高値であることから、原油輸出禁止の解除を強く求め、コンデンセート油の輸出に関する広範な例外を認めさせようとする動きが激しくなりました。

米国では、製油所でつくられるコンデンセート油(プラントコンデンセート)の輸出は許されている一方、シェールガスとの併産などのように井戸元で生産されるコンデンセート油(リースコンデンセート)の輸出は禁止されていました。

2014年後半、商務省産業安全保障局(BIS)はコンデンセート油に関する新たな輸出指針を発表し、蒸留装置で加工されたリースコンデンセートについては自由に輸出可能な石油製品であると定めました。

米国エネルギー省情報局(EIA)は同時期より、コンデンセート油(プラントコンデンセート・リースコンデンセートの双方含む)の輸出に関するデータの報告を開始し、2014年8月には70万バレル、10月には40万バレルの輸出が行われたと推定しています。同年には、日本企業や韓国企業が米国よりコンデンセートを輸入しています。

原油自体の禁輸解除については、連邦議会内で議論する動きが出てきているものの、具体的な見通しは立っていません。現在のオバマ政権は、既存の法的権限内で禁輸解除を支持するか否かを公的に表明していない状態です。

米国の精製会社は、輸入石油製品との競争の観点から、国内の原油価格が国際価格並みに上昇することを好まないため、概して禁輸解除に反対しています。また、一般的な米国民は、ガソリンやディーゼル価格の上昇に対する懸念から禁輸解除に反対しているとされており、原油禁輸解除をめぐる議論の動向は不透明です。

③石炭輸出拡大

次項で述べるとおり、シェールガスの増産で、天然ガス価格が低位安定化していることで、米国の発電用燃料における石炭から天然ガスへの転換が進んでいます。国内での石炭消費は減少傾向にあることから、新たな販売先を求めて、石炭の輸出が拡大しています。

「シェール革命」直前と直近の石炭の輸出状況を比較すると、欧州への輸出量が3倍以上となっています。また、その他アジアの増加分の半数近くは中国への輸出拡大(0→7,989千トン)によるものです。

【第111-3-9】米国の石炭消費量の変化

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(出典)
IEA「Energy Balance of OECD Countries 2014」を基に作成

【第111-3-10】米国の石炭輸出量の変化

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(出典)
IEA「Coal Information」を基に作成

(3)需要

①電力部門

シェールガスの増産によって天然ガス価格が下落したことで、米国の電力部門は火力発電において、石炭の消費量を減らし、天然ガスの消費量を増加させました。

加えて、旧式化した石炭火力発電所の閉鎖や、政府による再生可能エネルギーの導入推進策などにより、2000年代初頭には米国における発電全体の半分以上を占めていた石炭火力発電は、大きくシェアを落としました。

石炭と天然ガスの割合は、2035年までには逆転すると予測されています。

原子力発電も、大きなシェアの変動はありませんが、シェールガス増産による影響を受けている分野です。

2000年代初頭には、価格が上下して不安定な原料価格や環境面での火力発電への懸念から、改めて原子力発電の利点が注目され、1996年以来となる原子力発電所の新設に向けて、2005年のエネルギー政策法(Energy Policy Act of 2005)には原子力発電所新設に関して融資保証や発電量に応じた一定の税額控除の付与などの政策支援策が盛り込まれました。そのようなインセンティブ措置の導入を受け、その後ほぼ2007 ~ 2008年のみで計18件の建設・運転一体認可(COL)申請が米原子力規制委員会(NRC)に対して行われ、28基の原子炉新設が計画されました。

しかし、2008年の金融危機による景気後退に加え、安価な国内エネルギーと考えられるシェールガスの増産が、新たな原子力発電所の建設に関する投資回収の見通しに影響を及ぼしました。現在、7件のCOL申請に関するNRCのレビューはライセンス申請者の要請により保留されています。

【第111-3-11】米国の電源構成の変化と見通し

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(出典)
EIA統計

②その他

シェールガスの増産は、大量のエネルギーを消費する米国重工業の見通しを回復させる方向に作用し、多大な競争優位をもたらしています。

最も恩恵を享受するのが石油化学産業です。米国でのエチレンの製造では、従来、原油の精製過程で得られるナフサが使用されてきましたが、シェールガスに含まれるエタンを活用することで、原料の大幅なコストダウンが可能となりました。こうして製造される国際競争力の高い石油精製製品は、サウジアラビアなどの中東諸国と競合できるレベルに達しています。

2012年時点で、シェールガス開発を受けた石油化学工業全体の設備投資額は150億ドルにのぼり、生産能力の3割増につながっています。

鉄鋼業界においても、鉄鉱石から酸素を取り除く方法として、石炭を原料としたコークスを利用する方法に代わり、天然ガスを利用する方法(直接還元)を活用する動きが拡大しています。直接還元の製鉄プラントは、コークスを利用するプラントと異なり高炉の建設が不要なため設備投資が少額で済むことから、天然ガスを産出する発展途上国を中心に、自国において鉄鋼の供給力を確保する手段として建設されてきました。

直接還元による製鉄技術を有するMIDREX社は、鉄鋼に対する需要と安いガスを背景に、米国では2020年までに、更に5 ~ 6百万トンの生産力に相当する2 ~ 3の製鉄所が建設されるだろうと予測しています。

4.「シェール革命」の懸念材料

米国エネルギー省情報局(EIA)の2014年の報告によれば、米国の天然ガスの生産量は2012年から2040年にかけて平均1.6%の割合で増加する見通しです(図【第111-3-5】参照)。また、OPECの年次レポートでは、2013年に約320万バレル/日であった米国のシェールオイルの生産量が、2020年には400万バレル/日を超えると予測しています。

このように、米国の「シェール革命」は当面継続していくものとみられていますが、それを妨げる可能性のある以下のような動きも出てきています。

(1)環境への影響

前項(3)のとおり、「シェール革命」によって発電分野での石炭から天然ガスへの転換が進むことで、発電由来の温室効果ガスの削減が見込まれます。しかしその一方で、シェールガス・シェールオイルの開発現場においては、地球環境に対し、以下のような懸念が指摘されています。

  • ①フラクチャリングに大量の水を使用することへの懸念
  • ②フローバックされた水の再処理が、時間的、量的な限界に陥る可能性等

これらの懸念はシェールガス・シェールオイルの生産量が増加するに従い、問題化する恐れが高まるといえるものであり、米国では、これらの懸念事項に対する取り組みを行っています。

2015年3月には、米国内務省が連邦政府所有地及び先住民居住区におけるフラクチャリングの規制を発表し、フラクチャリングに用いられた化学物質を報告・公開すること等を義務づけました。

また、2015年6月には、米国環境保護庁がフラクチャリングの地下飲料水に及ぼす影響についての報告書を発表しました。この報告書によると、フラクチャリングの使用が地下飲料水に影響を及ぼしているという証拠は発見されなかったと結論づけられています。

(2)足元の原油価格下落

前項でみたように、「シェール革命」と呼ばれるまでの変化を生んだ、増産、国内消費拡大、輸出拡大の背景には、シェールガスやシェールオイルの価格優位性があります。すなわち、天然ガスや原油の市場価格より低い値段で開発できるようになったことから増産が進み、他のエネルギー価格よりも安いことから国内の発電や重工業部門での消費が増え、国際市場においても、他の地域からのLNGやコンデンセート油よりも安く販売できることから輸出が拡大してきたということです。

裏を返せば、価格優位性が失われれば、生産、輸出、消費のいずれの分野でもシェールガスやシェールオイルが選択されなくなる恐れがあるということになります。

2014年6月以降の世界的な原油価格下落は、今後シェールガス・シェールオイルの優位性を低減させ、生産を停滞させていく可能性があります。既に米国の石油及びガス会社では、2014年10月以降、掘削活動の減少が続いています。