【参考資料】 エネルギー基本計画(2014年4月11日閣議決定)

はじめに

我が国は、エネルギー源の中心となっている化石燃料に乏しく、その大宗を海外からの輸入に頼るという根本的な脆弱性を抱えており、エネルギーを巡る国内外の状況の変化に大きな影響を受けやすい構造を有している。国民生活と産業活動の血脈であるエネルギーの安定的な確保は、国の安全保障にとって不可欠なものであり、我が国にとって常に大きな課題であり続けている。さらに、国際的な地政学的構造の大きな変化に直面する中で、我が国のエネルギー安全保障を巡る環境は、厳しさを増してきている。

このような我が国の状況に対応するためには、長期的、総合的かつ計画的な視点に立って、エネルギー政策を遂行していくことが必要である。こうしたエネルギー政策の着実な遂行を確保することを目的として、2002年6月に「エネルギー政策基本法」(以下「基本法」という。)が制定された。

基本法は、政府が総合資源エネルギー調査会の意見を聴いて、エネルギーの需給に関する施策の長期的、総合的かつ計画的な推進を図るために「エネルギー基本計画」(以下「計画」という。)を策定することを定め、少なくとも3年に1度の頻度で内容について検討を行い、必要に応じて変更を行うことを求めている。

こうした基本法に基づき、2003年10月に最初の計画が策定され、その後、2007年3月に第二次計画、2010年6月に第三次計画が策定された。

第三次計画では、2030年に向けた目標として、エネルギー自給率と化石燃料の自主開発比率を倍増して自主エネルギー比率を約70%とすること、電源構成に占めるゼロ・エミッション電源(原子力及び再生可能エネルギー由来)の比率を約70%とすることなどを記載していた。

しかし、第三次計画の策定後、エネルギーを巡る環境は、東日本大震災及び東京電力福島第一原子力発電所事故を始めとして、国内外で大きく変化し、我が国のエネルギー政策は、大規模な調整を求められる事態に直面することとなった。

第四次に当たる本計画は、こうした大きな環境の変化に対応すべく、新たなエネルギー政策の方向性を示すものである。

本計画では、中長期(今後20年程度)のエネルギー需給構造を視野に入れ、今後取り組むべき政策課題と、長期的、総合的かつ計画的なエネルギー政策の方針をまとめている。

特に、電力システム改革を始めとした国内の制度改革が進展するとともに、北米からのLNG調達など国際的なエネルギー供給構造の変化が我が国に具体的に及んでくる時期(2018年~2020年を目途)までを、安定的なエネルギー需給構造を確立するための集中改革実施期間と位置付け、当該期間におけるエネルギー政策の方向を定める。

東京電力福島第一原子力発電所事故で被災された方々の心の痛みにしっかりと向き合い、寄り添い、福島の復興・再生を全力で成し遂げる。震災前に描いてきたエネルギー戦略は白紙から見直し、原発依存度を可能な限り低減する。ここが、エネルギー政策を再構築するための出発点であることは言を俟たない。

政府及び原子力事業者は、いわゆる「安全神話」に陥り、十分な過酷事故への対応ができず、このような悲惨な事態を防ぐことができなかったことへの深い反省を一時たりとも放念してはならない。

発生から約3年が経過する現在も約14万人の人々が困難な避難生活を強いられている。原子力賠償、除染・中間貯蔵施設事業、廃炉・汚染水対策や風評被害対策などへの対応を進めていくことが必要である。また、使用済燃料問題、最終処分問題など、原子力発電に関わる課題は山積している。

これらの課題を解決していくためには、事業者任せにするのではなく、国が前面に出て果たすべき役割を果たし、国内外の叡智を結集して廃炉・汚染水問題の解決に向けた予防的かつ重層的な取組を実施しなければならない。

我が国経済に目を向けると、景気回復の裾野は、着実に広がっている。リーマン・ブラザーズの破綻後に0.42倍まで落ち込んだ有効求人倍率は、6年6ヶ月ぶりに1.05倍を回復し、北海道から沖縄まで全ての地域で、1年前と比べ、消費が拡大した。日本銀行が2013年12月に発表した全国企業短期経済観測調査(短観)では、中小企業の景況感も、製造業で6年ぶり、非製造業で21年10ヶ月ぶりに、プラスに転じたところである。

今後、企業の収益を、雇用・投資の拡大や所得の上昇につなげていき、経済の好循環の実現を目指す。

一方、原子力発電所が停止した結果、震災前と比べて化石燃料の輸入が増加することなどにより、日本の貿易収支は赤字幅を拡大してきている。こうした化石燃料への依存度の高まりは、電気料金を始めとしたエネルギーコストの増大となって、経済活動や家計に負担をかけており、雇用や可処分所得へも影響が及ぶ構造となっている。

また、2020年には、東京においてオリンピック・パラリンピック競技大会が開催されることが決定され、国際的な重要イベントを成功裏に実現するための準備期間へと入ることとなった。

好循環に入りつつある経済や国際的な重要イベントの準備を確実に支えるのは、あらゆる国民生活・社会活動の基盤となる安定的かつ低コストなエネルギー需給構造である。

一方、現代社会を支えるエネルギーの需給構造は、全容を容易に理解することが困難なほど、複雑かつ緻密で、国境を越えて国際的拡がりを持つものとなっている。エネルギー需給構造に潜むリスクも多様性を増し、エネルギー関連施設などに関係するどんな事故であれ、社会の広範囲にわたって多大な影響を与える危険性を孕むものとなっている。

このようなエネルギー需給構造を我が国にとって最適なものとすることは、簡単に解決策を見つけ出せるようなものではなく、詳細な状況把握と戦略的な課題解決に向けた戦略的かつ現実的な取組によって初めて実現できるものである。

つまり、エネルギー政策に奇策は通用しない。

未来に向けて、政府は、我が国の国民生活と経済・産業を守るための責任あるエネルギー政策を立案・実行しなければならない。電力供給構造における海外からの化石燃料への依存度は第一次石油ショック当時よりも高い状況にあり、我が国のエネルギー安全保障を巡る環境は厳しい状況にあると言わざるを得ない。また、こうした状況は、エネルギーコストの上昇と温室効果ガスの排出量の増大の原因となり、我が国の経済・産業活動や地球温暖化対策への取組に深刻な影響を与えている。この現実を一刻も早く打破する必要がある。

我が国が目指すべきエネルギー政策は、世界の叡智を集め、徹底した省エネルギー社会の実現、再生可能エネルギーの導入加速化、石炭火力や天然ガス火力の発電効率の向上、蓄電池・燃料電池技術等による分散型エネルギーシステムの普及拡大、メタンハイドレート等非在来型資源の開発、放射性廃棄物の減容化・有害度低減など、あらゆる課題に向けて具体的な開発成果を導き出せるような政策でなければならない。そして同時に、地球温暖化問題解決への貢献といった国際的責務も正面から受け止めつつ、国民一人一人の意見や不安に謙虚に向き合い、国民の負託に応え得るエネルギー政策である。

世界的に見れば、エネルギーの安定的確保は人権、環境など社会そのものの在り方に関わる人類共通の課題である。我が国の挑戦が、世界の子供たちの将来を希望に満ちたものとする、そのような貢献となることを目指したい。

第1章 我が国のエネルギー需給構造が抱える課題

第1節 我が国が抱える構造的課題

1.海外の資源に大きく依存することによるエネルギー供給体制の根本的な脆弱性

我が国は、国民生活や産業活動の高度化、産業構造のサービス化を進めていく中で、1973年の第一次石油ショック後も様々な省エネルギーの努力などを通じてエネルギー消費の抑制を図り、2012年の最終エネルギー消費は1973年の1.3倍の増加に留めた。

我が国では現状、ほとんどのエネルギー源を海外からの輸入に頼っているため、海外においてエネルギー供給上の何らかの問題が発生した場合、我が国が自律的に資源を確保することが難しいという根本的な脆弱性を有している。

こうした脆弱性は、エネルギー消費の抑制のみで解決されるものではないことから、我が国は中核的エネルギー源である石油の代替を進め、リスクを分散するとともに、国産エネルギー源を確保すべく努力を重ねてきた。

その結果、2010年の原子力を含むエネルギー自給率は19.9%にまで改善されたが、なお、根本的な脆弱性を抱えた構造は解消されていない。

2.人口減少、技術革新等による中長期的なエネルギー需要構造の変化

我が国の人口は減少に向っており、2050年には9,708万人になると予想されている(社会保障・人口問題研究所)。こうした人口要因は、エネルギー需要を低減させる方向に働くことになる。

また、自動車の燃費や、家電の省エネルギー水準が向上しているほか、製造業のエネルギー原単位も減少傾向にあるなど、我が国の産業界の努力により、着実に省エネルギー化が進んでいる。

さらに、電気や水素などを動力源とする次世代自動車や、ガス等を効率的に利用するコージェネレーションの導入などによるエネルギー源の利用用途の拡大なども需要構造に大きな変化をもたらすようになっている。

急速に進行する高齢化も、これまでのエネルギーに対する需要の在り方を変えていくこととなる。

こうした人口減少や技術革新等を背景とした我が国のエネルギー需要構造の変化は、今後とも続くものと見込まれ、このような変化に如何に対応していくかが課題となっている。

3.新興国のエネルギー需要拡大等による資源価格の不安定化

世界に目を転じると、エネルギーの需要の中心は、先進国から新興国に移動している。世界のエネルギー需要は、2030年には2010年の1.3倍に増加すると見込まれているが、需要増加の9割は非OECD(経済協力開発機構)諸国のエネルギー需要の増加によるものである。

エネルギー需要を拡大する中国やインド等の新興国は、国営企業による資源開発・調達を積極化させており、新興国の企業群も交えて激しい資源の争奪戦が世界各地で繰り広げられるようになっている。

こうした資源獲得競争の激化や地域における紛争、さらには経済状況の変化による需要動向の変動が、長期的な資源価格の上昇傾向と、これまで以上に資源価格の乱高下を発生させやすい状況を生み出している。中国の海外からの原油調達が急増し始める2004年以降、30ドル/バレル前後であった原油価格(日経ドバイ)は2008年夏には瞬間的に140ドル/バレルを超えるまでに急騰した。その直後に発生したリーマン・ブラザーズの破綻をきっかけに深刻化した金融危機により、欧米を中心に需要見通しが大きく落ち込んだ結果、原油価格は40ドル/バレルを割り込むまでに落ち込んだが、現在は再び上昇し、100ドル/バレルを超える水準となっている(2014年4月1日現在 日経ドバイ104.20ドル/バレル)。今後も、中東地域における政治・社会情勢や欧米、中国等の経済状況によって、原油価格に大きな変動が生じる状況が続いていくものと考えられる。

4.世界の温室効果ガス排出量の増大

新興国の旺盛なエネルギー需要は、温室効果ガスの排出状況の様相も一変させるに至っている。世界の二酸化炭素排出量は、約210億トン(1990年)から約305億トン(2010年)に増加した。特に新興国における増加が顕著であり、今では、世界全体の排出量全体に占める先進国の排出量の割合は、1990年には約7割であったものが、2010年には約4割に低下し、先進国と途上国の排出量の割合が逆転した。

国際エネルギー機関(IEA)によれば、世界全体のエネルギー起源二酸化炭素の排出量は、2035年までに、さらに20%増加すると予測されている。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第5次評価報告書では、気候システムの温暖化について疑う余地がないこと、また、気候変動を抑えるためには温室効果ガスの抜本的かつ継続的な削減が必要であることが示されている。地球温暖化問題の本質的な解決のためには、国内の排出削減はもとより、世界全体の温室効果ガス排出量の大幅削減を行うことが急務である。

第2節 東京電力福島第一原子力発電所事故及びその前後から顕在化してきた課題

1.東京電力福島第一原子力発電所事故による深刻な被害と原子力発電の安全性に対する懸念

東日本大震災とそれによる巨大津波は、被災地域に甚大な損害をもたらすとともに、電源喪失などにより原子炉を冷却できず東京電力福島第一原子力発電所の深刻な事故を引き起こした。周辺地域の住民は避難生活を余儀なくされる事態となり、未だに約14万人の避難住民が帰還できない状況が続いている。

東京電力福島第一原子力発電所の廃炉は、長い時間を要し、腰を据えた取組が必要となる。汚染水処理対策、使用済燃料プールからの燃料の取り出し、燃料デブリの取り出し、貯蔵施設の確保と厳格な保管など、技術的に多くの困難が伴う取組であるが、官民を挙げて、かつ、世界の叡智を集め、一歩一歩着実に進めていかなければならない。

東京電力福島第一原子力発電所の事故は、過酷事故への対応策が欠如していたことを露呈した。いわゆる「安全神話」に陥ってしまったことや、被災者の皆様を始めとする国民の皆様に多大な困難を強いる事態を招いてしまったことへの深い反省を、政府及び事業者は一時たりとも放念してはならない。

事故の反省と教訓を踏まえ、原子力規制委員会が設立され、世界で最も厳しい水準の規制基準が施行された。現在、原子力規制委員会により、事業者の申請に基づき、既存の原子力発電所に関する技術的、科学的な審査が厳格に行われている。

2.化石燃料への依存の増大とそれによる国富の流出、供給不安の拡大

原子力発電所が停止した結果、2012年時点におけるエネルギー自給率は、6.0%まで落ち込み、国際的に見ても自給率の非常に低い脆弱なエネルギー供給構造となっている。原子力を代替するために石油、天然ガスの海外からの輸入が拡大することとなり、電源として化石燃料に依存する割合は震災前の6割から9割に急増した。日本の貿易収支は、化石燃料の輸入増加の影響等から、2011年に31年ぶりに赤字に転落した後、2012年は赤字幅を拡大し、さらに2013年には過去最大となる約11.5兆円の貿易赤字を記録した。貿易収支の悪化によって、経常収支も大きな影響を受けており、化石燃料の輸入額の増大は、エネルギー分野に留まらず、マクロ経済上の問題となっている。

現在、原子力発電の停止分の発電電力量を火力発電の焚き増しにより代替していると推計すると、2013年度に海外に流出する輸入燃料費は、東日本大震災前並(2008年度~2010年度の平均)にベースロード電源として原子力を利用した場合と比べ、約3.6兆円増加すると試算される。

海外からの化石燃料への依存の増大は、資源供給国の偏りというもう一つの問題も深刻化させている。現在、原油の83%、LNGの30%を中東地域に依存しており(2013年)、中東地域が不安定化すると、日本のエネルギー供給構造は直接かつ甚大な影響を受ける可能性がある。

石油の場合、第一次石油ショック後から整備してきた備蓄制度によって、需要の190日分(2014年1月末時点)の備蓄が確保されており、供給途絶に至る事態が発生した場合でも、輸入が再開されるまでの国内供給を支えることが一定程度可能である。他方、天然ガスについては、供給源が多角化しているものの、発電用燃料として急速に利用が拡大しているため、主要な供給地において供給途絶に至るような事態が発生した場合には、電力供給体制に深刻な影響を及ぼす可能性があり、そうした事態に陥らないよう、北米からのLNG供給を含む供給源の更なる多角化を迅速に進める必要に迫られている。

3.電源構成の変化による電気料金上昇とエネルギーコストの国際的地域間格差によるマクロ経済・産業・家計(国民生活)への影響

(1)電気料金の上昇とその影響

6電力会社が既に規制部門の電気料金について6.2~9.8%の値上げなどの改定を行っているが、実際には、高騰する燃料価格等により、全国で標準世帯のモデル料金が2割程度上昇している。

さらに、2012年7月から始まった固定価格買取制度により、再生可能エネルギー供給のための設備投資が加速し始め、非住宅向け太陽光発電を中心とした導入が急増している。同制度開始以降2013年12月末までに、再生可能エネルギーの設備導入量は制度開始前と比較して34%増加したが、電気利用者への負担は、2014年度、賦課金がkWh当たり0.75円であり(国全体で6,520億円)、標準家庭モデルで月に225円ほどとなっている。固定価格買取制度に基づいて導入される再生可能エネルギーは、今後増加していくと考えられ、電気利用者の負担の上昇要因となっていくと考えられる。

様々な要因による電気料金の上昇は、電力を大量に消費する産業や中小企業の企業収益を圧迫し、人員削減、国内事業の採算性悪化による海外への生産移転等の悪影響が生じ始めており、海外からの対日投資の拡大を進める上でも、大きな障害となる。また、家計に対しても、負担が増加していくこととなる。

マクロ経済に対する影響について、2011年12月に内閣府が「日本経済2011−2012」の中で、原子力発電を火力発電ですべて置き換えた場合、電力業の生産性が10%程度低下すると見込まれる(すなわち発電コストが上昇する)ことから、潜在GDPは0.39~0.60%程度減少するという試算を示しており、エネルギー構造の変化が経済成長にも悪影響を及ぼすことが懸念されている。

(2)エネルギーコストの国際的地域間格差の拡大とその影響

北米で始まったシェール革命は、天然ガスを始めとして国際的な地域間におけるエネルギー価格に大きな格差を生じさせており、このことが、各国の産業構造に対して大きな影響を与える可能性がある。

IEAの「世界エネルギー展望(World Energy Outlook)2013」では、米国内の天然ガス価格は欧州の4分の1以下、日本の6分の1となっており(2012年平均)、この地域間のエネルギー価格差が継続した場合、世界で産業部門のエネルギー使用量の7割を占めるエネルギー集約型産業(化学、アルミ、セメント、鉄鋼、製紙、ガラス、石油精製)については、日、米、EUを比べた場合、米国のみが拡大し、日、EU合わせて現在の輸出シェアの3分の1を失うとの試算が示されている。このように、エネルギーコストの国際的な地域間格差が、エネルギー分野に留まらず、石油化学産業等も含め、産業活動に大きな変化をもたらし、経済成長や産業構造に大きな影響を与える可能性がある。

4.我が国の温室効果ガス排出量の急増

化石燃料依存の増大は、コスト面だけでなく、地球温暖化問題への対応についても困難をもたらしている。

現在、エネルギー起源の温室効果ガスの排出は、発電部門において、大幅に増加している。2010年度の二酸化炭素排出量と比べて、2012年度の一般電気事業者以外の排出量が29百万トン減少しているにも関わらず、一般電気事業者の排出量が112百万トン増加した結果、全体として二酸化炭素排出量は83百万トンの大幅な増加となった。

これまで国際的な地球温暖化対策をリードしてきた我が国の姿勢が問われかねない状況となっている。

また、こうした変化は、企業活動のライフサイクルアセスメントに悪影響を及ぼし、企業の海外移転の加速につながる。

5.東西間の電力融通、緊急時供給など、供給体制に関する欠陥の露呈

(1)電力供給体制における問題

東日本大震災では、太平洋側の多くの発電所が停止し、広域的な系統運用が十分にできなかったことから、不足する電力供給を手当てすることができず、東京電力管内において計画停電を実施することとなった。

2011年7月から9月には、電力供給不足による停電を避けるため、電気事業法第二十七条に基づく電気の使用制限が行われた。2012年、2013年には節電要請などの電力需給対策が講じられた結果、電力の需給バランスは維持されたが、老朽火力発電所を含め、火力発電をフル稼働させることで補っている状況にあり、発電施設の故障などによる電力供給不足に陥る懸念が依然として残っている。

こうした状況に対応するためには、電力需給バランスに比較的余裕のある地域から電力不足が懸念される他の地域に電力を融通するなどの柔軟な対応が必要となるが、我が国では東西間等の地域間連系線の容量が不足し、広域運用の仕組みも不十分である。さらに、電気料金・サービスに関するメニューも多様性を欠き、需要家側の柔軟な取組を供給構造にうまく取り込めないという供給体制の柔軟性の欠如が浮き彫りとなっている。

こうしたエネルギー供給の不安定性に対して、地域の特徴も加味して、様々なエネルギー源を組み合わせて最適に活用することで対応力を強化することも可能な分散型エネルギーシステムの有効性が認識されるなど、日本全体としてリスクを分散し、エネルギー供給網の強靱化を進めていくことが必要となっている。

(2)石油・都市ガス供給体制における問題

東日本大震災の経験は、危機時における石油・都市ガスの緊急供給体制の在り方についても多くの課題が存在することを明らかにした。

都市ガスについては、被災地の仙台においてLNG基地やガス供給網の損壊により供給が滞ったが、新潟から仙台につながるガスパイプラインを活用した日本海側からの都市ガス供給施設の存在がバックアップ的機能を果たした。今後、利用の増加が見込まれる天然ガスについては、パイプラインを含めて安定供給を確保する観点からの検討が必要である。

供給障害に陥った電力や都市ガスを補完したのが、石油とLPガスであった。被災地から政府が受け付けた緊急物資供給要請の約3割は石油製品(ガソリン・軽油・灯油等)であり、石油精製・元売各社は系列を超えて共同で危機に対応し、危機に強いエネルギーとして石油の重要性が再確認された。しかし、地震や津波により複数の製油所が操業を停止し(うち3つの製油所は長期の操業停止)、道路・港湾等の物流インフラが地震・津波の影響で寸断され、輸送手段(タンクローリー・タンカー)や物流基地(油槽所)も被災するような事態を想定していなかったこと、石油供給支援にかかる関係省庁間での協力準備が不十分であったこと、石油精製・元売各社が系列を超えて共同で危機に対応することに不慣れであったことなど、被災地への円滑な石油供給に大きな課題が存在することが確認された。

6.エネルギーに関わる行政、事業者に対する信頼の低下

東京電力福島第一原子力発電所事故以前から、事故情報の隠蔽問題や、もんじゅのトラブル、六ヶ所再処理工場の度重なる操業遅延、高レベル放射性廃棄物の最終処分地の選定の遅れ等、原子力政策をめぐる多くのトラブルやスケジュールの遅延が、エネルギーに関わる行政や事業者に対する国民の不信を招いてきた。

さらに、東京電力福島第一原子力発電所事故とその後の対応を進める中で、行政と事業者は、情報共有の在り方、地元とのコミュニケーションに関する問題意識の不足など多くの批判を受け、国民からの信頼を著しく低下させる事態を招いた。

7.需要動向の変化−コージェネレーションの導入増や節電行動の変化

東日本大震災後、我が国の最終エネルギー消費は、2010年から2012年にかけて4.2%減少したが、そのうち電力消費については、8.0%の減少となり、エネルギー全体の消費減少を上回る減少幅となった。

一方、コージェネレーションの発電容量は、2010年度に比べて、2012年度は2.7%増となり、電気料金上昇の影響が、産業・業務部門におけるコージェネレーションの増加という形で、エネルギー利用の在り方に変化をもたらしている可能性が示されている。

また、一般家庭においても電気料金の負担感が徐々に増してきている状況にあり、家庭における節電行動の動機は、電力供給不足への協力という動機から、電気料金上昇の家計への影響を緩和するためのものへと変化し始めている。

幅広い住民の参加を得た、時間帯ごとの電気料金の価格差に大きな差をつけるCPP(Critical Peak Pricing)の実証事業では、電気料金を3~10倍に引き上げた場合には、電力使用のピークを20%程度抑制する効果が確認されている。現在のようにエネルギー価格が全体的に上昇圧力を受けている状況では、需要側に働きかける手法は、大きな効果が得られる可能性がある。

8.中東・北アフリカ地域の不安定化等資源供給地域の地政学的構造変化

東日本大震災を契機とした国内の大きな環境変化とともに、前回の第三次計画(2010年6月閣議決定)以降、国際的な地政学的構造にも大きな変化が現れている。

我が国が化石燃料、特に石油を依存している中東地域では、2010年12月に発生したチュニジアのジャスミン革命が、ヨルダン、エジプト、バーレーンなどへと飛び火し、いわゆる“アラブの春”が中東・北アフリカ地域に拡がった。この結果、こうした地域全体の政治・社会構造が不安定化し、原油の供給不足発生への不安から原油市場も不安定化することとなった。このような状況は、エジプトの情勢不安、シリアの内戦化など、現在も継続しており、当該地域の安定化に向けた道筋は、未だはっきりとは見えていない。

また、イランの核開発疑惑は、地域の緊張を高めた。イランに新政権が発足し、関係国との対話が進んでいることが今後中東情勢にどのような影響を及ぼしてくるのか、とりわけ、ホルムズ海峡の安全通行問題も含めた中東からの石油・LNGの安定供給にどう影響するのか、引き続き注視しなければならない状況になっている。

さらに、中長期的には、次に述べるシェール革命による米国のエネルギー分野における自立化が、米国による中東情勢への関与を弱めさせ、結果として中東情勢をより不安定化させる可能性についても、エネルギー安全保障の観点から考慮することが重要である。

日本のシーレーン全体を視野に入れると、シーレーン上の沿岸国間に海洋境界をめぐる緊張関係が見られるとともに、東南アジア海域では海賊・武装強盗事案の発生件数は近年増加傾向にあり、我が国が直接関わるエネルギー供給ネットワークをめぐる状況は決して安定しているわけではない。

9.北米におけるシェール革命の進展による国際エネルギー需給構造の変化の兆し

シェール層に含まれる非在来型の天然ガス・原油の開発が北米大陸で始まったことが、世界の化石燃料供給構造が大きく変化する可能性を明らかにしつつある。

米国におけるシェールガスの開発は、2006年以降急激に増加している。このため、リーマン・ブラザーズの破綻による金融危機で天然ガス価格が急激に下落した後、国際的には2010年から天然ガス価格が再び上昇傾向に転じたのに対し、米国では、天然ガス価格が低位なままで推移し、原油と連動して価格が決まる国際ガス価格市場とは異なる天然ガス市場が成立している。

シェールオイルについても、2010年から2012年にかけてシェールオイルの生産量は2倍以上増加して、米国の石油生産量は世界有数の規模となり、今後、石油についても米国が北米大陸の外に依存する割合を低下させていく可能性が開けている。

シェール革命の果実を得た米国は、2018年には、天然ガスの純輸出国になることが見込まれるほか、電源を石炭から天然ガスにシフトする動きを加速している。これにより米国から欧州への石炭の輸出が拡大しており、欧州では石炭火力発電への依存が深まりつつある。

北米大陸の国際エネルギー供給構造からの自立化の動きは、隣接する南米大陸における非在来型を含む石油・ガスの開発も促していく可能性が高く、西半球が中東地域を中心とした化石燃料の供給体制から自立していく方向に進んでいくと見込まれる。この結果、中東地域はエネルギー需要が増大するアジア地域への供給を拡大し、既に中東地域に石油供給を大きく依存するアジアが、中東地域への依存を更に深めていく可能性がある。

このような国際的なエネルギー供給構造の変化は、天然ガスなどを中心に世界の需要構造にも大きな影響を与えることが見込まれ、国際エネルギー需給構造は大きく変化していく可能性がある。

国際エネルギー市場の重心がアジアにシフトしていく中でも、特に台頭する中国の影響力が大きく拡大している。国際政治・経済・エネルギー市場の中で高まる中国の影響力・存在感を踏まえつつ、その中国とどう向き合い、国際的な秩序をいかに形成していくかということは、我が国のみならず今後の世界全体の課題となる。我が国としては、アジアのLNG高価格問題や環境問題など、共通課題の解決に向けては、適切な協調関係を保つことも検討する必要がある。

10.新興国を中心とした世界的な原子力の導入拡大

急激なエネルギー需要の伸びと、中東・北アフリカ地域の不安定化は、中東の化石燃料への依存を深めているアジアを中心とした地域で、エネルギー安全保障の観点から、化石燃料を補完する有力なエネルギー源として、原子力の利用を拡大しようとする動きを加速させる方向に作用している。

新興国における原子力の導入は、今後拡大していく可能性が高く、日本の近隣諸国でも原子力発電所の多数の新増設計画が進められている。

一方、原子力の平和・安全利用、不拡散問題、核セキュリティへの対応は、エネルギー需給構造の安定化だけでなく、世界の安全保障の観点から、引き続き重要な課題である。新たに原子力を利活用する国が増大していくことが見込まれる中、原子力の国際的な利活用を管理してきた国際原子力機関(IAEA)等の国際機関や原子力利用の主要国の役割は、今後さらに重要性を増していくことになる。原子力をめぐる議論は、一国に閉じた議論では十分に対応できるものではなくなり、より国際的な観点で取組を進めていかなければならない課題となっている。

第2章 エネルギーの需給に関する施策についての基本的な方針

第1節 エネルギー政策の原則と改革の視点

1.エネルギー政策の基本的視点(3E+S)の確認

(1)エネルギー政策の基本的視点(3E+S)

エネルギーは人間のあらゆる活動を支える基盤である。

安定的で社会の負担の少ないエネルギー供給を実現するエネルギー需給構造の実現は、我が国が更なる発展を遂げていくための前提条件である。

しかしながら、第1章で述べたとおり、我が国のエネルギー需給構造は脆弱性を抱えており、特に、東日本大震災及び東京電力福島第一原子力発電所事故後に直面している課題を克服していくためには、エネルギー需給構造の改革を大胆に進めていくことが不可避となっている。

エネルギー政策の推進に当たっては、生産・調達から流通、消費までのエネルギーのサプライチェーン全体を俯瞰し、基本的な視点を明確にして中長期に取り組んでいくことが重要である。

エネルギー政策の要諦は、安全性(Safety)を前提とした上で、エネルギーの安定供給(Energy Security)を第一とし、経済効率性の向上(Economic Efficiency)による低コストでのエネルギー供給を実現し、同時に、環境への適合(Environment)を図るため、最大限の取組を行うことである。

(2)国際的な視点の重要性

現在直面しているエネルギーをめぐる環境変化の影響は、我が国の国内のみならず、新たな世界的潮流として多くの国に及んできている。エネルギー分野においては、直面する課題に対して、一国のみによる対応では十分な解決策が得られない場合が増えてきている。

例えば、資源調達においては、各国、各企業がライバルとして競争を繰り広げる一方、資源供給国に対して消費国が連携することにより取引条件を改善していくなど、競争と協調を組み合わせた関係の中で、資源取引を一層合理的なものとすることができる。

また、例えば、原子力の平和・安全利用や地球温暖化対策、安定的なエネルギー供給体制の確保などについては、関係する国々が協力をしなければ、本来の目的を達成することはできず、国際的な視点に基づいて取り組んでいかなければならないものとなっている。

エネルギー政策は、こうした国際的な動きを的確に捉えて構築されなければならない。

こうした国際的視点が一層必要となりつつあることは、エネルギー産業も同様である。

海外資源への高い依存度という我が国のエネルギー供給構造や、今後、国内エネルギー需要が弱含んでいくことを踏まえれば、エネルギー産業が我が国のエネルギー供給の安定化に貢献しつつ、経営基盤を強化して更に発展していくために、自ら積極的に国際化を進め、海外事業を強化し、海外の需要を自らの市場として積極的に取り込んでいくことが求められる。

(3)経済成長の視点の重要性

エネルギーは、産業活動の基盤を支えるものであり、特に、その供給安定性とコストは、事業活動に加えて企業立地などの事業戦略にも大きな影響を与えるものである。

基本的視点で示されるとおり、経済効率性の向上による低コストでのエネルギー供給を図りつつ、エネルギーの安定供給と環境負荷の低減を実現していくことは、既存の事業拠点を国内に留め、我が国が更なる経済成長を実現していく上での前提条件となる。

「日本再興戦略(2013年6月閣議決定)」の中では、企業が活動しやすい国とするために、日本の立地競争力を強化するべく、エネルギー分野における改革を進め、電力・エネルギー制約の克服とコスト低減が同時に実現されるエネルギー需給構造の構築を推進していくことが強く求められている。

また、エネルギー需給構造の改革は、エネルギー分野に新たな事業者の参入を様々な形で促すこととなり、この結果、より総合的で効率的なエネルギー供給を行う事業者の出現や、エネルギー以外の市場と融合した新市場を創出する可能性がある。

さらに、こうした改革は、我が国のエネルギー産業が競争力を強化し、国際市場で存在感を高めていく契機となり、エネルギー関連企業が付加価値の高いエネルギー関連機器やサービスを輸出することによって、貿易収支の改善に寄与していくことも期待される。

したがって、エネルギー政策の検討に当たっては、経済成長に貢献していくことも重要な視点とすべきである。

2.“多層化・多様化した柔軟なエネルギー需給構造”の構築と政策の方向

国内資源の限られた我が国が、社会的・経済的な活動が安定的に営まれる環境を実現していくためには、エネルギーの需要と供給が安定的にバランスした状態を継続的に確保していくことができるエネルギー需給構造を確立しなければならない。そのためには、平時において、エネルギー供給量の変動や価格変動に柔軟に対応できるよう、安定性と効率性を確保するとともに、危機時には、特定のエネルギー源の供給に支障が発生しても、その他のエネルギー源を円滑かつ適切にバックアップとして利用できるようにする必要がある。

このような“多層化・多様化した柔軟なエネルギー需給構造”の実現を目指していく。

こうしたエネルギー需給構造の構築に向けては、以下の方向性を踏まえて政策を展開していく。

(1)各エネルギー源が多層的に供給体制を形成する供給構造の実現

各エネルギー源は、それぞれサプライチェーン上の強みと弱みを持っており、安定的かつ効率的なエネルギー需給構造を一手に支えられるような単独のエネルギー源は存在しない。

危機時であっても安定供給が確保される需給構造を実現するためには、エネルギー源ごとの強みが最大限に発揮され、弱みが他のエネルギー源によって適切に補完されるような組み合わせを持つ、多層的な供給構造を実現することが必要である。

(2)エネルギー供給構造の強靱化の推進

多層的に構成されたエネルギーの供給体制が、平時のみならず、危機時にあっても適切に機能し、エネルギーの安定供給を確保できる強靱性(レジリエンス)を保持することは、エネルギーの安定供給を真に保証する上での重要な課題の一つである。

そのため、電力など二次エネルギーを含めたエネルギー・サプライチェーン全体を俯瞰して、供給体制の綻びを最小化し、早期の供給回復を実現すべく、問題点の把握を注意深く継続し、必要な対策に迅速に取り組むことが必要である。

(3)構造改革の推進によるエネルギー供給構造への多様な主体の参加

電力・ガスシステム改革等を通じて、産業ごとに存在していたエネルギー市場の垣根を取り払うことで、既存のエネルギー事業者の相互参入や異業種からの新規参入、さらに地域単位でエネルギー需給管理サービスを行う自治体や非営利法人等がエネルギー供給構造に自由に参加することが期待される。

こうした多様な主体が、様々なエネルギー源を供給することができるようになることで、エネルギー市場における競争が活性化し、エネルギー産業の効率化が促進されていくことになる。

また、地域に新たな産業を創出するなど、地域活性化に大きく貢献することなどが期待される。

(4)需要家に対する多様な選択肢の提供による、需要サイドが主導するエネルギー需給構造の実現

需要家に対して多様な選択肢が提供されるとともに、需要家が、分散型エネルギーシステムなどを通じて自ら供給に参加できるようになることは、エネルギー需給構造に柔軟性を与えることにつながる。

需要家が多様な選択肢から自由にエネルギー源を選ぶことができれば、需要動向が供給構造におけるエネルギー源の構成割合や供給規模に対して影響を及ぼし、供給構造をより効率化することが期待される。

供給構造の構成が、需要動向の変化に対して柔軟に対応するならば、多層的に構成された供給構造の安定性がより効果的に発揮されることにもつながる。

(5)海外の情勢変化の影響を最小化するための国産エネルギー等の開発・導入の促進による自給率の改善

我が国は、海外からの資源に対する依存度が高いことから、資源調達における交渉力の限界等の課題や、資源調達国やシーレーンにおける情勢変化の影響による、供給不安に直面するリスクを常に抱えており、エネルギー安全保障の確保は、我が国が抱える大きな課題であり続けている。

こうした課題を克服し、国際情勢の変化に対する対応力を高めるためには、我が国が国産エネルギーとして活用していくことができる再生可能エネルギー、準国産エネルギーに位置付けられる原子力、さらにメタンハイドレートなど我が国の排他的経済水域内に眠る資源などを戦略的に活用していくための中長期的な取組を継続し、自給率の改善を実現する政策体系を整備していくことが重要である。

(6)全世界で温室効果ガスの排出削減を実現するための地球温暖化対策への貢献

我が国は、他国に先駆け、エネルギー効率の改善等を通じて地球温暖化問題に積極的に取り組んできた。省エネルギーや環境負荷のより低いエネルギー源の利用用途の拡大等の技術やノウハウの蓄積が進んでおり、こうした優れた技術等を有する我が国は、技術力で地球温暖化問題の解決に大きく貢献できる立場にある。

このため、引き続き、日本国内で地球温暖化対策を進めることのみならず、世界全体の温室効果ガス排出削減への貢献を進めていくことが重要である。

第2節 各エネルギー源の位置付けと政策の時間軸

1.一次エネルギー構造における各エネルギー源の位置付けと政策の基本的な方向

我が国が、安定したエネルギー需給構造を確立するためには、エネルギー源ごとにサプライチェーン上の特徴を把握し、状況に応じて、各エネルギー源の強みが発揮され、弱みが補完されるよう、各エネルギー源の需給構造における位置付けを明確化し、政策的対応の方向を示すことが重要である。

特に、電力供給においては、安定供給、低コスト、環境適合等をバランスよく実現できる供給構造を実現すべく、各エネルギー源の電源として特性を踏まえて活用することが重要であり、各エネルギー源は、電源として以下のように位置付けられる。

1)発電(運転)コストが、低廉で、安定的に発電することができ、昼夜を問わず継続的に稼働できる電源となる「ベースロード電源」として、地熱、一般水力(流れ込み式)、原子力、石炭。

2)発電(運転)コストがベースロード電源の次に安価で、電力需要の動向に応じて、出力を機動的に調整できる電源となる「ミドル電源」として、天然ガスなど。

3)発電(運転)コストは高いが、電力需要の動向に応じて、出力を機動的に調整できる電源となる「ピーク電源」として、石油、揚水式水力など。

こうした整理を踏まえ、第1章で述べた我が国のエネルギー需給構造が抱える課題、特に第1章第2節に整理した新たなエネルギー制約を克服していくための“多層化・多様化した柔軟なエネルギー需給構造”における各エネルギー源の位置付けと政策の方向性について、以下のように整理する。

(1)再生可能エネルギー
①位置付け

現時点では安定供給面、コスト面で様々な課題が存在するが、温室効果ガスを排出せず、国内で生産できることから、エネルギー安全保障にも寄与できる有望かつ多様で、重要な低炭素の国産エネルギー源である。

②政策の方向性

再生可能エネルギーについては、2013年から3年程度、導入を最大限加速していき、その後も積極的に推進していく。そのため、系統強化、規制の合理化、低コスト化等の研究開発などを着実に進める。このため、再生可能エネルギー等関係閣僚会議を創設し、政府の司令塔機能を強化するとともに、関係省庁間の連携を促進する。こうした取組により、これまでのエネルギー基本計画を踏まえて示した水準1を更に上回る水準の導入を目指し、エネルギーミックスの検討に当たっては、これを踏まえることとする。

これに加えて、それぞれに異なる各エネルギー源の特徴を踏まえつつ、世界最先端の浮体式洋上風力や大型蓄電池などによる新技術市場の創出など、新たなエネルギー関連の産業・雇用創出も視野に、経済性等とのバランスのとれた開発を進めていくことが必要である。

1)太陽光

個人を含めた需要家に近接したところで中小規模の発電を行うことも可能で、系統負担も抑えられる上に、非常用電源としても利用可能である。

一方、発電コストが高く、出力不安定性などの安定供給上の問題があることから、更なる技術革新が必要である。

中長期的には、コスト低減が達成されることで、分散型エネルギーシステムにおける昼間のピーク需要を補い、消費者参加型のエネルギーマネジメントの実現等に貢献するエネルギー源としての位置付けも踏まえた導入が進むことが期待される。

2)風力

大規模に開発できれば発電コストが火力並であることから、経済性も確保できる可能性のあるエネルギー源である。

ただし、需要規模が大きい電力管内には供給の変動性に対応する十分な調整力がある一方で、北海道や東北北部の風力適地では、必ずしも十分な調整力がないことから、系統の整備、広域的な運用による調整力の確保、蓄電池の活用等が必要となる。こうした経済性も勘案して、利用を進めていく必要がある。

3)地熱

世界第3位の地熱資源量を誇る我が国では、発電コストも低く、安定的に発電を行うことが可能なベースロード電源を担うエネルギー源である。

また、発電後の熱水利用など、エネルギーの多段階利用も期待される。

一方、開発には時間とコストがかかるため、投資リスクの軽減、送配電網の整備、円滑に導入するための地域と共生した開発が必要となるなど、中長期的な視点を踏まえて持続可能な開発を進めていくことが必要である。

4)水力

水力発電は、渇水の問題を除き、安定供給性に優れたエネルギー源としての役割を果たしており、引き続き重要な役割を担うものである。

このうち、一般水力(流れ込み式)については、運転コストが低く、ベースロード電源として、また、揚水式については、発電量の調整が容易であり、ピーク電源としての役割を担っている。

一般水力については、これまでも相当程度進めてきた大規模水力の開発に加え、現在、発電利用されていない既存ダムへの発電設備の設置や、既に発電利用されている既存ダムの発電設備のリプレースなどによる出力増強等、既存ダムについても関係者間で連携をして有効利用を促進する。

また、未開発地点が多い中小水力についても、高コスト構造等の事業環境の課題を踏まえつつ、地域の分散型エネルギー需給構造の基礎を担うエネルギー源としても活用していくことが期待される。

5)木質バイオマス等(バイオ燃料を含む)

未利用材による木質バイオマスを始めとしたバイオマス発電は、安定的に発電を行うことが可能な電源となりうる、地域活性化にも資するエネルギー源である。特に、木質バイオマス発電については、我が国の貴重な森林を整備し、林業を活性化する役割を担うことに加え、地域分散型のエネルギー源としての役割を果たすものである。

一方、木質や廃棄物など材料や形態が様々であり、コスト等の課題を抱えることから、既存の利用形態との競合の調整、原材料の安定供給の確保等を踏まえ、分散型エネルギーシステムの中の位置付けも勘案しつつ、規模のメリットの追求、既存火力発電所における混焼など、森林・林業施策などの各種支援策を総動員して導入の拡大を図っていくことが期待される。

輸入が中心となっているバイオ燃料については、国際的な動向や次世代バイオ燃料の技術開発の動向を踏まえつつ、導入を継続する。

(2)原子力
①位置付け

燃料投入量に対するエネルギー出力が圧倒的に大きく、数年にわたって国内保有燃料だけで生産が維持できる低炭素の準国産エネルギー源として、優れた安定供給性と効率性を有しており、運転コストが低廉で変動も少なく、運転時には温室効果ガスの排出もないことから、安全性の確保を大前提に、エネルギー需給構造の安定性に寄与する重要なベースロード電源である。

②政策の方向性

いかなる事情よりも安全性を全てに優先させ、国民の懸念の解消に全力を挙げる前提の下、原子力発電所の安全性については、原子力規制委員会の専門的な判断に委ね、原子力規制委員会により世界で最も厳しい水準の規制基準に適合すると認められた場合には、その判断を尊重し原子力発電所の再稼働を進める。その際、国も前面に立ち、立地自治体等関係者の理解と協力を得るよう、取り組む。

原発依存度については、省エネルギー・再生可能エネルギーの導入や火力発電所の効率化などにより、可能な限り低減させる。その方針の下で、我が国の今後のエネルギー制約を踏まえ、安定供給、コスト低減、温暖化対策、安全確保のために必要な技術・人材の維持の観点から、確保していく規模を見極める。

また、東京電力福島第一原子力発電所事故の教訓を踏まえて、そのリスクを最小限にするため、万全の対策を尽くす。その上で、万が一事故が起きた場合には、国は関係法令に基づき、責任をもって対処する。

加えて、原子力利用に伴い確実に発生する使用済燃料問題は、世界共通の課題であり、将来世代に先送りしないよう、現世代の責任として、国際的なネットワークを活用しつつ、その対策を着実に進めることが不可欠である。

さらに、核セキュリティ・サミットの開催や核物質防護条約の改正の採択など国際的な動向を踏まえつつ、核不拡散や核セキュリティ強化に必要となる措置やそのための研究開発を進める。

(3)石炭
①位置付け

温室効果ガスの排出量が大きいという問題があるが、地政学的リスクが化石燃料の中で最も低く、熱量当たりの単価も化石燃料の中で最も安いことから、安定供給性や経済性に優れた重要なベースロード電源の燃料として再評価されており、高効率石炭火力発電の有効利用等により環境負荷を低減しつつ活用していくエネルギー源である。

②政策の方向性

老朽火力発電所のリプレースや新増設による利用可能な最新技術の導入を促進することに加え、発電効率を大きく向上させることで発電量当たりの温室効果ガス排出量を抜本的に下げるための技術(IGCCなど)等の開発をさらに進める。こうした高効率化技術等を国内のみならず海外でも導入を推進していくことにより、地球全体で環境負荷の低減と両立した形で利用していく必要がある。

(4)天然ガス
①位置付け

現在、電源の4割超を占め、熱源としての効率性が高いことから、利用が拡大している。海外からパイプラインを通じた輸入はないが、石油と比べて地政学的リスクも相対的に低く、化石燃料の中で温室効果ガスの排出も最も少なく、発電においてはミドル電源の中心的な役割を果たしている。

水素社会の基盤の一つとなっていく可能性もある。

今後、シェール革命により競争的に価格が決定されるようになっていくことなどを通じて、各分野における天然ガスシフトが進行する見通しであることから、その役割を拡大していく重要なエネルギー源である。

②政策の方向性

我が国は、現時点では、国際的には高い価格でLNGを調達しており、電源としての過度な依存を避けつつ、供給源多角化などによりコストの低減を進めることが重要である。

また、地球温暖化対策の観点からも、コージェネレーションなど地域における電源の分散化や水素源としての利用など、利用形態の多様化により、産業分野などにおける天然ガスシフトを着実に促進し、コンバインドサイクル火力発電など天然ガスの高度利用を進めるとともに、緊急時における強靱性の向上などの体制整備を進める必要がある。

(5)石油
①位置付け

国内需要は減少傾向にあるものの、現在、一次エネルギーの4割強を占めており、運輸・民生・電源等の幅広い燃料用途や化学製品など素材用途があるという利点を持っている。特に運輸部門の依存は極めて大きく、製造業における材料としても重要な役割を果たしている。そうした利用用途に比べ、電源としての利用量はそれほど多くはないものの、ピーク電源及び調整電源として一定の機能を担っている。調達に係る地政学的リスクは最も大きいものの、可搬性が高く、全国供給網も整い、備蓄も豊富なことから、他の喪失電源を代替するなどの役割を果たすことができ、今後とも活用していく重要なエネルギー源である。

②政策の方向性

供給源多角化、産油国協力、備蓄等の危機管理の強化や、原油の有効利用、運輸用燃料の多様化、調整電源としての石油火力の活用等を進めることが不可欠である。

また、災害時には、エネルギー供給の「最後の砦」になるため、供給網の一層の強靱化を推進することに加え、内需減少とアジア全域での供給増強が同時に進む中、平時を含めた全国供給網を維持するため、石油産業の経営基盤の強化に向けた取組などが必要である。

(6)LPガス
①位置付け

中東依存度が高く脆弱な供給構造であったが、北米シェール随伴の安価なLPガスの購入などが進んでおり、地政学的リスクが小さくなる方向にある。

化石燃料の中で温室効果ガスの排出が比較的低く、発電においては、ミドル電源として活用可能であり、また最終需要者への供給体制及び備蓄制度が整備され、可搬性、貯蔵の容易性に利点があることから、平時の国民生活、産業活動を支えるとともに、緊急時にも貢献できる分散型のクリーンなガス体のエネルギー源である。

②政策の方向性

災害時にはエネルギー供給の「最後の砦」となるため、備蓄の着実な実施や中核充填所の設備強化などの供給体制の強靱化を進める。また、LPガスの料金透明化のための国の小売価格調査・情報提供や事業者の供給構造の改善を通じてコストを抑制することで、利用形態の多様化を促進するとともに、LPガス自動車など運輸部門においてさらに役割を果たしていく必要がある。

2.二次エネルギー構造の在り方

新たなエネルギー需給構造をより安定的で効率的なものとしていくためには、一次エネルギーの構成だけでなく、最終需要家がエネルギーを利用する形態である二次エネルギーについても検討を加える必要がある。特に、省エネルギーを最大限に進めるためには、電気や熱への転換を如何に効率的に行い、無駄なく利用するかということについて踏み込んだ検討を行い、具体化に向けた取組を進める必要がある。

また、技術革新が進んできていることから、水素をエネルギーとして利用する“水素社会”についての包括的な検討を進めるべき時期に差し掛かっている。

各エネルギー源について、強みが発揮され、弱みが補完されるよう、多層的な供給構造の構築を進めつつ、最大限に効率性を発揮できるよう、二次エネルギー構造の在り方についても検討を行う。

(1)二次エネルギー構造の中心的役割を担う電気

電気は、多様なエネルギー源を転換して生産することが可能であり、利便性も高いことから、今後も電化率は上がっていくと考えられ、二次エネルギー構造において、引き続き中心的な役割を果たしていくこととなる。

我が国の電力供給体制は、独仏のような欧州の国々のように系統が連系し、国内での供給不安時に他国から電力を融通することはできず、米国のように広大な領域の下で、複数の州間に送配電網が整備されている状況にもない。したがって、電源と系統が全国大でバランスのとれた形で整備・確保され、広域的・効率的に利活用できる体制を確保していくことが不可欠である。

電力供給においては、低廉で安定的なベースロード電源と、需要動向に応じ出力を機動的に調整できるミドル電源、ピーク電源を適切なバランスで確保するとともに、再生可能エネルギー等の分散電源も組み合わせていくことが重要である。

電源構成は、特定の電源や燃料源への依存度が過度に高まらないようにしつつ、低廉で安定的なベースロード電源を国際的にも遜色のない水準で確保すること、安定供給に必要な予備力、調整力を堅持すること、環境への適合を図ることが重要であり、バランスのとれた電源構成の実現に注力していく必要がある。

一方、東京電力福島第一原子力発電所事故後、電力需要に変化が見られるようになっている。こうした需要動向の変化を踏まえつつ、節電や、空調エネルギーのピークカットなどピーク対策の取組を進めることで電力の負荷平準化を図り、供給構造の効率化を進めていくことが必要である。

今後、電力システム改革により、電源構成が変化していく可能性があり、その場合、再生可能エネルギー等の新たな発電施設整備のための投資だけでなく、エネルギー源ごとに特徴の異なる発電時間帯や出力特性などに対応した送配電網の整備と調整電源や蓄電池などの系統安定化対策が必要となることから、大規模な投資を要する可能性がある。

なお、現在、東京電力福島第一原子力発電所事故後の原子力発電所の停止を受け、それまで原子力が3割前後の比率を占めていた電源構成は、原子力発電の割合が急激に低下し、海外からの化石燃料への依存度が上昇して88%を超え、電力供給構造における海外からの化石燃料への依存度は、第一次石油ショック当時(76%の依存度を記録。その後、石油代替や原子力の利用などにより60%強まで改善。)よりも高くなっている。最近の電気料金上昇の最大の要因が発電用化石燃料費の大幅増大であることを踏まえ、化石燃料調達コストの低減を官民挙げて実現していくことも極めて重要である。

今後の電気料金は、系統整備や系統安定化のための追加コストや固定価格買取制度により将来にわたって累積的に積み上がる賦課金等が上乗せされる可能性があり、発電事業自体のコストは競争によって抑制されていくと考えられるが、その他の要因も含めて電気料金が大幅に上昇することがないよう注視していく必要がある。

そのため、電源構成の在り方については、追加的に発生する可能性のあるコストが国民生活や経済活動に大きな負担をかけることのないよう、バランスのとれた構造を追求していく必要がある。

また、大規模災害を想定した電力供給の強靱化の観点から、天然ガスのインフラ整備とあわせた地域における電源の分散化などについても推進する必要がある。

(2)熱利用:コージェネレーションや再生可能エネルギー熱等の利用促進

我が国の最終エネルギー消費の現状においては、熱利用を中心とした非電力での用途が過半数を占めている。したがって、エネルギー利用効率を高めるためには、熱をより効率的に利用することが重要であり、そのための取組を強化することが必要になっている。熱の利用は、個人・家族の生活スタイルや地域の熱源の賦存の状況によって、様々な形態が考えられることから、生活スタイルや地域の実情に応じた、柔軟な対応が可能となる取組が重要である。

熱と電気を組み合わせて発生させるコージェネレーションは、熱電利用を同時に行うことによりエネルギーを最も効率的に活用することができる方法の一つである。また、通常は一定の余剰発電容量を抱えていることが多いことから、緊急時に電力供給不足をバックアップする役割も期待できる。

ここ数年伸び悩みを見せていたが、電気料金が上昇してきたことで、再び導入が進む兆しが見えてきている。建築物や工場、住宅等の単体での利用に加え、周辺を含めた地域単位での利用を推進することで、コージェネレーションの導入拡大を図っていくことが必要である。

また、太陽熱、地中熱、雪氷熱、温泉熱、海水熱、河川熱、下水熱等の再生可能エネルギー熱をより効果的に活用していくことも、エネルギー需給構造をより効率化する上で効果的な取組となると考えられる。

こうした熱源がこれまで十分に活用されてこなかった背景には、利用するための設備導入コストが依然として高いという理由だけでなく、設備の供給力に比して地域における熱需要が少ないなど、需要と供給が必ずしも一致せず事業の採算が取れないことや、認知度が低く、こうした熱エネルギーの供給を担う事業者が十分に育っていないことも大きな要因であり、こうした熱が賦存する地域の特性を活かした利用の取組を進めていくことが重要である。

(3)水素:“水素社会”の実現

将来の二次エネルギーでは、電気、熱に加え、水素が中心的役割を担うことが期待される。

水素は、取扱い時の安全性の確保が必要であるが、利便性やエネルギー効率が高く、また、利用段階で温室効果ガスの排出がなく、非常時対応にも効果を発揮することが期待されるなど、多くの優れた特徴を有している。

水素の導入に向けて、様々な要素技術の研究開発や実証事業が多くの主体によって取り組まれてきているが、水素を日常の生活や産業活動で利活用する社会、すなわち“水素社会”を実現していくためには、技術面、コスト面、制度面、インフラ面で未だ多くの課題が存在している。このため、多様な技術開発や低コスト化を推進し、実現可能性の高い技術から社会に実装していくため、戦略的に制度やインフラの整備を進めていく。

3.政策の時間軸とエネルギーミックスの関係

本計画では、長期エネルギー需給見通しとともにとりまとめることはしないものの、中長期(今後20年程度)のエネルギー需給構造を視野に入れて、エネルギー政策の基本的な方針をまとめており、特に、2018年~2020年までを、安定的なエネルギー需給構造を確立するための集中改革実施期間と位置付け、当該期間におけるエネルギー政策の方向を定めている。

エネルギーミックスについては、各エネルギー源の位置付けを踏まえ、原子力発電所の再稼働、固定価格買取制度に基づく再生可能エネルギーの導入や国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)などの地球温暖化問題に関する国際的な議論の状況等を見極めて、速やかに示すこととする。

政府は、本計画で示された詳細な課題に取り組むための体制を早急に整え、検討を開始する。

第3章 エネルギーの需給に関する長期的、総合的かつ計画的に講ずべき施策

第1節 安定的な資源確保のための総合的な政策の推進

化石燃料への依存が高まっている状況の中で、不安定性を増す国際的なエネルギー需給構造に応じ、将来の変化も視野に入れつつ、資源の確保を進めることは重要な課題である。①主要な資源を複数のものに分散させること、②それぞれの資源に関して、調達先の分散化や上流権益の確保、供給国との関係強化によって調達リスクを低下させることを通じて、資源の適切なポートフォリオを実現させ、安定的かつ経済的に資源を確保していく必要がある。

2013年度には、米国、ロシア、サウジアラビア、UAE、カタール、カナダ、モザンビーク等を訪問した総理大臣を筆頭に積極的に資源国との資源外交を展開し、日本企業が関与する米国LNGプロジェクトの輸出許可の獲得やUAEにおける日本の自主開発油田権益の確保などの成果を挙げたところであり、引き続き安定的な資源確保を実現するための総合的な政策を推進する。

1.北米・ロシア・アフリカ等新たな資源供給国との関係強化と上流進出の促進

北米におけるシェール革命は、天然ガスの国際供給構造に大きな影響を与え、これに伴って北米で需要が低迷することになった石炭の貿易構造にも変化を及ぼしている。今後、北米のシェール革命は石油にも及んでいき、シェールの開発は北米から南米、さらに中国など他の地域まで拡がっていくと見られる。

シェール革命が進行する中、ロシアは既存の主力販路である欧州における需要不振等の問題に直面し、新たな市場として我が国や中国などアジア市場進出に真剣に取り組まざるを得ない状況となっている。ロシアの豊富な資源ポテンシャル、地理的な近接性、我が国の供給源多角化等の点を考慮すれば、ロシアの石油・ガス資源を有効活用することは我が国のエネルギー安定供給確保にとって大きな意義を持ちうることから、国際的な情勢を踏まえつつ、総合的・戦略的視点からロシアとの関係を検討していくことが必要である。

また、金属鉱物やガスなどの「最後のフロンティア」として期待されているアフリカの資源開発については、各国が資源開発投資を開始しており、今後、その動きはさらに加速し、アフリカの資源国が本格的に国際資源市場に参入してくることになる。

こうした構造変化の中で、新たな資源国からの供給を含めた供給源の多角化に向けた取組は既に進められており、シェールガス生産が拡大する米国からのLNG輸入を始め、カナダ、ロシア、モザンビークなどからの天然ガスの供給も2020年前後には始まることが期待される。

国際的な資源供給構造の変化を捉え、新たな資源供給国を安定的に国際市場に迎え入れ、我が国が緊密に連携していくための一つの取組として、2013年には日・アフリカ資源大臣会合を開催し、今後は定期的に2年に1度の頻度で開催していくこととした。今後、こうした取組を強化していく。

また、新たな資源供給国の台頭は、我が国の企業が油・ガス田、石炭や金属鉱物等の鉱山の開発権益を確保するための上流進出・自主開発を行う機会の拡大を意味している。中東や豪州、インドネシア、ロシアなどにおける上流開発に加え、既に米国、カナダ、モザンビーク、ベトナム、カザフスタンでも上流開発に進出する動きが加速しており、日本企業の上流進出をさらに加速していくため、資源外交の積極的な展開や独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)によるリスクマネー供給機能の強化等を通じて、官民が協力して自主開発比率を引き上げていくための取組を進めていく。

加えて、資源権益の獲得・更新のため、我が国が強みを有する様々な分野での先端技術を活かし、上流開発における課題解決策を提供する技術開発や、今後、オフショア開発でより重要性を増す浮体式液化天然ガス生産貯蔵積出設備(FLNG)などの分野における取組等を推進していく。

2.現在の資源調達環境の基盤強化

石油におけるサウジアラビア、UAE、天然ガスにおける豪州、カタール、マレーシア、ロシア、インドネシア、石炭における豪州、インドネシア、金属鉱物におけるチリ、ペルー、豪州、カナダ、南アフリカなど、我が国に資源を供給している国との関係を、単に資源の取引をしているだけのものとはせず、多様な経済取引、国民各層における多面的な人的交流を活発化する等、包括的かつ互恵的な二国間関係として発展させていくための総合的な外交的取組を推進していくことが重要である。例えば、UAEとの関係では、エネルギー分野に限らず、相手国のニーズを踏まえ、人材育成分野まで協力関係を拡大し、二国間関係の深化を進めているところであり、こうした取組を拡大・強化していく。

こうした包括的かつ互恵的な二国間関係の構築に向けた取組の中で、首脳外交の戦略的活用を含め閣僚等による資源外交を積極的に展開し、強い信頼関係に基づいた二国間関係の上で、資源の取引が安定的に行われる環境を整備していく。

また、シーレーンの安定性向上のためには、シーレーンに関わる国・地域との関係強化が重要であり、アジア海賊対策地域協力協定やマラッカ・シンガポール海峡の航行の安全に関する「協力メカニズム」の運用を基礎としつつ、各国海上保安機関に対する各種協力や、港湾などのインフラ、船舶運航管理体制の整備支援、沿岸部における災害時の救助・復旧支援体制の強化などを進めるとともに、海洋を含む安全保障分野での日米協力を深めていくことで、商用船舶の航行の安全性・安定性を確保するための取組を強化していく。

さらに、官民が連携し、LNG、石炭等の安定的かつ安価な調達を図るため、大型船の受け入れ機能の確保・強化を推進していく。

3.エネルギーコスト低減のための資源調達条件の改善等

資源調達条件の改善については、個別の契約レベルでは、基本的に民間企業間で調達条件が決定されることになる。国としては、価格決定方式や仕向地条項など取引条件の多様化に向けた議論が行われる環境整備を進めていくとともに、新しい共同調達の戦略的な活用による交渉力の強化など、資源の安定的かつ安価な調達に向けた戦略的な取組を支援していくことが必要である。

具体的には、LNG産消会議、日印エネルギー対話、日韓ガス対話など、国際的な対話の機会を数多く確保することで、産消国間の意思疎通の円滑化、消費国間の連携強化などを進めていく。

シェール革命が進む米国の天然ガス市場は、原油価格と連動せずに市場の需給バランスで天然ガスの価格が決定される市場であり、このような価格決定方式を持つ米国からの天然ガスを輸入することは、石油価格と連動しないLNGの価格決定方式を我が国の取引環境に取り込むことを意味している。このような交渉環境の改善に資する取組に対し、LNG先物市場についての検討も含め、国としても積極的に支援を行っていく。

また、LNG調達において、価格面だけでなく契約の柔軟性や、上流権益の確保等についても交渉力を発揮していくため、従来のコンソーシアム型での共同調達ではなく、LNGサプライチェーンの全体を俯瞰した包括的な事業連携を進めることによって交渉力を最大限発揮する取組など、新しい共同調達を戦略的に活用することが必要である。こうした新しい共同調達方式は、制度改革とも相まって、総合エネルギー企業の創出やアジア・欧米の事業者との連携への契機となる可能性もある。

こうした内外の事業者連携を促進するためにも、本船渡し契約(FOB契約)における仕向地条項の撤廃などLNG契約の商慣行を弾力化していく環境整備を進めていく。

また、北米等の新しい供給源の確保や、将来的なパイプラインネットワークを活用した供給形態の多様化を視野に入れ、望ましい国際的なサプライチェーンの在り方と可能性についても検討を進める。

こうした北米からのLNG供給や仕向地条項の撤廃などによる取引の多様化の推進、LNG産消会議の開催や消費国間の連携を通じて、アジア・太平洋における今後のLNG需要の見通しを踏まえつつ、日本をアジアの中核に位置付けた地域大のLNG需給構造を将来的に実現していく。

4.メタンハイドレート等国産資源の開発の促進

世界で第6位の排他的経済水域の広さを持つ我が国は、海洋におけるエネルギー・鉱物資源の開発ができれば、自給率を飛躍的に高めることができる可能性がある。また、関係省庁・機関と民間企業が連携して海洋開発を促進することで、関連する産業の振興も期待される。なお、国産資源の開発においては、環境面での影響評価についても確実に取り組む。

2013年4月には、海洋基本法に基づく「海洋基本計画」の見直しが初めて行われ、海洋エネルギー・鉱物資源の開発については新しい政府目標が定められた。

(1)メタンハイドレート

これまで研究開発を進めてきた「砂層型」メタンハイドレートに加え、主に日本海側において確認されている「表層型」メタンハイドレートを政府として新たに計画に位置付けた。

砂層型は、東部南海トラフ海域において、我が国の天然ガス消費量の約10年分の原始資源量が賦存していると推定されている。2013年3月には、独立行政法人海洋研究開発機構が有する地球深部探査船「ちきゅう」を活用して、世界で初めて海域において減圧法によるガス生産実験を実施した。今回の生産実験の結果等を踏まえ、2018年度を目途に商業化の実現に向けた技術の整備を行う。その際、2023年から2027年の間に、民間企業が主導する商業化のためのプロジェクトが開始されるよう、国際情勢をにらみつつ技術開発を進める。

また、日本海を中心に存在が確認された表層型については、資源量把握に向けて2013年度以降、3年程度で、必要となる広域的な分布調査等を行うこととする。具体的には、2013年度に上越沖及び能登半島西方の沖合で広域地質調査を実施し、メタンハイドレートが存在する可能性がある構造を確認したところであり、2014年度以降、調査対象海域を拡大するとともに、有望な調査地点において地質サンプルの取得を実施する。上記調査結果や2015年度末頃に実施する今後の方向性等の議論を踏まえ、資源回収技術の本格的調査や研究開発等に着手する。

(2)石油・天然ガス

我が国周辺海域の探査実績の少ない海域において、2008年に導入した三次元物理探査船「資源」を最大限活用し、2018年度まで概ね毎年6,000平方キロメートルの物理探査を実施する。その探査結果を踏まえ、有望海域での試掘を国が機動的に実施し、得られた地質データ等の成果を民間に引き継ぐことで探鉱活動の促進を図る。

(3)金属鉱物

海底熱水鉱床については、我が国近海には特に浅く賦存しているため技術的・経済的にも開発に有利と期待されている。2012年に就航した新たな資源調査船「白嶺」を用いて、最も有望とみられる沖縄海域の熱水鉱床の資源量把握を行ったところ、これまで知られていなかった深部の新たな鉱床の発見に至った。引き続き、詳細な鉱量の把握、採掘機材等の技術開発などを進めることで、2018年度までに経済性の評価を行い、その後2023年以降に民間が参画する商業化を目指したプロジェクトが開始されるよう技術開発を行うこととする。

複数の重要なレアメタルを含むコバルトリッチクラストについては、我が国排他的経済水域の外側の公海に幅広く存在することが確認されていたが、2013年7月には、JOGMECが国際海底機構の定める探査規則に沿って鉱区を申請し、世界に先駆けて探査鉱区が承認された。今後15年間の探査期間の間に所要の成果を挙げるべく計画的に探査を実施する。

その他、新たに海洋基本計画に追加された南鳥島周辺のレアアース堆積物の調査や、ハワイ沖にすでに探査鉱区を有するマンガン団塊についても、引き続き戦略的に調査を推進する。

5.鉱物資源の安定供給確保に不可欠なリサイクルの推進及び備蓄体制の強化等

金属鉱物の安定供給確保のためには、供給源の多角化に加え、使用済製品から金属鉱物の回収を着実に進めるとともに、回収技術が確立されていない鉱種についても積極的に技術開発を進めていくことが重要である。また、カントリーリスクの高い地域に偏在する金属鉱物については、代替材料開発や省資源に向けた取組を進めていく。我が国産業に不可欠な金属鉱物について、急激な価格高騰や需給のひっ迫に際しても安定供給が確保されるよう、このような取組と上流開発を併せて自給率を高めていくこととする。

また、一時的な供給障害に対応するための金属鉱物の国家備蓄について、国内における需給動向を見極めつつ、必要とされるレアメタル備蓄を着実に進め、供給途絶等の緊急時に需要家のニーズに応じて機動的に放出等できるよう備蓄体制の整備を進めていく。

第2節 徹底した省エネルギー社会の実現と、スマートで柔軟な消費活動の実現

我が国は1970年代の石油危機以降、官民の努力によりエネルギー効率を4割改善し、世界的にも大きくリードしている。例えば、石油危機を契機として1979年に制定されたエネルギーの使用の合理化に関する法律では、産業、業務、運輸の各部門の事業者に対し、毎年度、省エネルギー対策の取組状況やエネルギー消費効率の改善状況を政府に報告させることを義務付けており、省エネルギーの取組を自律的に促す枠組みを構築している。また、業務・家庭部門においては、エネルギー消費機器を対象とするトップランナー制度が規定されており、各機器の製造事業者等に対してエネルギー消費効率の向上を促す体系を実現している。こうした省エネルギーの取組を、部門ごとに効果的な方法によってさらに加速していくことで、より合理的なエネルギー需給構造の実現と、温室効果ガスの排出抑制を同時に進めていくことが重要である。

そのため、部門ごとの省エネルギーの取組を一層加速すべく、目標となりうる指標を速やかに策定する。

また、エネルギーの使用の合理化に関する法律が改正され、2014年4月から需要サイドにおける電力需要のピーク対策に資する取組を評価する措置が講じられるようになったところであり、今後、電力需要のピークを抑制する事業者の取組を通じて、電力需要の平準化が進んでいくものと考えられる。さらに、電力消費の一層の効率化が期待される次世代パワーエレクトロニクス機器を始めとした技術革新の進展により、より効率的なエネルギー利用や、各エネルギー源の利用用途の拡大が可能となる。加えて、電力システム改革等の構造改革によって、供給量だけでなく需要量を管理することを含め、様々な主体がエネルギー需給構造に参入することで、今後、エネルギーの利用に関して多様な選択肢が需要家に対して示される環境が整っていくことになる。

多様な選択肢が提供される市場では、需要家が合理的な判断に基づいて自由に選択する消費活動を通じて、供給構造やエネルギー源の構成に変動を生じさせると考えられる。

こうした新たなエネルギー需給構造の構築を加速していくための取組を強化していくことが必要である。

1.各部門における省エネルギーの強化

(1)業務・家庭部門における省エネルギーの強化

業務・家庭部門において高い省エネルギー効果が期待されるのは、建築物・住宅の省エネルギー化である。特に、熱の出入りが大きい開口部や壁等への高性能の窓や断熱材の導入は有効であるが、エネルギーを消費する機械器具を対象としたトップランナー制度においてはこれまで対象外であった。トップランナー制度は、1998年のエネルギーの使用の合理化に関する法律の改正により導入された制度で、家電や自動車等の製品を指定し、その時点で最も消費電力量や燃費水準等が優れた製品を参考に数値基準を定め、製造事業者・輸入業者に対し、販売する製品が目標年度までに当該基準を満たすことを求めるものである。これまで、トップランナー制度を通じて、エアコンで30%、テレビで30%、家庭用冷蔵庫で43%、電子レンジで11%などのエネルギー効率の向上が達成されてきている。

こうした省エネルギーの取組を建築物・住宅の分野でも推進すべく、住宅・ビルや他の機器等のエネルギーの消費効率の向上に資する製品を新たにトップランナー制度の対象に追加することとし、2013年、エネルギー使用の合理化に関する法律を改正した。これにより、建築材料がトップランナー制度の対象に加わり、今般、断熱材の基準が示されたところである。

また、エネルギー消費機器についても、引き続きトップランナー制度の対象を拡大しており、業務用冷蔵庫・冷凍庫、複合機、プリンター、電気温水機器(ヒートポンプ給湯器)及びLED電球を対象に追加した。引き続き、トップランナー制度の対象の拡大を進めるとともに、高効率照明(例:LED照明、有機EL照明)については、2020年までにフローで100%、2030年までにストックで100%の普及を目指す。

さらに、省エネルギー性能の低い既存建築物・住宅の改修・建て替えや、省エネルギー性能等も含めた総合的な環境性能に関する評価・表示制度の充実・普及などの省エネルギー対策を促進する。また、新築の建築物・住宅の高断熱化と省エネルギー機器の導入を促すとともに、より高い省エネルギー性能を有する低炭素認定建築物の普及促進を図る。

政府においては、公共建築物のほか、住宅やオフィスビル、病院などの建築物において、高断熱・高気密化や高効率空調機、全熱交換器、人感センサー付LED照明等の省エネルギー技術の導入により、ネット・ゼロ・エネルギーの実現を目指す取組を、これまでに全国で約4,000件支援してきているところである。

今後は、このような取組等を通じて、建築物については、2020年までに新築公共建築物等で、2030年までに新築建築物の平均でZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)を実現することを目指す。また、住宅については、2020年までに標準的な新築住宅で、2030年までに新築住宅の平均でZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の実現を目指す。

さらに、こうした環境整備を進めつつ、規制の必要性や程度、バランス等を十分に勘案しながら、2020年までに新築住宅・建築物について段階的に省エネルギー基準の適合を義務化する。

加えて、生活の質を向上させつつ省エネルギーを一層推進するライフスタイルの普及を進める。

(2)運輸部門における多様な省エネルギー対策の推進

運輸部門については、自動車に係るエネルギーの消費量がその大部分を占めており、その省エネルギー化が重要である。そのため、次世代自動車の新車販売に占める割合を2030年までに5割から7割とすることを目指して普及を行うなど自動車単体の対策を進めるとともに、省エネルギーに資する環状道路等幹線道路ネットワークの整備や高度道路交通システム(ITS)の推進などの交通流対策等を含めた総合的取組を進めていく。

また、自動車の次にエネルギー消費量の多い海上輸送を含めた運輸部門の先進的な省エネルギー化や物流効率化のための技術開発及び実証事業を行い、その成果を展開することで、効果的な省エネルギー対策の普及を図る。

さらに、物流分野でのエネルギー使用量を削減するため、モーダルシフト等により効率的な物流体系の実現を目指す。具体的には物流拠点の集約化や共同輸配送等の荷主と輸送事業者が連携した自主的な取組を引き続き促進する。

加えて、車両や船舶等の省エネルギー化のみならず、鉄道駅や港湾、空港、道路などの施設においても、省エネルギー機器の導入や照明のLED化を通じた省エネルギー化を目指す。

(3)産業部門等における省エネルギーの加速

1970年代の石油危機以降、エネルギー消費原単位を41%改善し、既に高い省エネルギーを達成している。近年においても、産業部門においては、こうした省エネルギーの取組を継続しているところである。例えば、住宅メーカーにおいては、モデルとなる自社工場において、新工法の開発、加工工程における運転効率化等の様々な取組を行うとともに、その成果を他の工場にも展開した結果、2012年度において2005年度比34%の省エネルギーを実現した。

このように既に高い省エネルギーを達成している産業部門を中心として、省エネルギーをさらに進めるためには、省エネルギー効果の高い設備への更新を進める必要がある。

そのため、省エネルギー設備投資に対する支援に加え、製造プロセスの改善等を含む省エネルギー改修に対する支援など多様な施策を用意することで、企業自ら最善の省エネルギー対策を進めていく環境を整備する。

さらに、業種横断的に、大幅な省エネルギーを実現する革新的な技術の開発を促進していく。加えて、スマートなエネルギー使用の取組を促していくため、BEMS(ビルエネルギー管理システム)などのエネルギーマネジメントシステム設備の導入を促すとともに、エネルギーマネジメントの手順を定めたISO50001の認証取得を促進し、省エネルギー対策の情報提供等を実施する。

(4)業態ごとに細分化したエネルギー消費実態に対応した更なる省エネルギーの取組

更なる省エネルギー化を進めていくためには、こうした大括りの部門別の取組では一定の限界があることも事実であり、より細分化した業態ごとのエネルギー消費状況等に応じた、きめ細かな省エネルギー対策を講じていくことが必要である。

このような取組を実行に移すためには、詳細なエネルギー消費実態の調査・分析が必要であり、一定の時間は要するものの、もう一段水準の高い省エネルギーの取組を進めるための基礎情報の調査・分析を行い、その結果を踏まえて新たな省エネルギー施策の構築を開始する。また、こうした取組を通じて、部門ごとの省エネルギーの取組に係る指標をより精緻なものにしていく。

2.エネルギー供給の効率化を促進するディマンドリスポンスの活用

これまでピーク時間帯には調整電源によって供給量を確保することで対応してきたが、供給者側ではなく需要家側で需要量を抑制することで需給バランスを確保することが可能となる。こうした供給量に応じて需要量を抑制するディマンドリスポンスの第一歩として、時間帯に対応して有意な電気料金の価格差を設けることで、需要家が電力の消費パターンを変化させる方法がある。しかし、既に産業界は積極的に活用し、操業体制を夜間にシフトさせるなどの取組を進めているが、一般の消費者にはまだ十分に浸透しているとは言い難い。

そのため、2020年代早期に、スマートメーターを全世帯・全事業所に導入するとともに、電力システム改革による小売事業の自由化によって、より効果のある多様な電気料金設定が行われることで、ピーク時間帯の電力需要を有意に抑制することが可能となる環境を実現する。

さらに、ディマンドリスポンスにおける次の段階として、需要量の抑制を定量的に管理する方法が考えられている。こうした方法は、電力会社と大口需要家の間での需給調整契約という形で従来から存在しているが、こうした取組を欧米のように社会に広く定着させるためには、当該方法の効果や価値等について、電力会社等の関係者の間で認識を共有することが必要である。

このため、複数の需要家のネガワット(節電容量)を束ねて取引するエネルギー利用情報管理運営者(アグリゲータ)を介すなどして、小売事業者や送配電事業者の要請に応じて需要家が需要抑制を行い、その対価として小売事業者や送配電事業者が需要家に報酬を支払う仕組みの確立に取り組んでいく。具体的には、こうしたディマンドリスポンスの効果や価値を実証し、定量的に管理できるようにしていくとともに、需要抑制の測定方法等に関するガイドラインを策定する。

さらに、需要量の抑制によって生じるネガワットの取引を円滑化することで、需要家側での需要量の抑制をより効果的に行うことが可能となることから、電力システム改革を着実に進めることによって、こうしたディマンドリスポンスを使った新たな事業形態を導入しやすい環境を整備し、需要を管理することで、発電容量を合理的な規模に維持し、安定供給を実現する。

これらの取組には、需要家の電力使用に関する情報など需要家情報の取扱いが必要となることから、個人情報保護に十分な配慮を行った上で、需要家情報の活用を進めていく。

第3節 再生可能エネルギーの導入加速~中長期的な自立化を目指して~

再生可能エネルギーについては、2013年から3年程度、導入を最大限加速していき、その後も積極的に推進していく。そのため、系統強化、規制の合理化、低コスト化等の研究開発などを着実に進める。このため、再生可能エネルギー等関係閣僚会議を創設し、政府の司令塔機能を強化するとともに、関係省庁間の連携を促進する。こうした取組により、これまでのエネルギー基本計画を踏まえて示した水準を更に上回る水準の導入を目指し、エネルギーミックスの検討に当たっては、これを踏まえることとする。

具体的な取組として、固定価格買取制度の適正な運用を基礎としつつ、環境アセスメントの期間短縮化等の規制緩和等を今後とも推進するとともに、高い発電コスト、出力の不安定性、立地制約といった課題に対応すべく、低コスト化・高効率化のための技術開発、大型蓄電池の開発・実証や送配電網の整備などの取組を積極的に進めていく。

1.風力・地熱の導入加速に向けた取組の強化

開発規模によって経済性を確保できる可能性のある風力・地熱については、導入に向けた課題が多く、それを解決する取組を進める。

(1)風力

風力発電設備の導入には、地元との調整や、環境アセスメントのほか、立地のための各種規制・制約への対応が必要となり、固定価格買取制度の下でも、これらの対応の必要性が小さい太陽光発電設備の導入と比べて導入に時間がかかることから、太陽光発電の導入増加のような動きとはなっていない。また、先行して導入が進む太陽光発電の供給のために現在の送電網の容量が利用され、接続余地が狭くなっていくという問題や、風車の落下事故の発生等、導入拡大に向けた課題も存在する。

このため、風力発電設備の導入をより短期間で、かつ円滑に実現できるようにするため、環境アセスメントの迅速化や電気事業法上の安全規制の合理化等の取組を引き続き進める。

加えて、再生可能エネルギーを受け入れるための地域内送電線や地域間連系線が必要となることから、まず、風力発電事業者からの送電線利用料による地域内送電線整備に係る投資回収を目指す特別目的会社の育成を図っていく。また、出力変動のある再生可能エネルギーの導入拡大に対応するため、電力システム改革において新たに広域的運営推進機関を設置し、周波数変動を広域で調整する仕組みを導入するとともに、同機関が中心となって地域間連系線の整備等に取り組む。

あわせて、再生可能エネルギーの変動を吸収するための大型蓄電池や水素の活用も促す。大型蓄電池については、変電所等への導入実証や国際標準化とともに、現在普及の壁となっているコストの問題について、低コスト化に向けた技術開発等を実施することで、2020年までに現在の半分程度までコストを低減する。

①陸上風力

陸上風力については、北海道や東北をはじめとする風力発電の適地を最大限活用するため、環境アセスメントの迅速化や地域内送電線や地域間連系線の強化はもとより、農地転用制度上の取扱い等の立地のための規制緩和や調整等を円滑化するための取組について検討を進めるとともに、必要に応じて更なる規制・制度の合理化に向けた取組を行う。

②洋上風力

中長期的には、陸上風力の導入可能な適地が限定的な我が国において、洋上風力発電の導入拡大は不可欠である。

着床式洋上風力については、2012年より銚子沖と北九州沖に実機を設置し、設置工法、気象条件、発電量など事業化に向けた必要なデータの取得を進めつつある。これらのデータや海外における実用化の事例等を踏まえ、2014年度から固定価格買取制度における新たな価格区分の設定がなされたところであり、引き続き取組を強化する。

また、浮体式洋上風力についても、世界初の本格的な事業化を目指し、福島沖や長崎沖で実施している実証研究を進め、2018年頃までにできるだけ早く商業化を目指しつつ、技術開発や安全性・信頼性・経済性の評価、環境アセスメント手法の確立を行う。

(2)地熱

地熱発電の開発には、時間とコストがかかり、風力発電と同様に、地元との調整や、環境アセスメントのほか、立地のための各種規制・制約への対応等の課題がある。

このため、地熱発電設備の導入をより短期間で、かつ円滑に実現できるよう、投資リスクの軽減、環境アセスメントの迅速化、電気事業法上の安全規制の合理化等の取組、また、必要に応じて更なる規制・制度の合理化に向けた取組等を進める。また、地熱は、発電後の熱水利用など、エネルギーの多段階利用も期待される。例えば、地熱発電所が安定的に電気を供給するとともに、蒸気で作った温水が近隣のホテルや農業用ビニールハウスなどで活用され、地域のエネルギー供給の安定化を支える役割を担っている。こうした利点を踏まえつつ、中長期的な視点を踏まえ、地域と共生した持続可能な開発を引き続き進めるべく、立地のための調整を円滑化するための取組について検討する。

2.分散型エネルギーシステムにおける再生可能エネルギーの利用促進

住宅や公共施設の屋根に容易に設置できる太陽光や、地域の多様な主体が中心となって設置する風力発電、小河川や農業用水などを活用した小規模水力、温泉資源を活用した小規模地熱発電、地域に賦存する木質を始めとしたバイオマス、太陽熱・地中熱等の再生可能エネルギー熱等は、コスト低減に資する取組を進めることで、コスト面でもバランスのとれた分散型エネルギーとして重要な役割を果たす可能性がある。また、地域に密着したエネルギー源であることから、自治体を始め、地域が主体となって導入促進を図ることが重要であり、国民各層がエネルギー問題を自らのこととして捉える機会を創出するものである。

加えて、再生可能エネルギーを用いた分散型エネルギーシステムの構築は、地域に新しい産業を起こし、地域活性化につながるものであるとともに、緊急時に大規模電源などからの供給に困難が生じた場合でも、地域において一定のエネルギー供給を確保することに貢献するものである。

このため、小規模な再生可能エネルギー源を組み合わせた分散型エネルギーシステムの構築を加速していくよう、個人や小規模事業者も参加しやすくするための支援を行っていく。また、2013年臨時国会において成立した農林漁業の健全な発展と調和のとれた再生可能エネルギー電気の発電の促進に関する法律(農山漁村再生可能エネルギー法)等の積極的な活用を図り、地域の活性化に資する再生可能エネルギーの導入を推し進める。

さらに、分散型エネルギーシステム内で余剰となった蓄電池の電力も含めた電力を系統に供給することを弾力的に認めるため、逆潮流に関わる運用を柔軟化し、このために必要な系統安定化のための技術革新を進める。

(1)木質バイオマス等

大きな可能性を有する未利用材の安定的・効率的な供給による木質バイオマス発電及び木質バイオマス熱利用等について、循環型経済の実現にも資する森林資源の有効活用・林業の活性化のための森林・林業施策や農山漁村再生可能エネルギー法等を通じて積極的に推進し、農林漁業の健全な発展と調和のとれた再生可能エネルギーの導入を推し進めていく。さらに、下水汚泥、食品廃棄物などによる都市型バイオマスや耕作放棄地を活用した燃料作物バイオマスの利用を進める。

(2)中小水力
中小水力発電については、既に許可を受けた農業用

水等を利用した発電について、河川法の改正による登録制の導入により水利権手続の簡素化・円滑化が図られたところであり、今後、積極的な導入の拡大を目指す。

(3)太陽光

太陽光発電は、中小規模で分散して導入しやすく系統負担が少ないこと、非常用電源として利用可能であることなどの特徴があり、自家消費やエネルギーの地産地消を行う分散型電源に適している。遊休地や学校、工場の屋根の活用など、地域で中小規模の太陽光発電の普及が進んでおり、引き続き、こうした取組を支援していく。

(4)再生可能エネルギー熱

再生可能エネルギー電気と並んで重要な地域性の高いエネルギーである再生可能エネルギー熱を中心として、下水汚泥・廃材によるバイオマス熱などの利用や、運輸部門における燃料となっている石油製品を一部代替することが可能なバイオ燃料の利用、廃棄物処理における熱回収を、経済性や地域の特性に応じて進めていくことも重要である。

太陽熱、地中熱、雪氷熱、温泉熱、海水熱、河川熱、下水熱等の再生可能エネルギー熱について、熱供給設備の導入支援を図るとともに、複数の再生可能エネルギー熱や蓄熱槽源の複数熱利用形態の実証を行うことで、再生可能エネルギー熱の導入拡大を目指す。

3.固定価格買取制度の在り方

2012年7月の固定価格買取制度開始以降、2013年12月末までに、大規模水力を除く発電を開始した再生可能エネルギー発電設備は制度開始前と比較して設備導入量が34%増加するなど着実に導入が進んでいる。固定価格買取制度は、再生可能エネルギーに対する投資の回収に予見可能性を与えることで投資の加速度的促進を図るものであることから、引き続き、安定的かつ適切な運用により制度リスクを低減し、事業者が本来あるべき競争に集中しやすい制度運用を目指すことが不可欠である。また、小規模な取組も含め、地域活性化を視野に入れて制度の検討を行うことも重要である。

他方、国民負担の観点から、法律の規定に従い、コスト低減実績を踏まえた調達価格の見直しを行うなど、常に適切に配慮を行うことが欠かせない。さらに、固定価格買取制度等の再生可能エネルギー源の利用の促進に関する制度について、コスト負担増や系統強化等の課題を含め諸外国の状況等も参考に、再生可能エネルギー源の最大の利用の促進と国民負担の抑制を、最適な形で両立させるような施策の組合せを構築することを軸として、法律に基づき、エネルギー基本計画改定に伴い総合的に検討し、その結果に基づいて必要な措置を講じる。

4.福島の再生可能エネルギー産業の拠点化の推進

福島においては、世界初の本格的な事業化を目指した大型浮体式洋上風力の実証研究が進められているところであるが、これに加え、独立行政法人産業技術総合研究所に「福島再生可能エネルギー研究所」を本年4月に開所し、地熱発電の適正利用・評価の技術や再生可能エネルギーの研究活動等を行うこととしている。

こうした取組を通じて、福島の再生可能エネルギー産業拠点化を目指す。

第4節 原子力政策の再構築

1.原子力政策の出発点−東京電力福島第一原子力発電所事故の真摯な反省

東京電力福島第一原子力発電所事故によって、国民の、そして世界中の誰もが原子力エネルギーが有するリスクを改めて認識した。国民の間には原子力発電に対する不安感や、原子力政策を推進してきた政府・事業者に対する不信感・反発がこれまでになく高まっている。

この事故の結果、現在も約14万人もの人々が避難を余儀なくされ、汚染水等の東京電力福島第一原子力発電所事故をめぐるトラブルは今なお多くの国民や国際社会に不安を与えている。政府は、東京電力福島第一原子力発電所事故の発生を防ぐことができなかったことを真摯に反省し、福島の再生に全力を挙げるとともに、事故の原因や原子炉内の状況を踏まえ、このような事故の再発の防止のための努力を続けていかなければならない。

また、東京電力福島第一原子力発電所事故以前から、事故情報の隠蔽問題や、もんじゅのトラブル、六ヶ所再処理工場の度重なる計画遅延、高レベル放射性廃棄物の最終処分地の選定の遅れ等、原子力政策をめぐる多くのトラブルやスケジュールの遅延が国民の不信を招いてきたことも事実である。

こうした中、事故前に比べ、我が国におけるエネルギー問題への関心は極めて高くなっており、原子力の利用は即刻やめるべき、できればいつかは原子力発電を全廃したい、我が国に原子力等の大規模集中電源は不要である、原子力発電を続ける場合にも規模は最小限にすべき、原子力発電は引き続き必要であるなど、様々な立場からあらゆる意見が表明され、議論が行われてきている。

政府は、こうした様々な議論を正面から真摯に受け止めなければならない。

2.福島の再生・復興に向けた取組

福島の再生・復興に向けた取組は、エネルギー政策の再構築の出発点である。政府の最優先課題として、廃炉・汚染水対策、原子力賠償、除染・中間貯蔵施設事業、風評被害対策など、福島の再生・復興に全力で取り組んでいかなければならない。

東京電力福島第一原子力発電所事故のような深刻な原子力事故における廃炉・汚染水対策は、世界にも前例のない困難な事業であることから、事業者任せにするのではなく、国が前面に立ち、一つ一つの対策を着実に履行する不退転の決意を持って取り組む必要がある。

このため、国の取組として、廃炉・汚染水対策に係る司令塔機能を一本化し、体制を強化するため、「東京電力福島第一原子力発電所廃炉対策推進会議」を、「廃炉・汚染水対策関係閣僚等会議」に統合するとともに、関連する組織の整理を行った。今後は、「東京電力(株)福島第一原子力発電所1~4号機の廃止措置等に向けた中長期ロードマップ(2013年6月原子力災害対策本部・東京電力福島第一原子力発電所廃炉対策推進会議決定)」や、「東京電力(株)福島第一原子力発電所における汚染水問題に関する基本方針(2013年9月原子力災害対策本部決定)」、予防的・重層的な対策を講じる「東京電力(株)福島第一原子力発電所における廃炉・汚染水問題に対する追加対策(2013年12月原子力災害対策本部決定)」を踏まえた廃炉・汚染水対策を、引き続き着実に実施する。さらに、30年から40年程度かかると見込まれる東京電力福島第一原子力発電所の廃炉・汚染水対策については、国が前面に立って、より着実に廃炉を進められるよう、技術的観点から、支援体制を強化する必要がある。このため、「原子力損害賠償支援機構」を「原子力損害賠償・廃炉等支援機構」に改称し、その業務に「事故炉の廃炉支援業務」を追加すること等を定めた「原子力損害賠償支援機構法の一部を改正する法律案」を2014年通常国会に提出した。加えて、東京電力福島第一原子力発電所の周辺地域において、ロボットや分析技術を始めとする多岐にわたる廃炉関連技術の研究開発拠点やメンテナンス・部品製造を中心とした生産拠点も必要となりえることから、こうした拠点の在り方について地元の意見も踏まえつつ、必要な検討を行っていく。なお、このような取組とともに、福島沖での浮体式洋上風力技術の実証研究や独立行政法人産業技術総合研究所の「福島再生可能エネルギー研究所」の開所、相馬LNG基地の建設、IGCCの実証など、福島がエネルギー産業・技術の拠点として発展していくことを推進する。

その上で、これらを通じて得られる技術や知見については、IAEAや経済協力開発機構原子力機関(OECD/NEA)等の多国間協力の枠組み、米・英・仏及び露との間での二国間協力の枠組み等を通じて世界と共有し、各国の原子力施設における安全性の向上や防災機能の強化に貢献していく。また、事業者による対策の進捗管理、技術的な難易度が高く、国が前面に出て取り組む必要のある対策について、国の財政措置を実施することや、労働者の安全な作業環境や作業品質の確保等については、引き続き国としても適切に取り組んでいく。

また、原子力災害からの福島の復興・再生を一層加速するため、「原子力災害からの福島復興の加速に向けて(2013年12月閣議決定)」において、東京電力が福島の再生に正面から向き合うとともに、国が前面に出る方針を具体的に明らかにした。賠償や除染・中間貯蔵施設事業など、十分な資金的手当なくしては進まない事業を加速させ、国民負担を最大限抑制しつつ、電力の安定供給と福島の再生を両立させることとしている。福島の再生のために必要なすべての課題に対して、国民の理解と協力を得ながら、地元とともに、国も東京電力も、なすべきことは一日でも早く、という姿勢で取り組んでいく。

3.原子力利用における不断の安全性向上と安定的な事業環境の確立

原子力の利用においては、いかなる事情よりも安全性を最優先することは当然であり、我が国の原子力発電所では深刻な過酷事故は起こり得ないという「安全神話」と決別し、世界最高水準の安全性を不断に追求していくことが重要である。

いかなる事情よりも安全性を全てに優先させ、国民の懸念の解消に全力を挙げる前提の下、原子力発電所の安全性については、原子力規制委員会の専門的な判断に委ね、原子力規制委員会により世界で最も厳しい水準の規制基準に適合すると認められた場合には、その判断を尊重し原子力発電所の再稼働を進める。その際、国も前面に立ち、立地自治体等関係者の理解と協力を得るよう、取り組む。

原子力事業者を含む産業界は、自主的に不断に安全を追求する事業体制を確立し、原子力施設に対する安全性を最優先させるという安全文化の醸成に取り組む必要がある。国はそれを可能とする安定的な事業環境の整備等必要な役割を果たしていく。

原子力事業者は、二度と原子力事故は起こさないとの強い意思を持ち、原子力のリスクを適切にマネジメントするための体制を整備するとともに、確率論的リスク評価(PRA)等の客観的・定量的なリスク評価手法を実施することで、個々の原子炉ごとの安全性を評価し、継続的な安全性向上につなげていくことなどが求められる。

また、原子力事業者は、高いレベルの原子力技術・人材を維持し、今後増加する廃炉を円滑に進めつつ、東京電力福島第一原子力発電所事故の発生を契機とした規制強化に対し迅速かつ最善の安全対策を講じ、地球温暖化対策やベースロード電源による安定的な供給に貢献することが求められている。このため、国は、電力システム改革によって競争が進展した環境下においても、原子力事業者がこうした課題に対応できるよう、海外の事例も参考にしつつ、事業環境の在り方について検討を行う。

東京電力福島第一原子力発電所の廃炉や、今後増えていく古い原子力発電所の廃炉を安全かつ円滑に進めていくためにも、高いレベルの原子力技術・人材を維持・発展することが必要である。また、東京電力福島第一原子力発電所事故後も、国際的な原子力利用は拡大を続ける見込みであり、特にエネルギー需要が急増するアジアにおいて、その導入拡大の規模は著しい。我が国は、事故の経験も含め、原子力利用先進国として、安全や核不拡散及び核セキュリティ分野での貢献が期待されており、また、周辺国の原子力安全を向上すること自体が我が国の安全を確保することとなるため、それに貢献できる高いレベルの原子力技術・人材を維持・発展することが必要である。

廃炉等に伴って生じる放射性廃棄物の処分については、低レベル放射性廃棄物も含め、発生者責任の原則の下、原子力事業者等が処分に向けた取組を進めることを基本としつつ、処分の円滑な実現に向け、国として必要な研究開発を推進するなど、安全確保のための取組を促進する。また、廃炉が円滑かつ安全に行われるよう、廃炉の工程において必要な技術開発や人材の確保などについても、引き続き推進していく。

加えて、原子力損害賠償制度の見直しについては、本計画で決定する原子力の位置付け等を含めたエネルギー政策を勘案しつつ、現在進行中の福島の賠償の実情等を踏まえ、総合的に検討を進める。また、国際的な原子力損害賠償制度の構築に参加することの重要性や廃炉・汚染水対策において海外の叡智を結集する環境整備のため、原子力損害の補完的補償に関する条約(CSC)の締結に向けた作業を加速化する。さらに、国は、原子力災害対策指針の策定や防災体制の整備に加え、関係省庁を挙げて、引き続き関係自治体の地域防災計画・避難計画の充実化を支援し、災害対策の強化を図っていく。

原子力災害対策指針に基づき、新たに地方公共団体が取り組む原子力災害対策については、内閣府特命担当大臣の下で、原子力災害対策担当部局が、地方公共団体からの相談窓口となり、関係省庁とともにこれを支援する。

4.対策を将来へ先送りせず、着実に進める取組

世界の使用済燃料の状況については、OECD加盟国の使用済燃料総量だけでも2011年時点で約185,000トンとなっており、使用済燃料問題は世界共通の課題である。原子力利用に伴い確実に発生するものであり、将来世代に負担を先送りしないよう、現世代の責任として、その対策を確実に進めることが不可欠である。このため、使用済燃料対策を抜本的に強化し、総合的に推進する。

高レベル放射性廃棄物については、国が前面に立って最終処分に向けた取組を進める。これに加えて、最終処分に至るまでの間、使用済燃料を安全に管理することは核燃料サイクルの重要なプロセスであり、使用済燃料の貯蔵能力の拡大へ向けて政府の取組を強化する。あわせて、将来の幅広い選択肢を確保するため、放射性廃棄物の減容化・有害度低減などの技術開発を進める。

核燃料サイクル政策については、これまでの経緯等も十分に考慮し、関係自治体や国際社会の理解を得つつ、再処理やプルサーマル等を推進するとともに、中長期的な対応の柔軟性を持たせる。

(1)使用済燃料問題の解決に向けた取組の抜本強化と総合的な推進
①高レベル放射性廃棄物の最終処分に向けた取組の抜本強化

我が国においては、現在、約17,000トンの使用済燃料を保管中である。これは、既に再処理された分も合わせるとガラス固化体で約25,000本相当の高レベル放射性廃棄物となる。しかしながら、放射性廃棄物の最終処分制度を創設して以降、10年以上を経た現在も処分地選定調査に着手できていない。

廃棄物を発生させた現世代の責任として将来世代に負担を先送りしないよう、高レベル放射性廃棄物の問題の解決に向け、国が前面に立って取り組む必要がある。

高レベル放射性廃棄物については、ⅰ)将来世代の負担を最大限軽減するため、長期にわたる制度的管理(人的管理)に依らない最終処分を可能な限り目指す、ⅱ)その方法としては現時点では地層処分が最も有望である、との国際認識の下、各国において地層処分に向けた取組が進められている。我が国においても、現時点で科学的知見が蓄積されている処分方法は地層処分である。他方、その安全性に対し十分な信頼が得られていないのも事実である。したがって、地層処分を前提に取組を進めつつ、可逆性・回収可能性を担保し、今後より良い処分方法が実用化された場合に将来世代が最良の処分方法を選択できるようにする。

このような考え方の下、地層処分の技術的信頼性について最新の科学的知見を定期的かつ継続的に評価・反映するとともに、幅広い選択肢を確保する観点から、直接処分など代替処分オプションに関する調査・研究を推進する。あわせて、処分場を閉鎖せずに回収可能性を維持した場合の影響等について調査・研究を進め、処分場閉鎖までの間の高レベル放射性廃棄物の管理の在り方を具体化する。

その上で、最終処分場の立地選定にあたっては、処分の安全性が十分に確保できる地点を選定する必要があることから、国は、科学的により適性が高いと考えられる地域(科学的有望地)を示す等を通じ、地域の地質環境特性を科学的見地から説明し、立地への理解を求める。また、立地地点は地域による主体的な検討と判断の上で選定されることが重要であり、多様な立場の住民が参加する地域の合意形成の仕組みを構築する。さらに、国民共通の課題解決という社会全体の利益を地域に還元するための方策として、施設受入地域の持続的発展に資する支援策を国が自治体と協力して検討、実施する。

このような取組について、総合資源エネルギー調査会の審議を踏まえ、「最終処分関係閣僚会議」において具体化を図り、「特定放射性廃棄物の最終処分に関する基本方針(2008年3月閣議決定)」の改定を早急に行う。

また、廃棄物の発生者としての基本的な責任を有する事業者は、こうした国の取組を踏まえつつ、立地への理解活動を主体的に行うとともに、最終処分場の必要性について、広く国民に対し説明していくことが求められる。

②使用済燃料の貯蔵能力の拡大

廃棄物を発生させた現世代として、高レベル放射性廃棄物の最終処分へ向けた取組を強化し、国が前面に立ってその解決に取り組むが、そのプロセスには長期間を必要とする。その間も、原子力発電に伴って発生する使用済燃料を安全に管理する必要がある。このため、使用済燃料の貯蔵能力を強化することが必要であり、安全を確保しつつ、それを管理する選択肢を広げることが喫緊の課題である。こうした取組は、対応の柔軟性を高め、中長期的なエネルギー安全保障に資することになる。

このような考え方の下、使用済燃料の貯蔵能力の拡大を進める。具体的には、発電所の敷地内外を問わず、新たな地点の可能性を幅広く検討しながら、中間貯蔵施設や乾式貯蔵施設等の建設・活用を促進するとともに、そのための政府の取組を強化する。

③放射性廃棄物の減容化・有害度低減のための技術開発

使用済燃料については、既に発生したものを含め、長期にわたって安全に管理しつつ、適切に処理・処分を進める必要があること、長期的なリスク低減のため、その減容化・有害度低減が重要であること等を十分に考慮して対応を進める必要がある。こうした課題に的確に対応し、その安全性、信頼性、効率性等を高める技術を開発することは、将来、使用済燃料の対策の柱の一つとなり得る可能性があり、その推進は、幅広い選択肢を確保する観点から、重要な意義を有する。

このため、放射性廃棄物を適切に処理・処分し、その減容化・有害度低減のための技術開発を推進する。具体的には、高速炉や、加速器を用いた核種変換など、放射性廃棄物中に長期に残留する放射線量を少なくし、放射性廃棄物の処理・処分の安全性を高める技術等の開発を国際的なネットワークを活用しつつ推進する。また、最終処分に係る検討・進捗状況を見極めつつ、最終処分と減容化等技術開発や、関連する国際研究協力・研究人材の育成などの一体的な実施の可能性について検討する。

(2)核燃料サイクル政策の推進
①再処理やプルサーマル等の推進

我が国は、資源の有効利用、高レベル放射性廃棄物の減容化・有害度低減等の観点から、使用済燃料を再処理し、回収されるプルトニウム等を有効利用する核燃料サイクルの推進を基本的方針としている。

核燃料サイクルについては、六ヶ所再処理工場の竣工遅延やもんじゅのトラブルなどが続いてきた。このような現状を真摯に受け止め、これら技術的課題やトラブルの克服など直面する問題を一つ一つ解決することが重要である。その上で、使用済燃料の処分に関する課題を解決し、将来世代のリスクや負担を軽減するためにも、高レベル放射性廃棄物の減容化・有害度低減や、資源の有効利用等に資する核燃料サイクルについて、これまでの経緯等も十分に考慮し、引き続き関係自治体や国際社会の理解を得つつ取り組むこととし、再処理やプルサーマル等を推進する。

具体的には、安全確保を大前提に、プルサーマルの推進、六ヶ所再処理工場の竣工、MOX燃料加工工場の建設、むつ中間貯蔵施設の竣工等を進める。また、平和利用を大前提に、核不拡散へ貢献し、国際的な理解を得ながら取組を着実に進めるため、利用目的のないプルトニウムは持たないとの原則を引き続き堅持する。これを実効性あるものとするため、プルトニウムの回収と利用のバランスを十分に考慮しつつ、プルサーマルの推進等によりプルトニウムの適切な管理と利用を行うとともに、米国や仏国等と国際協力を進めつつ、高速炉等の研究開発に取り組む。

もんじゅについては、廃棄物の減容・有害度の低減や核不拡散関連技術等の向上のための国際的な研究拠点と位置付け、これまでの取組の反省や検証を踏まえ、あらゆる面において徹底的な改革を行い、もんじゅ研究計画に示された研究の成果を取りまとめることを目指し、そのため実施体制の再整備や新規制基準への対応など克服しなければならない課題について、国の責任の下、十分な対応を進める。

②中長期的な対応の柔軟性

核燃料サイクルに関する諸課題は、短期的に解決するものではなく、中長期的な対応を必要とする。また、技術の動向、エネルギー需給、国際情勢等の様々な不確実性に対応する必要があることから、対応の柔軟性を持たせることが重要である。特に、今後の原子力発電所の稼働量とその見通し、これを踏まえた核燃料の需要量や使用済燃料の発生量等と密接に関係していることから、こうした要素を総合的に勘案し、状況の進展に応じて戦略的柔軟性を持たせながら対応を進める。

5.国民、自治体、国際社会との信頼関係の構築

(1)東京電力福島第一原子力発電所事故を踏まえた広聴・広報

東京電力福島第一原子力発電所事故を受けて、国民の間に原子力に対する不信・不安が高まっているとともに、エネルギーに関わる行政・事業者に対する信頼が低下している。

この状況を真摯に受け止め、その反省に立って信頼関係を構築するためにも、原子力に関する丁寧な広聴・広報を進める必要がある。このため、原子力が持つリスクや事故による影響を始め、事故を踏まえて整備した規制基準や安全対策の状況、重大事故を想定した防災対策、使用済燃料に関する課題、原子力の経済性、国際動向など、科学的根拠や客観的事実に基づいた広報を推進する。

また、原子力立地地域のみならず、これまで電力供給の恩恵を受けてきた消費地も含め、多様なステークホルダーとの丁寧な対話や情報共有のための取組強化等により、きめ細やかな広聴・広報を行う。さらに、世代を超えて丁寧な理解増進を図るため、原子力に関する教育の充実を図る。

(2)立地自治体等との信頼関係の構築

我が国の原子力利用には、原子力関係施設の立地自治体や住民等関係者の理解と協力が必要であり、こうした関係者のエネルギー安定供給への貢献を再認識しなくてはならない。一方、立地自治体等の関係者は、事故に伴って様々な不安を抱えている。

このため、地域の実情に応じ、科学的に検証した情報を発信するとともに、原子力が持つリスクやその影響、リスクに対してどう向き合い対策を講じていくのか等について、丁寧な対話を行うことが重要である。仏国では、1981年に「地域情報委員会(CLI)」を導入し、原子力施設立地地域の情報共有の場を設置している。また、英国には「サイト・ステークホルダー・グループ(SSG)」が、スウェーデンには地域委員会があり、それぞれ原子力施設周辺地域のコミュニケーションを促進している。我が国においても、こうした諸外国の例も参考にしながら、国がより積極的に関与し、住民を始めとする多様なステークホルダーとの丁寧な対話や情報共有のための取組強化等により、地域における情報共有の強化へ向けて必要な措置を講ずる。

他方、原子力発電所の稼働停止やその長期化等により原子力立地地域では経済的な影響も生じている。国は、立地自治体等との丁寧な対話を通じて信頼関係を構築するとともに、電源立地対策の趣旨に基づき、原子力発電所の稼働状況等も踏まえ、新たな産業・雇用創出も含め、地域の実態に即した立地地域支援を進める。

(3)世界の原子力平和利用と核不拡散への貢献

東京電力福島第一原子力発電所事故は、周辺国を含む国際社会に大きな不安をもたらしていることから、IAEA等の場を活用し、国際社会との対話を強化し、迅速かつ正確な情報発信を行う。また、我が国を取り巻く中国、東南アジア、インドをはじめとする新興国における原子力発電の導入は今後も拡大していく見込みであり、東京電力福島第一原子力発電所の事故の経験から得られた教訓を国際社会と共有することで、世界の原子力安全の向上や原子力の平和利用に貢献していくとともに、核不拡散及び核セキュリティ分野において積極的な貢献を行うことは我が国の責務であり、世界からの期待でもある。我が国としてはIAEA基準等の原子力安全の国際標準の策定に積極的に貢献することが重要である。加えて、原発輸出を含む原子力技術を提供するに際し、公的金融を付与する場合には、原子力安全条約及びIAEA基準を参照した安全確保等に関する配慮の確認を行いつつ、事故の経験と教訓に基づき、安全性を高めた原子力技術と安全文化を共有していくことで、世界の原子力安全の向上に貢献する。

また、非核兵器国としての経験を活かして、IAEAの保障措置の強化や厳格な輸出管理を通じた核不拡散及び核セキュリティ・サミット等を通じた国際的な核セキュリティの強化に積極的に貢献する。特に、核不拡散分野においては、核燃料の核拡散抵抗性の向上や、保障措置技術や核鑑識・検知の強化等の分野における研究開発において国際協力を進め、核不拡散の取組を強化していくことが重要である。我が国としては、米仏等の関係国との協力の下、こうした取組を進めていく。さらに、政府は、IAEA等国際機関と連携しつつ、原子力新規導入国に対する人材育成・制度整備支援等に向けて、その一元的な実施体制を整備する。

第5節 化石燃料の効率的・安定的な利用のための環境の整備

1.高効率石炭・LNG火力発電の有効活用の促進

石炭火力発電は、安定供給性と経済性に優れているが、温室効果ガスの排出量が多いという課題がある。環境負荷の低減という課題と両立した形で利用していくため、温室効果ガスの排出を抑制する利用可能な最新鋭の技術を活用するとともに、エネルギー政策の検討も踏まえた国の地球温暖化対策の計画・目標の策定と併せて、電力業界全体の自主的な枠組みの構築を促す。また、環境アセスメントに要する期間を、リプレースの場合は従来3年程度かかるところを最短1年強に短縮するとともに、新増設の場合も短縮化に取り組む。

加えて、温室効果ガスの大気中への排出をさらに抑えるため、IGCC等の次世代高効率石炭火力発電技術等の開発・実用化を推進するとともに、2020年頃の二酸化炭素回収貯留(CCS)技術の実用化を目指した研究開発や、CCSの商用化の目途等も考慮しつつできるだけ早期のCCS Ready導入に向けた検討を行うなど、環境負荷の一層の低減に配慮した石炭火力発電の導入を進める。

また、世界的には、引き続き石炭の利用が拡大していくことが見込まれることを踏まえ、海外においても、環境負荷の低減と両立した形で石炭の利用が行われるよう、我が国の先端的な高効率石炭火力発電の輸出を促進する。

あわせて、高効率LNG火力発電の技術開発、効率的な利用や輸出を促進する。

2.石油産業・LPガス産業の事業基盤の再構築

(1)石油産業(精製・元売)の事業再編・構造改革
①柔軟な石油・石油化学製品の生産体制の確立

「平成26~30年度石油製品需要見通し」によれば、我が国の国内の石油需要は毎年度平均1.7%程度減少を続ける見通しである一方、アジア太平洋地域では、石油需要・石油化学需要は増大を続ける見通しで、東アジア地域においては、石油化学との統合が進んだ大規模な石油コンビナートの建設が相次いでいる。さらに、北米のシェール革命が世界の石油・石油化学製品の貿易構造に大きな変化を与え、アジアの石油コンビナートの生産性競争を激化させると見込まれる。

戦後の高度成長期に運転を開始した我が国の製油所は、東アジアで新たに建設が進んでいる大規模な石油コンビナートと比べ、規模の経済、エネルギー効率、石油化学製品生産への弾力的な切替などの生産の柔軟性等の面で見劣りするとの指摘がある。

今後、我が国の石油関連産業が国際展開を図る中で競争力を備えるためには、石油コンビナートに立地する製油所・石油化学工場等について、「資本の壁」や「地理的な壁」を超えた統合運営・事業再編を通じ、燃料と石油化学製品等の柔軟な生産体制の構築等による高付加価値化や設備の共有化・廃棄等による設備最適化や製造原価の抑制を進め、総合的かつ抜本的な生産性向上を進める必要がある。

また、中長期的に原油調達の多様化が進んでいくことを踏まえ、超重質油や超軽質油といった非在来型原油の処理も可能にする技術開発や設備投資を促進する。

②他事業分野・海外進出の強化による収益力の向上

欧米の石油企業は、利益に占める上流部門(資源開発)の割合が大きく、中下流部門(精製元売・小売販売)の割合は小さい。一方、我が国の多くの石油企業は、第二次世界大戦後に欧米石油企業(メジャーズ)から原油供給を受け、その傘下にある時期が長かったこともあり、中下流部門が利益の中心で、収益力に課題が残る。

我が国の石油産業が収益力を強化するためには、縮小する国内ガソリン市場における競争だけに注力するのではなく、資源開発事業(石油、ガス、金属鉱物)の強化や、LNGや石炭、再生可能エネルギー等による発電事業、ガス事業、水素事業等への参入強化等、他のエネルギー事業ポートフォリオの充実を図るとともに、海外における石油コンビナート事業の運営等への進出を進め、国内ガソリン市場等の変動を吸収して収益を確保しうる強靱な「総合エネルギー産業」へと脱皮することが不可欠である。

(2)石油・LPガスの最終供給体制の確保

消費者に対して石油製品の供給を行う下流部門では、石油製品の需要の減少が収益を圧迫する最大の要因の一つとなっている。自動車を始めとした燃料効率の大幅な改善の動きは、ガソリンを始めとする石油製品の需要減少に拍車をかける構造となっており、この結果、石油販売事業者などの経営環境は概して厳しい。

一方、石油製品の最終供給を担う事業者には、危機発生時においても一定の供給機能を果たせるようにするための高い安全性・耐久性を持った設備を確保するための持続的な投資を求められることとなる。

このため、平時・緊急時を問わずに安定供給のための中核機能を将来にわたって担っていく意識と高い意欲のあるサービスステーション(SS)に対する設備投資支援などを行うことが必要である。また、既にSSにおいて、灯油の配送やLPガス販売などに加え、自動車関連の各種サービスの提供や電気自動車の充電スタンドの整備、過疎地における日用品店・郵便局の併設などの取組が行われているが、事業者には、消費者との直接的なつながりを有する強みを活かした事業の多様化を進め、SSの「地域コミュニティのインフラ」としての機能を地域の実情を踏まえてさらに強化していくことが求められる。

LPガスについては、熱電供給により高い省エネルギーを実現する家庭用の定置用燃料電池(エネファーム)等のLPガスコージェネレーション、ガスヒートポンプ(GHP)等の利用拡大、都市ガス事業、水素燃料供給事業への進出や、アジアへのLPガスの安全機器の輸出などに取り組むことが求められる。また、現在でもタクシーなどの自動車はLPガスを主燃料としており、運輸部門における燃料の多様化を担うことも期待される。

(3)公正かつ透明な石油製品取引構造の確立

石油製品は品質の差別化が難しいため、競争は価格面に集中する傾向にある。このため、卸価格の格差はSSの競争基盤に大きな影響を及ぼすことになるが、卸価格の価格差や決定方法の不透明性、競争上不利な取引条件が課されているおそれのあるSS事業者の存在等が指摘されているところである。

こうした中、一般的に取引上優越した立場にある元売が、正常な商慣習に照らして不当な価格差を付し、競争上不利な取引条件をSS事業者に押しつけるなど独占禁止法に違反する疑いのある事案に接した場合には、厳正な対処が必要である。

第6節 市場の垣根を外していく供給構造改革等の推進

我が国の電力、ガス、熱各エネルギー分野の供給構造は、業態ごとに事業法などで制度的に枠組みが整備されてきたことから、市場ごとの縦割型産業構造という特徴を持っている。

しかし、技術革新による各エネルギー源の利用の高効率化や用途の多様化が進んできたことから、一定の条件下では効率的分配などに貢献していた縦割型産業構造は、むしろ非効率的な資源配分を生み出す仕組みとなっている。

こうした状況を踏まえ、制度改革による市場の垣根の撤廃や、閉鎖的であったエネルギー産業構造に技術革新や異業種における効率的な経営手法を取り込むことで、より付加価値が高く、効率的な産業構造へと変革し、分断されたエネルギー市場を水平的に統合された構造へと転換を図ることが必要である。

1.電力システム改革の断行

(1)電力システム改革の内容と実施時期

東京電力福島第一原子力発電所事故によって原子力利用が停滞して電力供給に不安を抱えるようになる中、地域を越えた広域的な系統運用、競争の促進による電気料金の最大限の抑制、分散型電源などの多様な電源の活用、需要家の多様なニーズに応じた多様で効率的なサービスの提供、それによる需要の変化に応じた効率的な供給等、柔軟性のある電力供給が強く求められたにも関わらず、地域ごとに独占事業者が集中管理する電力供給体制では十分に対応できないという、従来の電力システムの抱える様々な限界が明らかになった。

こうした課題を抜本的に解決するため、「電力システムに関する改革方針」(2013年4月)において、広域系統運用の拡大、小売・発電の全面自由化及び法的分離の方式による送配電部門の中立性の一層の確保を柱とする大胆な改革に取り組むことを閣議決定した。

こうした改革により、全国大での系統運用を可能として需給調整機能を強化し、電力の安定供給を確保するとともに、小売及び発電の全面自由化や電気の先物取引に係る制度の整備などによって、これまで小売の自由化を行った範囲の新規参入者のシェアが3.5%に留まるなど、競争的環境に程遠かった市場をより競争的なものとすることで、電気料金を最大限抑制する仕組みが働く構造を構築していく。さらに、送配電部門の中立性を法的にも担保しつつ、電力供給の基盤となる送配電網整備のための投資回収がより適切に行われるとともに、分散型電源の一層の活用が進みやすい環境を実現していくことで、柔軟性のある安定供給体制を確立していく。

このような大胆な改革について、三段階で順次制度改正を進め、これを2018年から2020年までを目途に完結することとしており、2013年臨時国会では、第一段階の電気事業法改正法案が成立したところである。さらに2014年通常国会に第二段階の同法改正法案を提出したところであり、第三段階の同法改正法案については、2015年通常国会に提出することを目指すものとしている。

(2)安定した電力供給を確保するための電力システム改革の具体的制度設計

電力システム改革によって、小売及び発電市場が全面自由化する結果、短期的にコスト競争力を追求する指向が高まり、発電所建設投資全体が抑制される可能性がある。また、需給調整を適切に行うためには、出力調整に柔軟性を発揮できる電力供給体制が不可欠であるが、自由化をした結果、極端に偏った電源構成となる場合は、系統運用者が適切な調整力を確保できず、電力供給不安を引き起こす懸念も存在する。

電力システム改革に関する詳細な制度設計に当たっては、中長期的に我が国全体で強靱かつ安定した供給力を確保するとともに、系統運用者が短期的に調整電源を適切に調達することができる枠組みの導入や系統利用制度の適正化を行うことが必要である。そのため、系統運用者による調整電源の調達の枠組みや、小売事業者に対する供給力確保義務、広域的運営推進機関による発電所建設事業者募集の仕組みの導入、各種制度改革を踏まえた託送制度の見直し等について、引き続き検討を行っていく。

また、災害時を含む電力需給のひっ迫、地域を越えた電力取引の拡大、出力変動のある再生可能エネルギーの導入拡大等に対応するため、政府が示す政策方針や、広域的運営推進機関が策定する計画に基づき、東西の周波数変換設備や地域間連系線等の送電インフラの増強を進める。

なお、電力システム改革と電源構成の関係については、電源の安全・安定的な利用の確保を踏まえつつ、例えば再生可能エネルギーの導入拡大のための取組のように、望ましい電源構成を実現するための施策を講じる場合には、電力システム改革に関する詳細制度設計において、そうした施策と整合的になるよう配慮を行う。

2.ガスシステム及び熱供給システム改革の推進

(1)低廉かつ安定的な供給を実現するガスシステムの構築に向けた改革

ガスシステムは、電力システムに先駆けて自由化を進めてきた経緯があり、全需要に対する自由化比率は約65%で、新規参入比率は自由化範囲の15%となっている。

電力システム改革と相まって、ガスが低廉・安全かつ安定的に供給され、消費者に新たなサービスなど多様な選択肢が示されるガスシステムの構築に向け、小売の全面自由化、LNG基地の在り方も含めた天然ガスの導管による供給インフラのアクセス向上と整備促進や簡易ガス事業制度の在り方などの改革について検討を進めていく。

ガスシステム改革の推進に当たっては、利用形態の多角化を促進することが重要な鍵となる。例えば、環境調和性に優れたボイラー、工業炉や熱電配給により高い省エネルギーを実現する天然ガスコージェネレーション、系統電力需給ピークを緩和するガス空調等の拡大、さらに、燃料電池への水素供給のための原料としての役割も期待される。また、現在、国際安全基準の整備が進められているLNG燃料船など、船舶分野におけるLNGの主燃料化に向けた動きは着実に前進しており、こうした新たな需要に対応していくための制度やインフラ整備を進めていくことが重要である。

(2)熱・電利用の効率化を促すための熱供給市場の構造改革

熱をより有効に活用することに対する関心が高まる中、熱導管を面的に敷設して行う地域型の熱供給、都市再開発事業などに伴いビル単位での事業や生活機能の確保も意識した地点型の熱電一体供給など、冷温熱を供給するサービスの形態も多様化してきている。

こうした状況を踏まえ、電力・ガスのシステム改革と併せて、熱供給事業に関するシステム改革を徹底的に進めていくことにより、熱電一体供給も含めたエネルギー供給を効率的に実施できるようにするため、制度改革を含めて、熱供給事業の在り方の見直しを検討する。

第7節 国内エネルギー供給網の強靱化

国外から国内に資源を受け入れた後、石油製品への精製や電気への転換などを行い、需要家に供給するため国内供給網についても、コストを抑制するための効率性を維持しつつ、大規模自然災害等への危機対応力が十分に確保されたものとするための総合的な政策を展開していく。

特に、2013年12月には、「強くしなやかな国民生活の実現を図るための防災・減災等に資する国土強靱化基本法」が公布・施行されたところであり、同法に基づき、国内エネルギー供給網の強靱化を推進する。

1.石油備蓄等による海外からの供給危機への対応の強化

これまでは量的な充実を第一に進めてきた石油備蓄政策については、今後、国内の石油需要動向やリスク等を勘案して、備蓄総量や国家備蓄における原油・製品の比率を見直しつつ、危機発生時における機動力を向上することに重点をおく。具体的には、国家備蓄原油の油種を我が国の製油所設備により適合したものに入れ替えることや、ホルムズ海峡の封鎖等の具体的緊急時を想定した対応訓練の強化、産油国や東アジア消費国との協力強化等を進めていく。

既に、「産油国共同備蓄事業」として、サウジアラビアやUAEの国営石油会社に対し、商用原油の東アジア向け中継・在庫拠点として我が国国内の石油タンクを貸し出し、供給危機時には我が国に優先して供給を受ける枠組みを開始しているが、これを国家備蓄や民間備蓄に準じる「第三の備蓄」として位置付け、我が国と産油国双方の利益となる関係強化策として強力に推進する。

LPガス備蓄については、2013年3月に2つの国家備蓄基地が完成し、5基地体制となった。同年8月末には、これら2基地に備蓄するため、米国からシェールガス随伴のLPガスを積んだ第一船が入港した。今後、国家備蓄LPガスの購入・蔵置を着実に進めていく。

2.「国内危機」(災害リスク等)への対応強化

(1)供給サイドの強靱化

石油については、LPガスとともに、東日本大震災時にエネルギー供給の「最後の砦」としての役割を再認識されたことに鑑み、危機時の供給制約となる可能性のあるハード・ソフト両面の課題への対策を進める。

第一に、大規模被災時にあっても必要な石油供給量を確保しうるよう、石油産業(精製・元売)の各系列供給網全体で、石油供給にかかる業務継続・復旧目標を定め、製油所・油槽所から物流プロセス、SSに至る系列BCP・BCM(業務継続体制)を確立し、その格付けを定期的に行うことで対応能力の向上を進めていく。また、系列を超えた危機時の供給協力を円滑化すべく、石油備蓄法に基づく「災害時石油供給連携計画」の不断の見直しと訓練のPDCAサイクルを進める。被災後の供給量には限界が生じることを前提に、被災地からの緊急供給要請に対する供給優先順位付けの考え方を事前に整理する。

第二に、国土交通省による港湾整備事業等とも連携しつつ、石油コンビナート地区の強靱化(製油所における非常用電源増強や耐震・耐液状化、製油所間での供給バックアップ機能等の強化)を進めるとともに、最終供給を担うSSの災害対応能力を強化していく。

第三に、経済産業省資源エネルギー庁のみならず、内閣府、総務省消防庁、国土交通省、防衛省、警察庁等の関係省庁間で、危機時の石油供給を円滑化するための「国土強靱化政策大綱(2013年12月国土強靱化推進本部決定)」のプログラム等に基づく協力の枠組みの確立を急ぎ、石油業界や自治体も含めた訓練を継続的に進めていく。また、輸送経路となる道路における耐災害性を強化する。

LPガスについては、LPガス輸入基地への非常用電源車の配備、災害時に地域における燃料供給拠点となる中核充填所の設備強化を進めるとともに、「災害時石油ガス供給連携計画」に基づきLPガス販売事業者等が共同で供給運用を行うことや訓練を実施するなど、緊急時のLPガスの供給を円滑にするための体制を整備する。

電力供給についても、広域的運営推進機関を設置し、同機関が中心となって東西の周波数変換設備や地域間連系線等の送電インフラの増強を進めるとともに、電力システム改革後においても、送配電網にかかる投資回収を制度的に保証することで、災害発生時の電力供給の基盤となる送配電網の建設・保守が確実に行われる仕組みとする。また、地域における電源の分散化など、電力供給の強靱化を効率的に推進する。さらに、電気設備の耐性評価や復旧迅速化対策を進めることで、災害に強い電力システムの構築に取り組む。

天然ガスについても、供給体制の強靱化を進めるべく、LNG受入基地間での補完体制を強化するため、基地の整備・機能強化、太平洋側と日本海側の輸送路、天然ガスパイプラインの整備などに向けて、今後、検討を進めていくこととするとともに、都市ガスにおける耐震化を進めていく。

また、研究開発・実用化の取組が進められている、人工衛星等の宇宙情報インフラやエネルギー関連施設・機器の状況を把握するセンサー等を用いたシステムを通じて、災害の予兆や災害発生後の国土・施設の状況を迅速に把握することができる情報システムを積極的に活用していくことで、供給サイドの更なる強靱化を図る。

(2)需要サイドの強靱化

被災直後の交通網等の混乱を想定すれば、「供給サイド」の取組だけでは、発生直後の数日間、通信網等の重要インフラの利用に必要となる石油・LPガス供給を行うことは容易ではない。このため、社会の重要インフラと呼びうる政府庁舎や自治体庁舎、通信、放送、金融、拠点病院、学校、避難所等の施設では、停電した場合でも非常用電源を稼働させて業務を継続し、炊き出し等で国民生活を支えられるよう、石油・LPガスの燃料備蓄を含め個々の状況に応じた準備を行うべきであり、対応を検討する。さらに、各事業者・世帯レベルでも、自家用車へのガソリン・軽油のこまめな補給や灯油の備蓄等の備えを促す。また、災害時における非常用電源については、各企業の自家発電設備、燃料備蓄・調達等を関係企業間や地域内で融通する仕組みの構築を促進する。

なお、再生可能エネルギーやコージェネレーション、蓄電池システムなどによる分散型エネルギーシステムは、危機時における需要サイドの対応力を高めるものであり、分散型エネルギーシステムの構築を進めていく。

3.平時における安定供給の確保

過疎地域におけるSSは減少傾向にあり、域内にSSが一つもない自治体も現れ、石油製品の安定供給を確保していく上で問題となっている。

民間事業者による経営が難しい場合でも、地域の実情に応じて石油製品を含めた地域コミュニティに必要な物資・サービスの供給体制を維持していくことが必要である。このため、関係省庁や自治体との連携を強化し、総合的な地域政策の一環として機能維持策を検討していく。

また、地理的に不利な条件にある離島における石油製品の供給体制についても地域の課題として取り組む。

第8節 安定供給と地球温暖化対策に貢献する水素等の新たな二次エネルギー構造への変革

現在の二次エネルギー構造は、電気、熱及びガソリン等石油製品が担い、特に多くのエネルギー源から転換することができる利便性の高い電気がネットワークを通して最終消費者に供給されることが中心的な役割を担っている。

一方、電気の供給は送配電網に頼っており、ネットワークにつながっていなかったり、途切れた場合には供給ができなくなるという課題も抱えている。

こうした課題に対応するためには、エネルギーを如何に貯蔵して輸送するのかなど、二次エネルギーの供給方法の多様化等を含めて検討していくことが重要となる。

このような観点から、蓄電池や水素などの技術の活用は、二次エネルギー構造の変革を促す可能性を持つものであり、将来の社会を支える二次エネルギー構造の在り方を視野に入れて、着実に取組を進めていく必要がある。

1.電気をさらに効率的に利用するためのコージェネレーションの推進や蓄電池の導入促進

(1)コージェネレーションの推進

熱と電力を一体として活用することで高効率なエネルギー利用を実現するコージェネレーションは、ハイブリッド型の二次エネルギーであり、省エネルギー性に加え、再生可能エネルギーとの親和性もあり、電力需給ピークの緩和、電源構成の多様化・分散化、災害に対する強靱性を持つ。このため、家庭用を含めたコージェネレーションの導入促進を図るため、導入支援策の推進とともに、燃料電池を含むコージェネレーションにより発電される電気の取引の円滑化等の具体化に向けて検討する。

(2)蓄電池の導入促進

また、利便性の高い電気を貯蔵することで、いつでもどこでも利用できるようにする蓄電池は、エネルギー需給構造の安定性を強化することに貢献するとともに、再生可能エネルギーの導入を円滑化することができる、大きな可能性を持つ技術である。日本再興戦略においても、その潜在的市場の大きさが取り上げられており、その国際市場は2020年には20兆円規模に拡大していくと予想されている。

最近の安全性の向上や充放電効率の増加による性能向上によって、従来の用途に加え、車載用、住宅・ビル・事業用等の定置用の用途へも広がりつつあるが、引き続き、技術開発、国際標準化等により低コスト化・高性能化を図っていくことで、2020年までに世界の蓄電池市場規模(20兆円)の5割を国内関連企業が獲得することを目標に、蓄電池の導入を促進していく。

2.自動車等の様々な分野において需要家が多様なエネルギー源を選択できる環境整備の促進

自動車の分野においては、ガソリン、軽油等の石油製品間の競争のみならず、バイオ燃料、電力、天然ガス、LPガス、さらに水素をエネルギー源として利用することが可能となり、需要家の選択を通じて多様なエネルギー源が競争する環境が整いつつある。

こうした環境では、需要家がより費用対効果に優れた製品や、温室効果ガスの排出量が少ないエネルギー源を選択できるだけでなく、技術革新を促し、石油製品を動力源とする場合でも、トップランナー制度の下で1995年以降の15年間で49%改善してきた燃費効率をさらに向上させて温室効果ガスの排出量の抑制を加速させていくことにつながる。

エネルギー源間の競争を促進するためには、どのエネルギー源を使う場合でも、需要家に対して円滑に供給される環境を実現することが不可欠である。

次世代自動車(ハイブリッド自動車、電気自動車、プラグインハイブリッド自動車、燃料電池自動車、クリーンディーゼル車、CNG自動車等)の普及・拡大に当たっては、研究開発に加え、インフラ整備が不可欠であり、官民が協力して電気自動車及びプラグインハイブリッド自動車に必要な充電器の普及に努める。また、電気自動車の場合、電力システム改革による小売全面自由化によって、電気自動車の電気充填に最も適したサービスを行う事業者が輩出されることが期待される。燃料電池自動車については、規制見直しや官民の適切な費用負担等によって水素ステーションの整備を促進することで対応を進める。こうした取組により、次世代自動車については、2030年までに新車販売に占める割合を5割から7割とすることを目指す。

このような多様なエネルギー源の利用を進めていく取組は、運輸部門においては、自動車に限らず、航空機におけるバイオ燃料や、船舶におけるLNGの主燃料としての活用などで進んでいくと見込まれる。業務・家庭部門では、エネファームにおいて水素が利用され、CO2冷媒ヒートポンプにおいて空気熱が利用されるなどの導入が進んでいるところであり、電力システム改革によって、電源自体も選択できるサービスの提供が進展するなど、今後、一層の多様化が進んでいく。

今後、さらに多くの分野で多様なエネルギー源を利用する取組を加速していくため、エネルギー関連技術に関する最新の研究開発動向、世界の取組状況、新たな利用形態を普及していく上での制度面などの障害を整理して、研究開発などの戦略的な取組を進めていく。

3.“水素社会”の実現に向けた取組の加速

無尽蔵に存在する水や多様な一次エネルギー源から様々な方法で製造することができるエネルギー源で、気体、液体、固体(合金に吸蔵)というあらゆる形態で貯蔵・輸送が可能であり、利用方法次第では高いエネルギー効率、低い環境負荷、非常時対応等の効果が期待される水素は、将来の二次エネルギーの中心的役割を担うことが期待される。

このような水素を本格的に利活用する社会、すなわち“水素社会”を実現していくためには、水素の製造から貯蔵・輸送、そして利用にいたるサプライチェーン全体を俯瞰した戦略の下、様々な技術的可能性の中から、安全性、利便性、経済性及び環境性能の高い技術が選び抜かれていくような厚みのある多様な技術開発や低コスト化を推進することが重要である。水素の本格的な利活用に向けては、現在の電力供給体制や石油製品供給体制に相当する、社会構造の変化を伴うような大規模な体制整備が必要であり、そのための取組を戦略的に進める。

また、水素に関係する製品などを社会に導入していく際に、様々な局面で必要となる標準や基準の整備が、利害関係者の間の立場の違いを乗り越えて国際的に先手を打って進めることも重要である。

(1)定置用燃料電池(エネファーム等)の普及・拡大

現在、最も社会的に受容が進んでいる水素関係技術は、エネファームである。特に、我が国では、燃料電池の技術的優位性を背景に、定置用燃料電池が世界に先駆けて一般家庭に導入され、既に6万台以上が住宅等に設置されており、海外市場の開拓も視野に入ってきている状況にあることから、国内外の市場開拓を進めるべき時期にある。

一方、コストが高いことが普及・拡大に向けての大きな課題であり、初期市場創出のための国の補助制度がこうした新たな市場を下支えしている状況にある。

2020年には140万台、2030年には530万台の導入を目標としており、生産コストを低減することで自律的に導入が進む環境を実現することで本目標を達成するため、市場自立化に向けた導入支援を行うとともに、低コスト化のための触媒技術などの研究開発や標準化などを引き続き進めていく。

また、定置用燃料電池の普及が進んでいない業務・産業分野についても、早期の実用化・普及拡大に向けて、産業活動で求められる水準の耐久性や低コスト化を実現するための技術開発や実証などを推進し、市場の創出を図る。

(2)燃料電池自動車の導入加速に向けた環境の整備

2015年から商業販売が始まる燃料電池自動車の導入を推進するため、規制見直しや導入支援等の整備支援によって、四大都市圏を中心に2015年内に100ヶ所程度の水素ステーションの整備をするとともに、部素材の低コスト化に向けた技術開発を行う。一方、普及初期においては、水素ステーションの運営は容易ではなく、燃料電池自動車の普及が進まなかった場合には、水素ステーションの運営がますます困難になるという悪循環に陥る可能性もある。

こうした悪循環に陥ることなく、本格的な水素社会の幕開けを確実なものとするため、燃料電池自動車の導入を円滑に進めるための支援を積極的に行う。また、水素ステーションについても、今後、SSが多様な役割を担っていくことが求められていく中で、石油供給を担っている既存のインフラを水素供給も担うインフラとして活用していくことなどを検討しつつ、移動式や小型のステーションの利用も含めた戦略的な展開を進める。その上で、先行的に水素ステーションを整備した事業者が過度に不利益を被ることのないよう、官民の適切な役割分担の下、規制見直しなどの低コスト化に向けた対策等を着実に進めて整備目標を達成するとともに、さらに水素ステーションの整備を拡大していくことで、燃料電池自動車が日常生活でも利用できる環境を実現する。

特に、燃料電池自動車の普及初期においては、比較的安定した水素需要が見込まれる燃料電池バスや燃料電池フォークリフト等の早期の実用化が重要であり、その技術開発などを着実に進める。

2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会において、大会運用の輸送手段として燃料電池自動車が活躍することができれば、世界が新たなエネルギー源である水素の可能性を確信するための機会となる。こうしたことを見据え、今から計画的に着実に取り組んでいくべきである。

(3)水素の本格的な利活用に向けた水素発電等の新たな技術の実現

水素の利用技術の実用化については、定置用燃料電池や燃料電池自動車にとどまらず、水素発電にまで拡がっていくことが期待される。水素発電は、燃料の一部を水素で代替する混焼発電については既存のガスタービンでも一定程度であれば技術的に活用できる状況にあり、さらに、燃料を水素だけで賄う専焼発電を将来実用化するための技術開発が進められている。

こうした水素の利用技術について、技術開発を含めて戦略的な取組を今から着実に進めていく。

(4)水素の安定的な供給に向けた製造、貯蔵・輸送技術の開発の推進

水素の供給については、当面、副生水素の活用、天然ガスやナフサ等の化石燃料の改質等によって対応されることになるが、水素の本格的な利活用のためには、水素をより安価で大量に調達することが必要になる。

そのため、海外の未利用の褐炭や原油随伴ガスを水素化し、国内に輸送することや、さらに、将来的には国内外の太陽光、風力、バイオマス等の再生可能エネルギーを活用して水素を製造することなども重要となる。具体的には、水素輸送船や有機ハイドライド、アンモニア等の化学物質や液化水素への変換を含む先端技術等による水素の大量貯蔵・長距離輸送など、水素の製造から貯蔵・輸送に関わる技術開発等を今から着実に進めていく。また、太陽光を用いて水から水素を製造する光触媒技術・人工光合成などの中長期的な技術開発については、これらのエネルギー供給源としての位置付けや経済合理性等を総合的かつ不断に評価しつつ、技術開発を含めて必要な取組を行う。

(5)“水素社会”の実現に向けたロードマップの策定

水素社会の実現は、水素利用製品や関連技術・設備を製造する事業者のみならず、インフラ関係事業者、石油や都市ガス、LPガスの供給を担う事業者なども巻き込みながら、国や自治体も新たな社会の担い手として能動的に関与していくことで初めて可能となる大事業である。

このためには、先端技術等による水素の大量貯蔵・長距離輸送、燃料電池や水素発電など、水素の製造から貯蔵・輸送、利用に関わる様々な要素を包含している全体を俯瞰したロードマップの存在が不可欠である。また、このような長期的・総合的なロードマップを実行していくためには、関係する様々な主体が、既存の利害関係を超えて参画することが重要である。

したがって、水素社会の実現に向けたロードマップを、本年春を目処に策定し、その実行を担う産学官からなる協議会を早期に立ち上げ、進捗状況を確認しながら、着実に取組を進める。

第9節 市場の統合を通じた総合エネルギー企業等の創出と、エネルギーを軸とした成長戦略の実現

1.電力システム改革等の制度改革を起爆剤とするエネルギー産業構造の大転換

電気は最も利用用途が広い二次エネルギーであり、国民生活、経済活動のあらゆる局面を支えるものであることから、電力システム改革は他のエネルギー市場の在り方にも大きな影響を与えることとなる。

発電事業については、ガス事業者、石油事業者、さらに自家発電を持つ企業や再生可能エネルギー供給事業者が参入し、エネルギー源ごとに供給者が棲み分けていた環境が大きく崩れることになる。また、小売事業においても、需要家の多様なニーズを取り込む技術的ノウハウを持つ情報通信事業者など異分野からの参入が予想されるところであり、様々な産業分野を巻き込んで電力市場の構造転換が大きく進んでいくことが期待される。

電力市場の自由化を進めた先進国では、電気・ガスの複合サービスの提供が一般化しており、州ごとに電力市場の規制形態が異なる米国では、自由化されている州において需要家の需要量を抑制する手法を含めた電力需給管理システムの利用を拡大することで、効率的な投資を実現し、電気料金の抑制に取り組んでいる。

電力システム改革は、エネルギー供給事業者の相互参入、新たな技術やサービスのノウハウを持つ様々な新規参入者の参入を促すことで、産業構造を抜本的に変革するとともに、ガスシステム改革等も同時に進め、他のエネルギー産業にも影響が波及していくことで、エネルギー市場を活性化し、経済成長の起爆剤となっていくことが期待される。

また、我が国においても、エネルギーの需給を反映した信頼性や透明性のある価格指標が確立されるよう、投機マネーの過剰な流入を適切に防止するなどの課題に留意しつつ、1990年代後半の石油自由化に伴って整備された石油市場に加え、電力、さらにはLNGといった燃料についても検討し、エネルギーの先物市場を整備していくことが期待されている。

2.総合的なエネルギー供給サービスを行う企業等の創出

(1)既存エネルギー供給事業者の相互市場参入による総合エネルギー企業化

制度改革を進め、分野ごとに縦割型の構造を持つエネルギー市場を、統合された市場構造へと転換することで、エネルギー関係企業が相互に市場参入を行える環境を整備し、それぞれの強みを基礎にして効率性や付加価値の高いサービスの供給を競争しながら新たな需要を獲得していく、新たな成長戦略を描き出すことが可能となる。

このような将来を見通せる新たな競争環境は、既存のエネルギー企業を、様々なエネルギー供給サービスを行う総合エネルギー企業へと発展していくことを促し、事業の多角化による収益源の拡大や、事業分野ごとに重複して保有されていた設備・事業部等の集約化等を可能とする。これにより、総合エネルギー企業は、経営基盤の強化を進め、活発な競争を勝ち抜くための新たな投資を積極的に推進していく主体となるとともに、異分野から参入してきた新規事業者との競争や連携を通じて、産業全体の効率性の向上や新たな市場の開拓を進め、我が国の経済成長を牽引していくことが期待される。

また、エネルギーに関わる様々な事業を行う運営能力や経営基盤を強化した総合エネルギー企業は、エネルギー需要が拡大する国際市場を開拓していく役割を担っていくことも求められる。

(2)地域の特性に応じて総合的なエネルギー需給管理を行うスマートコミュニティの実現

様々な需要家が参加する一定規模のコミュニティの中で、再生可能エネルギーやコージェネレーション等の分散型エネルギーを用いつつ、ITや蓄電池等の技術を活用したエネルギーマネジメントシステムを通じて、分散型エネルギーシステムにおけるエネルギー需給を総合的に管理し、エネルギーの利活用を最適化するとともに、高齢者の見守りなど他の生活支援サービスも取り込んだ新たな社会システムを構築したものをスマートコミュニティという。

スマートコミュニティの導入が進めば、ディマンドリスポンス等によりエネルギー供給の効率化が図られる。また、需要に応じて多様なエネルギー源を組み合わせて供給することによって、コミュニティ内全体では、平常時には、大幅な省エネルギーを実現するとともに、非常時には、エネルギーの供給を確保することが可能となり、生活インフラを支え、企業等の事業継続性も強化する効果が期待される。

スマートコミュニティの実証実験として、国内4地域(横浜市、豊田市、けいはんな学研都市、北九州市)において幅広い住民の参画による様々な事業を行っており、スマートコミュニティの具体的なイメージや効果が共有されるようになってきている。

今後、スマートコミュニティの実現に向けて、これまでの実証事業等の成果である、CEMS(コミュニティ単位のエネルギー需給管理システム)、スマートメーターからの情報をHEMS(家庭単位のエネルギー需給管理システム)に伝達する手法(Bルート)等の基盤技術、エコーネット・ライト(ECHONET Lite(HEMSと家庭内機器との間の通信規格))等の標準インターフェイス、スマートコミュニティ構築のための関係者調整等のノウハウ等の普及を図る。

また、地区・街区単位で都市開発と連携し、エネルギーの面的利用のためのエネルギーインフラ等の整備を促進するとともに、エネルギー需給管理事業の運営と水道等の他の公益事業や高齢者見守りサービス等の周辺サービス事業との統合を進めることで、スマートコミュニティの事業基盤の構築を図っていく。

3.エネルギー分野における新市場の創出と、国際展開の強化による成長戦略の実現

加速する技術革新は、エネルギー分野において新たな市場を生み出す可能性をもたらしている。例えば、電気製品の長時間駆動を可能とする蓄電池技術の向上は、これまで石油製品を動力源としていた自動車を電気で駆動することを可能とするに至った。情報通信のデジタル化・大容量化は、需要家のエネルギー消費の実態を個別・詳細に分析することを可能とし、エネルギーマネジメントを通じて需要の適正管理を可能とする新たなサービスを生み出すとともに、エネルギー需給バランスについて、供給量のみではなく、需要量を管理することでバランスさせることも可能としている。

こうした新たな技術は、従来のエネルギー供給事業者に固有のものではなく、異業種において発展してきたものが多数を占める。一方、優れた技術であっても、国際市場において急速にコモディティ化することで競争上の優位を喪失していくことが繰り返されており、新製品や新サービスの効率的な供給体制と、市場のニーズを常時取り込み、不断の革新を続けていく事業体制をいち早く確立することが必要である。

電力システム改革を始めとする制度改革は、エネルギー分野を開放し、優れた技術を有する異業種の事業者の参入を促進することとなり、こうした新規事業者がエネルギー分野の顧客との距離を狭め、新たな価値を見つけ出して新市場を創造していく重要な契機となるものであり、こうした取組により、エネルギー分野を我が国の経済成長を牽引する有望分野として発展させていく。

さらに、我が国が蓄積してきたエネルギーに関連する様々な先端技術と効果的な運用の経験を、エネルギー需要が増大するアジア等において展開することで、需要増大に伴う問題を緩和することに貢献しつつ、アジア等の需要拡大と一体となって成長していく戦略的な取組を推進する。

(1)蓄電池、燃料電池など我が国がリードする先端技術の市場拡大

蓄電池は、日本再興戦略において、その国際市場は2020年には20兆円規模に拡大していくと予想されている。今後、利用用途が世界的にも大きく拡大していく状況に対し、引き続き、技術開発、国際標準化等により低コスト化・高性能化を図っていくことで、2020年までに世界の蓄電池市場規模(20兆円)の5割を国内関連企業が獲得することを目標に、蓄電池の導入を促進する。

また、我が国では、燃料電池の技術的優位性を背景に、エネファームが世界に先駆けて一般家庭に導入され、海外市場の開拓も視野に入ってきているなど、水素関係技術をリードしている。エネファームについて、2020年には140万台、2030年には530万台の導入を目標としており、生産コストを低減することで自律的に導入が進む環境を実現するとともに、2015年には燃料電池自動車の商用販売が開始されることなどを通じ、いち早く水素関連技術の新たな市場の創出を進める。

我が国には、こうした技術のほか、多くの先端的な省エネルギー・再生可能エネルギー技術が存在し、これらを実際に活用していくことで新たな市場を創出していくことが可能である。電力システム改革を始めとする制度改革の推進と併せて、新たな技術の実装化を進めるための実証事業などを通じて、世界最先端のエネルギー関連市場の創出を進めていく。

(2)インフラ輸出等を通じたエネルギー産業の国際展開の強化

我が国が厳しいエネルギー制約の中で蓄積してきた技術やノウハウを世界に普及していくため、官民が連携して国際展開を進めていくことが必要である。

産業は、個別の要素技術・ノウハウの取引に留まるのではなく、技術やノウハウを統合してインフラやエネルギー供給事業として海外に供給するための、より広い視点に基づいた海外市場の開拓に取り組むことが求められる。

一方、政府は、我が国の企業があまり進出してきていない地域を含めて事業を展開することを促すため、我が国が持つ海外ネットワークや政府間の良好な関係を最大限に活用し、新たな市場に挑戦しようとする我が国の企業が海外において安心して活動できるようにするための環境の整備に向けた取組を強化する。

①技術やノウハウを一体化したインフラ輸出の強化

我が国の産業は、エネルギーを効率的に活用するための技術やノウハウを蓄積しているにも関わらず、それらを総合化して国際展開することが少なかった。

今後は、こうした技術やノウハウを統合化して、高効率石炭・LNG火力発電、再生可能エネルギー・省エネルギー技術、原子力、スマートコミュニティ等のインフラという形で、その国際展開を推進していくことが重要である。

そのため、国際標準の積極的な獲得や相手国における制度構築支援、官民ミッションの派遣や海外実証事業による現地企業とのパートナリング等を積極的に進めていく。

特に、スマートコミュニティなどの地域的な総合エネルギー事業は、再生可能エネルギーの大量導入により系統不安定化が課題となっている先進国や資源国、エネルギー需給体制が未成熟な新興国・途上国において、エネルギー需給構造の安定化に貢献をしていくことが期待されることから、事業規模の大小に関わらず、国際市場への進出を促進する。

②アジアを始めとした世界のエネルギー供給事業への積極的な参画

世界に先駆けてLNGを本格的に利用してきた我が国の経験と整備されたインフラは、アジアの国々が今後LNGの利用を拡大していく際に共用できる資産として活用できる可能性がある。アジアの国々が、LNGの導入を進めるための制度やインフラの整備を進めていく際、我が国が、技術協力を行うことや、貯蔵施設を活用した仲介事業を行うことで、アジアのLNG導入国が効率的に新たなエネルギー供給構造を構築していくことを支援していくことが可能であり、こうした状況を我が国のエネルギー産業が海外での活動機会を拡大する機会としていく。

また、アジア地域において今後も伸びていく石油や石油化学製品への需要の動きを捉え、現地の国営石油会社や化学産業・商社等とのJV方式による石油コンビナート事業の海外展開は、我が国石油産業の新たな事業ポートフォリオとなりうるが、アジアの供給能力が急速に伸びている現下の状況に鑑みれば、アジアにおける投資を早急に行う必要があると考えられる。

これまで国内での石油精製・元売・販売事業を主要な収益源としてきた我が国の石油産業が、国際展開を進める経営判断を行うよう促すべく、政府は技術協力や政府間対話により側面支援を進める。

第10節 総合的なエネルギー国際協力の展開

世界のエネルギー需要の重心がアジアにシフトしていることや、天然ガス、再生可能エネルギー、原子力の利用拡大等エネルギー源の多様化、地球環境問題への対応など、世界のエネルギーをめぐる課題が拡大、深化し、一層複雑化してきている。

エネルギー需給構造は、国際的なエネルギー供給構造の変化、既存のエネルギー分野の垣根を崩していく世界的な技術革新の進展、地球温暖化対策、資源開発事業の大規模化による国際コンソーシアムによる取組の増加などによって、国際的な動きに左右されやすくなっており、その状況下で、各国がエネルギー需給構造をより安定化・効率化するためには一国での取組だけでなく、国際的な協力を拡大することが重要となっている。

こうした状況の変化を踏まえ、我が国のエネルギー需給構造上、特に密接な関係のある国や機関との関係では、より戦略的、包括的なエネルギー協力の枠組みを構築していくことが重要となる。

1.エネルギー国際協力体制の拡大・深化

(1)多国間エネルギー協力の枠組みの拡大

緊急時対応や広範なエネルギー政策分野で豊富な蓄積を有するIEAや、IAEAなどの事務局機能も充実した安定的な多国間の枠組み、G8、G20、アジア太平洋経済協力(APEC)などの国際的・地域的なフォーラムに積極的に貢献していくことが必要である。

エネルギー需要が大きく伸びていくアジア地域のエネルギー需給の安定性を向上するための取組について、我が国が主導的な役割を果たしていくことは、我が国のエネルギー安全保障環境をも改善することであり、東アジア・アセアン経済研究センター(ERIA)を中核機関として、東アジアサミット(EAS)をより実効性の高い多国間のエネルギー安全保障を議論することができる枠組みへと高度化していくべきである。

また、産消対話のための国際エネルギーフォーラム(IEF)、クリーンエネルギー大臣会合(CEM)、国際再生可能エネルギー機関(IRENA)、国際省エネルギー協力パートナーシップ(IPEEC)などの特定テーマの多国間枠組みにおいて、我が国の政策や技術の強みを活かし、国際場裏の世論形成をリードしていく。

(2)二国間エネルギー協力体制の高度化

二国間の連携については、資源・エネルギーの確保やエネルギー産業の国際展開を推し進めるため、石油、天然ガス、石炭、鉱物などの資源国、高効率火力発電、原子力、再生可能エネルギー・省エネルギー技術、スマートコミュニティ等の潜在的な市場となる国との二国間関係を強化していく。特に、同盟国である米国との関係強化や、韓国、インド、欧州などエネルギー需給構造において共通課題を有する国との連携強化も深めていく。

①日米のエネルギー協力関係の拡大

現在、エネルギーをめぐる米国との関係は、より包括的なものへと変化しようとしている。

2010年には、日米間でクリーンエネルギーに関する協力が閣僚間で合意され、沖縄−ハワイにおける両国のプロジェクトを一体的に推進する取組が進められているとともに、東日本大震災以降、日米間におけるエネルギーに関わる対話は緊密性を増している。

我が国が急速にLNGへの依存を高める中、シェール革命で天然ガスが豊富に生産されるようになった米国は、日本企業が関与するプロジェクトに対して輸出許可を行い、2017年から本格的に米国産のLNGが我が国に供給される見込みである。また、LPガスについては、既に輸出が開始されている。

原子力分野では、東京電力福島第一原子力発電所事故後の日米間における協力関係をさらに強化するため、民生用原子力協力に関する日米二国間委員会も立ち上げられた。原子力利用を支える体制については、商業分野においても日本と米国の原子炉メーカーは一体的にビジネスを展開する体制を既に確立しており、日米はパートナーとして、原子力の平和利用、核不拡散、核セキュリティ確保などを国際的に確保しながら原子力を利用する体制を強化するための重要な役割を担っている。

このように、日米間では既に化石燃料、再生可能エネルギー、省エネルギー、原子力、スマートコミュニティなど包括的な形で協力できる条件が整っている。日米による協力を両国間のみを対象とすることなく、アジア、中東、ロシアなどそれぞれの地域の特徴とニーズを踏まえて、両国が協力して国際展開していくことも重要となる。

現在の日米のエネルギー協力の枠組みを、より多様なエネルギー源に拡げるとともに、アジア・太平洋地域のエネルギー需給構造が今後大きく変化していくことを踏まえ、地域のエネルギー需給構造の安定化・高度化を実現するために日米が連携して取り組むことも含めて協力関係を拡大することを検討する。

②アジア各国とのエネルギー協力関係の強化

著しいエネルギー需要の増加が見込まれるアジアの新興国との協力強化は、アジア地域、さらには、我が国のエネルギー安全保障の強化、エネルギー産業の潜在的な市場の開拓を進める上で重要な課題である。

世界最大のエネルギー消費国となった中国は、国際エネルギー市場での存在感を今後も高めていくことが予想されるが、我が国との間では、様々な局面において緊張関係が高まっており、台頭する中国にどう向き合うかは我が国にとって難しく、かつ重要な課題である。しかし、エネルギー分野において、アジアのLNG高価格問題等、消費国・輸入国として共通課題となるような問題に関しては、適切な協調関係を保つことを検討することも重要である。

なお、インドは、IEAのWorld Energy Outlook 2013によると、2020年以降は中国を上回るペースでエネルギー需要が増加する見通しであり、これに対応するため、省エネルギーの促進、再生可能エネルギーや原子力の利用拡大、エネルギーインフラの整備、石炭のクリーン利用など多くの課題を抱えている。

我が国とインドの間では、2007年以来7回開催してきた日印エネルギー対話の下、包括的なエネルギー協力を推進してきている。

具体的には、増大するエネルギー需要の抑制につながる省エネルギー政策・制度の整備支援、省エネルギー・再生可能エネルギー・スマートコミュニティなどの実証事業などによる我が国の技術導入支援、石炭の高効率な利用の推進や安定した電力システムの構築、さらにLNGの低廉な調達に向けた共同研究など、エネルギー消費国同士の連携を進めているところであり、今後、政府間協力に加え、官民ラウンドテーブルや技術展示会・商談会を併催するなど、官民が一体となった協力や産業間協力も含めた協力内容の充実と拡大を進めていく。

また、類似のエネルギー需給構造を有する韓国などアジア各国との関係について、天然ガスなどのアジアプレミアムの解消、原子力発電所の安全性確保、省エネルギー対策の強化、地球温暖化対策など、多くの分野で協力を進めることが可能であり、例えば、天然ガス分野における韓国とのガス対話等、連携を深めていく。

特に、我が国を取り巻く中国、東南アジア、インドを始めとする新興国においては、エネルギー需要の著しい増大により、原子力発電の導入拡大は不可避なものとなっている。こうした中で、原子力発電所の安全性確保は各国の共通の課題となっており、東京電力福島第一原子力発電所の事故の経験から得られた教訓を共有することで、世界の原子力安全の向上や原子力の平和利用に貢献していく。

③その他地域における各国とのエネルギー協力関係

中東地域各国とのエネルギー協力関係は、引き続き、安定的な石油・天然ガスの供給確保の観点から重要であり、サウジアラビアとの産業協力タスクフォースに代表されるような、貿易・投資分野を含めた幅広い協力関係の強化を推進していく。

加えて、中東地域は、急速な経済発展に伴いエネルギー消費が大幅に増加することが見込まれている。このため、化石燃料の消費量を抑制し、輸出原油を確保する取組を始めており、こうした観点から、省エネルギーの推進に向けた取組の支援や原子力、再生可能エネルギー分野における協力が重要である。

ロシアについては、石油・ガス販路の欧州域外への多角化、ロシア経済の近代化、省エネルギーの推進、東シベリア・極東地域開発等、ロシア側にとっての喫緊の課題を十分に認識し、国際的な情勢を踏まえつつ、戦略的視点に立って協力関係を検討していくことが重要である。

欧州においては、仏国と、原子力分野で、核燃料サイクルや高速炉開発に加え、東京電力福島第一原子力発電所事故への対応や共同開発原子炉の国際展開などの協力が進展しており、引き続き、「原子力エネルギーに関する日仏委員会」等を通じて、協力を一層強化していく。また、英国についても、日英原子力対話等を通じて、廃炉技術を含む研究開発や競争環境下における原子力事業の在り方等について、知見を共有していく。その他、日欧間で共通するエネルギー政策の課題などに関する情報交換等の協力を進めていく。

また、民間ベースで活発にエネルギー貿易が行われている豪州などとの協力基盤をさらに安定化させていくとともに、アフリカ各国、中南米など、各国との資源確保やインフラ輸出などの重要性に応じ、世界のあらゆる地域と全方位でエネルギー協力関係の構築を進めていく。

2.地球温暖化の本質的解決に向けた我が国のエネルギー関連先端技術導入支援を中心とした国際貢献

温室効果ガスの排出量は、今や途上国が先進国の排出量を逆転する状況となり、地球温暖化問題の本質的な解決のためには、国内の排出削減はもとより、とりわけ排出量が急増している新興国・途上国を含めた世界全体の温室効果ガス排出量の大幅削減を行うことが急務である。

環境負荷を低減する様々な技術やノウハウを持つ我が国の位置付けを最大限に活かすべく、イノベーションの加速を通じた地球温暖化問題解決のため、世界の産学官トップが一堂に会し、議論する「イノベーション・フォー・クールアース・フォーラム(Innovation for Cool Earth Forum)」(いわば、「エネルギー・環境技術版ダボス会議」)を毎年開催するとともに、途上国における低炭素技術の展開を推進するため、公的金融手段と民間資金を有効に活用できる仕組み等により、我が国がリーダーシップを発揮しつつ、世界全体で技術革新・展開を加速させていく取組を進める。

また、具体的に先端エネルギー関連技術の実装化を世界で進めていくため、化石燃料に引き続き大きく依存しなければならない新興国・途上国を中心に、石炭やLNGなどを効率的に活用できる高効率火力発電への発電設備の転換などを促進するための支援を行うとともに、金融システムを活用した支援策を強化することなどにより、再生可能エネルギー、省エネルギー技術など、エネルギーを効率的に活用するための技術やノウハウを国際展開していく。例えば、経済産業省において、米国、中国、インドにある石炭火力発電所が、現在の日本で利用可能な最新技術に置き換わるだけで、日本一国分の二酸化炭素が削減されると試算されている。

さらに、途上国への温室効果ガス削減技術、製品、システム、サービス、インフラ等の普及や対策実施を通じ、実現した温室効果ガス排出削減・吸収への我が国の貢献を定量的に評価し、我が国の削減目標の達成に活用するため二国間オフセット・クレジット制度(JCM)を積極的に活用していくべく、「攻めの地球温暖化外交戦略」に基づき、今後3年間で同制度の署名国を16カ国に増やすことを目指す。

第4章 戦略的な技術開発の推進(エネルギーの需給に関する施策を長期的、総合的かつ計画的に推進するために重点的に研究開発するための施策を講ずべきエネルギーに関する技術及び施策)

1.エネルギー関係技術開発のロードマップの策定

多くの資源を海外に依存せざるを得ないという、我が国が抱えるエネルギー需給構造上の脆弱性に対して、エネルギー政策が現在の技術や供給構造の延長線上にある限り、根本的な解決を見出すことは容易ではない。さらに、2050年には世界で温室効果ガスの排出量を半減し、先進国では80%削減を目指すという目標を同時的に達成していくことも求められている。

こうした困難な課題を根本的に解決するためには、革命的なエネルギー関係技術の開発とそのような技術を社会全体で導入していくことが不可欠となるが、そのためには、長期的な研究開発の取組と制度の変革を伴うような包括的な取組が必要である。

一方、エネルギー需給に影響を及ぼす課題は様々なレベルで存在しており、短期・中期それぞれの観点から、エネルギー需給を安定させ、安全性や効率性を改善していくことが、日々の生活や経済の基盤を形成しているエネルギーの位置付けを踏まえると、極めて重要な取組となる。

したがって、エネルギー関係技術の開発に当たっては、どのような課題を克服するための取組なのか、まずその目標を定めるとともに、開発を実現する時間軸と社会に実装化させていくための方策を合わせて明確化することが重要であり、そうした様々な技術開発プロジェクトを全体として整合的に進めていくための戦略をロードマップとして、「環境エネルギー技術革新計画(2013年9月総合科学技術会議決定)」等も踏まえつつ、本年夏までに策定する。

その際、各プロジェクトの効果や進捗状況等を同じ視点から評価できるようにするための指標の整備等についても、検討を行っていく。

2.取り組むべき技術課題

海外からの化石燃料に過度に依存するエネルギー需給構造を長期的視点に基づいて変革していくための技術開発として、国産エネルギーに位置付けられるエネルギー源である再生可能エネルギーについては、太陽光発電、風力発電、地熱発電、バイオマスエネルギー、波力・潮力等の海洋エネルギー、その他の再生可能エネルギー熱利用の低コスト化・高効率化や多様な用途の開拓に資する研究開発等を重点的に推進するとともに、再生可能エネルギー発電の既存系統への接続量増加のための系統運用技術の高度化や送配電機器の技術実証を行う。

同様に、準国産エネルギーに位置付けられる原子力については、万が一の事故のリスクを下げていくため、過酷事故対策を含めた軽水炉の安全性向上に資する技術や信頼性・効率性を高める技術等の開発を進める。また、放射性廃棄物の減容化・有害度低減や、安定した放射性廃棄物の最終処分に必要となる技術開発等を進める。

これらに加えて、我が国の排他的経済水域に豊富に眠ると見られているメタンハイドレートや金属鉱物を商業ベースで開発が進められるようにするための技術開発を中長期的な観点から着実に進めていく。また、こうした国産エネルギー源を有効に利活用できる二次エネルギーである水素エネルギーの実装化は中長期的に重要な課題であり、水素の製造から貯蔵・輸送、利用に関わる技術を今から着実に進めていく。また、水素製造を含めた多様な産業利用が見込まれ、固有の安全性を有する高温ガス炉など、安全性の高度化に貢献する原子力技術の研究開発を国際協力の下で推進する。さらに、国際協力で進められているITER計画や幅広いアプローチ活動を始めとする核融合を長期的視野にたって着実に推進するとともに、無線送受電技術により宇宙空間から地上に電力を供給する宇宙太陽光発電システム(SSPS)の宇宙での実証に向けた基盤技術の開発などの将来の革新的なエネルギーに関する中長期的な技術開発については、これらのエネルギー供給源としての位置付けや経済合理性等を総合的かつ不断に評価しつつ、技術開発を含めて必要な取組を行う。

また、様々なエネルギー源を活用していくために不可欠な要素である安全性・安定性を強化していくための技術開発として、例えば、二次エネルギーの中心を担う電気を最終消費者に分配する要となる送配電網を高度化するため、変動電源が今後増加することに対応して、高度なシミュレーションに基づく系統運用技術や超電導技術などの基盤技術の開発を加速するとともに、蓄電池や水素などのエネルギーの貯蔵能力強化などを進める。

さらに、エネルギーのサプライチェーンにおけるすべての段階でエネルギー利用の効率化を進めることで、徹底的に効率化されたエネルギー・サプライチェーンを実現するため、石炭やLNGの高効率火力発電実現のための技術開発や、利用局面において効率的にエネルギーを利活用するための製品について、材料・デバイスまで遡って高効率化を支える技術の開発、エネルギー利用に関するプロセスを効率化するためのエネルギーマネジメントシステムの高度化や、製造プロセスの革新を支える技術開発に取り組む。

こうした徹底した効率化や水素エネルギーの活用のための取組を進める一方、それでも最終的に対応しなければならない地球温暖化などに関する課題について、例えば化石燃料を徹底的に効率的に利用した上で最終的に発生するCCSなどに関する技術開発も並行して進めていく。

第5章 国民各層とのコミュニケーションとエネルギーに関する理解の深化(エネルギーの需給に関する施策を長期的、総合的かつ計画的に推進するために必要な事項)

1.エネルギーに関する国民各層の理解の増進

(1)エネルギーに関する広報の在り方

エネルギーの適切な選択にとって、政府による関連情報の開示、徹底した透明性の確保が何よりも重要であることは言を俟たない。政府はこの点を肝に銘じるべきである。

東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所の事故後、エネルギー全体に対する国民の関心は高まっている。電力の安定供給に対する懸念から、節電への取組が定着し、災害時対応力を高める観点から、分散型エネルギーシステムに対する関心が高まった。原子力に関する使用済燃料の処分の問題や、我が国の高い海外からの資源への依存など、エネルギー需給構造が抱える課題も、国民の間で共有されてきている。

したがって、我が国のエネルギー事情の全体像を、関心度合いや背景知識の多寡によらず、誰もがある程度理解できるような効果的な情報提供の在り方、関心を持って情報に接することができるようにするための広報の方法などについて検討し、国民が自らの関心に基づいて最も適切に整理された情報を選択できるよう、科学的知見やデータ等に基づいた客観的で多様な情報提供の体制を確立する。

また、国民自身の省エネルギーの取組の徹底や、再生可能エネルギーの供給者としてエネルギー供給構造への参加、放射性廃棄物処分の立地選定への関心などを高めることが、国民の役割や責任としても重要である。

こうしたエネルギーをめぐる状況の全体像の理解を広く得ながら、エネルギー安全保障、エネルギーコストや環境負荷低減のための負担に関わる政策に対する理解を得ていく。

一方、こうした形で国民各層がエネルギー事情に対する理解を深める機会を充実させていく上で大きな障害となるのが、「安全神話」の存在である。「安全神話」は、政府や事業者が設定した基準や条件を満たせば、リスクはゼロとなり、それ以上の理解を必要としないかのような印象を与えることとなった。

従来のエネルギー広報は、こうした認識を改善することができず、東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所の事故後、行政や事業者は、情報共有の在り方、地元とのコミュニケーションに関する問題意識の不足など多くの批判を受け、国民からの信頼を低下させることになったことを深く反省しなければならない。

したがって、今後のエネルギー広報の在り方については、関心の度合いに応じて情報量を適切に整理した複数の包括的なエネルギー情報を用意することが必要である。また、このような情報には、常にリスクが存在することを明示し、さらに関心を持ってもらうことで理解を深めていく動機付けとリスクに関する正しい理解を得ていくことが必要であり、これらの取組を強化する。

その際、客観性を高め、「国民目線」で個々の事情に対応したより適切な情報提供を行えるよう、第三者による助言を得ながら取組を進めていくために、民間有識者から構成されるアドバイザリーボードを更に活用していく。

(2)客観的な情報・データのアクセス向上による第三者機関によるエネルギー情報の発信の促進

メディア、民間調査機関や非営利法人等に対する情報提供を積極的に行い、第三者が独自の視点に基づいて情報を整理し、国民に対してエネルギーに関する情報を様々な形で提供することで、国全体としてエネルギーに関する広報が広く行われるような環境を実現していく。

このような取組を促進する一環として、情報を発信していく主体が、エネルギーの状況を把握し、様々な分析を行えるようにするため、エネルギーに関連する統計情報等を迅速かつ容易に入手できるよう、ホームページの内容を充実する。

(3)エネルギー教育の推進

こうしたエネルギー事情に関する理解の拡大と深化を得ていく上で、学校教育の現場でエネルギーに関する基礎的な知識を教育プログラムの一環として取り上げることは、大きな効果が得られると考えられる。

エネルギーはあらゆる国民生活、産業活動を支える基礎であり、そのエネルギー源の大宗を海外に依存する我が国の現状について、子供の頃から理解することは、社会人へと成長し、エネルギー政策に国民として関与していく主体となった際に、適切な判断を行っていく上で大いに役立つこととなることから、エネルギーの専門家や事業者、行政官のみならず、エネルギー問題に関係する様々な人が積極的に教育現場に参加していくことが求められる。

このような取組の結果、子供の頃からのエネルギー教育を通じて、高等教育段階においてエネルギーを専門分野として学ぶ人材が増えていくことが期待され、将来のエネルギー需給構造を支える人材へと育成していく確かなキャリアパスの確立にもつながる。

2.双方向的なコミュニケーションの充実

エネルギーをめぐる状況の全体像について理解を深めてもらうための最大限の努力を行う一方で、エネルギー政策の立案プロセスの透明性を高め、政策に対する信頼を得ていくため、国民各層との対話を進めていくためのコミュニケーションを強化していく。

原子力などエネルギーに係る様々な課題について、リスクに対してどう向き合い対策を講じていくのか等について、丁寧な対話を行うことが重要である。

また、地球規模の諸課題を対象として、持続可能な社会の構築に向けて社会変革を目指す国際共同研究構想(フューチャー・アース(FE)構想)が欧州を中心として進められている。この構想は、科学者だけではなく、地域を含めた社会の様々な関係者との協働により、研究の企画・実施と成果の実装化を進めていくことを目的としており、こうした対話型の政策立案・実施プロセスを社会に定着させていく取組を様々な形で進めていくことが望まれる。

その際、国のみがエネルギー政策の立案・運用に責任を持った形にするのではなく、自治体、事業者、非営利法人等の各主体がそれぞれ自らの強みを発揮する形でエネルギー政策に関与している実態を踏まえ、これらの主体を新たに構築していくコミュニケーションの仕組みにしっかりと位置付け、責任ある主体として政策立案から実施に至るプロセスに関与していく仕組みへと発展させていくことが重要である。例えば、多様な主体が総合的に議論する枠組みへの実現に向けて、まずは全国の自治体を中心に地域のエネルギー協議会を作り、多様な主体がエネルギーに関わる様々な課題を議論し、学び合い、理解を深めて政策を前進させていくような取組について、今後、検討を行うこととする。

(参考)電力需要に対応した電源構成

1
2009年8月に策定した「長期エネルギー需給見通し(再計算)」(2020年の発電電力量のうちの再生可能エネルギー等の割合は13.5%(1,414億kWh))及び2010年6月に開催した総合資源エネルギー調査会総合部会・基本計画委員会合同会合資料の「2030年のエネルギー需給の姿」(2030年の発電電力量のうちの再生可能エネルギー等の割合は約2割(2,140億kWh))。