第1節 我が国が抱える構造的課題

1.海外の資源に大きく依存することによるエネルギー供給体制の根本的な脆弱性

我が国は、一次エネルギー自給率が低く、ほとんどのエネルギー源を海外からの輸入に頼っているため、海外においてエネルギー供給上の何らかの問題が発生した場合、我が国が自律的に資源を確保することが難しいという根本的な脆弱性を有しています。

我が国では、エネルギー自給率を向上する取組を進めてきた結果、第一次石油ショック時の1973年に9.2%だった自給率は、2010年には19.9%にまで改善されました。しかしながら、近年の推移をみると、原子力発電所が停止した結果、2010年の19.9%から2011年に11.2%、2012年に6.0%と低下しています。OECD(経済協力開発機構)諸国34か国の中では、33位(2010年は29位)と、ルクセンブルク(2.9%)に次ぐ低水準となっています。

なお、2012年の我が国のエネルギー自給率6.0%の内訳をみると、水力1.5%、天然ガス0.7%、原子力0.6%、原油0.1%、再生可能エネルギー等3.1%となっています。

次に、一次エネルギー供給構造についてみると、石油、石炭、天然ガスといった化石燃料に大きく依存する構図は、第一次石油ショック時から変わっていません。原子力発電所が停止した結果、一次エネルギー供給における原子力の割合が、震災直前(2010年度)の11.3%から2012年度には0.7%に低下したことにより、化石燃料の依存度は、震災直前(2010年度)の81.8%から2012年度には92.2%(10.4ポイント上昇)となりました。海外から輸入した化石燃料への依存度は、第一次石油ショック時(1973年度)の89.7%を上回る水準となっています。燃料別にみると、石油は40.1%(2010年度)から44.3%(2012年度)に4.2ポイント増加、天然ガスは19.2%(2010年度)から24.5%(2012年度)に5.3ポイント増加、石炭は22.6%(2010年度)から23.4%(2012年度)に0.8ポイント増加しました。

2010年度から2012年度の一次エネルギー供給構造に占める割合の増加率が最も高いLNG(液化天然ガス)は、原油と比較すれば地域偏在性が低いものの、中東地域に依存する割合が震災前(2010年)の22.5%から、2013年には29.7%に上昇しています。特にカタールは、2010年には第4位のLNG輸入相手国でしたが、2013年には第2位となり、輸入量も763万トンから1,606万トンへとほぼ倍増しています。

また、中東からの供給に依存する原油やLNGの海上輸送の過程で、ホルムズ海峡やマラッカ海峡など、「海峡」「運河」などの要衝(チョークポイント)を通過せざるを得ず、これらの地域で何らかの緊急事態が発生した際には、我が国のエネルギー供給上の課題が顕在化し得る、いわば脆弱な供給構造となっています。

【第111-1-1】OECD諸国の一次エネルギー自給率比較(2012年:推計値)

【第111-1-1】OECD諸国の一次エネルギー自給率比較(2012年:推計値)

(注)
1)IEAは原子力を一次エネルギー自給率に含めている。
(注)
2)表中の「-」:僅少
(出典)
IEA「Energy Balance of OECD Countries 2013」を基に作成

【第111-1-2】日本の一次エネルギー供給構造の推移

【第111-1-2】日本の一次エネルギー供給構造の推移

(注)
2010、2012年度の国内炭割合は、石炭供給量の1%程度ある。
(出典)
資源エネルギー庁「総合エネルギー統計」を基に作成

【第111-1-3】日本のLNG輸入の現状

【第111-1-3】日本のLNG輸入の現状

(注)
1%以上の国を記載。
(出典)
財務省「貿易統計」を基に作成

【第111-1-4】我が国への供給ルート上のチョークポイントの現状

【第111-1-4】我が国への供給ルート上のチョークポイントの現状

(注)
マラッカ依存度はマラッカ海峡以西の輸出主要国の率の積み上げ。1%以上の国を記載。
なお、OECD域内高所得国やユーロ圏内高所得国は評価・分類なし。
(出典)
財務省「貿易統計」、OECD 「Country Risk Classification」等を基に作成

2.人口減少の影響、技術革新等による中長期的なエネルギー需要構造の変化

我が国の人口動態に目を転じると、2010年の12,803万人をピークに既に人口は減少に向かっており、2050年には約9,700万人になると予想されています。他方で、総人口に占める65歳以上人口割合(高齢化率)は、2012年の24.1%から、2050年には38.8%となり、2.5人に1人が65歳以上となると予測されています。こうした人口減や高齢化の急速な進行は、これまでのエネルギーに対する需要の在り方を変えていくと考えられます。

また、人口の都市部への集中や高齢化による生活スタイルの変化などによって、電化が進んできています。例えば、最終エネルギー消費のうち電力消費の割合をみると、1973年度に13.4%だったものが、2012年度には23.0%となっています。

さらに、電気や水素などを動力源とする次世代自動車や、ガス等を効率的に利用するコージェネレーションの導入などによるエネルギー源の利用用途の拡大なども需給構造に大きな変化をもたらしていくと考えられます。

我が国は、1973年度の第一次石油ショック以降、自動車の燃費向上、家電の省エネルギー性能の向上、産業部門におけるエネルギー効率の向上など様々な省エネルギーの取組を進めたことから、2012年度でみると、最終エネルギー消費は、1973年度の1.3倍の増加にとどまりました(第2部図表【第211-1-1】参照)。また、この間、実質GDPは2.4倍になっていることから、我が国のGDP当たりの最終エネルギー消費量でみると、1973年度の1.33百万kl/兆円から2012年度の0.72百万kl/兆円へと飛躍的に改善(約46%減少)しました。この結果、世界最高水準のエネルギー利用効率を実現しています。

産業部門のエネルギー使用量の約9割を占める製造業のエネルギー消費原単位(製造業IIP(付加価値ウエイト)一単位当たりの最終エネルギー消費量)は1970年代の石油ショック以降、官民を挙げて精力的に省エネルギーに取り組んだ結果、1973年度に比べて2012年度は約4割改善しました。

また、業務・家庭部門においては、1998年に導入されたトップランナー制度により、家電等の機械器具の省エネルギー性能が向上し、例えば、エアコンでみると、期間消費電力量も2001年度から2012年度の12年間で約30%減少しました。

さらに、運輸部門においては、一世帯当たりの自家用乗用車保有台数は、1973年の第一次石油ショック時には0.40台であったものが、2013年時点で1.08台と増えている中で、トップランナー制度により乗用自動車等の燃費性能は向上し、例えば、ガソリン乗用自動車は1996年度から2012年度の間で約74%向上しました。

このように、我が国は、官民で取組を進めた結果、それぞれの部門においてエネルギー効率が改善しています。

こうした人口減少や技術革新等を背景として、我が国のエネルギー需要構造は、今後も変化していくことが見込まれます。

【第111-2-1】日本の総人口と高齢化率の推移と予測

【第111-2-1】日本の総人口と高齢化率の推移と予測

(注)
高齢化率とは、総人口に占める65歳以上の人口の割合。
(出典)
内閣府資料を基に作成

【第111-2-2】最終エネルギー消費のうち電力消費の割合

【第111-2-2】最終エネルギー消費のうち電力消費の割合

(出典)
資源エネルギー庁「総合エネルギー統計」を基に作成

【第111-2-3】GDP当たりの最終エネルギー消費の推移

【第111-2-3】GDP当たりの最終エネルギー消費の推移

(出典)
資源エネルギー庁「総合エネルギー統計」、内閣府「国民経済計算年報」を基に作成

【第111-2-4】製造業のエネルギー消費原単位の推移

【第111-2-4】製造業のエネルギー消費原単位の推移

(注)
1)原単位は、製造業IIP(付加価値ウェイト)一単位当たりの最終エネルギー消費量で、1973年度を100とした場合の指数である。
(注)
2)このグラフでは完全に評価されていないが、製造業では廃熱回収等の省エネルギー努力も行われている。
(注)
3)資源エネルギー庁「総合エネルギー統計」では、1990年度以降、数値の算出方法が変更されている。
(出典)
日本エネルギー経済研究所「エネルギー・経済統計要覧」、資源エネルギー庁「総合エネルギー統計」、経済産業省「鉱工業指数」を基に作成

【第111-2-5】エアコンの改善例

【第111-2-5】エアコンの改善例

(注)
1)冷房能力2.8kW(8〜12畳)のエアコンの単純平均値の推移。
(注)
2)期間消費電力量は、冷房期間消費電力量と暖房期間消費電力量との和。
(出典)
各年度の省エネ性能カタログ(夏・冬)を基に作成

【第111-2-6】一世帯当たりの自家用乗用車保有台数

【第111-2-6】一世帯当たりの自家用乗用車保有台数

(出典)
自動車検査登録情報協会及び総務省の資料を基に作成

【第111-2-7】ガソリン乗用自動車の改善例

【第111-2-7】ガソリン乗用自動車の改善例

(注)
ガソリン乗用車の10・15モード燃費平均値の推移。
(出典)
国土交通省資料を基に作成

3.新興国のエネルギー需要拡大等による資源価格の不安定化

世界に目を転じてみると、エネルギー需要は増加を続けています。世界のエネルギー需要量は、2000年に石油換算で約98億トンであったものが、2011年には127.1億トン(2000年の約1.3倍)となり、さらに2035年には169億トン(2000年の約1.7倍、2011年の約1.3倍)に達すると見込まれています。

このエネルギー需要の増加の中心は、中国やインドを始めとした非OECD加盟国であると見込まれています。世界全体のエネルギー需要は、2011年から2035年にかけて石油換算で41.9億トン増加すると見込まれていますが、そのうち非OECD加盟国における増加分は40.3億トンとなる見込みであり、世界全体の需要増加分の約96%を占めると予測されています。

石油、天然ガス、石炭の埋蔵量をみると、2000年代後半から、北米のシェール革命を始めとする非在来型資源(注)の開発の進展等により増加傾向にあります。しかしながら、化石燃料は有限であるため、エネルギー需要が拡大する中国やインド等の新興国は、国営企業による資源獲得を積極化させており、新興国の企業群も交えた激しい資源の獲得競争が世界各地で繰り広げられるようになっています。

(注)
非在来型資源:従来とは異なる方法で生産される、「シェールガス」、「オイルサンド」、「メタンハイドレート」を始めとする石油・天然ガス等の資源。

エネルギー需要の拡大、資源獲得競争の激化や、産出地域における紛争などによる供給不安の発生、さらには経済状況の変化による需要動向の変動が、長期的な資源価格の上昇傾向と、資源価格の乱高下を発生させやすい状況を生み出しています。原油価格は、2008年のアメリカの大手投資銀行グループ「リーマン・ブラザーズ」の破綻をきっかけに深刻化した金融危機により、欧米を中心に需要見通しが大きく落ち込んだ結果、2008年夏には瞬間的に140ドル/バレルを超えるまでに急騰した価格が、40ドル/バレルを割り込むまでに落ち込みました。その後は再び上昇し、100ドル/バレルを超える水準となっており、また、価格変動幅も拡大傾向にあります。

我が国の燃料輸入価格は、リーマンショックによる下落の後、石炭は相対的に安定しているものの、原油やLNGを中心に再び上昇傾向にあります。特に、我が国の天然ガスの輸入価格はCIF価格ベースで、2014年1月に史上最高値を記録しました。

【第111-3-1】世界のエネルギー需要の実績と予測

【第111-3-1】世界のエネルギー需要の実績と予測

(出典)
IEA「World Energy Outlook 2013」を基に作成

【第111-3-2】石油、天然ガス、石炭の確認可採埋蔵量、可採年数

【第111-3-2】石油、天然ガス、石炭の確認可採埋蔵量、可採年数

(注)
確認可採埋蔵量:存在が確認され、経済的にも生産され得ると推定されるもの。
可採年数: 確認可採埋蔵量をその年の生産量で除したもの。
(出典)
BP統計を基に作成

【第111-3-3】中国・インド・韓国の国営石油会社による上流資源獲得の動き

【第111-3-3】中国・インド・韓国の国営石油会社による上流資源獲得の動き

【第111-3-4】原油価格の変動

【第111-3-4】原油価格の変動

(出典)
WTI(West Texas Intermediate)先物価格はCME Group HPを基に、アラビアンライトOSP(Official Selling Prices)はサウジアラムコ発表を基に作成

【第111-3-5】我が国の燃料輸入価格の推移

【第111-3-5】我が国の燃料輸入価格の推移

(出典)
財務省「貿易統計」、エネルギー経済研究所資料を基に作成

4.世界の温室効果ガス排出量の増大

温室効果ガスについてみると、京都議定書の基準年の1990年には世界全体のエネルギー起源二酸化炭素排出量は203億トンでしたが、2011年には300億トン(約1.5倍)に増加しました。この間、中国、インドにおいては、それぞれ3.5倍、3.0倍に二酸化炭素排出量が増加しています。これは、上述のとおり、新興国において、エネルギー需要の増加が顕著であることが背景にあると考えられます。

今後も新興国を中心とするエネルギー需要の増加により、世界全体のエネルギー起源二酸化炭素排出量は増えていく傾向にあると推測されます。この点、国際エネルギー機関(IEA)の予測によれば、世界全体のエネルギー起源二酸化炭素の排出量は、2011年の300億トンから2035年には357億トンへと増加(約1.2倍)すると予測されています。非OECD加盟国についてみると、2011年の178億トンから2035年には256億トンへと増加(約1.4倍)すると予測され、この期間においてインド、中国はそれぞれ22億トンずつ増加(インド:約2.2倍、中国:約1.3倍)する見通しです。

また、2013年から2014年にかけて公表された気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第5次評価報告書は、「1880年~2012年において、世界平均地上気温が0.85℃上昇」し、特に「1951年〜2010年の世界平均地上気温の観測された上昇の半分以上は、温室効果ガス濃度の人為的増加とその他の人為起源強制力の組合せによって引き起こされた可能性が極めて高い」との評価を公表しました。温暖化が人間活動の影響によって引き起こされていることについて、前回第4次評価報告書時の「可能性が非常に高い(“is very likely”、90%以上の可能性)」との評価から「可能性が極めて高い(“is Extremely likely”、95%以上の可能性)」に強められており、より強固な科学的根拠が確認されたと言えます。

我が国では、温室効果ガス排出量削減のための様々な取組が行われています。しかし今後、地球温暖化問題を本質的な解決へと導くためには、世界全体の温室効果ガス排出量を大幅に削減することが急務となっています。

この点、我が国の石炭火力の熱効率は世界一の水準であり、例えば、仮に米国・中国・インドの既設の石炭火力発電所を、全て我が国の高効率石炭火力発電技術(磯子火力発電所新1号機並の熱効率)に置き換えたとした場合、米国においては約4億トン(2010年実績の約18.2億トン−約14.4億トン)、中国においては約8億トン(約35.5億トン−約27.8億トン)、インドにおいては約3億トン(約7.8億トン−約4.7億トン)と、我が国全体の温室効果ガス排出量(2012年度:約13.4億トン)を超える、合計約15億トンの二酸化炭素排出削減の効果があると試算されます(資源エネルギー庁試算)。このような我が国の技術を世界に広めることも、地球温暖化問題を解決する方法の一つになると期待されます。

【第111-4-1】世界のエネルギー起源CO2排出量の実績と予測

【第111-4-1】世界のエネルギー起源CO2排出量の実績と予測

(出典)
IEA「World Energy Outlook 2013」を基に作成

【第111-4-2】IPCC(気候変動に関する政府間パネル)評価報告書

【第111-4-2】IPCC(気候変動に関する政府間パネル)評価報告書

【第111-4-3】石炭火力の熱効率の国際比較

【第111-4-3】石炭火力の熱効率の国際比較

(出典)
IEA「Energy Balances: OECD and Non-OECD Countries」を基に作成

【第111-4-4】最新鋭の高効率石炭火力発電所(電源開発 磯子火力発電所)

【第111-4-4】最新鋭の高効率石炭火力発電所(電源開発 磯子火力発電所)

【写真提供:電源開発】