第7章 革新的なエネルギー技術の開発・普及拡大

1.エネルギー技術開発の意義

地球規模で深刻化するエネルギー問題の制約はもとより、気候変動問題を始めとする環境問題関連の制約を本質的に解決するためには、技術によるブレークスルーが不可欠です。エネルギー技術の開発は、安定供給の確保や環境問題の解決に資するほか、エネルギー調達費用の低減や経済活性化等の観点からも、極めて重要です。そのため、我が国としては、技術力の一層の強化に努めるとともに、地球温暖化問題等世界的な取組が必要な課題に対してもその技術力を活かすべくイニシアティブを発揮してきました。

他方、エネルギー技術開発には、長期のリードタイムとそれを実用化するための息の長い官民連携した努力が必要です。そこで、技術動向の変化には柔軟に対応しつつも、中長期的な方向性を官民で共有することで、軸のぶれないエネルギー関連の技術開発の取組の推進を図ってきました。

2.エネルギー技術開発に関する取組

(1)技術戦略マップ(エネルギー分野)

エネルギー技術開発に国が関与する際には、利用可能な資金を最大限有効に活用するという観点に立って、解決すべき課題を具体的に抽出し個々の技術開発が目指すべき目的・成果(アウトカム)を明確にした上で、当該技術分野における我が国の水準を踏まえ、プロジェクトの開始時及び節目ごとに的確な評価を行い、当該目的・成果(アウトカム)をどこまで達成できているかを明らかにしつつ計画的に開発及びその実証を進め、実用化への道筋を確保することが肝要です。その際、安全と社会的受容性(パブリック・アクセプタンス)を確保するために、実証試験を丁寧に行い、技術の確証を行うとともに、技術基準の策定等に必要なデータの集積を行うこと、並びに国民の認知度や疑問点等を把握した上で、技術開発の取組状況や成果を分かりやすく情報提供していくことが不可欠です。

また、新エネルギーや省エネルギー技術等では、技術が実用化段階に至り普及が一定のレベルに達することによって本格的な量産体制が整い、それに伴って機器の価格が低下し自立的な普及プロセスに移行するというケースが少なくなく、導入初期段階における支援が必要な場合があります。

なお、エネルギー技術の特性を考慮した場合、既存技術の改良が省エネルギー等に大きなインパクトを与える場合が存在するため、既存の技術の改良と将来的な技術開発とを並行して行うことが求められます。

上記の点を踏まえ、省エネルギー等明確な政策目標の下、技術開発によって解決すべき課題を明示し、その解決に向けて求められる技術開発をロードマップの形で提示したエネルギー技術戦略を策定・推進してきました。エネルギー技術戦略においては、エネルギー分野の技術開発を、長期のリードタイムとそれを実現する息の長い官民連携の努力が必要という認識のもと、2030年頃までに実用化が見込まれるエネルギー技術を抽出し、①総合エネルギー効率の向上、②運輸部門の燃料多様化、③新エネルギーの開発・導入促進、④化石燃料の安定供給確保と有効かつクリーンな利用等の政策目標別に整理した上で、「技術マップ」、「ロードマップ」、「導入シナリオ」を作成しました。

総合エネルギー効率の向上

「新・国家エネルギー戦略」に掲げる、2030年までにGDP当たりのエネルギー利用効率を約30%向上することを実現していくために、産業部門はもとより、全部門において、総合エネルギー効率の向上に資する技術開発とその成果の導入を促進します。具体的には、転換部門における「エネルギー転換効率向上」、産業部門における「製造プロセス効率向上」、民生・運輸部門における「省エネルギー」等により、GDP当たりの最終エネルギー消費指数の向上を目指しました。

運輸部門の燃料多様化

「新・国家エネルギー戦略」に掲げる目標(2030年に向け、運輸部門の石油依存度が80%程度となることを目指す)の実現のためにも、官民が中長期的な展望・方向性を共有しつつ、技術開発と関連施策を推進しました。

具体的には、バイオマス由来燃料、GTL、BTL、CTL等の新燃料、電気自動車や燃料電池自動車等の導入により、現在ほぼ100%の運輸部門の石油依存度を2030年までに80%程度とすることを目指しました。

再生可能エネルギー等の開発・導入促進

経済性や出力不安定性といった普及のための課題解決に向けた技術開発の推進及び再生可能エネルギーの導入促進のための関連施策の実施により、更なる再生可能エネルギーの普及を推進しました。

具体的には、太陽光、風力、バイオマス等の再生可能エネルギーの技術開発や燃料電池等革新的なエネルギー高度利用を促進することにより、再生可能エネルギー等の自立的な普及を目指すことで、エネルギー源の多様化及び地球温暖化対策に貢献しました。

化石燃料の安定供給確保と有効かつクリーンな利用

石油・天然ガス等の安定供給確保を目指し、我が国企業による資源国における資源開発等に対する支援等の施策を進めるとともに、その有効かつクリーンな利用を図りました。

具体的には、石油・天然ガスの化石燃料の安定供給確保を目指し、資源獲得能力の強化に資する先端的な技術開発を推進するとともに、環境負荷低減のために化石燃料の効率的かつクリーンな利用を促進するための技術開発・導入を目指しました。

(2)エネルギー革新技術開発の推進

2050年までに世界の温室効果ガス排出量を大幅に削減させるといった野心的な長期目標を達成するためには、既存技術の普及のみならず、従来の延長線上にはない革新技術の開発が欠かせません。このため革新的太陽光発電、プラグインハイブリッド自動車・電気自動車、革新的製鉄プロセス、燃料電池、二酸化炭素回収・貯留技術(CCS)といった世界の温室効果ガス排出量の大幅な削減に寄与する21の技術を選定するとともに、これら技術のロードマップを策定して、革新技術開発を推進しました。

(3)低炭素社会実現のための社会シナリオ研究事業の推進

持続的な社会発展を実現しつつ、我が国の温室効果ガス削減の長期目標を確実に達成するため、産業構造、社会構造、生活様式、技術体系等の相互連関や相乗効果の検討等を行い、低炭素社会実現に向けた社会システムの改革や研究開発の方向性を定量的に提示する「低炭素社会実現のための社会シナリオ研究事業」を推進しました。

3.2011(平成23)年度において長期的、総合的かつ計画的に講ずべき研究開発等に関して講じた施策

(1)省エネルギーに関する技術における施策

省エネルギー革新技術開発(再掲 第5章第2.(1)⑦(ア) 参照)

次世代型ヒートポンプシステムの研究開発に向けた検討(再掲 第5章2.(1)⑦(イ) 参照)

(2)新エネルギーに関する技術における重点施策

太陽光発電の技術開発(再掲 第3章1節2.(5)① 参照)

風力発電技術開発 風力発電電力系統安定化等技術開発(再掲 第3章1節2.(5)② 参照)

バイオマスエネルギー技術開発 バイオマスエネルギー等高効率転換技術開発(再掲 第3章1節2.(5)③ 参照)

燃料電池技術開発(再掲 第3章1節2.(9)① 参照)

(3)電力に関する技術への取組

イットリウム系超電導電力機器技術開発(2,500百万円)

系統安定化・高効率送電等のための革新的な送変電システムを構築する技術として、低コストで大容量の電力供給が期待できるイットリウム系超電導線材の技術開発、高温超電導ケーブル、高温超電導変圧器の基盤技術開発及び高温超電導電力貯蔵装置に関する要素技術の開発に取り組みました。

高効率ガスタービン実用化要素技術開発(1,721百万円)

電力産業用ガスタービンについて、発電効率の向上を目的として、大型機(25万KW(コンバイン出力40万kW 程度))のガスタービン入口温度の高温化(1,500度級→ 1,700度級)及び中型機(10万kW 程度)の高湿分空気利用ガスタービン(AHAT)システムの実用化のための技術開発にに対して補助を行いました。

先進超々臨界圧火力発電実用化要素技術(1,100百万円)

供給安定性に優れた石炭の高効率かつ低環境負荷での利用を図るため、従来型石炭火力発電の高効率化が図れる先進超々臨界圧火力発電実用化のための要素技術開発に対して補助を行いました。

(4)原子力に関する技術への取組

安全確保に向けた取組

原子力の安全確保に係る技術政策については、第3章で詳述したとおり、原子力安全に係る最新の技術的知見の蓄積及びその安全規制への反映、検査技術や手法の高度化を目的とした実証事業、委託による技術調査等を行いました。

使用済燃料の再処理工程で発生する高レベル放射性廃液のガラス固化技術の高度化に関する技術開発を実施するとともに、高レベル放射性廃棄物等の地層処分技術信頼性向上のための技術開発等を継続、処分地選定のための地質等調査評価技術の開発への重点化を行いました。発電所廃棄物のうち比較的放射能レベルの高い放射性廃棄物については処分施設施工技術等の確証試験を継続しました。

軽水炉関係の研究開発

東京電力㈱福島第一原子力発電所の事故を踏まえ、既設原子力発電所の安全対策高度化に資する技術として、次世代軽水炉開発に係る要素技術のうち、シビアアクシデント対策や免震システムの開発等の技術開発のみ実施しました。

また、事故調査等の結果を踏まえ、事故時にも原子炉の各種データを確認できるよう、シビアアクシデントにも耐えうる計器類(水位計、温度計等)の開発をスタートしました。

高速増殖炉サイクル技術の研究開発(2,900百万円(経済産業省分)、37,711百万円(文部科学省分))

東京電力㈱福島第一原子力発電所の事故を踏まえ、これまで実施してきた高速増殖炉の実用化のための研究開発は凍結し、国際協力の観点から、我が国が参加している国際的な枠組(第4世代原子力システムに関する国際フォーラム(GIF))の下で実施されている「ナトリウム冷却高速炉に関する安全設計クライテリアの構築と国際共有」に向けた研究に取り組みました。

原子力発電所の事故対応関連技術の研究開発(3,000百万円(経済産業省分))

東京電力㈱福島第一原子力発電所の中長期的な廃止措置等に向けた取組を進めるにあたり、燃料デブリの取出し及び放射性廃棄物の処理・処分等に係る技術課題が多数存在するため、中長期的な廃止措置等に資する技術基盤の整備及び機器・装置開発等に取り組みました。

(5)石油に関する技術への取組

環境負荷の少ない新たな石油燃料の開発 石油燃料次世代環境対策技術開発

(再掲 第2章第2節3.(2) 参照)

国際競争力を確保しつつ環境対応を図るための石油精製関連技術の開発

(ア)革新的次世代石油精製等技術開発事業

(再掲 第2章第2節3.(2)② 参照)

(イ)石油燃料次世代環境対策技術開発

(再掲 第2章第2節3.(2)① 参照)

(6)ガス体エネルギーに関する技術への取組

石油・天然ガス開発・利用促進型大型・特別研究(399百万円)

高温・高圧といった過酷な環境下での石油・天然ガス田開発促進に資する技術について、独創的・革新的なテーマで、民間ニーズに直結した研究開発を提案公募により、1テーマ採択しました(研究期間2年)。

天然ガスの液体燃料化(GTL)技術実証研究(1,863百万円)

我が国独自のGTL技術(天然ガスを原料として石油製品を製造する技術)を確立するために、商業規模(日産15,000バレル/系列以上)の前段階となる日産500バレルの実証研究を行ってきました。

我が国のGTL技術はCO2を除去せず原料として活用するため、設備コストの低減及びCO2含有ガス田の開発促進が期待されました(2006年度~2011年度)。

メタンハイドレート技術開発(8,930百万円)

日本周辺海域に相当量の賦存が期待されるメタンハイドレートを将来のエネルギー資源として利用可能にすることを目的として、世界に先駆けて商業的産出のために必要な技術整備を行ってきました。フェーズ2(研究開発の第二段階)の2年目となる2010年度は、メタンハイドレートの資源量評価、生産手法開発及び環境影響評価に係る研究のほか、東部南海トラフ海域で実施予定の海洋産出試験に向けた事前海洋調査や設備検討等の諸準備を実施しました(2001年度~2018年度)。

(7)石炭に関する技術への取組

クリーンコール技術開発(革新的CO2回収型石炭ガス化技術開発)

(再掲 第3章第4節2.(1)① 参照)

クリーンコール技術開発(基礎研究等)

(再掲 第3章第4節2.(1)① 参照)

国際連携クリーンコール技術開発プロジェクト

(再掲 第3章第4節2.(1)① 参照)

酸素燃焼国際共同実証事業

(再掲 第3章第4節2.(1)① 参照)

高効率熱分解石炭ガス化国際共同実証事業

(再掲 第3章第4節2.(1)① 参照)

未利用炭有用資源化技術開発

(再掲 第3章第4節2.(1)① 参照)

(8)長期的視野に立って取り組むことが必要な研究開発

ITER 計画をはじめとする核融合に関する研究開発の推進(24,381百万円(ITER 計画及びBA 活動に関する経費))

核融合研究開発の推進は、未来のエネルギー選択肢の幅を広げ、その実現可能性を高める観点から、実施されてきました。我が国の核融合の研究開発は、国際協力を効率的に活用しながら、(独)日本原子力研究開発機構、核融合科学研究所、大学等が、相互に連携・協力して推進しました。

ITER計画は、核融合エネルギーの科学的及び技術的な実現可能性の実証を目指した国際共同研究開発プロジェクトであり、現在、日本、EU(ユーラトム9)、アメリカ、ロシア、中国、韓国、インドの七つの国と地域によって進めてきました。また、ITER計画を補完・支援する先進的研究開発プロジェクトとして、幅広いアプローチ(BA)活動を日欧協力により、我が国で実施してきました。

両事業において、我が国は調達を担当する機器の製作を進めるとともに、核融合の最先端研究開発などを本格的に進めてきました。

核融合分野における二国間協力では、アメリカ、ヨーロッパ、韓国、中国と核融合研究協力実施取決めを結びました。また、多国間協力ではIEAにおいて八つの核融合協力実施取決めを結ぶと共にIAEAの核融合協力に関する活動にも積極的に参画する等、我が国は、世界そしてアジアの拠点として、研究協力や研究者の交流を実施しました。

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欧州原子力共同体(The European Atomic Energy Community)