第1節 電気事業制度

1.電気事業制度改革

(1)過去四次の電気事業制度改革について

電気事業においては、規模の経済を前提に、電気供給を営む電気事業者に対して発送電一貫の独占的供給を認め、一方で料金規制等によってその弊害を排除するという形の事業規制を課すことが、国民経済的に見て最適であると考えられてきました。

このような従来の電気事業の公益事業規制の在り方に対して、1995年、1999年、2003年に三度の制度改革が行われ、さらに第四次の改革として2008年に電気事業制度の改正が行われました(第341-1-1)。

【第341-1-1】電力自由化に向けたスケジュール

【第341-1-1】電力自由化に向けたスケジュール

(出所)
総合資源エネルギー調査会総合部会電力システム改革専門委員会(平成24年4月)

第一次電気事業制度改革(1995年)

1993年12月の総合エネルギー調査会総合部会基本政策小委員会中間報告において、発電部門への市場原理導入が提言され、これを受け1995年4月に電気事業法が一部改正、同年12月に施行されました。

この規制緩和によって、電気事業者以外の事業者が、電力会社に電気を売ること(卸売)が認められるようになりました。電力会社にとっては、電力会社・卸電気事業者以外からも電気を買うことが可能となり、電源調達の選択肢の拡大につながりました。なお、この電力卸売事業に新規参入する事業者は独立系発電事業者(IPP)と呼ばれています。

また、電力会社と同様に供給地域と供給責任を持つという条件の下で、電力会社以外の事業者が小売まで行うことができるよう、規制改革が行われました。これによって、自前の発電設備と送配電設備を持つ事業者が、特定地域の電力需要家に直接、電気を売ることができるようになりました。この新しい事業を特定電気事業といい、その事業者を特定電気事業者ということとなりました。

更に、料金規制の見直しとして、①ヤードスティック査定の導入、②選択約款の導入、③燃料費調整制度の導入、④経営効率化制度の見直し、等が行われました。

二次電気事業制度改革(1999年)

1999年の制度改革では、国際的に遜色のないコスト水準とする観点から電気事業法が改正されました。改正電気事業法での具体的な制度改正の内容は、小売部門に競争を導入するため、2000年3月から大規模工場やオフィスビル、デパート、大病院等の特別高圧で受電する需要家(原則2万V以上で受電し、電気の契約容量が原則2,000kW以上の需要家)に対しては、電力会社以外の新規参入者も電気を供給することができるようになりました(新しく電気の小売事業に参入した事業者は、特定規模電気事業者(PPS)と呼ばれています)。その際、自由化対象となった需要家は、我が国の電力販売量の3割弱を占めていました。

また、託送ルールの整備、料金規制の見直し、兼業規制の撤廃等がなされました。

第三次電気事業制度改革(2003年)

2003年の制度改正では、供給システム改革による安定供給の確保、環境への適合及びこれらの下での需要家選択肢の拡大という観点から、電気事業法が改正されました。

改正電気事業法は2004年4月より一部施行され、小売自由化範囲が電気の契約容量が原則500kW以上の高圧需要家に拡大され、我が国の販売電力量の約4割が自由化対象となりました。

さらに、2005年4月からの全面施行により、小売自由化範囲は電気の契約容量が50kW以上の全ての高圧需要家にまで拡大され、我が国の販売電力量の約6割が自由化対象となりました。また、送配電等業務支援機関として電力系統利用協議会が、私設・任意の卸電力取引市場として日本卸電力取引所が本格運用を開始しました。

第四次電気事業制度改革(2008年)

2008年の制度改正では、「安定供給」「環境適合」「競争・効率性」という三つの課題の同時達成、需要家の視点の重要性、日本型モデルの発展の追及という観点から、小売自由化範囲の拡大の是非、発電卸電力市場の競争環境の整備、同時同僚・インバランス制度、託送供給料金制度、安定供給の確保、環境適合について検討を行いました。

競争環境整備については、卸電力取引所における時間前市場の具体的な設計を行いました。また、変動範囲内・外のインバランス料金について見直しを行い、全てのPPSでインバランス料金の負担が軽減されることとなりました。託送供給料金制度における変更命令の発動基準に係る超過利潤累積額の上限の設定、超過利潤の使途の明確化、連系線・FCの投資インセンティブに係る事業報酬率の設定を行いました。

第四次電気事業制度改革以降の議論(2008年以降)

2008年10月、「昨今の燃料価格の大幅かつ急激な変動及び地球温暖化問題への対応の必要性の高まり等の電気事業を取り巻く状況変化を踏まえ、今後の電気料金制度はいかにあるべきか」との経済産業大臣の諮問に基づき、電気事業分科会において審議し、喫緊の課題であった燃料費調整制度の見直しについて2009年1月に「総合資源エネルギー調査会電気事業分科会第1次報告~燃料費調整制度の見直しについて~」の取りまとめを行いました。引き続き、2008年度末から、同審議会において、財務諸表に係る「新エネルギー関係費用の見える化」及び電気料金に関する今後の行政関与の在り方について審議を行い、2009年8月に「総合資源エネルギー調査会電気事業分科会第2次報告」の取りまとめを行いました。

上記の取りまとめられた報告により、燃料費調整制度については、燃料価格変動をより迅速に反映させるとともに、料金変動を平準化するために、料金反映までの期間を1カ月短縮し、2カ月とした上で、3カ月分の平均燃料価格を毎月反映する仕組みとして、2009年5月から順次移行することとなり、新エネルギー関係費用の見える化については、2010年3月に関係省令を改正し具体的な制度整備を行いました。

また、2010年度には、再生可能エネルギーの固定価格買取制度の導入に際しての電気事業制度面での対応と、これを契機とした再生可能エネルギーの導入拡大のための対応に係る基本的考え方について、電気事業分科会の下に設置された制度環境小委員会において審議を行い、2011年1月に「中間とりまとめ」を行いました。これを受けて、電気事業法を改正し、再生可能エネルギーの普及拡大等に資するよう、再生可能エネルギーの買取制度による賦課金(サーチャージ)等、外生的・固定的なコストの変動に起因する料金改定手続きを整備する等の規制の合理化を行いました(2012年4月施行)。法改正の概要は、以下のとおりです。

①買取制度によるサーチャージ等、外生的・固定的なコストの変動に起因する料金改定について、簡易かつ機動的な手続きを導入。

②特定電気事業者が、送配電ネットワークを経由して再生可能エネルギー等の外部電源を調達できるよう、託送制度を整備。

③買取制度により、送配電ネットワークに接続する発電設備が増加し、その接続の可否、接続地点等についての紛争が増加すると予想されることから、送配電ネットワークの利用ルールの策定とその運用状況に監視、発電事業者と送配電ネットワーク運用者との間の紛争解決について、体制を整備。

(2)電気事業制度改革の成果

新規参入の状況

 2000年に特別高圧需要家への小売自由化が始まっ たことを受けて、電力小売に新規参入する企業(新電 力)が現れました。新電力は、2011年度には計194億 kWh の電力販売を行いました。また、事業者数は、 2012年3月現在、全国で50社に達しました。

電気料金の推移

1995年の電気事業制度改革の開始以降、我が国の電気料金は着実に低下し、電灯・電力合計の料金単価は、1994年度から2009年度の間において、約2割の低下となっていて、電気料金の内外価格差は一部の国との間では依然残るものの、縮小し、一部逆転する傾向となりました。2008年度以降燃料価格の影響を受け、電気料金は上下しました。

2.2011(平成23)年度において電気事業制度に関して講じた施策

(1)電気料金制度・運用の見直しに係る有識者会議における議論

2011年3月の東日本大震災発生以降、電力需給のひっ迫や原子力損害賠償、燃料コスト増による電力コスト上昇懸念等、電気事業をとりまく状況は大きく変化しました。こうした中、東京電力㈱による原子力損害賠償の支援スキームの策定に際し、国民負担の最小化と電力の安定供給確保のため設置された「東京電力に関する経営・財務調査委員会」の報告書(2011年10月公表)においても、現行の電気料金制度とその運用についての問題点が指摘されました。これを踏まえ、現行制度下における電気料金の制度・運用を見直す観点から、「電気料金制度・運用の見直しに関する有識者会議」を開催し、計6回の議論とパブリックコメントを経て2012年3月に報告書がとりまとめられました。この報告書を踏まえ、一般電気事業供給約款料金算定規則、一般電気事業供給約款料金審査要領、電気料金情報公開ガイドライン等を改正しました。

<報告書の概要>

①原価の適正性の確保

値上げ認可時には、広告宣伝費、寄付金、団体費については原価算入を認めない。また、人件費、修繕費等についてはメルクマール等により査定。

※人件費の例:一般企業の平均値を基本に、他の公益企業の平均値とも比較

②新しい火力入札

火力電源を自社で新設・増設・リプレースする場合は、原則全て入札。

③公正かつ適正な事業報酬

正当な理由なく著しく低い稼働率となっている設備はレートベース対象資産(事業報酬の算定の基礎となる資産)の対象外。

④原価算定期間及び電源構成変動への対応

経営効率化を織り込む等の観点から認可時は3年を原則。また、原価算定期間内に電源構成が大きく変動した場合には、変動分のみを料金に反映。

⑤託送料金(※送配電線の利用料)の適正化

託送料金について第三者が適切性・妥当性を確認。

⑥デマンド・レスポンス料金とスマートメーターの導入

時間帯別料金の多様化や三段階料金の見直し、季節別料金の導入等の検討、スマートメーターの導入に当たっては入札を原則。

⑦事後評価

原価算定期間終了後には、原価と実績値、算定期間終 了後の収支見通し、利益の使途等について評価。

(2)電力システム改革に関するタスクフォースにおける議論

新たなエネルギー・ミックスに向けた「戦略」の構築と併せ、これを実現するための電力システムの改革について政府として一体的に取り組む観点から2011年10月末に官房長官を議長とする「電力改革及び東京電力に関する閣僚会合」が設置されました。こうした中、電力システム改革に関する論点の整理を目的として、「電力システム改革に関するタスクフォース」を経済産業省内に設置しました。同タスフォースにおいては有識者を交えて精力的な検討を進め、同年12月末に「論点整理」をとりまとめました。その基本理念として、以下の四つの基本的視座の下、「低廉で安定的な電力供給」を実現する「より競争的で開かれた電力市場」を構築することを掲げています。

①需給逼迫時に需要抑制や供給促進のインセンティブが働く電力市場の形成

②企業や消費者の自由な選択、創意工夫を最大限活用する電力市場の形成

③需要サイドによる需給管理が可能な次世代スマート社会の構築

④このような電力市場を支える公正で透明な競争環境の整備

(3)短期的な規制・制度改革への取組

上記のような中長期的な制度改革の議論と並行して、電力需給問題の解決に資する短期的な規制・制度改革にも取り組みました。

2011年11月に「エネルギー・環境会議」において取りまとめられた「エネルギー需給安定行動計画」においては、エネルギー構造改革を先行的に実施し、当面のピーク時の電力不足と電力コストの上昇を最小化することを目的として、短期的に取り組むべき規制・制度改革の重要課題を「政府のエネルギー規制・制度改革アクションプラン」があわせて取りまとめました。

これに基づいて、①自家発補給契約の見直しに係る指針の策定、②夜間のインバランス料金の引き下げ、③自家発余剰電力の有効活用に係る指針の策定、④卸・IPP の発電余力の活用に係る指針の策定、等を行いました。