第4節 化石燃料の高度利用

1.石炭の意義と取組

(1)石炭の開発・利用の意義

石炭は、他の化石燃料に比べ可採年数が長く、世界各国に幅広く分布する等、他の化石燃料に比べ供給安定性が高く、経済性に優れています。

他方、他の化石燃料に比べ、燃焼過程における単位発熱量当たりの二酸化炭素の排出量が大きいこと等、環境面での制約要因が多いという課題を抱えています。我が国は、消費する石炭のほぼ全量を輸入に依存していて、年間約1.6億トンを輸入する世界最大の石炭輸入国です。我が国の一次エネルギーの約2割、発電量の約1/4を石炭火力が占めています。

(2)石炭の開発及び利用に係る政府の取組

近年、地球環境問題に対する関心の高まりを背景に、世界の二酸化炭素排出量の約3割を石炭火力発電が占める石炭について、よりクリーンな利用が求められてきました。2010年6月に閣議決定された「エネルギー基本計画」においては、ゼロエミッション石炭火力発電の実現や石炭のクリーンな利用の重要性について示されました。石炭ガス化複合発電(IGCC)等の高効率化とCCSの大規模実証事業及び技術開発を推進するとともに、これらの技術を合わせ、ゼロエミッション石炭火力発電の実現を目指してきました。

このような更なる技術開発・実証を推進することにより、我が国の石炭利用技術の競争力を将来にわたって維持するとともに、国内石炭火力を最新鋭技術の実証の場と位置づけ、これを基盤として、海外展開を進めました。

また、中国やインド等による石炭輸入の増大や海外石炭資源権益確保の進展、産炭国における自国の石炭需給を優先する輸出抑制等の動きがあることから、協力事業等を通じた産炭国との関係の強化、海外における炭鉱開発支援等、我が国の石炭の安定供給確保のためのさまざまな施策にも積極的に取り組みました。さらに、エネルギーとしての石炭の重要性やクリーンな石炭利用の現状等について、広く正しく理解してもらうため、エコプロダクツ2010におけるセミナーや石炭の日「クリーン・コール・デー(9月5日)」の時期に開催する国際会議への協力等様々な普及・啓発活動に協力しました。

2.2010(平成22)年度において石炭の開発及び利用に関して講じた施策

(1)ゼロエミッション石炭火力発電の実現

クリーン・コール・テクノロジーの開発、実証、普及を進めるとともに、IGCC等とCCSを組み合わせた「ゼロエミッション石炭火力発電」の実現等を目指し、2011年度は、以下の施策を実施しました。

国内外のゼロエミッション石炭火力発電の実現

(ア)革新的二酸化炭素回収型石炭ガス化技術開発(1,890百万円)

IGCCからのCO2の分離・回収について、高圧プロセスにおける最適なシステムについてパイロット規模での研究を実施しました。

(イ)燃料電池対応型石炭ガス化複合発電最適化調査研究(478百万円)

酸素吹石炭ガス化技術とCO2回収技術の最適モデルの検討・評価、経済性に優れた実証プラントの最適化調査研究を実施しました。

(ウ)クリーンコール技術開発(基礎研究等)(1,188百万円)

CO2の分離・回収・貯留について、①石炭ガス化複合発電からCCSまで一貫したトータルシステムの設計等、②次世代IGCCなど革新的な石炭ガス化技術にかかる先進基礎研究、③石炭燃焼に伴い発生する微量物質の除去技術の開発を実施しました。

(エ)国際連携クリーンコール技術開発プロジェクト(90百万円)

米国等の研究機関と石炭火力発電のCCSに関する基礎的基盤的な技術の共同研究や日中実施機関によるCCS-EORを含めた環境技術交流等を実施しました。

(オ)酸素燃焼国際共同実証事業((414百万円)

オーストラリア・カライド地区における微粉炭火力発電所を改造し、酸素燃焼技術を用いて発電を行い、発電所から回収した二酸化炭素を地中貯留する実証事業を日豪共同で推進しました。

(カ)高効率熱分解石炭ガス化国際共同実証事業(80百万円)

豪州ビクトリア州にて低品位炭の高効率熱分解技術を用いた原燃料製造・CCS事業の実現可能性調査を日豪共同で実施しました。

(キ)高効率褐炭乾燥システム研究(205百万円)

水分量が多く、これまで生産地で低い発電効率でしか利用されていない褐炭について、従来にない高効率乾燥システムの技術開発を実施しました。

(ク)低品位炭からのクリーンメタン製造技術研究(40百万円)

低品位炭からクリーンな代替天然ガスへの高効率な変換を目指し、石炭ガス化技術と組み合わせた高効率メタン化技術についての研究を実施しました。

(ケ)石炭灰の有効利用技術に関する研究(35百万円)

石炭灰の発生量や有効利用に関する実態を把握するため、石炭灰有効利用促進調査を行うとともに、セメントを使用せず石炭灰を主原料として構成するコンクリート(硬化体)の製造技術開発調査等を実施しました。

効率改善やバイオマス混焼及び老朽石炭火力のリプレース等による最新設備の導入

石炭火力発電については単位発電量当たりの二酸化炭素を低減させるため、現在運転中の石炭火力における効率改善やバイオマス混焼及び老朽石炭火力のリプレース等による最新設備の導入を推進することにより、高効率化・低炭素化を進めました。

我が国クリーンコール技術の海外展開の推進

(ア)気候変動対応クリーンコール技術国際協力事業(680百万円)

専門家派遣による石炭火力発電の設備診断や技術移転研修などを通じ、中国等のアジア地域やポーランドへの日本のクリーン・コール・テクノロジーの普及を図りました。

(イ)石炭高効率利用システム案件等形成調査事業(895百万円)

我が国が有するCCT を海外へ普及するため、アジア、オーストラリア、東欧等6カ国において、高効率石炭火力発電所新設プロジェクト等8件の案件形成調査を実施しました

(ウ)クリーン・コール・テクノロジーの普及事業(24百万円)

東アジアにおけるCCTの普及を目的として、各国の低品位炭利用技術及び高効率石炭火力発電所のニーズ調査等を実施し、各種提言を行いました。

3.ガス体エネルギーの意義

天然ガスは、中東以外のアジア、オーストラリア等の地域にも広く分散して賦存するとともに、他の化石燃料に比べ相対的に環境負荷が少ないクリーンなエネルギーであり、安定供給の確保及び環境保全の両面から重要なエネルギーです(第334-3-1)。このため、石油、石炭、原子力等の他のエネルギー源とのバランスを踏まえつつ、天然ガスの導入及び利用拡大を推進しました。

【第334-3-1】二酸化炭素排出量等の比較

(出所)
IEA「Natural Gas Prospects to 2010」(1986)

また、LPガスも、粒子状物質(PM)の排出がない等、環境負荷が相対的に小さく、天然ガスとともにクリーンなエネルギーです。また、災害時における初期対応に適し、国民生活に密着したエネルギーです。このため、LPガスを都市ガスとともにガス体エネルギーとして一体的にとらえるとともに、事業者の競争環境の整備等を通じ、より一層のガス利用者の利益の増進を図りました。

その他、天然ガス資源の一種であるメタンハイドレートは、メタンガスと水が低温・高圧の状態で結晶化した『氷状の物質』で、日本周辺の海域に相当量の賦存が見込まれていますが、生産・回収するための技術が確立していないため『将来のエネルギー資源』と呼ばれています。このため、政府では、、2018年度を目途に商業化に向けた技術整備を行うことを目標として、世界に先駆けて積極的に技術開発を進めました。

4.2010(平成22)年度におけるガス体エネルギーに関する施策

(1)天然ガスの開発、導入及び利用

天然ガスの開発等に向けた取組

需要拡大のための方策

(ア)エネルギー使用合理化事業者支援補助金(天然ガス分)(3,000百万円)

産業用等及び業務用におけるエネルギー多消費型設備(工業炉、ボイラー等)のエネルギー使用合理化を図るもので、具体的には、省エネルギー及び二酸化炭素排出削減に寄与する天然ガスを高度利用する設備を導入する事業者に対し、その設備導入に要する経費の一部を補助しました。

(イ)地方都市ガス事業への天然ガス導入促進(353百万円)

天然ガスの導入及び利用拡大の観点から地方都市ガス事業者が実施するガス種等の変更による天然ガス導入(熱量変更)に対して、熱量変更初期費用負担の軽減、技術的能力の補完、技術・ノウハウの移転等による支援を行い、環境負荷の低減等に資する天然ガスの地方都市ガス事業への導入を促進しました。

(ウ)天然ガス(CNG)自動車の導入促進

(後掲 第5章2.(3)①(カ) 参照)

(エ)エネルギー需給構造改革推進投資促進税制

(再掲 第3章第1節2.(2)③(イ)ⅱ 参照)

(オ)燃料電池の技術開発・導入支援

(再掲 第3章第1節2.(9)①第3章第1節2.(4)②(オ) 参照)

(カ)分散型エネルギー複合最適化実証事業(600百万円)

天然ガスコージェネレーション、燃料電池、太陽光発電設備や太陽熱温水器等の再生可能エネルギー等を組み合わせた供給ネットワークを構築し、最新のICT技術を活用してエネルギー需給両面から最適制御を図る実証を開始しました。

天然ガス利用技術(GTL)、メタンハイドレートの開発加速

(後掲 第7章3.(6)②、③ 参照)

導入・利用

(後掲 第4章第2節2.(3)① 参照)

ガスの供給ネットワークの強化

(後掲 第4章第2節2.(3)② 参照)

(2)LPガスの導入及び利用

LPガス流通合理化の推進

(ア)LP ガス流通合理化対策調査(194百万円)

LPガスの流通実態・販売事業者の経営実態等を調査し、LPガス産業全体の流通機構の適正化、合理化策を検討するとともに、消費者等に対しLPガスに関する取引・価格等の情報を提供し、消費者意識の向上を図り、市場原理の一層の活性化を図るための調査等を実施しました。

(イ)LP ガス販売事業者構造改善支援事業(726百万円)

小規模事業者が大多数を占めるLPガス販売事業者の構造改善を促進し、LPガス販売業の体制強化を図るため、販売事業者団体が行う消費者相談事業の実施や販売事業者等が行う構造改善推進事業に係る費用に対し補助を行いました。

(ウ)国際交流事業(19百万円)

LPガスの産ガス国や消費国との協調と対話の促進を図るため、国内外のLPガス有識者を招聘し、LPガス国際セミナーを開催しました。

(エ)LPガス配送合理化推進事業(153百万円)

充てん所の稼働率を高めるとともに、LPガスの交錯輸送を解消するため、充てん所の統廃合に伴う設備の新設及び増設等に対し補助を行いました。

LPガス流通合理化の推進

LP ガス需給構造高度化の推進

(ア)LP ガス自動車等導入促進対策事業

(再掲 第5章2.(3)①(カ) 参照)

安定供給確保のための石油ガス国家備蓄等の取組

(再掲 第5章2.(3)①(カ) 参照)