第1節 エネルギーの安定供給源確保

1.石油の安定供給確保への取組と自主開発の推進

我が国は、主要先進国と比べてエネルギーの石油依存度が高く、また石油のほぼ全量を輸入に依存しています。特に、中東地域への依存度が高いことから、石油を安定的に供給するためには、供給源の多様化を図るとともに、我が国が権益を有する自主開発原油を確保することが重要です(第2部第1章第3節1.参照)。しかしながら、資源国による資源ナショナリズムの高揚や、中国やインド等の新興国による資源獲得競争の激化が見られる等、近年の資源確保を巡る情勢は厳しさを増しています。また、石油開発事業は、莫大な資金と長いリードタイムを要するとともに、探鉱による油田発見の不確実性、原油価格及び為替レートの変動、産油国の政治経済情勢の変化等のリスクが極めて高いことから、探鉱開発を継続的に行うためには、石油開発会社に十分な資金力、技術力、探鉱開発の知見が必要です。このため、我が国としては、(独)石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)によるリスクマネー供給等を通じて、石油の自主開発、中核企業の育成に取り組んできました。また、資源獲得競争が世界的に激化する中で、エネルギー資源の確保を実現するためには、資源国との互恵的、戦略的な関係を構築することが重要です。資源国の中には、産業協力や、教育協力、文化交流等の多層的な協力関係を日本に求めているところもあります。そのため、個々の資源国のニーズに応じてきめ細やかに対応し、資源国との関係強化を図ってきました。

こうした取組を含め、総合的な資源戦略の展開を通じて石油の安定供給確保を図ることが重要です。資源外交の一層の強化、供給源の多様化、我が国企業による上流プロジェクト参画への支援、主要産油国との総合的な関係強化等、官民一体となった戦略的・総合的な取組を強化してきました。

2.主要なプロジェクト

(1)ガラフ油田開発プロジェクト

イラク南部に位置する陸上油田の開発プロジェクトです。2009年12月の国際入札の結果、石油資源開発とペトロナス(オペレーター)が共同で同油田の開発権を落札し、2010年1月に20年間のサービス契約が締結されました。今後、石油資源開発はペトロナスとともに、2016年中に23万バレル/日の生産目標を達成する予定です。

(2)アドマ鉱区プロジェクト

アラブ首長国連邦アブダビ沖合海上の油田開発プロジェクトです。ジャパン石油開発(国際石油開発帝石100%子会社)が12%の権益を保有(一部油田では40%)しており、その他、ADNOC(アブダビ国営石油会社)、BP、トタール、エクソンモービルが参画しています。アッパーザクム油田等、5油田より原油生産中です。

(3)サハリン・プロジェクト

サハリンでは大規模な石油・天然ガスの埋蔵量が確認されており、我が国に地理的に極めて近いことから、供給源の多角化に資する重要なプロジェクトです。サハリンには九つの開発鉱区が設定されており、そのうち、Ⅰ、Ⅱの開発鉱区において我が国企業が参画する形で石油・天然ガス開発が進められています。

サハリンⅠプロジェクト

ロシア連邦サハリン島沖合の石油・天然ガス開発プロジェクトです。サハリン石油ガス開発(経済産業大臣(50%)、伊藤忠商事(約18%)、石油資源開発(約14%)、丸紅(約12%)、国際石油開発帝石(約6%)の出資による会社)が30%の権益を保有しており、その他、エクソンモービル、ロスネフチ、ONGC(インド石油天然ガス公社)が参画しています。チャイボ鉱床及びオドプト鉱床より原油を生産し、ロシア本土東海岸のデカストリ港の原油出荷設備から原油を出荷しています。天然ガスについては、本格開発に向けて、需要家と協議中です。

サハリンⅡプロジェクト

ロシア連邦サハリン島沖合の石油・天然ガス開発プロジェクトです。事業主体であるサハリンエナジー社に三井物産㈱が12.5%、三菱商事㈱が10%を出資しており、その他、ガスプロム、ロイヤルダッチシェルが参画しています。ピルトン・アストフスコエ鉱床、ルンスコエ鉱床より原油・天然ガスを生産し、サハリン島南端のプリゴロドノエ港の原油・LNG 出荷設備から、原油・LNG を出荷しています。2011年には日本の総輸入量の約1割に相当するLNG を日本に輸出しています。

(4)「東シベリア-太平洋」パイプラインプロジェクト

シベリアの原油をロシア太平洋岸までパイプラインにより輸送するプロジェクトです。2009年12月、プロジェクトの第一段階として、タイシェットからスコヴォロジノまでの通油能力年間3,000万トンのパイプライン及び太平洋岸のコズミノ港の原油出荷設備が完成し、スコヴォロジノ港から、原油の出荷が開始されました。

また、2010年1月、プロジェクトの第二段階の建設工事が開始されました。今後、スコヴォロジノまでの通油能力を年間8,000万トンまで拡大しつつ、スコヴォロジノからコズミノ港までの年間5,000万トンの通油能力のパイプラインを建設することが予定されています。

また、東シベリアにおける日露の探鉱協力の第一歩として、JOGMECは、ロシア連邦イルクーツク州において、イルクーツク石油と共同で地質構造調査を行っています。

(5)オリノコ・カラボボ鉱区プロジェクト

ベネズエラ・ボリバル共和国を東西に流れるオリノコ川の北部には、世界最大の在来型の原油埋蔵量を持つサウジアラビアにも匹敵するといわれているオリノコ重質油帯が分布しています。そのオリノコ重質油帯のカラボボ鉱区における入札の結果、2010年2月に日本企業が参加する国際コンソーシアムが同鉱区の開発権を取得しました(第321-2-1)。当該プロジェクトには、ベネズエラ国営石油公社(PDVSA)60%、国際コンソーシアム(シェブロン、国際石油開発帝石、三菱商事、スエロペトロール(ベネズエラ企業))40%の割合で設立された合弁会社を通じて日本企業が参加しています。ピーク生産量は40万バレル/日となる予定です。

【第321-2-1】カラボボプロジェクトの実施場所

【第321-2-1】カラボボプロジェクトの実施場所

(出所)
国際石油開発帝石㈱作成

(6)カシャガン油田プロジェクト

カザフスタン共和国アティラウ沖のカスピ海域に発見されたカシャガン油田は、可採埋蔵量が約110億バレルあると言われる巨大油田です。エニ、エクソンモービル、ロイヤルダッチシェル、トタール等が参加し、日本からは国際石油開発帝石が約7.6%の権益を保有して参加しています。2000年に石油・天然ガスが発見され、2002年に商業発見宣言が行われました。現在、2012年の生産開始に向け開発作業が実施されています。

(7)イクシスプロジェクト

西オーストラリア沖合海上のガス田開発プロジェクトです。国際石油開発帝石㈱が76%(オペレーター)、トタールが24%の権益を保有しています。2012年1月には最終投資決定を行いました。2016年の生産開始を目指しており、年間840万トンのLNG 等を生産予定です。

(8)アバディプロジェクト(マセラ鉱区)

インドネシア東部のアラフラ海海上のガス田開発プロジェクトです。国際石油開発帝石㈱が60%(オペレーター)、シェル30%インドネシア・EMP 社が10%の権益を保有しています。2012年前半の基本設計作業の開始を目指しており、浮体式LNG 生産方式(FLNG)の採用により年間約250万トンのLNG 生産を予定しています。

(9)カスピ海ACG油田開発プロジェクト/BTCパイプラインプロジェクト

アゼルバイジャン領カスピ海バクー市沖合に位置する海底油田である、アゼリ・チラグ・グナシリに三つの油田を開発するACG プロジェクトは、可採埋蔵量が約54億バレルと言われる大型開発プロジェクトです。事業者はBP をオペレーターとし、エクソンモービル、シェブロン等が参加するとともに、我が国からは伊藤忠商事㈱が約4%、国際石油開発帝石㈱が約11%の権益を保有してプロジェクトに参加しています。既に1997年11月に原油生産を開始しており、現在は約80万バレル笊ア日を生産しています。

なお、カスピ海は内陸部に位置しているため、生産された原油はパイプライン等を通じて輸出する必要がありますが、ACG から生産される原油については、アゼルバイジャンのバクー、グルジアのトビリシ、トルコのジェイハンを結ぶBTC パイプラインにて地中海に輸送されています。

3.2011(平成23)年度における資源確保に向けた戦略的・総合的取組の強化

(1)中核的企業をはじめとする我が国企業による自立的な開発事業の展開等

探鉱出資(資産買収含む)、債務保証事業

(後掲 第2章第1節3.(3)① 参照)

政府系金融機関による資源金融(㈱国際協力銀行(JBIC))

我が国企業による長期取引契約に基づく資源輸入や、自ら権利を取得して資源開発を行う場合、さらには資源開発に携わる我が国企業の競争力が強化される場合あるいは資源確保と不可分一体となったインフラ整備等、我が国にとって重要な資源の海外における開発及び取得を促進する場合に、国際協力銀行は輸入金融や投資金融による支援を行いました。

貿易保険によるリスクテイク((独)日本貿易保険(NEXI))

海外における重要な鉱物資源又はエネルギー資源の安定供給に資する案件に関し、海外エスクロー口座への資源引取り代金入金を条件に、NEXIは通常よりも低い保険料率で幅広いリスクをカバーする資源エネルギー総合保険等を通じて、我が国の事業者が行う権益取得・引取等のための投融資に対し支援を行いました。

海外投資等損失準備金制度

海外で行う資源(石油・天然ガス等)の探鉱及び開発事業に対する投資等について、事業失敗等による損失に備えるために、投資等を行った内国法人が一定金額を準備金として積み立てたときの、その積立額を損金に算入できる制度の適用期限が2014年3月31日までとされました。

探鉱準備金・海外探鉱準備金制度及び新鉱床探鉱費・海外新鉱床探鉱費の特別控除制度(減耗控除制度)

鉱業を営んでいる者が探鉱のために要する費用の一部を準備金として積み立てたときの、その積立額を損金に算入できる制度及びその準備金を取り崩して実際の新鉱床探鉱費に充てた場合等には、一定の金額を損金に算入できる制度が2013年3月31日を適用期限として認められています。

(2)政府による積極的な資源外交

産油国産業協力等事業(1,300百万円)

我が国のエネルギー安定供給及び産油・産ガス国との関係強化を図るため、資源外交上重要な産油・産ガス国からの個別具体的な協力要請や政府間の取り決め等に基づいた、これらの国における新たな産業創出に貢献する産業人材育成や我が国の政策ノウハウの移転、本邦企業の現地投資、我が国の教育システムの移転等の個別協力プロジェクトを支援しました。2011年度は、サウジアラビアにおける電子機器・家電製品研修所の設立・運営等のプロジェクトを実施しました。

産油国開発支援協力事業(250百万円)

産油・産ガス国からの協力要請に対応し、民間レベルでの協力事業を拡大するため、石油・天然ガス開発分野における共同研究事業、調査研究事業、人材交流事業を実施しました。2011年度はタンザニアにおける小規模浮体式LNG プラントの事業化調査等の調査研究や共同研究等を実施したほか、キューバ及びケニアからエネルギー政策を担当する政府高官を招聘してのセミナー開催、ウガンダ及びセーシェルへの我が国商社や石油開発会社等から構成されたミッション派遣等を実施しました。

産油国研修事業(220百万円)

産油・産ガス国からの協力要請に対応し、民間レベルでの協力事業を拡大するため、石油・天然ガス開発分野における研修事業を実施しました。2010年度は、イラク人技術者を対象とした受入研修を実施しました。

(3)独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)による戦略的な支援

探鉱出資(資産買収含む)(28,750百万円)(うち補正予算20,250百万円を含む)、債務保証事業(1,472百万円)

JOGMEC においては、我が国石油開発会社等が海外及び本邦周辺の海域で行う石油・天然ガスの探鉱事業等に対し、事業資金の50%を上限とした出資または債務保証を行いました。また、石油及び天然ガスの開発環境が厳しくなっている状況にかんがみ、2007年4月には、油ガス田の規模が一定以上であること、技術的困難度が高いこと等、一定の要件を満たす場合に出資及び債務保証の上限を75%に引き上げました。また、2009年7月施行の法律改正により、政府保証付き長期借入金を出資業務及び債務保証業務にも活用できるようになりました。2011年度は、出資4件、債務保証1件、合計で5件を採択しました。

海外地質構造調査等事業(2,480百万円)

事業リスクが高く、我が国企業が探鉱に踏み切れていない未探鉱の戦略的地域に関し、JOGMEC が、探鉱調査、技術動向調査等を行うことにより、我が国企業の進出を促進しています。2011年度は、メキシコ、イラク、カンボジア、ベトナム等を対象として調査を実施しました。

また、本調査事業による近年の成果としては、グリーンランド北東海域の地質構造調査により同海域優先入札への参加権取得、インドネシア東部海域の地質構造調査により我が国石油開発企業の権益取得へつなげることができました。

(4)レアメタル等鉱物資源の確保及びレアメタル・リサイクルや代替材料開発の推進等

多くのレアメタル資源国は、これから国内に存する資源の開発に着手するという状況にあります。資源開発に係るリスクマネーの供給に加えて、我が国の優れた鉱山環境保全や資源開発利用に係る技術や、我が国のレアメタルの最終需要家も巻き込んだ資源国側に対する「安定需要先」の提供は、資源国側に対して魅力ある提案となります。

このため、資源国との関係強化の観点も踏まえ、我が国の環境保全技術や探査・採掘・選鉱・製錬技術を活用し、探鉱や開発調査、共同での鉱山開発事業を推進しました。また、JOGMEC・JBIC・NEXI 等を通じたリスクマネー供給支援等、レアメタル資源確保を目指す我が国民間企業に対する政府支援の一層の充実を図り、あわせて、供給者から最終消費者までの民間企業を一体として捉え、官民連携したレアメタル資源獲得体制を構築することを目的としました。JOGMECのリスクマネー供給機能(資産買収出資)を付加するため法改正を行い、その機能を用い、ブラジルのアラシャ鉱山(ニオブ)とオーストラリアのマウントウェルド鉱山(レアアース)の権益を獲得し、自給率の向上に寄与しました。更に、2月には、JOGMEC の鉱山の資産買収出資の機能を強化するため、JOGMEC 法の改正法案を国会に提出しました。また、レアメタル資源国の多くが、現在インフラ開発等を進めている状況を踏まえ、我が国のODA や政策金融等の様々な政策手法を総動員しつつ、個別の資源国側の事情に合った協力事業を行い、二国間関係を戦略的に強化してきました。具体的には、我が国産業界(特にユーザー業界)の協力も得ながら、官民で連携して、産業振興・人材育成・地域インフラ整備等の協力事業を行いました。

資源外交については、短期的には、我が国企業が既に権益を確保した国(ベトナム・カザフスタン等)に対し、既存の政府間対話の枠組みも活用し、円滑な鉱山開発に向けた支援を維持・拡大していきました。また、我が国産業界にとって重要な資源を保有する国(ボリビア・南部アフリカ諸国等)に対しても、既に実施している協力案件の拡充や水平展開等、相手側の要望を的確に把握しながら様々な分野の協力を行い、権益確保につなげていきました。その結果、2010年に、ベトナム・インド・ボリビアと資源確保に結びつく共同首脳声明に調印し、更に、2011年にはベトナムとドンパオ・レアアース鉱山開発プロジェクトの立ち上げを歓迎する共同首脳声明に調印した他、レアアース産業発展に関する取決を首脳間で署名する等、具体的な生産に向けて進展しています。

こうした資源確保への取組に加えて、資源の循環システムを構築していくことは、価格高騰や需要の逼迫の影響を緩和するためにも極めて重要であるため、2008年度から経済産業省と環境省の合同で「使用済小型家電からのレアメタルの回収及び適正処理に関する研究会」を開催し、2011年4月に最終報告書を取りまとめました。また、2011年11月から、産業構造審議会と中央環境審議会の合同会合において、レアメタル等を含む主要製品全般(自動車、大型家電、超硬工具、パソコン、二次電池等)を横断的に対象として、レアメタル等を含む使用済製品の回収量確保やリサイクルの効率性の向上といった課題への具体的な対応策について検討を開始しました。その他にも、レアメタルリサイクルに係る設備導入や技術開発の支援等を実施しました。

また、レアメタル等の代替材料開発及び使用量削減のための技術開発については、2011年度第三次補正予算を活用し、資源偏在性が高く、入手困難性の高いレアメタル・レアアースを主対象として削減・代替・市中リサイクルの技術開発・実証評価等を支援しました。本事業では、レアメタル・レアアースを使用する部素材メーカーによる使用量削減・代替技術開発に加え、当該部素材の採用に伴う製品設計変更・実証評価に対する支援を行いました。

また、2007年度より実施している希少金属代替材料開発プロジェクトにおいても、希少金属の機能を、より豊富に存在する資源に代替、あるいは使用量を大幅に削減する技術開発を支援しました。さらに、アジアでの資源循環システムの構築を目指して、我が国のリサイクル事業者のアジア展開を支援しました。

加えて、ベースメタル(鉄、銅、亜鉛等)の安定供給確保のため、JOGMEC・JBIC・NEXI 等によるリスクマネーの供給支援を通じて我が国民間企業の権益確保を支援しました。更に、低品位鉱石の活用や金属スクラップ資源の国内での有効利用促進のための研究開発等を推進しました。

(5)海洋エネルギー・鉱物資源開発の強化

我が国近海のエネルギー・鉱物資源は、国内資源に乏しい我が国にとって新たな供給源となりうる極めて重要な存在です。そのため、2009年3月に「海洋基本法」及び「海洋基本計画」に基づき策定した「海洋エネルギー・鉱物資源開発計画」に従い、その開発を計画的に進めてきました。

石油・天然ガスについては、2008年に導入した三次元物理探査船『資源』を活用し、2018年度までに我が国近海の石油・天然ガスの資源埋蔵ポテンシャルの高い海域であり、かつ探査データが未入手である海域のおよそ1割の探査を終えることを目標として探査活動を計画的に推進してきました。その結果をもとに、有望海域の試掘を機動的に実施し、我が国近海における石油・天然ガスの埋蔵量を把握し、民間企業による開発に繋げていくこととしました。

メタンハイドレートについては、2018年度を目途とした商業化の実現に向けて、陸上及び海域での産出試験の推進等により、我が国の生産技術の研究実証を踏まえた技術の整備を行いました。さらに、賦存海域・賦存量の詳細な把握などの課題の解決についても産学官の連携の下、積極的に取り組みました。

海底熱水鉱床については、我が国近海の比較的水深の浅い海域に賦存しているため、技術的・経済的にも開発に有利と期待されています。このため、2012年2月に完成した海洋資源調査船『白嶺』による資源探査を進めるとともに、関係機関や民間企業が保有する船舶、調査機器を活用した環境影響調査、探査機器の技術開発及び探査手法の研究開発等、総合的な取組を進めました。

同時に、海底の鉱石を採掘するための要素試験機開発、揚鉱・選鉱・製錬に係る最適手法の検討を進めるなど、2018年度までに商業的規模での生産システム等の設計や経済性評価までを国が率先して行い、民間企業による商業化を促進するための施策を講じています。

また、複数の重要なレアメタルを多く含むコバルトリッチクラストについては、資源探査技術の高度化を進めるとともに、有望海域における資源量把握調査や採掘に伴う環境影響調査等を実施しています。 「海洋エネルギー・鉱物資源開発計画」を踏まえ、2018年度の各目標に向けて官民一体となった取組を強化し、探査・試掘・海洋資源開発システム技術開発の一層の拡充・重点化を図りました。

これらに加えて、我が国の貴重な資源を適切かつ合理的に管理・開発するため、我が国の鉱業法制も含め、真に能力のある事業者による合理的な開発を可能とする制度整備を検討するとともに、排他的経済水域等における権益を確保し、探査、開発等のための主権的権利を適切に行使するため、資源探査及び科学的調査に係る制度整備を検討し、適切な措置を講じました。

(6)国内石油・天然ガス開発の促進

国内石油天然ガス基礎調査(16,143百万円)

我が国周辺海域における資源ポテンシャルを把握するため、2008年2月に我が国で初めて導入された資源エネルギー庁所有の三次元物理探査船「資源」を活用した基礎物理探査を実施し、2011年度は、約4,300km2の三次元物理探査データを取得しました。物理探査を実施するとともに、得られたデータを処理・解析し、順次その調査結果を我が国開発企業に提供することにより、企業による国内石油天然ガスの探鉱・開発活動を促進しました。また、基礎物理探査の解釈結果を基に、基礎試錐の候補地を選定し、事業実施に向けた準備を開始しました。

(7)市場安定化に向けた取組

新興国の経済成長に伴い、原油等のエネルギー資源の獲得競争が激しさを増すとともに、商品先物市場ではエネルギー資源価格が需要と供給のバランスを超えて上昇・下落しやすい状況がこれまでも生じてきております。そのような価格の乱高下は、安定的な開発投資や将来の安定供給の阻害要因となり、消費国・生産国の双方にとって好ましくありません。このため、市場の透明性と公正な価格形成機能を向上させ、価格の過剰な変動に対応するための取組が行われました。

国際機関協働データイニシアチブの整備

エネルギー需給の動向についての正確かつタイムリーな情報が市場に提供されることは、適正な需給バランスの把握等市場の透明性が増して過度の価格乱高下を抑制できると考えられることから、需給ファンダメンタルズに関する情報共有を進めることが重要となります。具体的には国際的な情報インフラを構築するため、IEF(国際エネルギーフォーラム)が中心となって、UNSD(国連統計局)、APEC(アジア太平洋経済協力)、IEA、OPEC 等が参画した国際機関共同データイニシアチブ(JODI:Joint Organizations Data Initiative)という活動を進めてきました。JODI のデータは年々充実しており、一層のデータ拡充に向けて関係機関が協力して取り組みを続けてきました。

2012年3月にクウェートにて行われたIEF 閣僚級会合では、石油の需給に関するデータの提出、完全性、適時性、品質の面において改善するよう参加各国に対して求める等、データの更なる整備を進めました。また、ガスに関するデータについては、公表に向けて関連するデータの収集を開始しました。

各国規制当局等との連携推進

(ア)証券監督者国際機構(IOSCO)との連携

商品取引所及び取引所外取引における相場操縦行為等の不公正取引の監視強化や透明性向上のために、証券監督者国際機構(IOSCO)商品先物市場タスクフォースへ積極的に参画し、2011年9月に「商品デリバティブ市場の規制及び監督に関する原則」を公表しました。また、2012年3月、IOSCO において「石油価格報告機関の機能及び監督」に関する提言書(案)への意見募集を行いました。

(イ)IOSCO の協議・協力及び情報交換に関する多国間覚書へ署名

商品先物市場における国境を越えた取引の市場監視を強化するため、2011年5月に、IOSCO の各国規制当局間の情報交換を可能とするための多国間覚書(MMOU)に署名しました。これにより、MMOU 署名当局は、それぞれの法令に基づき、我が国の商品先物市場における個別の取引情報等を含めた監督上必要な情報を、要請に応じて相互に提供することが可能となりました。

4.2011(平成23)年度において石炭の開発及び利用に関して講じた施策

(1)安定供給確保のための産炭国との関係強化

主要産炭国との政策対話、協力事業等を通じた産炭国との重層的な協力関係の構築、海外における炭鉱開発支援、資源人材の育成等を推進するため、2011年度は、以下の施策を実施しました。

産炭国石炭開発・利用協力事業(1,180百万円)

産炭国での政府合意に基づき、地質構造調査、低品位炭の有効利用に関する技術協力等行いました。

海外炭開発可能性調査(280百万円)

我が国企業の海外における石炭資源探査に要する資金に対し、助成を実施しました。

海外炭開発高度化等調査(200百万円)

石炭供給力を把握する上で重要となる産炭国の石炭開発動向、インフラ整備状況等の調査等を実施しました。

未利用炭有用資源化技術開発(127百万円)

有効に活用されてこなかった低品位炭をガス化して、エネルギー資源や化学原料として活用することを目指した技術の開発を実施しました。

産炭国石炭産業高度化事業(2,605百万円)

我が国の優れた炭鉱技術を、採掘条件の悪化が予想される海外産炭国へ移転するため、海外研修生の受入研修事業、我が国炭鉱技術者の海外炭鉱派遣研修事業等を実施しました。

国際資源開発人材育成事業(98百万円)

石炭に係る開発技術、国際感覚や経営力等資源開発企業のニーズを踏まえ、大学等における教育プログラムの開発・実証、インターンシッププログラムの確立に向けた取組等を実施しました。