第2節 天然ガス

1.天然ガスシフト基盤整備専門委員会について

(1)背景

総合資源エネルギー調査会総合部会基本問題委員会(以下「基本問題委員会」という。)において昨年12月に公表された論点整理では、「天然ガスシフトを始め、環境負荷に最大限配慮しながら、化石燃料を有効活用する(化石燃料のクリーン利用)」ことを基本的方向の一つとして、更に議論を深めていくこととされました。
 天然ガスシフトの動きについては、世界的に見ても、いわゆる「シェールガス革命」といった新たな供給源の立ち上がりによって、天然ガスの可採年数が大幅に増加し、長期的にも世界全体の需要を満たすことができる見込みも高いことから、今後天然ガスが果たす役割への期待はより一層高まってきています。
 我が国においては、東日本大震災を契機として、大規模集中電源に大きく依存した現行の電力システムの限界が明らかになりました。今後は、原子力発電への依存度をできる限り低減させていく方向性の中で、再生可能エネルギー、コジェネ、自家発等の多様な分散型電源の供給力の最大活用によってリスク分散と効率性を確保する次世代システムを実現していくとともに、熱の有効利用を含めた最先端の省エネルギー社会を実現していくこと等が必要となります。その中で、化石燃料の中でも最もクリーンで、かつ世界に広く分散して賦存する天然ガスへのシフトは一層重要な課題となるものと考えられます。
 一方、天然ガスの供給については、前述のとおり、東日本大震災によって、今後仮に一極集中したLNG基地に天然ガス供給を依存する大都市圏において基地の機能停止が起こった場合、長期にわたり供給が途絶するリスクがあることが顕在化しました。
 このような状況を踏まえれば、今後の我が国の天然ガスシフトに向けては、一段と高いレベルの天然ガス供給基盤のセキュリティが不可欠です。
 加えて、天然ガスの供給基盤には、セキュリティの向上のみならず、発電用燃料・都市ガス原料としての天然ガスの利用可能性向上、ガス価格低廉化の可能性、二酸化炭素削減等といった多様な意義があり、今後はこれらの意義を踏まえつつ、今後の天然ガスシフトを支えるに十分な天然ガス供給基盤の整備を進めていく必要があります。
 更に、将来的には、国際天然ガスパイプラインネットワークの形成やメタンハイドレートの開発等の動きも視野に入れながら、天然ガス利用のメリットを最大限享受できるような供給基盤が、長期的に構築されていくことも期待されます。
 以上を踏まえ、天然ガスシフトに向けた基盤(広域パイプライン等)整備に関する専門的検討を行うため、総合資源エネルギー調査会総合部会の下に「天然ガスシフト基盤整備専門委員会」を設置しました。

(2)委員構成

委員長 
 横倉 尚 武蔵大学経済学部教授
委員 
 柏木 孝夫 東京工業大学特命教授
 橘川 武郎 一橋大学大学院商学研究科教授
 古城 誠 上智大学法学部教授
 八田 達夫 学習院大学特別客員教授
 松村 敏弘 東京大学社会科学研究所教授
 山内 弘隆 一橋大学大学院商学研究科教授

(3)審議経過

○第1回(2012年1月17日)
  ➢ 本委員会で明らかにしていくべき論点について
  ➢ 我が国の天然ガス及びその供給基盤の現状と課題
  ○第2回(同年2月27日)
  ➢  天然ガスシフトに向けた基盤整備について事業者及びユーザー企業より意見聴取
    • 中堅・中小ガス事業者(仙台市ガス局)
    • 都市ガスユーザー企業(ブリヂストン)
    •  広域でパイプライン整備に取り組んでいる事業者(大阪ガス、中部電力、国際石油開発帝石)
    •  地下貯蔵に知見を有する事業者(石油資源開発)
  ○第3回(同年4月6日)
  ➢  これまでの議論やヒアリング結果を踏まえた論点整理について
  ➢ 海外調査結果について
  ○第4回(同年5月15日)
  ➢  東京ガス・大阪ガス・東邦ガスからの供給継続性に関するヒアリング
  ➢ 天然ガスシフト基盤整備の新しいあり方について
  ○第5回(同年6月13日)
  ➢ とりまとめに向けた議論
  ○第6回(同年6月26日)
  ➢ 報告書(案)について

2.対応の方針

我が国における今後の天然ガスシフトを見据えれば、それを支える広域天然ガスパイプラインネットワークという供給基盤をできるだけ早期に構築していく必要があります。

(1)整備基本方針の策定

本委員会の報告書では、我が国全体における全体最適的な観点からの広域天然ガスパイプライン・地下貯蔵施設等の天然ガス供給基盤の整備基本方針を国が策定し、民間事業者の活力を最大限活用していくことを官民の役割分担の基本的考えとし、天然ガス供給基盤整備を推進していくこととされました。
 整備基本方針の策定に当たっては、供給セキュリティ向上、利用可能性向上、価格低廉化、二酸化炭素削減等の多様な意義・社会的効果という要素のみならず、将来の国際パイプラインとの連結やメタンハイドレートの活用も視野に入れつつ、世界的な「天然ガスの黄金時代」の恩恵を国民が享受できるような環境を目指していく必要があります。
 本委員会では、整備基本方針で定めるべき内容として、以下の事項が挙げられました。
 ➢ 整備ルート等の設定
 ➢ スペック・熱量等の設定
 ➢ 整備の時間軸・プライオリティ

(2)事業者間連携に向けた利害調整

報告書では、整備基本方針と民間事業者との利害が一致しない場合の調整や多様なエネルギー事業者同士の連携を促進するため、エネルギー事業者間の利害調整を検討すべきとされました。

(3)整備費用負担の在り方

基盤整備に当たっては、事業収入に加え、セキュリティ向上、利用可能性向上、価格低廉化、二酸化炭素削減等といった社会的効果の部分も含め、費用負担の問題を解決する必要があります。
 費用負担については、「受益者負担」の原則を基本としつつも、受益の種類によって負担の手法は様々であり、特定負担、一般負担、全国民負担等の様々な組み合わせが考えられる上、受益の範囲・程度については個別事業に基づく調整が必要となります。本委員会では、整備基本方針において受益者負担の手法・範囲・程度・時点の調整等の「基本的な考え方」を示し、それに基づき、整備事業ごとに負担の在り方を検討することとされました。

(4)整備促進の在り方(コスト低減、需要増加)

整備費用そのものの低減のため、関係規制の緩和や運用見直しを進め、効果の高い財政支援措置等を検討するとともに、パイプライン整備と一体的に、天然ガス火力や天然ガスコジェネ等の新規沿線需要を喚起し、事業採算性を高めていくことが必要とされました。

3.今後の方向性

今後は、新たなエネルギー基本計画の内容を踏まえ、様々な分野の有識者や事業者の意見・知見を傾聴しつつ、必要な取組を速やかに講じていくこととしています。