第1節 「東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会」における事故原因の調査・究明

1.委員会の発足に至る背景

政府は、極めて重大かつ広範囲に影響を及ぼした今回の原子力事故の原因及び事故による被害の原因を究明するための調査・検証を、国民の目線に立って開かれた中立的な立場から多角的に行い、被害の拡大防止及び同種事故の再発防止等に関する政策提言を行わせることを目的として、2011年5月24日の閣議決定により内閣官房に「東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会」(政府事故調)を設置しました。同委員会は、従来の原子力行政から独立した立場で、技術的な問題のみならず制度的な問題も含めた包括的な検討を行うことを任務として調査・検証を行いました。

委員会名簿

委員会名簿

2.委員会の構成

委員会は、畑村洋太郎委員長(東京大学名誉教授、工学院大学教授)以下、内閣総理大臣により指名された10人のメンバーで構成されました。更に専門的、技術的事項について助言を得るため、委員長の指名により2名の技術顧問が置かれました。また、調査・検証を補佐する事務局には、事務局長以下の各府省庁出身者のほか、社会技術論、原子炉過酷事故解析、避難行動等の分野の専門家8名を配置し、専門家をチーム長として、三つの調査・検証チーム(社会システム等検証チーム、事故原因等調査チーム、被害拡大防止対策等検証チーム)が設置されました。

3.調査・検証の経過

同委員会は、2011年6月7日に開催された第1回委員会において基本的方向を定め、調査・検証に着手しました。主として事務局を通じて、東京電力、原子力安全・保安院、原子力安全委員会をはじめとする関係事業者、関係機関から資料の提出を受けてこれを分析するとともに、これらの役職員、構成員や事故発生当時の閣僚、更に学識経験者等を含め幅広く関係者のヒアリングが行われました。ヒアリングを行った関係者は総数772名、総聴取時間は概算で1,479時間に上りました。
 作業の進捗は毎月1回開催される委員会において報告・確認され、2011年12月26日に開催された第6回委員会において中間報告がとりまとめられました。この中間報告では、今回の事故に対する国内外の関心の高さや、関係機関における事故の教訓を踏まえた取組の進行状況を考慮し、それまでに明らかになった事実関係をできる限り詳細に記述するとともに、事故発生後の政府諸機関の対応の問題点、事前の津波・シビアアクシデント対策の問題点等について可能な範囲で考察を加え、緊急事態応急対策拠点施設(オフサイトセンター)の機能維持、モニタリングの運用改善、緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)の活用、住民避難への備え、原子力安全規制機関の在り方といった事柄について提言が行われました。
 また、2012年2月24日、25日に開催された第8回委員会では、調査・検証の内容を国際的な関心に応えるものにするため、海外5カ国(米、仏、スウェーデン、韓、中)から国際的に著名な原子力、放射線等の専門家を招へいして意見交換が行われました。
 このほか、委員会は、主に地震・津波対策について検討するため、事故現場である福島第一、第二発電所に加え、日本原子力発電東海第二発電所、東北電力女川原子力発電所、同社原町火力発電所、中部電力浜岡原子力発電所及び東京電力刈羽原子力発電所を視察しました。更に、今回の原子力災害で被災した自治体のうち、福島県大熊町、双葉町、浪江町、南相馬市及び飯館村の各首長並びに浪江町から避難している住民からの意見聴取を行い、仮設住宅の視察を行いました。 2012年7月23日に開催された第13回委員会において最終報告19がとりまとめられ、同日、畑村委員長から野田内閣総理大臣に手交されました。この最終報告では、中間報告の段階では調査が未了で取り上げることができなかった事項や、中間報告で取り上げましたものの、その後更なる調査・検証が行われた事項等が盛り込まれました。
 最終報告では、福島第一原子力発電所の1号機から3号機の主要な施設・設備の被害状況について、事態の進展に伴う損傷の拡大状況に関する分析も含めてめて詳述するとともに、同原発1号機、3号機及び4号機の原子炉建屋の水素ガス爆発等に関する検討が行われました。更に、中間報告の段階では調査・検証が未了であった同原子力発電所5号機及び6号機における事故対処、同原発の外部電源復旧状況や、福島第二原子力発電所における事故対処の状況、原子力災害発生後の国等の組織的対応状況、主として発電所外でなされた被害拡大防止のための対処としての環境放射線モニタリング、SPEEDI の活用の在り方(SPEEDI により単位量放出を仮定した予測結果は得られており、仮にその情報が提供されていれば、各地方自治体及び住民は、より適切に避難のタイミングや避難の方向を選択できた可能性があったと言える事等)、住民の避難等、日本海溝沿いの地震・津波に関する科学的知見、シビアアクシデント対策の在り方、原子力災害対応体制の検討経緯、国際法・国際基準関係について記述されました。
 また、これらの主要な問題点に分析を加えた上、「抜本的かつ実効性ある事故防止対策の構築」「複合災害という視点の欠如」「『被害者の視点からの欠陥分析』の重要性」等、重要な論点9項目の総括を行い、あわせて、原子力災害の再発防止及び被害軽減のための同委員会の提言を七つのカテゴリーに分類して掲載しました(最終報告概要版を参考資料として第一部第4章第5節の後に記載)。

 <提言>
 (1)安全対策・防災対策の基本的視点に関するもの
  ・複合災害を視野に入れた対策に関する提言
  ・リスク認識の転換を求める提言
  ・「被害者の視点からの欠陥分析」に関する提言
  ・ 防災計画に新しい知見を取り入れることに関する提言
 (2)原子力発電の安全対策に関するもの
   ・事故防止策の構築に関する提言
  ・総合的リスク評価の必要性に関する提言
  ・シビアアクシデント対策に関する提言
 (3)原子力災害に対応する態勢に関するもの
  ・原災時の危機管理態勢の再構築に関する提言
  ・原子力災害対策本部の在り方に関する提言
  ・オフサイトセンターに関する提言
  ・原災対応における県の役割に関する提言
 (4)被害の防止・軽減策に関するもの
  ・広報とリスクコミュニケーションに関する提言
  ・モニタリングの運用改善に関する提言
  ・SPEEDI システムに関する提言
  ・住民避難の在り方に関する提言
  ・安定ヨウ素剤の服用に関する提言
  ・緊急被ばく医療機関に関する提言
  ・放射線に関する国民の理解に関する提言
  ・ 諸外国との情報共有や諸外国からの支援受入れに関する提言
 (5)国際的調和に関するもの
  ・IAEA 基準等との国際的調和に関する提言
 (6)関係機関の在り方に関するもの
  ・原子力安全規制機関の在り方に関する提言
  ・東京電力の在り方に関する提言
  ・安全文化の再構築に関する提言
 (7)継続的な原因解明・被害調査に関するもの
  ・事故原因の解明継続に関する提言
  ・ 被害の全容を明らかにする調査の実施に関する提言