第5節 省エネルギー法改正に向けて

1.背景

エネルギーの使用の合理化に関する法律(以下、省エネ法)は、「熱管理法」を全面改正する形で1979年に成立しました。
 1998年の改正で導入されたトップランナー制度は、エネルギー消費機器の製造・輸入事業者に対し、3~10年程度先に設定される目標年度において高い水準(トップランナー基準)を満たすことを求め、目標年度になると報告を求めてその達成状況を確認する制度です。制度導入当初、対象機器は乗用自動車、エアコン、蛍光灯等9品目でしたが、最近ではルーター等も対象に追加され、現在までに23品目に拡大し、世帯当たり電気消費量に占める割合の6割をカバーしています。2012年にはヒートポンプやLED 照明といった、近年急速に普及が見られた機器についてもトップランナー制度の対象に追加する等、引き続き、対象機器の拡大や目標値の強化を実施しています。
 2008年には10度目の改正を行い、①これまでの工場・事業場単位から事業者単位の規制に変更②事業者の省エネルギー状況を比較できる指標(ベンチマーク指標)を定め中長期的に達成すべき水準を目標として設定するセクター別ベンチマークを導入③事業者が自主的に行う共同省エネルギー事業について、国はその取組を促進するよう、法律の施行にあたり適切な配慮をすることとしたこと等、大きく三つの点が変更されました。
 このような改正を経て、省エネ法の規制対象事業者は、改正前の7,500事業者から約1万2,000事業者に増加しました。我が国は、GDP が約2倍となった過去30年間でエネルギー効率を約37%改善してきましたが、その中で省エネ法は、重要な役割を果たしてきたと言えます。

2.省エネ法改正に向けた動きと省エネ部会における検討

石油危機に端を発したエネルギー危機を乗り越えるために、省エネ法は、化石燃料の使用量の低減と経済成長を両立することを目指し、需要サイドの努力によってこれを克服してきました。
 そして、東日本大震災及び東京電力福島第一原子力発電所事故以降、エネルギーの需給問題に対する関心が高まり、エネルギー政策の前提となる状況自体も大きく変わりました。従来、省エネルギーの議論の中心は、化石燃料の使用量を全体としてどう減らすかということであり、そのこと自体は、オイルショック以来の流れの中で大きな意義がありました。
 震災以降のエネルギー需給の問題に鑑みますと、エネルギー全体としての使用量の抑制だけではなく、電力需要のピークにどう対応していくかの議論が必要であり、現行省エネ法に含まれていない「ピーク対策」への対応は非常に重要な政策課題となりました。
 また、我が国の最終エネルギー消費は、二度のオイルショック後や近年の不況時を除き、ほぼ一貫して増加しています。部門別のエネルギー消費量は、オイルショック以降、産業部門が約0.9倍のところ、民生部門は約2.5倍、運輸部門は約1.9倍と大幅に増加しています(第125-2-1)。従来から十分な努力により省エネルギーを進めてきた産業部門における更なる省エネルギー対策に加え、エネルギー消費量の増加が著しい民生(業務・家庭)部門において、一層の省エネルギーを進める必要があります(第125-2-2)。
 民生部門対策としては、トップランナー制度による自動車や家電等機器の省エネルギー性能の向上や、住宅・建築物の省エネルギー基準の策定等を行ってきました。今後は、日常生活の中でエネルギーをいかに少なくしつつ快適な生活を送るか、つまり我慢ではなく持続可能な省エネルギーを進めていく必要があり、住宅・建築物全体の省エネルギー性能の底上げについて検討が必要となります。
 総合資源エネルギー調査会省エネルギー部会では、これらの背景を踏まえ、今後の省エネルギー政策の展開について検討を行い、2012年2月に「中間取りまとめ」を取りまとめました。この「中間取りまとめ」を踏まえ、政府は電力ピーク対策及び民生部門の省エネルギー対策を盛り込んだ省エネ法の改正案を、2012年3月13日に第180回通常国会に提出いたしました。

【第125-2-1】最終エネルギー消費量の推移(1973年~2010年)

【第125-2-1】最終エネルギー消費量の推移(1973年~2010年)

【第125-2-2】民生分野におけるエネルギー消費の現状(2010年度)

【第125-2-2】民生分野におけるエネルギー消費の現状(2010年度)

3.省エネ法改正案について

我が国経済の発展のためには、エネルギー需給の早期安定化が不可欠であり、供給体制の強化に万全を期し、その上で、需要サイドにおいては、持続可能な省エネルギーを進めていくという観点から、主に以下の2点の改正を実施します。
 まず1点目は、需要家が、従来の省エネルギー対策に加え、蓄電池やエネルギー管理システム(BEMS・HEMS)、自家発電、蓄熱式の空調、ガス空調等の活用等により、電力需要ピーク時の系統電力の使用を低減する取組を行った場合に、これを評価できる体系にする点です。具体的には、ピーク時間帯に工夫して、系統電力の使用を減らす取組(節電)をした場合に、これ以外の時間帯で系統電力の使用を減らした場合よりも、改善の度合いを大きく評価することで、省エネ法の努力目標(原単位の改善率年平均1%)を達成しやすくなるよう、努力目標の算出方法を見直します。
 2点目は、これまでエネルギーを消費する機械器具を対象としていたトップランナー制度に、それ自体はエネルギーを消費しないものの、他の建築物や機器等のエネルギーの消費効率の向上に資する機械器具等を新たな対象として追加し、住宅、建築物分野の省エネルギー対策を強化する点です。これまでのトップランナー制度は、法律上、エネルギーを消費する機械器具が対象であり、他の建築物や機器等のエネルギーの消費効率向上に資する機械器具等は対象とされていませんでした。新たにトップランナー制度に追加する機械器具等としては、具体的には、窓、断熱材、水回り設備等の建築材料等を想定しており、企業の技術革新を促すことで、住宅・建築物の省エネルギー性能の底上げを図っていきます。