第2節 原子力発電所再起動

1.原子力施設の安全性・安心を高める取組

(1)緊急安全対策等の実施

原子力安全・保安院は、今般の事故と同程度の地震と津波により全交流電源喪失・最終ヒートシンクの喪失に至ったとしても、炉心損傷等深刻な事態を回避し、冷温停止状態に移行するための対策として、2011年3月30日、事業者に対して緊急安全対策を指示しました。
 短期対策としては、電源車や代替注水のためのポンプの配備、東京電力福島第一原子力発電所を襲ったものと同程度の津波を想定した建屋への浸水対策、手順書の整備等に加え、中長期対策として設備の本格的な水密化や防潮堤等の防護措置の実施を要求しました。その後、これらの実施状況について事業者から報告を受け、2011年5月、評価・確認を実施しました。なお、防潮堤の設置等の中長期対策の実施状況については、引き続き厳格に確認を行っていく予定です。
 また、2011年4月15日には、外部電源の信頼性の向上を図るため、複数ルート回線の確保、開閉所の耐震性確保等を指示し、更に、同年6月7日には、万一シビアアクシデントが発生した場合でも迅速に対応するため、事故時の通信・管理機能確保、放射線防護体制の強化を指示しました。これらの指示に基づく実施状況についても、現場確認を実施する等、評価・確認を行っています。

(2)東京電力福島第一原子力発電所事故の知見

事故の原因等の調査については、原子力安全と原子力防災を中心に事故の評価や得られた教訓を取りまとめ、2011年6月、9月の2回、IAEA に対して日本政府としての報告を提出しました。
 また、2011年5月から6月にかけて各国の専門家及びIAEAの専門家で構成された調査団を受け入れ、事実関係の調査を行い、その時点における教訓等を国際社会と共有しました。
 更に、事故から得られる技術的な知見を可能な限り抽出するため、原子力安全・保安院は、2011年10月から「東京電力株式会社福島第一原子力発電所事故の技術的知見に関する意見聴取会」を外部の専門家の参加を得て全面公開の下、8回開催し、パブリックコメントを経た上で2012年3月に報告書をとりまとめました。その中で、今回の事故では津波による被水によって所内電源設備や冷却設備が機能を喪失したことを受け、今後の規制に反映すべきと考えられる事項として、所内電源設備や冷却設備の位置的分散、浸水対策、事故時の最終ヒートシンクの強化等の必要性を提示した「30の対策」をとりまとめました。
 「東京電力株式会社福島第一原子力発電所事故の技術的知見に関する意見聴取会」に加え、東京電力福島第一原発等で観測された地震・津波等の影響については、原子力安全・保安院は2011年9月から、専門家の参加を得て「地震・津波に関する意見聴取会」、「建築物・構造に関する意見聴取会」をそれぞれ11回、8回開催し2012年2月に中間とりまとめを行いました。また、東京電力福島第一原発事故における経年劣化の影響について検証するため、専門家の参加を得て「高経年化技術評価に関する意見聴取会」を6回開催し、2012年2月に取りまとめを行いました。これらの検討結果については、それぞれ原子力安全委員会に報告するとともに、「30の対策」に反映させています。

2.大飯発電所3・4号機の再起動

(1)原子力発電所に関する四大臣会合

2012年3月に、大飯発電所3、4号機について、原子力安全・保安院による審査結果及び原子力安全委員会による見解がとりまとめられたことを受けて、内閣総理大臣、内閣官房長官、経済産業大臣、内閣府特命担当大臣(原子力担当)からなる「原子力発電所に関する四大臣会合」を同年4月3日から6回にわたり開催しました。
 まず、東京電力福島第一原子力発電所事故の発生以降、緊急安全対策等の安全対策の実施、政府事故調や原子力安全・保安院の意見聴取会等の専門家による事故検証や知見の蓄積、ストレステスト一次評価による安全性評価等、1年間の対策や知見の積み重ねを踏まえ、分かりやすい形に整理したものとして、四大臣会合で「原子力発電所の再起動にあたっての安全性に関する判断基準」を取りまとめました。大飯発電所3、4号機は、東京電力福島第一原子力発電所を襲ったような地震・津波が来襲しても燃料損傷には至らないこと、更なる安全性・信頼性向上のための着実な実施計画が明らかになっていること等を確認したことから、「原子力発電所の再起動にあたっての安全性に関する判断基準」に適合し、安全性が十分に確保されていることを確認しました。
 併せて、再起動の必要性を検証しました。その結果、関西地域ではこれまでの供給力積み増しの努力を勘案してもなお電力不足となる可能性があること、原子力発電所の停止がもたらすコスト増により国民負担が増加し、その影響は小売店や中小企業、家庭に広く及ぶこと、エネルギー安全保障の確保等の点から、大飯発電所3、4号機の再起動には、必要性があることを確認しました。
 以上のように、大飯3、4号機の再起動には、安全性と必要性があることを判断し、四大臣として、この判断について国民の皆様に対して責任を持って説明し、理解が得られるよう努めていくこと、何よりも、立地自治体の理解が得られるよう全力を挙げていくこと、そして、こうした一定の理解が得られた場合には、最終的に再起動の是非について決断することを同年4月13日に確認しました。

(2)立地自治体等への説明

2012年4月13日の四大臣会合を受けて、同月14日に枝野経済産業大臣が福井県を訪問し、西川福井県知事、時岡おおい町長等と会談を行いました。また、おおい町からの要望を踏まえ、同月26日に開催されたおおい町住民説明会において、柳澤経済産業副大臣が政府の判断について説明を行いました。
 政府の再起動の安全性判断等について説明の要望があった関西広域連合、京都府、滋賀県等の周辺自治体に対しても、関係閣僚等が説明を行いました。これらの説明結果を踏まえ、同年5月30日の四大臣会合において、関係自治体の一定の理解が得られつつあると判断し、これまで40年間にわたって、原子力発電所の安全確保に直接向き合い、電力の安定供給に貢献してきた立地自治体である福井県、おおい町の判断が得られれば、政府として最終的な再起動判断をすることを決定しました。
 これを受けて、同年6月4日には細野内閣府特命担当大臣(原子力担当)、齋藤内閣官房副長官、牧野経済産業副大臣が福井県を訪問し、西川福井県知事、時岡おおい町長と会談し、周辺自治体への説明状況等について説明を行いました。同月8日には野田内閣総理大臣が記者会見を行い、「国民の生活を守るために、大飯発電所3、4号機を再起動すべきだというのが私の判断」との考えを国民に対し説明しました。
 これらの国からの説明等を踏まえて、福井県、おおい町でも検討が行われ、同月14日に時岡おおい町長が西川福井県知事に対して、再起動に関する政府判断について了承する旨を伝え、同月16日には西川福井県知事が野田内閣総理大臣等の関係閣僚と会談し、政府の再起動判断について了承する旨が伝えられました。

【第122-2-1】これまでの安全性確保に向けた取り組み

【第122-2-1】これまでの安全性確保に向けた取り組み

(3)大飯発電所3・4号機の再起動

これを受けて、原子力発電所に関する四大臣会合を同日に開催し、四大臣として、大飯発電所3、4号機を再起動することを政府の最終的な判断としました。
 四大臣会合では、新たな規制機関の発足までの間、地元の皆様の安全・安心のため、特別な監視体制を速やかに立ち上げ、起動作業にあたっても、安全に遺漏なきよう万全を期していくこと、政府として、原子力に関する安全性を確保し、それを更に高めていく努力をどこまでも不断に追求していくこと等を確認しました。
 同日の政府の最終判断を受けて、関西電力は大飯3、4号機の再起動準備を行い、3号機は同年7月1日に再起動され、同月5日に調整運転を開始し、4号機は同年7月18日に再起動され、同月21日に調整運転を開始しました。