1.1.2 都市ガス │ 資源エネルギー庁

第2節 都市ガス

本節では、東日本大震災による都市ガス等の被害状況、対応及び明らかになった課題について述べることとします。

1.都市ガス事業等の被災

(1) ガス関連設備の被害

都市ガス事業等においては、震災による津波や液状化等によりガスの製造設備や供給設備(導管等)が破損しました(第112-1-1)。供給設備の被害は過去の震災においてもありましたが、今回の東日本大震災では、津波により一部の製造設備が機能停止にまで陥りました。特に、沿岸部にあった仙台市ガス局のLNG基地(LNGタンカーから受け入れたLNGを貯蔵・気化させて都市ガスとして供給する施設)は津波で被災し、主要な電気設備が冠水するとともに、護岸の一部が流される等の甚大な被害が生じました。大規模な需要をまかなうLNG基地が長期にわたり機能停止に追い込まれることになったのは初めてのことです。

【第112-1-1】都市ガス事業者の被災状況

【第112-1-1】都市ガス事業者の被災状況

(2) ガス供給の停止

東日本大震災による被害によって、8県16事業者で都市ガスの供給停止が生じ、復旧対象戸数は約40万戸に及びました(第112-1-2)。特に、仙台市ガス局のLNG基地の被災により、仙台市ガス局の供給区域では、約31万戸への復旧作業が必要となりました。

また、簡易ガス事業では、7県の団地で供給停止が生じ、復旧対象戸数は約1万8千戸に及びました。

【第112-1-2】震災による都市ガス供給への影響

【第112-1-2】震災による都市ガス供給への影響

2.復旧の取組

(1) 全国の事業者からの復旧応援

震災の被害によるガス供給停止が面的にも戸数的にも非常に大きかったこともあり、震災当日に、一般ガス事業者の全国組織である、一般社団法人日本ガス協会が現地救援対策本部を立ち上げ、同協会のイニシアティブにより、全国58のガス事業者で復旧隊を組織し、延べ約10万人で被災地の復旧作業を支援した結果、5月3日に家屋流出等地域を除き復旧が完了しました(第112-2-1)。特に、最大の復旧対象戸数を抱える仙台市ガス局の供給区域については、ガスの供給源が確保された3月23日以降集中的に作業に当たり、4月16日に復旧を完了しました。

【第112-2-1】全国から集まった復旧隊による作業

【第112-2-1】全国から集まった復旧隊による作業

(2) 新潟からの広域天然ガスパイプライン供給

津波被害により、復旧に1年近い期間を要することが見込まれていた仙台市ガス局のLNG基地に代わり、新潟からの広域天然ガスパイプラインを用いた代替供給(第112-2-2)により、仙台市ガス局管内、塩釜ガス株式会社管内の供給再開作業が可能となりました。結果として、大震災から1ヶ月強で復旧を完了させることができました。

【第112-2-2】新潟─仙台間の広域天然ガスパイプライン

【第112-2-2】新潟─仙台間の広域天然ガスパイプライン

(3) 移動式ガス発生設備等

全国のガス事業者から一般社団法人日本ガス協会を介して取り寄せた、移動式ガス発生設備83台により、病院、福祉施設、避難所等の社会的優先度の高い施設等に対して臨時供給を行いました(第112-2-3)。

【第112-2-3】LNGローリー車と移動式ガス発生設備等を活用した臨時供給

【第112-2-3】LNGローリー車と移動式ガス発生設備等を活用した臨時供給

また、簡易ガス事業においては、LPガスボンベによる各戸へのガスの臨時供給等も行い、順次復旧作業を進め、4月22日に家屋流出等地域を除き復旧を完了しました。

(4) カセットコンロ等の提供

復旧が完了するまでの一般需要家向けの対応として、カセットコンロ約9,000台、ボンベ約3万本、車載式シャワー設備等を送付し9、地域住民の生活の質の維持に努めました(第112-2-4)。

【第112-2-4】避難所における車載型シャワーユニット

【第112-2-4】避難所における車載型シャワーユニット

3.明らかになった課題

今回の大震災において、我が国はLNG基地の機能停止を初めて経験しました。しかしながら、中圧管以上の基幹パイプラインや、耐震性等の向上に努めてきた低圧導管網の被害は少なかったこと、全国の都市ガス事業者による復旧応援態勢が構築されており機能したこと、また、新潟-仙台を結ぶ広域天然ガスパイプラインにより代替供給が受けられたこと等により、大震災から1ヶ月強で復旧を完了することができました。

一方、我が国の広域天然ガスパイプラインは、都市近傍での整備はある程度進展したものの、三大都市圏を含む主要大都市間やLNG基地間のエリアなどでは未整備の地区が残っています(第112-3-1)。

【第112-3-1】我が国の広域ガスパイプライン網の現状

【第112-3-1】我が国の広域ガスパイプライン網の現状

今回の震災によって、都市ガスの需要地毎にそれぞれ分断されている我が国では、仮に単独のLNG基地に供給を依存する地域において製造設備が被災し、機能停止に陥った場合、たとえ復旧応援があったとしても都市ガスの供給そのものが停止するため、長期間に渡りガス供給が途絶するリスクがあることが顕在化しました。

今回の仙台のケースでは、広域天然ガスパイプラインによる代替供給がなければ、1年程度供給が途絶えた可能性があります。

諸外国においては広域天然ガスパイプライン網の整備に向けて様々な取組が進められており、LNG基地や需要地等を繋ぐエネルギーネットワーク形成する先進事例が存在している中、我が国の現状は、災害時対応等におけるエネルギーセキュリティが必ずしも十分な体制ではないと言うことができます。

今後、震災がもたらしたエネルギー制約を解決するうえで、化石燃料の中でも最もクリーンなエネルギーである天然ガスは、大きな注目を集めています。セキュリティ、環境、料金低減、経済波及効果等の様々な側面から検証を行い、広域天然ガスパイプラインをはじめとした供給ネットワーク整備のための取組強化を検討することは、都市ガスの緊急時対応力の強化、我が国の安定的なエネルギー供給体制の構築の観点から、重要であると言えます。

9
一般社団法人日本ガス協会取りまとめ分の合計