第4節 国際的なエネルギーコストの比較

1.原油輸入価格の国際比較

国際石油市場は、大きく北米、欧州、アジアの三大市場に分けられます。そして、それぞれの市場において、価格の基準となる指標原油を持っています。即ち、北米市場における代表的な指標原油は、ニューヨーク商業取引所(New York Mercantile Exchange)等で取引されるWTI(West Texas Intermediate、及びそれとほぼ等質の軽質低硫黄原油)であり、欧州市場での指標原油はロンドン先物取引所(Intercontinental Exchange)等にて取引の行われているブレント原油となっています。また、アジア市場においては、ドバイ原油等が指標となっています。世界では数百種類にものぼる原油が生産されていますが、各国が産油国から原油を購入する際の価格は、例えばサウジアラビア等においては指標原油価格に一定の値を加減する形(市場連動方式)で決まるのが通例となっています。その際の加減、及びその値に関しては、指標原油との性状格差がベースになっています。各国における輸入原油価格は、輸入する原油の種類やその構成、運賃や保険等で異なってきます(第224-1-1)。

【第224-1-1】原油輸入価格の国際比較(2008年)

【第224-1-1】原油輸入価格の国際比較(2008年)

【第224-1-1】原油輸入価格の国際比較(2008年)(xls形式:31KB)

(出所)
OECD/IEA, Oil Information 2009をもとに作成

2.石油製品価格の国際比較

日本、アメリカ、英国、フランスの4カ国全ての国でデータ入手が可能なガソリン、自動車用軽油の製品小売価格(税込み、ドル建て価格、2009年12月時点)を比較すると、ガソリンの価格水準は高い順番でドイツ、フランス、英国、日本、アメリカとなり、自動車用軽油の価格水準は英国、ドイツ、フランス、日本、アメリカの順番となります。小売価格(税込み)では、ガソリンでは最高値のドイツ(1.95ドル/ℓ)と最安値のアメリカ(0.69ドル/ℓ)との間で、1.26ドル/ℓもの違いがありますがガソリン本体価格(税抜き)では、4カ国ともほとんど違いがありません(最大で16セント/ℓ)。また、自動車用軽油の小売価格(税込み)でも最高値の英国(1.58ドル/ℓ)と最安値のアメリカ(0.73ドル/ℓ)の間で0.85ドル/ℓの違いがありますが、自動車用軽油の本体価格(税抜き)ではガソリンと同様に差異の幅は最大で17セント/ℓと小さくなります。灯油の小売価格も本体価格(税抜き)で比べると国別に大きな差がありません。産業用重油価格は、日本の本体価格(税抜き)は英国と比べて高くなっていますが、逆に課税額が小さいために、両国の小売価格はほぼ同じ水準となっています。このように、各国のガソリン、軽油価格は、石油製品各々の価格はほとんど変わらないものの、各国の課税額に左右されるところが大きいことがわかります。ただし、今回はドル建てで比較しており、英国のポンドと欧州ユーロ通貨の対ドル相場がここ数年上昇しているため、ドル建てでは金額が大きく表示される傾向にあります(第224-2-1)。

【第224-2-1】石油製品価格の国際比較(固有単位)(2009年12月時点)

【第224-2-1】石油製品価格の国際比較(固有単位)(2009年12月時点)

【第224-2-1】石油製品価格の国際比較(固有単位)(2009年12月時点)(xls形式:264KB)

(注)
アメリカの灯油と産業用重油は統計上N.Aとなっている。
(出所)
IEAホームページ(http://www.iea.org)、End-Use Petroleum Product Prices and Average Crude Oil Import Costs

3.石炭製品価格の国際比較

石炭の輸出国におけるFOB価格と輸出国から輸入国までの輸送費の合計が、石炭の輸入価格(CIF価格)となります。燃料用の一般炭の場合、FOB価格が同じであれば、輸送距離の短い方がCIF価格は安価なものとなります。一般炭の価格は、2004年に入ると上昇を始めました。2007年6月には、オーストラリアのニューサウスウェールズ州を暴風雨が襲い、主に一般炭の輸出が滞った他、インドネシアでも雨季が長引くなどしたために一般炭の需給はタイトになり、2008年の価格を押し上げました。原料炭の価格も、需給状況を反映して上昇傾向にありました。2008年1月から2月にかけて原料炭の輸出地であるオーストラリアのクィーンズランド州を記録的な集中豪雨が襲い、炭鉱は冠水などのために生産や出荷が滞り、これを契機として2008年の原料炭価格は大きく上昇しました。CIF価格について石炭輸入の多い日本、韓国、ドイツ、英国を比較すると、東アジアの日本、韓国よりも欧州のドイツ、英国の方が、一般炭、原料炭ともに平均輸入価格が高くなっています(第224-3-1)。

【第224-3-1】石炭輸入価格の国際比較

【第224-3-1】石炭輸入価格の国際比較

【第224-3-1】石炭輸入価格の国際比較(xls形式:59KB)

(注)
各国の平均石炭輸入価格(CIF価格)
(出所)
OECD/IEA, Coal Information 2009をもとに作成

一般炭については日本、韓国が主にオーストラリア、インドネシアといった環太平洋の石炭輸出国から大型船による輸入を行っているのに対して、ドイツ、英国は鉄道輸送が主となるロシア等の他、南アフリカ、コロンビア等から輸入しています。石炭の輸送にかかる費用の差が日本、韓国とドイツ、英国の一般炭CIF価格の差に現れていると考えられます。日本と韓国を比較すると、韓国の方が若干、安価なようです。これは輸入する石炭の発熱量が韓国よりも日本の方が高く、したがってFOB価格が高いことによると推察されます。

一方、原料炭のCIF価格の上昇は各国とも一般炭よりも著しく、一般炭と原料炭の価格差は拡大しています。ただし一般炭とは異なり、日本、韓国とドイツ、英国の原料炭CIF価格の差はほとんどありません。日本と韓国を比較すると、日本の原料炭CIF価格の方が低い傾向にありますが、これは日本で輸入する原料炭が強粘結炭だけでなく、それよりも価格の安い非微粘結炭等の輸入比率が韓国よりも大きくなっていることによると推察されます。

4.LNG価格の国際比較

天然ガスの主要市場は石油と同じく北米、欧州、アジアですが、価格決定方式は地域ごとに異なっており、石油のように指標となるガスが存在しているわけではありません。アジアにおけるLNG輸入価格は、一般的にJCC(Japan Crude Cocktail)と呼称される日本向け原油の平均CIF価格に、大陸欧州でのパイプラインガスやLNG輸入価格は石油製品やブレント原油価格にリンクしています。ガス市場の自由化が進んでいるアメリカや英国では、Henry HubやNBP(National Balancing Point)といった国内の天然ガス取引地点での需給によって価格が決定されています。そのため、各国における輸入LNG価格は、原油や石油製品価格の動向、それぞれの市場でのガスの需給逼迫状況等によって異なってきます(第224-4-1)。

【第224-4-1】LNG輸入平均価格の国際比較(2008年平均)

【第224-4-1】LNG輸入平均価格の国際比較(2008年平均)

【第224-4-1】LNG輸入平均価格の国際比較(2008年平均)(xls形式:30KB)

(出所)
OECD/IEA, Energy Prices & Taxes 3rd Quarter 2009, Natural Gas Import Costをもとに作成

5.ガス料金の国際比較

我が国のガス事業については、事業の効率化によるガス料金の低減を目的の一つとした規制改革が推進されてきました。1995年に小売の部分自由化が実施され、1999年には自由化範囲の拡大が図られました。更に2003年には、ネットワーク部門の公平性や透明性の確保等の制度整備を図るとともに自由化範囲の拡大を行い、2007年にも段階的な自由化を進めることを内容とする制度改正を行いました。これらガス事業の制度改革と事業者の努力とがあいまって、これまでガス料金は下降する傾向にありました。

しかしながら近年、世界の天然ガス価格は原油価格高騰等の影響を受けて上昇する傾向にあり、LNG輸入価格が原油価格に連動する価格フォーミュラを採用している我が国においても、LNG価格の上昇に伴ってガス料金が値上がりしています。他方で、アメリカなどでは、非在来型天然ガスの生産拡大などにより、天然ガス価格が低下する傾向もみられており、今後さらに非在来型天然ガスの開発動向により世界の天然ガス価格に影響を与える可能性もあります。

ガス料金の原価は様々な要素で構成されており、またその比較には多様な方法があるため単純な対比は困難ですが、総じて内外価格差は縮小する傾向にあります(第224-5-1)。

【第224-5-1】ガス料金の国際比較(2008年)

【第224-5-1】ガス料金の国際比較(2008年)

【第224-5-1】ガス料金の国際比較(2008年)(xls形式:35KB)

(出所)
OECD/IEA, Energy Prices & Taxes 3rd Quarter 2009をもとに作成。日本のみ2007年。

6.電気料金の国際比較

電気料金を国際的に見た場合、様々な方法があるため単純な比較は困難ですが、IEAの資料をもとに、各国の産業用と家庭用の電気料金を比較した結果は、下表のとおりです。日本の電気料金は特に欧州諸国との対比では、家庭用・産業用ともに同等あるいは低水準となっています(第224-6-1)。

【第224-6-1】電気料金の国際比較(2008年)

【第224-6-1】電気料金の国際比較(2008年)

【第224-6-1】電気料金の国際比較(2008年)(xls形式:28.5KB)

(注)
1. 各国の1年間の使用形態を限定しない平均単価を計算したもの。
2. アメリカについては課税前の価格
(出所)
OECD/IEA, ENERGY PRICES & TAXES, 3rd Quarter 2009, pp.348-349をもとに作成。日本とドイツは2007年。

内外価格差は燃料・原料の調達方法や、消費量の多寡、国内の輸送インフラの普及状況、人口密度、あるいは為替レート等といった様々な要因によって生じるため、内外価格差のみを取り上げて論じるのは現実的ではありません。電力・ガス事業の効率的な運営と、電気・ガス料金の低下に向けた努力を怠ってはなりませんが、その際には我が国固有の事情、すなわち、燃料・原料の大部分を輸入に依存しておりその安定供給が不可欠なことや、国内の輸送インフラに整備の余地があること等、供給面での課題に配慮しておく必要があります。