第8節 国際協力

(1)国際協力の推進について

最近の原油価格の高騰は、中国等をはじめとする世界の石油需要の増加、80年代後半の低い原油価格を背景とした石油生産投資ペースの鈍化といった長期的要因と、産油国における供給リスクの顕在化、自然災害、欧米の厳しい寒波等といった短期的要因に、石油市場への投機資金の流入が加わり、これらの諸要因が複合的に作用した結果もたらされていると考えられており、世界経済へ与える影響が懸念されています。

さらに、アジア地域においては、石油が引き続き一次エネルギー供給の主要な役割を担うこと、世界の原油埋蔵量の約3分の2が中東に賦存していることを背景に、アジア地域における石油の輸入依存度は上昇し、同時に中東への依存度も高まることが懸念されています。他方で、地域の石油の備蓄等、緊急時への対応体制の整備は未だ十分ではなく、中東情勢の不安定化、エネルギー輸送における障害の発生といったエネルギー供給に関する問題が生じた場合、アジア諸国は大きな影響を受ける可能性があります。

こうした状況を踏まえれば、世界及びアジア地域と密接な経済関係にある我が国が安定した経済活動を営むため、欧米の先進国や中東諸国、ロシア等のエネルギー産出国との協力関係を強化すると同時に、アジア域内においてエネルギーセキュリティの重要性の認識を共有し、上流・下流への投資促進、エネルギー源の多様化、省エネルギーの推進、石油備蓄の推進、等の諸課題について、各国と連携して取り組むことが必要になります。このためには、グローバルレベル、地域レベル、二国間における対話の場を多層的に活用することが有効であり、国際協力の下で対策を推進していきます。

(2)最近の取組

〔1〕グローバルレベルでの協力

(ア)IEA(International Energy Agency:国際エネルギー機関)

・設立経緯

1974年11月、第一次石油危機を契機として、アメリカの提唱により石油消費国間の協力組織として設立されました。IEP※14(国際エネルギープログラム)協定に基づく石油の90日備蓄義務及び緊急時対応をはじめとするエネルギー問題解決のための国際協力を推進しています。近時は地球環境問題、規制制度改革や非加盟国活動にも積極的に活動しています。2005年3月時点での加盟国は、豪、オーストリア、ベルギー、加、チェコ、デンマーク、フィンランド、仏、独、ギリシャ、ハンガリー、アイルランド、伊、日本、ルクセンブルグ、蘭、ニュージーランド、ノルウェー、ポルトガル、韓国、スペイン、スウェーデン、スイス、トルコ、英、米の計26カ国です。

※14:IEP・・・エネルギー問題への対応策として、以下のような内容を規定している。

a)緊急時石油融通システムの確立

平時における石油の90日備蓄義務、緊急時の需要抑制措置計画の策定、石油の融通措置

b)包括的な情報制度の確立

国際石油市場等に関する情報収集と活用

c)石油会社との協議の恒久的枠組みの確立

石油産業の諸問題についての石油会社との協議

d)エネルギーに関する長期協力計画の策定及び推進

省エネルギーの推進、代替エネルギー源の開発・導入、各種エネルギーに関する研究開発

e)生産国、発展途上国等との協力関係の促進

・最近の取組

2004年10月21日にパリで開催されたIEA理事会において、我が国より、近時の原油価格高騰を踏まえ、短期及び中長期的な課題にIEA加盟国が一致して取り組んでいくべきと主張するとともに、その姿勢を対外的に広く示していくべき旨を提案しました。多くの加盟国が我が国提案を支持し、IEAとしてのプレス・ガイドライン※15を理事会で合意したことを受け、マンデルIEA事務局長が記者会見においてのメッセージを発表しました。

※15:<プレス・ガイドラインのポイント>

・現在の原油価格の高騰は、中国を中心とする高い需要、ハリケーンや地政学的原因によるもの。

・万一の供給途絶の事態にはIEA加盟国の戦略備蓄や需要抑制による対応が可能である。

・関係者は以下のさらなる努力が必要

消費者による省エネルギー努力

産油国による適時適切な供給

IEA非加盟国との対話の深化

政府による省エネルギー政策の推進

石油産業による上流開発、精製設備等への投資促進、在庫の確保

統計データの透明性向上

持続可能エネルギーの技術開発の促進

(イ)IEF(International Energy Forum:国際エネルギーフォーラム、産消対話)

(i)開催経緯

イラクのクウェート侵攻及び湾岸戦争を通じて、産油国と石油消費国の対話と協調の重要性が高まったこと等を背景に、1991年7月、フランスとベネズエラの提唱により第1回産消対話を開催。以降、1~2年に1回開催され、これまでに計9回開催されています。

(ii)最近の取組

2004年5月、アムステルダムにおいて第9回国際エネルギーフォーラムが開催され、エネルギー生産国と消費国の閣僚レベルでのエネルギー政策に係る情報・意見交換を通じ両者の関係強化が促進されました。具体的な成果としては、以下の3点が挙げられます。

・原油価格

現在の世界のエネルギー情勢について議論し、現在の高い油価の水準に関する懸念を表明しました。リーズナブルな水準での安定した油価は世界的な経済回復に貢献するとして、産油国と消費国の双方が持続可能な価格水準を達成するために行動することを求めました。また、産油国による生産の増大が歓迎されました。

・投資

今後30年間に石油と天然ガスの十分な供給を確保するため、6兆米ドルの投資が必要であり、そのためには、安定していて透明な経済的、財政的、法的フレームワークが整備される必要があるとされました。二国間、多国間の投資に関する協定はこれらの投資のための条件の明確化と安定化の助けとなることが示されました。

・透明性

原油生産や在庫に関する透明性は、エネルギー市場の安定性、ひいては民間の金融関係者が投資の意思決定をする上で重要であるとし、市場透明化のための統計データ報告活動の強化(石油データ共同イニシアティブの推進)に引き続き取り組むことを確認しました。

石油データ共同イニシアティブについて
"Joint Oil Data Initiative: JODI"

1.背景

・近年の国際石油市場は、国際情勢、余剰原油生産能力の低下、投機筋の石油市場への参加等さまざまな要因により不安定化し、大幅な価格変動性(ボラティリティ)をもたらしている。また、原油価格動向が産油国・消費国双方の経済基盤に直接影響を与えることから、価格変動性に産油国・消費国共に危機感を募らせている。

・このような背景の下、第7回国際エネルギーフォーラム(2000年11月 於:サウジアラビア)において、原油価格の変動性を低減させるため、石油市場の透明性確保が産油国及び消費国双方にとって重要であることが閣僚間で確認された。

・第7回国際エネルギーフォーラムを受け、2001年7月より、エネルギー関連の6つの国際機関(APEC、EU、IEA/OECD、OLADE(中南米エネルギー機関)、OPEC及びUN)が協調し、各メンバー国にタイムリーな石油データの提出を呼びかけ、国際的な石油データ整備を試験的にエクササイズ(「石油データ共同エクササイズ:Joint Oil Data Exercise :JODE」)として推進。

第8回国際エネルギーフォーラム(2002年9月 於:大阪)において、本取組の重要性が改めて再確認され、Joint Oil Data Initiative(JODI)として試験的なエクササイズから恒久的なデータレポートシステムとすることで合意された。

2.活動の経過状況

・現在、日本を含む世界93ヶ国が本エクササイズに参加しており、これら参加国を合算すると、既に世界の石油生産量の90%以上を占めていることから、本イニシアティブが果たす役割は今後益々重要性を増していく。

(参考:JODE提出データの内容)

  データ収集期間:1か月前及び2か月前

対象品目:原油及び石油製品

対象内容:生産量、需要量及び在庫量

  我が国は、APEC及びIEAに所属しているため両機関に提出。

主催国・共催国サマリー
第9回国際エネルギーフォーラム
2004年5月22日~24日

第9回国際エネルギーフォーラム(IEF)が5月22日から24日までオランダ・アムステルダムで開催された。フォーラムの全体テーマは「エネルギー分野への投資、将来への選択」だった。今回のIEFの主要な結果は以下のとおり。

1.フォーラムは、現在の世界のエネルギー情勢について議論し、現在の高い油価の水準に関する懸念を表明した。これは、予期せぬ力強い需要、上流・下流のタイトな能力、そして地政学的な不安定性の複雑な相互連関によって説明することができる。リーズナブルな水準での安定した油価は世界的な経済回復、特に発展途上国の経済回復に貢献するだろう。

2.フォーラムは、供給と需要の双方の見通しに関心があることを認識した。石油及びガスの供給安定性が危機にあるわけではない。異なる立場の相互理解のもとで実際の対話が行われた。その結果、多くの関心事が共有されている。この観点から、環境問題が言及された。この価格の問題に関して、生産国と消費国の双方が持続可能な価格水準を達成するために行動を起こさなければならない。予期される生産の増大が歓迎された。

3.フォーラムは、長期のオプションを特に注視し投資が必要とされることを強調した。来る30年間に石油とガスの十分な供給を確保するため、6兆米ドルの投資が、新たな能力と既存の能力の置き換えに必要となる。

4.十分な海外直接投資やその他の財源を誘引するために、安定していて透明な経済的、財政的、法的フレームワークが整備される必要がある。二国間、多国間の投資に関する協定はこれらの投資のための条件の明確化と安定化を助ける手立てである。

5.原油生産や在庫に関する透明性と共に、法的、政治的な文脈での透明性は、民間の金融関係者にとって、エネルギー市場の安定性、ひいては投資の意思決定をする上で重要である。

6.IEFは、フォーラムの新たな常設の事務局、すなわち現在サウジアラビアのリヤドで活動しているIEF事務局と共に、上記の点について努力を続けるだろう。将来的に、IEF事務局は、継続的に生産国と消費国の議論を刺激することにより、対話促進の原動力となるだろう。

7.フォーラムは、第10回国際エネルギーフォーラムの開催国としてカタールを、共催国として中国、イタリアの立候補を喜びをもって受け入れた。したがって次回のIEFはカタールで行われる。フォーラムは、また2008年の第11回国際エネルギーフォーラムの開催国をイタリアと決定した。

〔2〕地域レベルでの協力

(ア)APEC(Asia-Pacific Economic Cooperation:アジア太平洋経済協力)におけるエネルギーに関する取組

・これまでの経緯

1989年11月にキャンベラで開催された第1回APEC閣僚会合において、エネルギー問題に対する域内協力の重要性と、これを専門に議論する場を設定することに合意しました。これを受けて、1990年にEWG(Energy Working Group:エネルギー・ワーキング・グループ)が設立されました。1996年には、よりハイレベルなエネルギー政策対話を行うため、シドニーにおいて第1回エネルギー大臣会合を開催しました。これまでに計6回の大臣会合が開催されています。

・最近の取組

2000年5月にサン・ディエゴで開催された第4回エネルギー大臣会合において、APEC地域におけるエネルギー安全保障の重要性が指摘され、これを受けてEWGはESI(エネルギー・セキュリティ・イニシアティブ)を策定しました(第138-2-1)。メンバー・エコノミーは、〔1〕月次石油データ収集、〔2〕シーレーン・セキュリティ、〔3〕リアルタイム緊急時情報共有、〔4〕石油供給緊急時対応、〔5〕石油以外の代替エネルギー及び長期的対応、等の活動に取り組んで来たところです。我が国は、2004年11月に豪州ケアンズで開催されたEWG会合に、APEC地域のエネルギー安全保障を一層向上させることを目的として、包括的なエネルギー対策を提案しました。その結果、我が国提案を基礎とした新たな提言としてCAIRNS(ケアンズ・イニシアティブ)がとりまとめられ、11月にチリ・サンチャゴで開催された閣僚会合で承認されるとともに、首脳会合でも議論されました(第138-2-2)。

【第138-2-1】ESI(エネルギー・セキュリティ・イニシアティブ)の概要

【第138-2-1】ESI(エネルギー・セキュリティ・イニシアティブ)の概要

【第138-2-1】ESI(エネルギー・セキュリティ・イニシアティブ)の概要(xls形式:21KB)

【第138-2-2】CAIRNS(ケアンズ・イニシアティブ)の概要

【第138-2-2】CAIRNS(ケアンズ・イニシアティブ)の概要

【第138-2-2】CAIRNS(ケアンズ・イニシアティブ)の概要(xls形式:23KB)

(イ)ASEAN+3におけるエネルギーに関する取組

・これまでの経緯

2002年9月22日、第8回国際エネルギーフォーラム開催に併せ、大阪にて日中韓アセアンエネルギー大臣会合を開催しました。アジア域内のエネルギー安全保障を強化すべく、我が国より、5分野(石油備蓄推進、緊急時ネットワーク、アジアの石油市場に関するスタディ、天然ガス開発促進、省エネ新エネ促進)から成る「日中韓アセアン・エネルギー協力」を提案、各国別に及び/又は共同して取り組むべき基本的方向性として共通認識が図られました。そして、2003年8月、これらの協力を具体化すべく5つの分野別フォーラム(エネルギーセキュリティ、石油備蓄、石油市場、天然ガス、再生可能エネルギー)が設置され、議論が開始されました。

・最近の取組

2004年6月にマニラで第1回ASEAN+3エネルギー大臣会合が開催され、これまでの協力分野(エネルギーセキュリティ、石油備蓄、石油市場、天然ガス、再生可能エネルギー)に関し、更に協力を強化し、「アジアエネルギーパートナーシップ」を構築していくことが合意されました。また、同会合では中川経済産業大臣から石油備蓄の導入強化に向けたフィージビリティスタディへの協力を行う意思があることを表明し、参加国から歓迎されました。これを受けて、既にタイ及びフィリピンにおける石油備蓄のフィージビリティスタディに関する協力を開始しています(第138-2-3)。

【第138-2-3】アジア地域の石油備蓄状況

【第138-2-3】アジア地域の石油備蓄状況

【第138-2-3】アジア地域の石油備蓄状況(xls形式:23KB)

さらに、アジアエネルギーパートナーシップの構築が大臣間で合意されたことを踏まえて、2004年10月、資源エネルギー庁に「エネルギー産業のアジア展開に関する研究会」が設置されました。本研究会では、我が国が有する優れた技術・ノウハウが市場を通じてASEANを含めたアジア諸国等で活用されれば、省エネルギー・環境対策等としても大きな効果が期待できるとの観点から、省エネルギー、環境対策、及び新エネルギーの推進等に資するエネルギー関連産業の国際的な事業展開のあり方について検討を行っています。

(ウ)アジア石油天然ガス産消国ラウンドテーブル会合における取組

(i)開催経緯

2004年5月にアムステルダムで開催された第9回国際エネルギーフォーラム(IEF)において、中川経済産業大臣がアジア地域のエネルギー協力及びアジアと中東の対話の強化を提案したことを受け、2005年1月6日にインド政府が第1回アジア石油天然ガス産消国ラウンドテーブル会合を開催しました。

(ii)最近の取組

第1回会合には、日本、中国、韓国等の消費国及びサウジアラビア、イラン、クウェート等の産油国、計12カ国のエネルギー関係閣僚等が出席し、相互依存関係深化、投資拡大等を図ることの重要性などの意見表明がありました。我が国からは中川経済産業大臣が出席し、アジア地域全体のエネルギー安全保障の確保のため、新たにSAFEシステム(Sustainable And Flexible Energy System)を提唱し、消費国側の取り組みとして、新エネルギー、省エネルギー・環境対策、石油備蓄制度の導入強化、生産国側の取り組みとして、需要に見合った十分なエネルギー供給や上流投資の拡大、さらに産消共通の取り組みとして省エネルギー・環境をはじめとする技術協力、人材交流を通じた経済的な紐帯の深化やアジアにおける石油市場の発展の重要性を指摘しました。

会合の結果、SAFEシステムがエネルギー安全保障の観点から有効な枠組みとなるとの認識が共有されるとともに、備蓄、新エネルギー・省エネルギー対策などに関して相互に協力して取り組むことの重要性について合意されました。特に安定供給については、産油国・消費国の相互の投資が原油価格の安定化につながることなど投資の重要性が指摘されました。

〔3〕二国間協力

(ア)日露エネルギー協議

1997年11月、ロシアのクラスノヤルスクにおいて、橋本総理とエリツィン大統領(いずれも当時)との間で二国間協議の設置に合意、これまでに計2回開催されました。天然資源の開発や輸送、省エネルギー、エネルギー効率の向上等の分野について協力を検討しました。

(イ)日イランエネルギー協議

2000年よりこれまでに計4回開催しました。両国のエネルギー政策について情報交換を行うとともに、国際石油市場及び日本への石油の安定供給について協力関係を確認しました。

(ウ)日中エネルギー協議

1996年よりこれまでに計7回開催しました。電力の安定供給、石油備蓄の推進、アジアプレミアムの解消、省エネルギー・新エネルギー、天然ガス利用の促進等の分野について協力を検討しました。

(エ)日韓エネルギー協議

1986年よりこれまでに計12回開催しました。石油備蓄政策、アジアプレミアムの解消、石油・ガス市場の拡大、エネルギー市場の規制緩和等の分野について意見・情報を交換しました。

(オ)日豪エネルギー協議

1985年より毎年開催(1995年までは年2回開催)しています。石炭、LNG鉱物資源等のエネルギー需給情勢、エネルギー政策動向について情報を交換、2003年には日豪エネルギー協力に関するフレームワークに署名し、引き続き情報交換を行っていくことに合意しました。

(カ)日ASEANエネルギー協議

2000年より年1回開催しています。我が国及びASEAN各国のエネルギー政策動向について情報交換を行うとともに、省エネルギー、エネルギーデータの整備等について二国間の協力を検討しました。