第4節 エネルギー供給源の多角化等

1.石油供給源の多角化と自主開発の推進

我が国は、主要先進国と比べてエネルギーの石油依存度が高く、また石油のほぼ全量を輸入に依存しています。特に、中東地域への依存度が高いことから、原油の安定的な供給を行うためには、供給源の多角化を図るとともに、自らが探鉱等を行う権利を有する自主開発原油を確保することが重要です(第134-1-1)。

【第134-1-1】石油依存度、輸入依存度、中東依存度の各国比較(2001年)

【第134-1-1】石油依存度、輸入依存度、中東依存度の各国比較(2001年)

【第134-1-1】石油依存度、輸入依存度、中東依存度の各国比較(2001年)(xls形式:19KB)

しかしながら、安定的な供給源である自主開発原油の確保について、我が国はメジャーを有しかつ産油国である米・英のみならず、非産油国である他の先進国に比べても大きく立ち後れた状況にあります。このため、我が国としては、かつて、当時の石油公団によるリスクマネー供給等を通じて、21世紀初頭には日量120万バレルの自主開発原油を確保するとの目標を設定し、石油の自主開発に取り組んできたところですが、欧米エネルギー関連企業が天然ガス中心の収益構造に転換しつつある等天然ガス事業の占める比率が高まること、数値目標を掲げた場合に事業の効率性よりも量的確保に対する配慮が優先されるとの誤解が生じる恐れがあること等から、当該目標は2000年に撤廃しています。

石油開発事業は、莫大な資金と長いリードタイムを要するとともに、探鉱による油田発見の可能性、原油価格及び為替レートの変動、さらには産油国の政治経済情勢の変化等のリスクが極めて高いことから、探鉱開発を継続的に行うためには、石油開発会社に十分な資金力、技術力、探鉱開発の知見が必要です。

<メジャーの石油供給量と我が国の自主開発原油持ち込み量(2004年)>

エクソンモービル      257万  バレル/日

英蘭ロイヤルダッチシェル  225万    〃

シェブロン・テキサコ    171万    〃

BP              253万    〃

日本             42万    〃

                     (2003年度)

我が国は、世界の全石油輸入量の約12%を輸入しており、アメリカに次ぐ世界第二位の石油輸入国です。また、石油消費量についても、我が国消費量は世界の消費量の約7%相当、アメリカ、中国に次ぐ世界第三位の石油消費国です。

油田は、採掘によりいずれは枯渇するものであり、石油の供給は新しい油田を不断に探鉱・開発することによって維持されるものです。世界第二位の石油輸入、世界第三位の消費国である我が国としては、単に石油を産油国から輸入し、消費するのみではなく、他の先進国と同様に、積極的に世界の石油探鉱・開発活動に参加して、世界における石油供給量を増加させることが重要です。

さらに、産油国において石油開発事業を行うことは、相手国における雇用機会の創出やインフラ整備、相手国に対する探鉱・開発技術の移転等を通じて、相手国の経済社会の発展に貢献するものです。相手国との人的交流も活発化し、両国の関係強化が図られ、緊急時の原油調達等における交渉力が強化されるという効果も期待されます。

我が国は、総合的な資源戦略の展開を通じて石油の安定供給確保を図ることが重要だととらえています。2003年10月に策定されたエネルギー基本計画に示されているように、供給源の分散化、中東域内での調達先の多角化、直接投資等幅広い協力を通じた主要産油国との関係深化も含めた取組を着実に進めることにより、総合的な資源戦略を推進していくこととしています。

具体的には、我が国がこのような戦略を主体的に実行するため、石油の自主開発の体制を強化することが急務です。国際競争に耐えうる資産規模・内容を有し、優れた上流権益の獲得及び効率的な開発・生産・操業を可能にする経営力・技術力を併せ持つ中核的な開発企業の形成を推進しつつ、健全な開発企業の育成に努めることが重要であり、〔1〕かかる開発企業による自立的な事業の展開等、〔2〕政府による積極的な資源外交、〔3〕独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(後述)による戦略的な支援が三位一体となって機能することが総合的な資源戦略の展開を図る上で必要です。その際、戦略的に重要なプロジェクトについて、資源外交と併せ、公的金融を含めた政府の支援の重点化を図るとの視点も重要です。

【主要なプロジェクト】

○アザデガン油田

アザデガン油田は、イラン南西部に位置し、原油埋蔵量260億バレル、可採埋蔵量50~70億バレルと言われる世界有数の巨大油田です(1980年以降の新規発見油田ではカザフスタンのカシャガン油田に次いで世界第二位の埋蔵量を有しています)。

2000年11月のハタミ大統領訪日の際に、平沼経済産業大臣(当時)と、ザンギャネ石油大臣との間でアザデガン油田開発に関する合意がなされて、日本側企業とイラン側との交渉が開始され、2004年2月に、アザデガン油田開発契約の署名に至りました。本油田開発は我が国にとって、より一層の原油の安定供給の確保に繋がるとともに、主要産油国であるイランとの友好関係の促進等にも資することが期待されます。

○カシャガン油田の開発

カザフスタン共和国アティラウ沖のカスピ海域に発見されたカシャガン油田は、可採埋蔵量が130億バレルあると言われる巨大油田です。エニ(伊)がオペレーターであり、エクソンモービル、ロイヤルダッチシェル、トタール等が参加し、日本からはインペックス北カスピ海石油(株)が1/12の権益を保有して参加しています。2000年に石油・天然ガスが発見され、2002年に商業発見宣言が行われました。2004年に商業生産に向けた開発計画が策定され、2008年には原油生産開始が予定されています。

○サハリンプロジェクト

サハリンは大規模な石油・天然ガスの埋蔵量が確認されており、我が国に地理的に極めて近いことから、供給源の多角化に資する重要なプロジェクトです。サハリンには6つの開発鉱区が設定されており、そのうち、I、IIの開発鉱区において我が国企業が参画する形で石油・天然ガス開発が進められています。

[サハリンIプロジェクト]

サハリンIプロジェクトは、アメリカ、ロシア、インド、日本の参加企業による国際共同開発事業であり、エクソン・モービルがオペレーターとなっています。我が国からはサハリン石油ガス開発(株)が30%の権益を保有して参加しています。会社発表によれば、推定可採埋蔵量は、チャイウオ、オドプト、アルクトン・ダギの3構造合計で、原油約23億バレル、天然ガス約17兆立法フィートとなっています。2001年12月に商業化宣言が行われ、20年間に亘る開発期間の段階にあります。原油についてはチャイウオ構造から2005年末生産開始を予定しており、天然ガスについては約200万トン(LNG換算)をロシア本土に供給することが決定していますが、その他は需要家と交渉中です。(第134-1-2)。

【第134-1-2】サハリンプロジェクト

【第134-1-2】サハリンプロジェクト

[サハリンIIプロジェクト]

サハリンIIプロジェクトは、ロイヤルダッチシェルと日本企業との合弁であるサハリン・エナジー・インベストメント社が事業主体となっており、我が国からは三井物産(株)が25%、三菱商事が20%の資本参加をしています。会社発表によれば、推定可採埋蔵量はピルトン・アストフスコエ、ルンスコエの2つの構造で原油約11億バレル、天然ガス約17兆立法フィートとなっています。第一フェーズの開発において、すでに1999年7月より夏期のみ原油生産を開始しており、現在は年間約1170万バレルの生産となっています。2006年には原油の通年生産を目指しています。また、天然ガスについては、LNG(液化天然ガス)で輸送する計画であり、2007年のLNG出荷開始を目指す第二フェーズの開発も2003年5月に開始しています。LNGの引き取りについては、日本を中心として、韓国、北米等をマーケット対象とし、東京電力、東京ガス等と長期引き取りに関する合意に達しています。

○太平洋パイプラインプロジェクト

アンガルスクと太平洋岸のナホトカ港を結ぶ新たなパイプラインを建設し、シベリア原油をアジア太平洋市場に供給する計画が、トランスネフチ社(ロシアの国営石油パイプライン会社)により検討されていたところ、ロシア側からの要請を受け、日露のエネルギー分野の具体的協力案件として日露間で調整が進められてきたところです。

数次の首脳会談を通じて、本プロジェクトの戦略的・地政学的優位性とともに、本件日露の協力の可能性を追求していく旨が確認され、具体的な協力のあり方について検討する日露専門家会合等が設置されました。2003年12月のカシヤノフ首相訪日時にも、本プロジェクトの協力の重要性が謳われるとともに、これまでの専門家会合の進捗を評価し、引き続き精力的協議を行うことが合意され、共同声明が発出されました。その後も日露間の様々なレベルでの調整が進められてきました。

昨年2月、トランスネフチ社は、アンガルスクではなくタイシェット(アンガルスクに至る既設パイプラインのターミナルの1つ)を起点とし、バイカル湖の北方152kmを通過してナホトカに至る新ルート(4,188km:トランスネフチ社公表ベース)についても提案を行い、ルート沿線の地方政府の了解を取得しました。トランスネフチ社による事業化調査(F/S)を受けて国家環境審査が終了し、昨年12月31日、タイシェット~ペレヴォズナヤ(太平洋岸)までの石油パイプラインプロジェクトに関する政府決定がなされました。本プロジェクトの詳細については今後決定されることとされておりますが、本プロジェクトが実現することになれば、日本のみならず、開かれたアジア・太平洋市場へのロシア石油の供給が可能となり、我が国の原油中東依存度が大幅に引き下げられることが期待されます。また、ロシア側にとっても、本プロジェクトの実現により、東シベリアの開発に大きく資する他、ロシア原油を、自国のみを通過する直接的アクセスルートによってアジア・太平洋市場に広く供給すること等が可能となります。このように本プロジェクト実現は、日ロ双方にとって戦略的・地政学的意義が大きいものと考えられます(第134-1-3)。

○カスピ海ACG油田開発プロジェクト/BTCパイプラインプロジェクト

アゼルバイジャン領カスピ海バクー市沖合に位置する海底油田である、アゼリ・チラグ・グナシリに3つの油田を開発するACGプロジェクトは、推定可採埋蔵量が約54億バレルと言われる大型開発プロジェクトです。事業者は英BPをオペレーターとし、エクソンモービル、ユノカル等が参加するとともに、我が国からは伊藤忠石油開発(株)が約4%、国際石油開発(株)がインペックス南西カスピ海(株)を通じて約10%の権益を保有してプロジェクトに参加しています。既に1997年11月に原油生産を開始しており、生産量は13万バレル/日となっています。2008年には100万バレル/日まで生産量を増加させる見通しとなっています。

なお、カスピ海は内陸部に位置しているため、生産された原油はパイプライン等を通じて輸出する必要があり、ACGから生産される原油については、2005年に完成予定のアゼルバイジャンのバクー、グルジアのトビリシ、トルコのジェイハンを結ぶBTCパイプラインで地中海に輸送される予定です。

【第134-1-3】太平洋パイプライン地図

【第134-1-3】太平洋パイプライン地図

2.石油公団改革と独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構の設立

原油価格の低下、円高の進行等の中で採算のとれない事業や当初の見通しどおりの埋蔵量が確認できないプロジェクトも数多く発生しました。こうした点についての反省も踏まえ、石油公団は廃止され、石油開発を担う中核的な民間企業の育成を図ることとされ、新たに設立される独立行政法人に支援業務を引き継ぐ等の石油公団改革が行われることとなりました。

(1)「石油公団法及び金属鉱業事業団法の廃止等に関する法律」及び「独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構法」の成立

石油公団の改革については、2001年12月19日に閣議決定された「特殊法人等整理合理化計画」において、以下のようにすることが決定されました。

〔1〕石油公団は廃止し、石油開発のためのリスクマネー供給機能(リスクマネーは出資に限定し、支援割合は5割以下とする。)、研究開発機能、国家備蓄統合管理等の機能については、金属鉱業事業団に統合する。

〔2〕現在石油公団が保有する開発関連資産は、厳正に資産評価を行い、整理すべきものは整理し、売却すべきものは売却する等、適正な処理を行う。

〔3〕なお、資産処分等清算のための組織を期限付きで設置(3年程度)して処理に当たらせ、その終結を待って特殊会社を設置し民営化を行う。

〔4〕国家備蓄は国の直轄事業として行う。現行の国家石油備蓄会社(8社)を廃止し、基地操業に係る具体的業務は純民間企業に委託する。

この「特殊法人等整理合理化計画」を踏まえて、「石油公団法及び金属鉱業事業団法の廃止等に関する法律」及び「独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構法」が成立し2002年7月26日に公布されました。

(2)石油公団が保有する開発関連資産の処理に関する方針

「石油公団法及び金属鉱業事業団法の廃止等に関する法律」の成立等を受けて、石油公団の保有する開発関連資産については、厳正に資産評価を行い、整理すべきものは整理し、売却すべきものは売却する等、適正な処理を行うことと決定されました。

石油公団資産の処理は石油公団が出融資を行った個々の企業に係る資産の取扱いを決定するものであることから、その処理方針を策定するに当たり、総合資源エネルギー調査会の下に、利害関係者を除く中立的な者により構成される「石油公団資産評価・整理検討小委員会」が設置され、客観性及び透明性を高めた形で審議され、「石油公団が保有する開発関連資産の処理に関する方針」が2003年3月に取りまとめられました。ポイントは、以下の4点です。

〔1〕資産の処理に当たっては、「エネルギーの安定供給の効率的な実現(エネルギーセキュリティの確保)」と「売却資産価値の最大化」という二つの課題を同時に追求すべき。

〔2〕石油公団の資産を、まとめて特殊会社に承継するのではなく、必要な資産を選択した上で、統合・連携を図り、民間企業として自立的な発展ができる企業体(中核的企業)を形成する方が、より強固な石油・天然ガス開発体制の構築が可能。

〔3〕中核的企業について、外資等からの買収等に備えるため、商法に規定する「種類株」を活用し、政府が最低限必要な拒否権を留保できる仕組みを構築すべき。

〔4〕石油公団の解散までに売却が終了しない資産等は、国又はそれに準ずる主体が継承すべき。

この方針に従い、石油公団は2005年4月1日の解散までに石油資源開発(株)株式を上場の上売り出し、国際石油開発(株)をジャパン石油開発(株)等と統合し、同社株式を上場の上売り出し、その他資産について入札等を通じ合計25社売却するなど、開発関連資産の処理を進めてきました。

(3)独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構の設立

以上のような経緯を経て、2004年2月29日に独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下、「JOGMEC」という)が発足しました。

JOGMECの使命は、天然資源の中でも特に供給基盤が脆弱な石油、LPガス、天然ガス及び非鉄金属鉱物資源の安定的な供給を確保するために必要な業務を遂行し、我が国経済の発展を支えることにあります。また、金属鉱業等に起因する鉱害の防止についても、確実かつ永続的に対応しなければならないため、これに必要な業務を遂行し、国民の健康の保護及び生活環境の保全に寄与することもJOGMECの使命となっています。

(4)石油公団の解散

石油公団法及び金属鉱業事業団法の廃止等に関する法律に基づき、石油公団は2005年4月1日に解散しました。

石油公団の解散時における権利及び義務について、まず、「石油公団が保有する石油・天然ガスの探鉱開発事業に係る出資のうち、追加出資が必要となる事業に係るもの並びにそれに付随する権利及び義務」及び「石油公団が保証している石油・天然ガスの探鉱開発事業に係る債務であって、石油公団廃止後も保証期間が継続するものに係る債務保証並びにそれに附随する権利及び義務」については、エネルギー政策上の観点から、中期目標による経済産業大臣の指示により、JOGMECが国のエネルギー政策を実施する公的機関として包括的に承継し、引き続き当該資産等に係る業務を行うこととなりました。また、石油公団解散時点で石油公団が保有するその他の資産(出資等)については、全て国が承継しました。それぞれの承継先においても、「エネルギーの安定供給の効率的な実現」と「売却資産価値の最大化」という二つの課題を同時に追求しながら、引き続き資産処理が進められていくことになります。

3.主要産油国との関係強化

近年の産油国においては、資源国有化政策の見直しの動きの中で、再び外国資本への鉱区開放を始める国が増加する動きがあり、石油依存度が高い我が国が今後も長期安定的に一定量の石油を確保することに資することから、産油国との関係強化を図っています。

具体的には、産油国との相互依存関係の強化は、我が国企業の産油国・産ガス国における石油天然ガスプロジェクトへの参加の機会の拡大等、我が国の石油の安定供給に資するものです。さらに、産油国においては、石油収入に依存した経済構造から脱皮し、「経済活動の多様化」を成就させることが大きな課題となっており、産油国のニーズを踏まえた協力策の実施が必要です。このため、石油天然ガス分野のみならず、幅広い分野において、共同研究開発、人的交流事業、直接投資促進事業等を積極的に推進しています。