第3節 エネルギー源の多様化

1.石油ショックを契機としたエネルギー源の多様化の動き

1979年の第二次石油ショックの発生は、石油代替エネルギーの導入の促進に、エネルギー政策のより大きな重点が置かれる契機ともなりました。この施策の重点のシフトは、原油価格が大幅に高騰したため、石油代替エネルギー、新エネルギーの導入が急がれるとともにこれらエネルギーに大きな経済性が生まれたことも一因となっています。

このような状況を背景に、石油代替エネルギーへの転換と新エネルギー開発を加速させるため、1980年に「石油代替エネルギーの開発及び導入の促進に関する法律」(いわゆる「代エネ法」)が制定されました。これに基づき政府は、同年「石油代替エネルギーの供給目標」を閣議決定しました。また、大型の石油代替エネルギー技術開発を総合的に推進するために、1980年10月に新エネルギー総合開発機構(NEDO)の設立等を行いました。

これらの施策の結果もあり、1973年には、77%であった石油依存度は、2001年度には49.4%まで下がっており、エネルギー源の多様化が進んだことが分かります。特に、エネルギー源の多様化は、発電分野で著しく、発電電力量で見ると、1973年には、71.4%であった石油火力の割合は、2003年度には、わずか9.5%まで低下し、その代わりに、原子力や天然ガスの割合が大幅に増加しています(第133-1-1)。しかしながら、運輸部門においては、未だにガソリン等石油系燃料がその9割を占めており、運輸部門におけるエネルギー源の多様化があまり進まなかったことが分かります。

【第133-1-1】発電電力量の推移(一般電気事業用)

【第133-1-1】発電電力量の推移(一般電気事業用)

【第133-1-1】発電電力量の推移(一般電気事業用)(xls形式:KB)

我が国としては、今後とも、一つのエネルギー源に依存することなく、供給途絶リスクの小さいエネルギーを中心に、エネルギー源の多様化を図っていくことが必要です。特に、その一環として、エネルギー自給率向上の観点を踏まえ、準国産エネルギーである原子力やその多くが国産エネルギーである新エネルギー等の開発、導入及び利用を着実に推進していく必要があります。

なお、特に発電の場合は、瞬時瞬時に需要が変化するため、その需要に対応するため、各発電方式の技術的特性(出力の変更能力)、経済性をも考慮したエネルギーのベストミックスが必要です。需要のピーク時は、需要の変動が激しく、かつ、1日の数時間であることから、「ピーク供給力」としては、数分で出力を大幅に変更できる揚水式又は調整式水力発電、燃料費の高い石油火力発電が用いられます。1日又は年間を通じて常に必要とされる需要のベース部分は、「ベース供給力」として、資本費は高いが、燃料費が安い原子力発電、比較的燃料費が安い石炭火力発電、燃料費が不要な流れ込み水力発電がその経済性を発揮します。

両者の中間的役割である「ミドル供給力」としては、LNG火力発電が適しています(第133-1-2)。

【第133-1-2】各電源の使われ方のイメージ(一般電気事業用)

【第133-1-2】各電源の使われ方のイメージ(一般電気事業用)

さらに、近年、天然ガス等によるコージェネレーションなどの分散型エネルギー供給システムが、登場しています。エネルギー供給面では、引き続き原子力を始めとする大規模集中型のエネルギー供給システムが重要な役割を果たすと考えられますが、今後、大規模集中型と分散型の適切な組合せによるエネルギー供給システムの最適化を志向することが重要です。

以下、原子力、新エネルギー等各エネルギーに関する国のこれまでの政策、最近の施策等を紹介します。

2.原子力

(1)エネルギー政策上の位置づけ

我が国における原子力政策は、2000年11月に原子力委員会決定された「原子力長期計画」や2003年10月に閣議決定された「エネルギー基本計画」などに基づき、進められています。「エネルギー基本計画」において、原子力発電については、〔1〕燃料のエネルギー密度が高く備蓄が容易であること、〔2〕燃料を一度装填すると一年程度は交換する必要がないこと、〔3〕ウラン資源は政情の安定した国々に分散していること、〔4〕使用済燃料を再処理することで資源燃料として再利用できることから、国際情勢の変化による影響を受けることが少なく供給安定性に優れており、また、発電過程で二酸化炭素を排出することがなく地球温暖化対策に資するという特性を持っていることから、「安全確保を大前提として、今後とも基幹電源と位置付け引き続き推進する」としています。同時に、核燃料サイクルについては、原子力発電所から出る使用済燃料を再処理し、有用資源を回収して再び燃料として利用するものであり、供給安定性などに優れているという原子力発電の特性を一層改善することから、「我が国としては核燃料サイクル政策を推進することを国の基本的考え方」としています。また、核燃料サイクルの一環であるプルサーマルについては、「プルトニウムの確実な利用という点で、当面の中軸となるプルサーマルを、着実に推進していくものとする」としています。

なお、原子力の開発・利用を進めるに当たっては、安全の確保を大前提に原子力に対する国民の理解を得ることが肝要です。このため、積極的な情報の公開・提供に努めるとともに、情報の一方通行ではなく、国民の問題意識を理解する観点から、立地地域の住民を始め広く国民の声に耳を傾けることを重視した広聴・広報活動への取組を進めています。

(2)これまでの政策の変遷

我が国の原子力開発は、1954年の保守3党による原子力予算の計上で幕を開けました。当時、我が国の原子力の開発状況は先進国に比べ著しく立ち遅れていました。そこで、できる限り速やかに原子力開発利用を推進する必要が指摘され、1955年、自主・民主・公開の三原則に従いその利用を平和目的に限ることを謳った「原子力基本法」が制定されました。

原子力開発の行政機構としては、1956年に「原子力基本法」に基づき、国の施策を計画的に遂行し、原子力行政の民主的な運営を図るため原子力委員会が発足するとともに、総理府に原子力局が設置され、推進体制が整備されました。また、原子力委員会により、安全の確保、平和利用の堅持等の原子力に係る基本的考え方、我が国の原子力研究開発利用の基本方針や推進方策等を示した「原子力開発利用長期基本計画」が策定(以降約5年毎に改定)されました。以上のような経過を経て、我が国最初の原子力発電所(日本原子力発電(株)東海発電所)は1965年5月に臨界を記録し、翌1966年に営業運転を開始しました。

第一次石油ショックによる電力危機への不安が増大したことを背景として、1974年度当時、国は、いわゆる電源三法により、発電用施設周辺地域の整備や安全対策をはじめ、発電施設の設置円滑化のために必要な交付金や補助金を交付する制度を創設し、電源立地を促進するための基盤を整備しました。翌1975年には、原子力発電の安全性に関する調査・実証実験等の委託費及び、原子力発電施設の耐震信頼性実証実験や原子力広報研修施設整備費等の補助金が新設されました。

さらに、第二次石油ショックを経て、新エネルギーの開発・導入とともに原子力開発の推進が図られました。

また、それまでの電源地域の振興においては、立地により各種交付金は交付されるものの、発電所そのものと地域の振興とが有機的にリンクする具体策に乏しかったという状況を踏まえ、1992年6月の電気事業審議会需給部会・電力基本問題検討小委員会において、地域と発電所との共生(地域共生型発電所)を実現していくことに重点を置き、地域産業の振興及び生活環境の充実に、発電所の有する諸資源を積極的に活用していく各種諸施策の実施が提言されました(第133-2-1)。

【第133-2-1】原子力政策年表

【第133-2-1】原子力政策年表

【第133-2-1】原子力政策年表(xls形式:36KB)

このような施策の結果、現在、原子力発電は我が国の総発電電力量の約3分の1を占めるまでに至り、地球温暖化対策の観点からも重視され、基幹電源として位置付け、推進を図っています。

(3)最近の取組

〔1〕核燃料サイクルの推進

現在、我が国の原子力発電の主流となっている軽水炉は、ウラン燃料を使用して発電しています。その軽水炉で使用する前のウラン燃料には、核分裂を起こしやすいウラン(ウラン235)は数パーセント程度含まれているに過ぎず、残りの大部分は核分裂を起こしにくいウラン(ウラン238)で構成されています。このウラン燃料が原子力発電所で使用されると、燃料中のウラン238の一部が核分裂により発生した中性子を吸収し、プルトニウム239に変化します。プルトニウム239も核分裂を起こしやすい物質であり、燃料を使用した後にこのプルトニウムやウランを再処理して取り出し、再び原子力発電所で利用すればウラン資源の利用効率を高めることができます。また、ウラン238からプルトニウムへの転換効率に優れた高速増殖炉(FBR)を用いれば、ウラン資源の利用効率を、格段に高めることができ、実現すれば現在把握されている利用可能なウラン資源だけでも数百年間にわたって原子力エネルギーを利用し続けることが可能になると考えられています。このことはエネルギー資源に恵まれない我が国にとって大きな意義があるといえます。我が国は、ウラン燃料の原料となるウランの全量を海外から輸入しているのが現状ですが、国内に核燃料サイクルが確立することにより、供給安定性はより一層強化されることになります。

このため、我が国としては核燃料サイクル政策を推進することを国の基本的考え方としており、これらのプロセスの一つ一つに着実に取り組んでいくことが基本となります。その際、安全の確保と核不拡散が前提となることはいうまでもなく、さらに、原子力発電全体の経済性や国民の理解の確保が重要な要素であることから、これらを踏まえ的確に、核燃料サイクルを進めることとしています。なお、長期的観点からは、エネルギー情勢、ウラン需給動向、核不拡散政策、プルトニウム利用の見通し等を勘案して、その進め方は硬直的ではなく、柔軟性を持ちつつ着実に取り組むこととしています(第133-2-2)。

【第133-2-2】核燃料サイクルのイメージ

【第133-2-2】核燃料サイクルのイメージ

(ア)原子力委員会新計画策定会議における「核燃料サイクル政策についての中間取りまとめ」について

2004年6月、内閣府原子力委員会は、新たな原子力長期計画を2005年中に取りまとめることを目指し、「新計画策定会議」を設置しました。その中で、核燃料サイクル政策について、策定会議、小委員会あわせて18回、約45時間にわたり、全て公開の下、集中的に審議し、全量再処理、全量直接処分等の4つの基本シナリオを経済性、エネルギーセキュリティ等の10項目の視点から総合的に評価しました。その結果、2004年11月に「使用済燃料を再処理し回収されるプルトニウム、ウラン等を有効利用することを基本方針」とする中間取りまとめが行われました。

(イ)プルサーマル

プルサーマルとは、現在の原子力発電所(軽水炉)で、プルトニウムをウランと混合させた燃料にして利用することをいいます。すなわち、現在のウラン燃料に3~5%程度含まれている燃えやすいウラン(ウラン235)の代わりに、再処理によって分離・回収されたプルトニウムを4~9%程度使用した燃料を使うことにより、ウラン資源の利用効率を高めるものです(第133-2-3)。この燃料は、ウランの酸化物(二酸化ウラン)とプルトニウムの酸化物(二酸化プルトニウム)を混ぜて燃料を作ることから、混合酸化物燃料(MOX(モックス)燃料:Mixed Oxide Fuel)と呼ばれています。

【第133-2-3】プルサーマルの仕組み

【第133-2-3】プルサーマルの仕組み

核燃料サイクルの重要な前提である使用済燃料の再処理によって発生するプルトニウムの確実な利用という点で、当面の中軸となるプルサーマルを着実に推進していくものとしています。このため、電気事業者は、関係住民等の理解を得つつ、プルサーマルを計画的かつ着実に進めることが期待されています。これと併せて、国としても国民の理解を得る活動を前面に出て実施すること等により、プルサーマルの実現に向けて政府一体となって取り組むこととしています。

プルサーマルは、海外では1960年代から実施され、既に約4,500体のMOX燃料の使用実績があります。また、国内でも日本原子力発電(株)の敦賀発電所1号機(BWR)や関西電力(株)の美浜発電所1号機(PWR)で少数体のMOX燃料を使用した実績があり、燃料の健全性が確認されています。

我が国におけるプルサーマルは、1972年6月にまとめられた「原子力長期計画」の中でその実施が明記され、1994年6月の同計画では1990年代後半からプルサーマルを実施する計画が打ち出されています。その後、1995年12月に高速増殖原型炉「もんじゅ」のナトリウム漏れ事故が起こり、福井、福島、新潟の三県の知事から、原子力政策に対する国民的合意形成及び核燃料サイクルの全体像の明確化を求める提言がなされました。原子力委員会は、これに応える形で、1997年1月に当面の核燃料サイクルの具体的な施策について決定、さらに、同年2月「当面の核燃料サイクルの推進について」が閣議了解されました。

このような状況を踏まえ、1997年2月に電気事業連合会は、2010年までのプルサーマル実施についての全体の導入計画を取りまとめました。その後、2003年12月、電気事業連合会は、2010年度までに合計で16~18基のプルサーマルの導入を目指して取り組むことを再確認しました。

プルサーマル計画の最初となる関西電力(株)高浜発電所3、4号機と東京電力(株)福島第一原子力発電所3号機、柏崎刈羽原子力発電所3号機では、1999年度及び2000年度中の実施を目指して、地元の了解、経済産業省による安全審査も終了し、MOX燃料の装荷の準備を進めていました。

しかしながら、1999年9月、製造中の高浜発電所3号機用MOX燃料に、同年12月には高浜発電所4号機用MOX燃料について、当該燃料を製造したイギリス核燃料会社(BNFL)において、燃料ペレットの品質管理用検査データの一部に不正があったことが分かり、関西電力(株)は同社製のMOX燃料の使用を中止することとしました。

また、東京電力(株)福島第一原子力発電所及び柏崎刈羽原子力発電所におけるプルサーマルについても、地元の理解を得るための取組を進めていましたが、2002年に明らかとなった同社の原子力発電所における自主点検検査記録の不正記載問題等により、現在まで進展していません。

その後、関西電力(株)は品質保証体制を充実させ、2003年10月、再発防止に向けた品質保証活動の状況を経済産業省、福井県、高浜町等に報告し、2004年2月、それに対する評価を経済産業省より受けました。2004年3月、原子力安全委員会においても経済産業省の評価結果は妥当であると判断され、福井県、高浜町の了承を得られたことから、MOX燃料調達に関する基本契約を締結し、プルサーマル計画を進めていくこととしました。しかしながら、2004年8月、関西電力(株)美浜発電所3号機の「2次系配管破損事故」の発生を受けて、当面は安全確保対策の取組や県民の信頼回復を行っていくことが優先課題となっています。

九州電力(株)については、2004年4月、玄海原子力発電所3号機で2010年度までを目途にプルサーマルを実施する計画を発表し、2004年5月、国に原子炉設置変更許可申請書を提出、同日、佐賀県、玄海町に安全協定に基づく事前了解願いを提出しました。2005年2月には、原子力安全・保安院の一次審査が終了して原子力委員会及び原子力安全委員会の二次審査に付されました。

四国電力(株)については、2004年5月、愛媛県、伊方町に安全協定に基づく事前協議を申し入れを行い(国への原子炉設置変更許可申請の前提)、同年11月、地元の事前了解を得て原子炉規制法に基づく原子炉設置変更許可申請を国に提出しました。

(ウ)高速増殖炉の研究開発

高速増殖炉(FBR:Fast Breeder Reactor)は、発電しながら、消費した以上の燃料を生み出すこと(増殖)のできる原子炉です。現在の軽水炉等に比べてウラン資源の利用効率を飛躍的に高めることができることから、エネルギー資源に乏しい我が国では、高速増殖炉を将来の非化石エネルギー源の一つの有力な選択肢として、研究開発を進めることとしています。

我が国の高速増殖炉については、実験炉「常陽」(当初は熱出力5万kW)が茨城県大洗町で動力炉・核燃料開発事業団(当時:現核燃料サイクル開発機構)によって開発され、1977年に初臨界に達しました(第133-2-4)。2003年11月には、熱出力14万kWへの炉心高度化が完了し、高速中性子の照射施設として高速増殖炉の実用化に向けた研究開発に利用しています。

【第133-2-4】常陽

【第133-2-4】常陽

また、福井県敦賀市で核燃料サイクル開発機構が建設中の原型炉「もんじゅ」(電気出力28万kW)は、高速増殖炉サイクル技術のうち最も開発が進んでいるMOX燃料とナトリウム冷却を基本とする技術を用いた原子炉で、かつ発電設備を有するわが国唯一の高速増殖炉プラントであり、わが国における高速増殖炉サイクル技術の研究開発の場の中核として位置付けられているところです。「もんじゅ」は、1994年の初臨界を経て1995年8月29日には初送電を行いましたが、同年12月8日、2次系ナトリウム漏えい事故が発生し、原子炉を停止しました(第133-2-5)。その後核燃料サイクル開発機構は、事故に対する再発防止策等について所要の対策を取りまとめ、2004年1月に、運転再開のために必要な、安全性を一層高めるための改造工事について国の手続きが終了しました。2005年2月には、改造工事着手についての地元の了解が得られたことから、早期の運転再開を目指して改造工事を行うこととしています。

【第133-2-5】もんじゅ

【第133-2-5】もんじゅ

なお、「もんじゅ」については、原子炉設置許可無効確認請求訴訟の最高裁判決が2005年5月30日に予定されています。

また、核燃料サイクル開発機構は、電気事業者等の協力により高速増殖炉サイクル技術として適切な実用化像とそこに至るための研究開発計画を提示するため「実用化戦略調査研究」を推進し、安全性・経済性の向上や、環境への負荷の低減、核不拡散等に配慮した実用化候補を明らかにするための研究開発に取り組んでいます。2005年度にはフェーズIIの成果として研究開発の重点化の考え方(主として開発を進めていくべき炉及び再処理・燃料製造施設の概念と補完的に開発を進めていく選択肢を明らかにするなど)及びこれを踏まえた2015年頃までの研究開発計画とそれ以降の課題をまとめ、国の評価を受ける予定です。

(エ)放射性廃棄物の処理・処分

放射性廃棄物は、放射能レベルの高低、含まれる放射性物質の種類等が多種多様です。このため、この多様性を十分踏まえた適切な区分管理と、区分に応じた合理的な処理処分を行うこととしています(第133-2-6、第133-2-7)。

【第133-2-6】原子力発電所から発生する放射性廃棄物の区分

【第133-2-6】原子力発電所から発生する放射性廃棄物の区分

【第133-2-6】原子力発電所から発生する放射性廃棄物の区分(xls形式:21KB)

【第133-2-7】低レベル放射性廃棄物の発生フロー

【第133-2-7】低レベル放射性廃棄物の発生フロー

(i)低レベル放射性廃棄物

○原子力発電所から発生する放射性廃棄物

原子力発電所からは、その運転、解体に伴って様々な低レベル放射性廃棄物が発生します。これらは、含まれている放射性物質の濃度に応じて、放射能レベルの極めて低い廃棄物、放射能レベルの比較的低い廃棄物及び放射能レベルの比較的高い廃棄物の3つに区分され、それぞれ素堀り処分、コンクリートピット処分及び余裕深度処分という方法で処分することとしています。

○超ウラン(TRU)核種を含む放射性廃棄物

再処理施設やウラン-プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料の成型加工工場等から発生する放射性廃棄物は、原子力発電所から発生する放射性廃棄物と比較して含まれる放射性物質の濃度の範囲が広く、主に核分裂生成物や超ウラン核種を含んでいます。核燃料サイクル開発機構及び日本原子力研究所において、それぞれ約10万6千本及び約1万4千本の廃棄物(2004年3月末現在、200リットルドラム缶相当本数)が保有されていますが、2007年の完成に向けて準備が進められている日本原燃(株)の再処理施設でも発生しています。

これらの超ウラン核種を含む放射性廃棄物については、放射能レベルに応じて適切に区分し、コンクリートピット処分、余裕深度処分及び地層処分という方法で処分することとしています。

○ウラン廃棄物

ウラン濃縮施設、燃料成型加工施設等から発生する放射性廃棄物(ウラン廃棄物)は、実質的にウランのみを含んでいます。200リットルドラム缶で約14万本の放射性廃棄物が核燃料サイクル開発機構、ウラン加工事業者、日本原燃(株)、日本原子力研究所等に保管(2004年3月末現在)されています。

ウラン廃棄物の半減期は極めて長い(ウラン235:約7億年、ウラン238:約45億年)ものの、放射性物質(ウラン)の濃度は高くありません。ウラン廃棄物については、放射能レベルに応じて適切に区分し、素堀り処分、コンクリートピット処分及び余裕深度処分に加え、場合によっては、地層処分という方法で処分することとしています。

(ii)高レベル放射性廃棄物

高レベル放射性廃棄物とは、再処理施設で使用済燃料からウランやプルトニウムを分離・回収した後に残る、放射能レベルの高い廃液のことをいいます。

高レベル放射性廃棄物は、低レベル放射性廃棄物に比べてその発生量自体は少ないですが、長期間にわたって放射能を有する長半減期核種を比較的多く含むため、この放射能が生活環境に影響を及ぼさないよう長期間にわたって生活環境から隔離する必要があります。そのため、高レベル放射性廃棄物は、ガラスと混ぜて高温で溶かし、「キャニスター」と呼ばれるステンレス製の容器に注入したあと、冷やして固めます(「ガラス固化体」)(第133-2-8)。このガラス固化体は熱を発生するため、30~50年間程度一時貯蔵して冷却し、最終的に地下300mより深い安定した地層中に処分することとしています(第133-2-9)。

【第133-2-8】ガラス固化体

【第133-2-8】ガラス固化体

【第133-2-9】高レベル放射性廃棄物の発生から処分まで

【第133-2-9】高レベル放射性廃棄物の発生から処分まで

高レベル放射性廃棄物の処分については、これを計画的かつ確実に実施するため、2000年5月に「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」が成立しました。これにより、処分実施主体の設立、処分費用の確保、三段階の処分地選定プロセスが定められました。

同法に基づき、同年10月には民間の発意により設立された原子力発電環境整備機構(NUMO)を通商産業大臣(当時:現経済産業大臣)が認可し、高レベル放射性廃棄物の最終処分事業を実施することとなりました。NUMOは、高レベル放射性廃棄物の最終処分施設の設置可能性を調査する区域について、2002年12月に全国の市町村を対象に公募を開始しました。

2005年3月末現在、我が国では、茨城県東海村の核燃料サイクル開発機構の東海再処理施設にガラス固化体169本が貯蔵されています。また、青森県六ヶ所村の日本原燃(株)の高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センターでは、我が国の原子力発電所の使用済燃料をフランスのCOGEMA社に委託して再処理した後に発生する高レベル放射性廃棄物(ガラス固化体)が返還輸送され、貯蔵されています。2004年3月に第9回として輸送容器5基に収められたガラス固化体132本が、むつ小川原港を経て貯蔵管理センターに運び込まれ、これまでの受け入れ総量は892本となっています。なお、同施設については、2003年12月に1,440本分の増設が許可されました。

2020年頃までの原子力発電によって生じる使用済燃料をガラス固化体に換算した量は、約4万本とされ、これらのガラス固化体を処分するために必要な費用は、約3兆円と見積もられています。

高レベル放射性廃棄物の発生者である発電用原子炉設置者(電力会社等)は、NUMOに対し、毎年、前年の原子力発電量に見合うガラス固化体の処分費用(平年分)を納付することが義務付けられています(ガラス固化体1本当たりの単価は約3,500万円であり、単価は毎年見直されます。)。処分事業開始前(1999年度以前)の発電分に係る処分費用(過去分)については、2000年から2013年までの間、15回に分けて分納することとなっています。

(オ)使用済燃料の中間貯蔵

使用済燃料の中間貯蔵は、使用済燃料が再処理されるまでの間の時間的調整を図るための措置として、従来からの原子力発電所内での貯蔵に加え、原子力発電所外の施設において中間的に貯蔵するものです。原子力発電所の安定的な運転継続を可能にし、核燃料サイクル全体の運営の柔軟性を高めるものであり、現在、民間事業者が2010年までに操業を開始すべく、準備を進めているところです。これまで、東京電力(株)による青森県むつ市への立地の計画が具体化しており、同社は2004年2月に青森県及びむつ市に対し立地協力要請をしました。

〔2〕国民との相互理解を深めるための取組と立地地域との共生への取組

原子力政策を進めるに当たっては、安全確保を大前提として、原子力の意義・役割等について国民との相互理解を深めるとともに、立地地域との共生を図ることが重要です。

このため、2003年10月に閣議決定した「エネルギー基本計画」においては、国及び事業者は積極的な情報の公開・提供に努めること、情報の一方通行ではなく国民の問題意識を理解する観点から、立地地域の住民を始め広く国民の声に耳を傾けることを重視して広聴・広報活動の強化を図ること、学校教育の場においてエネルギー・原子力等の客観的知識の習得を図ること、原子力発電等と地域社会との共生を目指し、国、地方公共団体、事業者の三者が適切な役割分担を図りつつ、相互に連携、協力すること、電力供給地と電力消費地との認識の共有を図ること等としています。

これを受けて、国等においては、講演会・シンポジウム等の開催、インターネット等を活用した国民との双方向の対話、小中高等学校を対象とした副教材の作成やエネルギー体験学習会等の実施、原子力立地地域の振興、電力生産地と電力消費地との交流事業等を実施しています。

本年4月には、原子力委員会新計画策定会議において、今後の原子力発電のあり方に関する論点整理が行われ、2030年以後も「原子力発電に対して、発電電力量の30~40%程度という現在の水準程度か、それ以上の役割を期待することが適当である」とする基本的考え方や、その実現に向けた国、事業者、地方自治体の取組等が整理されました。

このうち、国民との相互理解、立地地域との共生に関する取組について、以下のとおり整理されています。

【国の取組】

・安全基準の制定、安全基準に基づく設置許可、工事計画の認可、使用前検査及び稼動後の定期検査、保安検査等の任務を誠実に実行するなど、安全規制活動の品質維持に向けての不断の取組

・こうした取組に関する地方自治体や地元住民をはじめとする国民に対する適切な情報提供、意見交換などの実施と、それによる情報の共有・相互理解の深化への不断の取組

・エネルギー安全保障や地球温暖化防止に果たす原子力発電の役割の重要性に関して、情報提供、意見交換などを含む国民との相互理解活動に対する不断の取組

【事業者の取組】

・電気事業者に対して、安全の確保と地元の信頼確保に向け、品質保証活動の強化、企業倫理遵守の強化、情報公開、透明性の確保を徹底し、原子力発電の安全かつ安定的な運転を行うことを期待

【地方自治体の取組】

・国などによる原子力施設の安全確保に向けた真摯な取組がなされることを前提にして地方自治体には、地元住民と国や電気事業者との相互理解が着実に進むよう協力を期待

・地方自治体が行う原子力発電に係る判断・評価などにおいては、国により適切に安全規制が行われ、地域社会や地方自治体に対して国のエネルギー政策や安全確保のための活動の内容の説明が十分に行われることを前提に、これらを効果的に活用するなど、国と密接な連携が図られることを期待

〔3〕電力小売自由化と原子力発電、核燃料サイクル推進との両立の在り方

電力小売自由化の進展に伴い、特に初期投資が大きく投資回収期間の長い原子力発電については、事業者が投資に対して慎重になることも懸念されます。特に、バックエンド事業については、事業期間が極めて長期に及ぶものもあること等から、その投資リスクが大きくなることが懸念されています。

このような事情の下で、原子力発電について引き続きその推進を図るためには、一定の所要の環境整備が必要となります。具体的には、原子力発電のような大規模発電と送電設備の一体的な形成・運用を図ることができるよう、発送電一貫の一般電気事業者制度を維持するとともに、広域的な電力流通の円滑化等により、効率的な電源の活用を図ります。また、原子力発電が強みを発揮し得る長期安定運転を確保するため、需要が落ち込んでいる時に優先的に原子力発電からの給電を認める優先給電指令制度※10や、長期的に送電容量を確保することを可能とする中立・公平・透明な送電線利用ルールの整備を図るとともに、「発電用施設周辺地域整備法」に基づく支援を原子力発電を始めとした長期固定電源に重点化したところです。

※10:電力系統全体の需要が著しく低下する時期に長期固定電源の出力抑制の必要が生じた場合に、一般電気事業者が特定規模電気事業者に対して、保有する火力電源の出力を絞り込む又は停止する要請を行い、長期固定電源の出力抑制を回避する制度。

さらに、バックエンド事業については、2003年2月の電気事業分科会報告※11において、バックエンド事業全般にわたるコスト構造、原子力発電全体の収益性等を分析・評価するための場を立ち上げ、その結果を踏まえ、官民の役割分担の在り方、既存の制度との整合性等を整理した上で、2004年末までに、経済的措置等の具体的な制度及び措置の在り方について検討を行い、必要な措置を講ずることとしており、これを踏まえ、電気事業分科会等において審議が重ねられ、2004年8月に中間報告※12が行われました。

※11:「今後の望ましい電気事業制度の骨格について」(2003年2月)

※12:「バックエンド事業に対する制度、措置の在り方について」(2004年8月)

バックエンド事業、即ち再処理等の事業については、極めて長い期間を要すること等から、その事業に要する費用を確実に確保していくことが必要です。そのため、再処理事業等を適正に実施していく観点から、「原子力発電における使用済燃料の再処理等のための積立金の積立て及び管理に関する法律案」を閣議決定し、国会に提出するとともに、2005年度の税制改正で、外部積立方式の「使用済燃料再処理準備金制度」への改組が行われました。

〔4〕原子力2法人統合

「特殊法人等整理合理化計画」(2001年12月閣議決定)において、日本原子力研究所及び核燃料サイクル開発機構を廃止し、新たに原子力研究開発を総合的に実施する独立行政法人を設置することが決定されました。2004年11月には、日本原子力研究所と核燃料サイクル開発機構を廃止した上で統合し、原子力に関する基礎的研究、応用の研究、核燃料サイクルを確立するための高速増殖炉、高レベル放射性廃棄物の処分等に関する技術の開発などを業務とする「独立行政法人日本原子力研究開発機構」を設立するための法律が成立し、2005年10月に同法人は設立される予定です。

3.新エネルギー

(1)エネルギー政策上の位置づけ

新エネルギーは、「新エネルギーの利用等の促進に関する特別措置法」(新エネルギー法)において、「新エネルギー利用等」として、

○石油代替エネルギーを製造、発生、利用すること等のうち

○経済性の面での制約から普及が進展しておらず、かつ、

○石油代替エネルギーの促進に特に寄与するもの

と規定されており、積極的にその導入促進を図るべき政策的支援対象に位置付けられています(第133-3-1)。

【第133-3-1】新エネルギーの分類

【第133-3-1】新エネルギーの分類

新エネルギーは、エネルギー自給率の向上や地球温暖化対策に資するほか、分散型エネルギーシステムとしてのメリットも期待できる貴重なエネルギーです。また、燃料電池を始めとして、大きな技術的ポテンシャルを有する分野であり、その積極的な技術開発を進めることは経済活性化にも資するものです。さらに、風力発電や太陽光発電等は、国民一人一人がエネルギー供給に参加する機会を与えるものであり、非営利組織の活動等を通じて、地域の創意工夫を活かすことができるものでもあります。他方、現時点では、出力の不安定性や高コスト等の課題を抱えていることも事実であり、これらの課題の克服には、更なる技術開発等の進展が必要です。

したがって、当面は補完的なエネルギーとして位置付けつつも、安全の確保に留意しつつ、コスト低減や系統安定化、性能向上等のための技術開発等について、産学官等関係者が協力して戦略的に取り組むことにより、長期的にはエネルギー源の一翼を担うことを目指し、施策を推進することとします。

とりわけ、燃料電池については、自動車用を始めとして広範な分野における応用が期待される戦略技術です。燃料電池で用いられる水素は、製鉄等の過程で副生水素として得られるものもありますが、他のエネルギー資源から改質・転換して製造することが必要であることから、燃料電池自体の技術開発と並んで、水素の生産、貯蔵及び輸送を含め、利用プロセス全体を通じた効率を向上させるための技術開発、インフラ整備及び規制の見直しを含む総合戦略を強力に推進することとします。

(2)これまでの政策の変遷

我が国の新エネルギー政策は、省エネルギー政策とともに石油ショックを契機としてスタートしています。1970年代の2度の石油ショックにより、我が国の経済は大きな影響を受け、石油代替エネルギーとしての新エネルギーの重要性が認識されることとなりました。

まず、法制度については、第二次石油ショック後の1980年に、エネルギーの安定的かつ適切な供給確保の観点から、石油代替エネルギーの開発・導入の法的枠組みとして「石油代替エネルギーの開発及び導入の促進に関する法律」(代エネ法)を制定しました。代エネ法は、「石油代替エネルギー供給目標」を閣議決定として策定・公表することや独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)を通じた各種の措置の実施について定めています。

その後の国内外のエネルギーをめぐる経済的・社会的環境の変化に伴い、石油代替エネルギーのうち、経済性における制約から普及が十分でなく、石油代替エネルギー供給目標の達成のために促進を図ることが特に必要な新エネルギーの普及促進を目的として、1997年に「新エネルギー利用等の促進に関する特別措置法」(新エネルギー法)が制定されました。新エネルギー法は、国や地方公共団体、事業者、国民等の各主体の役割を明確化する基本方針の策定や新エネルギー利用等を行う事業者に対する金融上の支援措置等を定めたものです。

新エネルギー関連技術開発については、1973年に通商産業省工業技術院(当時:現独立行政法人産業技術総合研究所)において「サンシャイン計画」がスタートしました。この計画は、将来的にエネルギー需要の相当部分をまかないうるクリーンなエネルギーの供給を目標として、太陽、地熱、石炭、水素エネルギーの4つの石油代替エネルギー技術について重点的に研究開発を進めるものでした。

また、1980年に設立された新エネルギー総合開発機構(現:独立行政法人新エネルギー・産業技術総合・産業技術総合開発機構)において石炭液化技術開発、大規模深部地熱開発のための探査・掘削技術開発、太陽光発電技術開発等が重点プロジェクトとして推進されました。

1993年、「サンシャイン計画」は、1978年に発足した省エネルギー関連技術開発に関する計画である「ムーンライト計画」と統合され、「ニューサンシャイン計画」として再スタートすることとなりました。「ニューサンシャイン計画」は、従来独立して推進されていた新エネルギー、省エネルギー及び地球環境の3分野に関する技術開発を総合的に推進するものでありましたが、2001年の中央省庁再編に伴い、「ニューサンシャイン計画」の研究開発テーマは、以後「研究開発プログラム方式」によって実施されることとなりました。この「研究開発プログラム方式」においては、産業界、学会等の意見を国(経済産業省)が研究開発のプログラムに反映させ、これに基づいて研究開発を行うものであり、その成果について厳しくチェック&レビューを行うものです。

(3)最近の取組

〔1〕新エネルギー導入目標

2001年6月に総合資源エネルギー調査会新エネルギー部会が報告書(今後の新エネルギー対策のあり方について)を取りまとめ、新エネルギー導入目標を公表しました。この中で、2010年度における供給サイドの新エネルギー導入見通しは、現在実施している新エネルギー関係対策の枠組みを維持した場合(現行対策維持ケース)には、原油換算で約878万kl(一次エネルギー総供給に占める割合は約1.4%)にとどまると推計しています。

これを踏まえ、2010年度における供給サイドの新エネルギー導入目標は、官民の最大限の努力を前提とした目標量として、原油換算で1,910万kl(一次エネルギー総供給に占める割合は3%程度)と設定しました(第133-3-2、第133-3-3)。

【第133-3-2】供給サイドの新エネルギー導入目標

【第133-3-2】供給サイドの新エネルギー導入目標

【第133-3-2】供給サイドの新エネルギー導入目標(xls形式:24KB)

【第133-3-3】需要サイドの新エネルギー導入目標

【第133-3-3】需要サイドの新エネルギー導入目標

【第133-3-3】需要サイドの新エネルギー導入目標(xls形式:21KB)

このため、新たな供給サイドの新エネルギー導入目標である1,910万klの達成を目指すためには、さらに導入促進策の実施が必要です。

また、2002年3月には、地球温暖化対策推進大綱において、加えて2005年4月には、京都議定書目標達成計画において、それぞれ同様の目標が設定されたところであり、今後は地球温暖化問題への対応の観点からも新エネルギー導入を一層強力に推進していく必要があります。

今後の新エネルギー対策は、エネルギー環境に関する政策及びエネルギー市場の自由化にも留意しつつ、導入段階、技術開発・実証段階等の各段階や環境整備等についての対策を総合的に組み合わせて推進していくことが重要です。

〔2〕導入段階における支援

(ア)バイオマス、雪氷のエネルギーの新エネルギー法への位置づけ

バイオマスについては、国際的にそのエネルギー利用を推進する取組が活発化してきている中で、我が国においても、これまでの取組に加え、先進的な利用の取組が見られます。このようなバイオマスのエネルギー利用については、これまで新エネルギーとして明確に位置付けられておらず、国等による支援策が明示的に設定されていない状況にありました。現時点では、収集・輸送のためのコストが高い等、主に経済性の面での課題が普及への制約になっているものの、環境への負荷が低く、一定の潜在的な導入量が見込まれることから、積極的に導入促進を図るため、2002年1月に「新エネルギー利用等の促進に関する特別措置法施行令」(新エネルギー法施行令)を改定し、新エネルギー法上の新エネルギー利用等として位置付けました。

また、雪氷のエネルギー利用については、北海道、東北地方、日本海沿岸部を中心とした降雪量の多い地域において、近年、地方自治体が中心となり、雪氷を農産物の冷温貯蔵や公共施設等の冷房用冷熱源として利用する取組が活発化しつつあります。こうした雪氷のエネルギー利用については、現時点では、経済性の面での課題が普及に向けた制約になっているものの、一定の石油代替エネルギー効果を有することから、バイオマスと同様に新エネルギー法上の新エネルギー利用等として位置付け、積極的に導入促進を図ることとしました。

(イ)地方公共団体、事業者等に対する導入補助の推進

これまでも先進的な新エネルギー設備を導入する地方公共団体や事業者に対し、設備導入に際して費用の一部を助成しています。今後も、特に先進性の高い設備の導入や地方公共団体等が中心となって実施する普及啓発効果の高い取組等モデル的な事業に重点を置いて支援を行うこととしています。

(ウ)太陽光発電、太陽熱利用等に対する導入補助の推進

初期コストが高い住宅用太陽光発電システム等については、導入者の負担軽減を図ることにより、その導入を促進し、さらに量産化を通じてコスト低減による市場自立化を早期に実現することを目的として、一定の期間における集中的な補助を実施しているところです。また、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構が実施している太陽光発電フィールドテスト事業では、実負荷での運転データの収集・解析等を行い、実用性等の検証を実施しています。

また、太陽熱利用については、現在、住宅用太陽熱高度利用システムの導入者に対して費用の一部を補助しているところです。

(エ)グリーン購入・調達の推進による新エネルギー利用機器・設備の導入

公共部門等における新エネルギー機器・設備の率先的な導入は、その初期需要創出や市場拡大に寄与するとともに、地域における普及啓発に資するものとして意義があります。このため、国及び独立行政法人等は、2001年4月に施行された「国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律」(グリーン購入法)を踏まえ、庁舎や公共施設における太陽光発電システムや太陽熱利用機器システムの設置、一般公用車への低公害車の導入等、物品等を調達する際には、率先的に新エネルギー機器・設備を導入していきます。

〔3〕技術開発・実証段階における支援

新エネルギーの導入・普及には、コスト低減や性能向上のための技術開発が必要であり、産学官の適切な役割分担の下に、これを効果的に推進することとします。また、一定レベルまでの確立された新技術は、性能や経済性の把握、信頼性向上のための実証試験が不可欠である一方、直には収益を生まないため、実証試験を加速化することで社会的利益の増大が期待できる場合には、国が積極的にこれを支援することとします。

今後、一層の技術開発が期待される新エネルギーとしては、燃料電池、太陽光発電、バイオマスエネルギー等が挙げられますが、このうち燃料電池については、1999年12月に産学官から構成される「燃料電池実用化戦略研究会」を経済産業省資源エネルギー庁において開催し、国内外の企業、関係団体等による報告とこれを踏まえた議論、検討が行われ、2001年1月に報告書を取りまとめました。この報告において、産学官が技術開発戦略を共有し、適切な役割分担を行いながら、有機的・体系的に技術開発に取り組むことの重要性が指摘されました。また、2001年8月には、中長期的な観点に立ち、技術開発を含んだ包括的な戦略(「固体高分子形燃料電池/水素エネルギー利用技術開発戦略」)を同研究会で策定しました。

さらに、燃料電池の開発・普及施策の拡充・強化により燃料電池自動車及び定置用燃料電池の速やかな実用化・普及を推進し、二酸化炭素の排出抑制と新しい技術に立脚した経済活性化に資することを目的として、経済産業省、国土交通省、環境省の5副大臣をメンバーとする「燃料電池プロジェクトチーム」を設置しました。2002年5月、プロジェクトチームは、我が国における燃料電池の実用化・普及を加速化させるため、今後拡充・強化すべき施策を提言した報告書を取りまとめました。

太陽光発電については、1999年12月に新たに設置された総合エネルギー調査会「新エネルギー部会」において、一層のコスト低減を可能とするシリコン薄膜太陽電池や化合物系太陽電池の研究開発やリサイクル・リユース処理技術等の開発の重要性と、局地的に高密度な系統連系を行う場合の配電系統への影響評価の必要性等が指摘され、これを受け2001年度からは「ニューサンシャイン計画」までの成果を踏まえつつ「選択と集中」による開発の効率化をはかり新たに、家庭用電気料金並の発電コストを実現する技術の早期確立や、新発想の要素技術開発、大量導入に必要な共通基盤技術の開発等に取り組んでいるほか、集中連系時における出力抑制や系統への影響等に関する汎用的な対策技術の確立を目的とする実証研究や、新技術太陽電池の実規模設置によるフィールドテストを進めています。

〔4〕環境整備

(ア)電力系統連系対策の検討等

発電分野の新エネルギー、特に風力発電については、風況に応じて出力が変動するとともに、風況条件の良い地点は送電線の送電能力が小さい遠隔地にある場合も少なくないことから、その大規模な導入を図るためには風力発電の系統連系に伴う課題を解決していくことが必要です。そこで、2003年度より風力発電の系統安定化技術に係る実証実験を実施するとともに、風力発電の導入拡大のために必要な系統連系対策を検討するため、2004年4月に総合資源エネルギー調査会新エネルギー部会のもとに風力発電系統連系対策小委員会を設置しました。同委員会は、2004年7月に周波数変動対策及び送電容量等に係る対策を整理した中間報告書を取りまとめ、これに基づいて電力会社、風力発電事業者と共に取組を進めています。その他、太陽光発電やガスコージェネレーション、燃料電池についても、局地的に高密度な系統連系を行う場合には、配電系統等に影響を及ぼす可能性が指摘されており、今後、その影響の評価等について、検討することとしています。

(イ)燃料電池の実用化に向けた包括的な規制の再点検の道筋の取りまとめ

2002年10月、小泉内閣総理大臣の指示(2002年4月)を踏まえ、内閣官房に設置された「燃料電池実用化に関する関係省庁連絡会議」において、燃料電池の初期段階の普及を睨んだ安全性の確保を前提とした包括的な規制の再点検の道筋を取りまとめました(6法律28項目)。

(ウ)普及啓発等

新エネルギーの導入を促進するためには、国民一人一人が主要な担い手として期待されることから、今後、国民意識の一層の喚起や新エネルギーに関する認識を醸成することが必要です。このため、国は各種の広報活動等を通じて、新エネルギー導入の意義や経済性、技術面における課題等、その現状について広く国民に情報提供を行います。また、新エネルギーについては、地方自治体や地域住民等が、地域活性化や街づくり、廃棄物の有効利用等の観点から、草の根レベルで取り組むことが期待される分野であり、地域住民に対する普及啓発や学校における教育を通じて、広く意識の向上を図ります。

〔5〕「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法」の制定

2001年6月に総合資源エネルギー調査会新エネルギー部会報告書「今後の新エネルギー対策のあり方について」が取りまとめられ、その報告書の中で、2010年度における新エネルギーの導入目標を原油換算で1,910万klに設定するとともに、特に発電分野において、新たな市場拡大措置が必要であるとの提言がなされました。これを踏まえ、2002年6月、電気事業者に一定量以上の新エネルギー等を利用して得られる電気の利用を義務付ける「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法」(RPS法)が公布され、2003年4月に全面施行されました。

RPS法は、電力の小売を行う事業者(一般電気事業者、特定電気事業者、特定規模電気事業者)に対し、その販売する電力量に応じて、新エネルギー等電気(新エネルギー等により発電された電気)を一定割合利用することを義務付ける法律です。各電気事業者の毎年度の利用義務量は、経済産業大臣が4年毎に8年先まで定める「電気事業者による新エネルギー等電気の利用の目標」をベースに決定され、利用義務量の全国合計値は2003年度で32.8億kWh(全国の販売電力量に対する比率で約0.39%)、2010年度で122.0億kWh(全国の販売電力量に対する比率で1.35%)となり、8年間で約3.7倍に拡大されます。2003年度においては、全ての電気事業者が義務履行を行いました。

RPS法の対象となり得るエネルギー源は、〔1〕風力、〔2〕太陽光、〔3〕地熱(熱水を著しく減少させないもの)、〔4〕中小水力(水路式で1,000kW以下)、〔5〕バイオマスの5種類であり、経済産業大臣の認定を受ける必要があります。

また、RPS法では、電気事業者は、〔1〕自ら新エネルギー等電気を発電する、〔2〕他の発電事業者から新エネルギー等電気を購入する、〔3〕他の発電事業者等から「新エネルギー等電気相当量」を購入する、のうちから最も有利な方法を選択して義務を履行することができることになっています。なお、「新エネルギー等電気相当量」とは、新エネルギー等電気の量に応じて、事業者間で取引することのできる量で、いわば新エネルギーの「価値」に相当するものです。この取引により、市場機能を活かしつつ、新エネルギーの導入が困難な地域においても義務の履行が可能となります(第133-3-4)。

【第133-3-4】RPS法の概要

【第133-3-4】RPS法の概要

〔6〕その他

(ア)中央官庁庁舎における太陽光発電設備の率先導入

エネルギーの安定的な供給の確保や地球環境問題への対応に資する新エネルギー技術の導入を促進するためには、国が率先して新エネルギー設備を導入することにより普及啓発を図ることが重要です。このため、新エネルギーの率先導入及び環境に配慮した官庁施設整備の一環として中央官庁庁舎において太陽光発電設備の整備を実施しています(首相官邸を含め15施設、総出力500kW以上)。

(イ)環境を考慮した学校施設(エコスクール)の整備推進

近年の地球規模の環境問題に対し、学校施設についても環境への負荷の低減に対応した施設づくりが求められていることから、文部科学省、農林水産省及び経済産業省が協力して、エコスクールのモデル的整備を推進しています。その整備の際に新エネルギーを導入する場合には費用の一部を補助することとしています。

(ウ)低公害車等の導入促進

2001年5月、小泉内閣総理大臣より「原則としてすべての一般公用車について、2002年度以降3年を目途に低公害車に切り替える」よう指示がなされました。国においては、この内閣総理大臣の指示に基づき低公害車の導入促進対策を着実に実施するとともに、低公害車の開発、普及に関する措置を実施するための総合的、包括的なアクションプラン(低公害車開発普及アクションプラン)を2001年7月に経済産業省、国土交通省及び環境省において策定しました。

内閣総理大臣の指示(2002年4月)を受けて、2002年12月には経済産業省を含め、世界に先駆けて試験的に販売された燃料電池自動車を政府全体で5台率先導入し、あわせて水素供給設備を経済産業省内に導入しました。2003年12月現在、政府全体で8台導入しています。※13

COLUMN

日本原子力研究所における水素製造について

日本原子力研究所では、二酸化炭素を排出せずに、原子炉の熱を用いて水素を製造する熱化学法ISプロセスの研究開発を行っています。2003年8月、原子炉を模擬した電気ヒーターにより熱を供給し、水を分解して毎時35リットルの水素を製造することに世界で初めて成功しました。この方法では、二酸化炭素は一切排出されません。その後、2004年6月には自動制御により1週間にわたる連続水素製造を達成しました。2005年度からは規模をさらに大きくしたパイロット試験への展開を図る予定です。

さらに、熱源からの二酸化炭素の排出を抑えるため、ISプロセスに必要な900度C程度の高温の熱は、ヘリウムガスを冷却材とし、高温の熱を取り出すことが出来る高温ガス炉を利用することとしています。日本原子力研究所では、現在、高温ガス炉HTTRの運転試験を行い、高温ガス炉技術の確立、安全性実証試験等を進めています。

※13:燃料電池自動車の導入に向けて、経済性・耐久性向上を含む技術開発が進められている(現時点でのリース価格は1ヶ月当たり約100万円)。

(エ)バイオマス・ニッポン総合戦略の策定

バイオマスをエネルギーや製品として総合的に利活用し、持続可能な社会の実現に向けた基本的戦略として78の具体的行動計画を盛り込んだ「バイオマス・ニッポン総合戦略(2002年12月閣議決定)」を取りまとめました。

この中で、エネルギーについては、様々なバイオマスを効率的にエネルギーへ転換する技術の開発・実用化の支援や、技術・システム等の面で先導的なエネルギー支援施設等の立ち上がりへの支援等が掲げられています(第133-3-5)。

【第133-3-5】バイオマス・ニッポン実現に向けて

【第133-3-5】バイオマス・ニッポン実現に向けて

4.ガス体エネルギー

(1)エネルギー政策上の位置付け

天然ガスは、中東以外のアジア、オーストラリア等の地域にも広く分散して賦存するとともに、他の化石燃料に比べ相対的に環境負荷が少ないクリーンなエネルギーであり、安定供給の確保及び環境保全の両面から重要なエネルギーです(第133-4-1)。このため、石油、石炭、原子力等の他のエネルギー源とのバランスを踏まえつつ、天然ガスシフトの加速化を推進しています。

【第133-4-1】二酸化炭素排出量等の比較

【第133-4-1】二酸化炭素排出量等の比較

【第133-4-1】二酸化炭素排出量等の比較(xls形式:280KB)

また、LPガスも、PM(粒子状物質)の排出がない等、環境負荷が相対的に小さく、天然ガスとともにクリーンなエネルギーです。また、2004年に発生した新潟県中越地震のような災害時におけるエネルギーの安定供給の確保に資する等、国民生活に密着した分散型エネルギーの一つです。このため、LPガスを都市ガスとともにガス体エネルギーとして一体的にとらえるとともに、事業者の競争環境の整備等を通じ、より一層のガス利用者の利益の増進を図ることとしています。

(2)最近の取組

〔1〕メタンハイドレートの開発

新たな国産エネルギー資源として期待されるメタンハイドレートについては、国が主体となって中長期的な視点で、着実に技術開発や基礎試錐等を拡充していくことが重要です(第133-4-2)。

【第133-4-2】日本近海のメタンハイドレート分布

【第133-4-2】日本近海のメタンハイドレート分布

このため、現在、2016年度までに商業的産出のための技術を整備することを目標に、資源量評価に関する研究、生産手法開発に関する研究、環境影響評価に関する研究等を実施しています。

〔2〕サハリン・プロジェクト

サハリンは、大規模な石油・天然ガスの埋蔵量が確認されており、我が国に地理的に極めて近く、供給源の多角化にも有効です。そのため、国はプロジェクトに参加する我が国の企業に対する支援等を行ってきました。現在、我が国企業の参画するサハリンI、サハリンIIという2つのプロジェクトが既に開発段階に移行しており、生産される石油・天然ガスが経済性のある形で我が国に供給されることになれば、エネルギー安定供給上、大きな意義があります(プロジェクトの詳細は、第1部第3章第4節1.に記載)。

COLUMN

メタンハイドレートとは

メタンハイドレートとは、低温・高圧の条件下で、水分子の結晶構造の中にメタン分子が取り込まれた氷状の固体物質(理論化学式:CH4・5.75 H2O)のことで、1m3のメタンハイドレート(メタンハイドレート結晶構造の空間に完全に隙間なくメタンが取り込まれている場合)を分解すると、水:0.8m3とメタンガス:172m3(大気圧下、0度C)と、非常に大量のメタンガス(天然ガスの主成分)を得ることができます(第133-4-3)。

【第133-4-3】メタンハイドレート結晶構造の一部を構成する5角12面体

【第133-4-3】メタンハイドレート結晶構造の一部を構成する5角12面体

自然界におけるメタンハイドレートは、陸域では高緯度地域の凍土下部に、海域では水深の深い海域の海底下(海底下からは数百mの深さで、石油・天然ガスよりは浅部)に賦存しており、世界中に賦存していると推測されています。また、我が国の周辺海域にも、我が国の天然ガス消費量の約100年分に相当する量が賦存しているとの試算もあります。

資源エネルギー庁では、1995年度からメタンハイドレートに関する調査研究を開始し、2000年1月に静岡県御前崎沖「南海トラフ」にて試錐を行い、海洋では世界で初めて砂層中のメタンハイドレートを確認しました(第133-4-4)。

【第133-4-4】南海トラフで取り出されたメタンハイドレート試料

【第133-4-4】南海トラフで取り出されたメタンハイドレート試料

メタンハイドレート(天然ガス)は、他の化石燃料に比べて、環境負荷が少ないクリーン・エネルギーであるとともに、我が国周辺海域にも相当量が賦存しているとの試算もあり、将来の国産エネルギーとして大きく期待されています。しかしながら、メタンハイドレートは、地中に固体で存在し、井戸を掘っても自噴しないため、新たな採取技術の開発が必要であること、我が国周辺海域にどのくらい存在しているか調査が不十分であること等から、エネルギー資源として活用するには中長期的な取組が必要です。

このため、資源エネルギー庁では、産学官の英知を結集し、アメリカ、カナダ等とも協力しつつ、中長期視点でメタンハイドレート開発のための取組を推進しています。

〔3〕GTL、DMEの開発

GTL(ガス・トゥ・リキッドの略)は、天然ガス等を原料として、単品ではなく軽油・灯油・ナフサ等の連産品として製造されます。常温では液体の合成炭化水素です。特徴としては、物性が軽油と類似してセタン価が高く、既存の軽油インフラでの利用可能性があるため、軽油代替のディーゼル自動車用燃料として使用可能なこと、また、硫黄分や芳香族分を含まないため燃焼させても硫黄酸化物(SOx)の発生がなく窒素酸化物(NOx)や粒子状物質(PM)の排出量も低減できること等が挙げられます(第133-4-5)。

【第133-4-5】GTLの合成方法

【第133-4-5】GTLの合成方法

一方、DME(ジ・メチル・エーテルの略)は天然ガス、石炭等を原料として製造されるエーテルであり、常温で気体であるが、容易に(6気圧以上または-25度度C以下)液化するものです。現在は主としてスプレー噴射剤として使用されています。特徴としては、物性がLPガスと類似しており既存のLPガスインフラでの利用可能性があるため、発電用、工業用、家庭用のLPガス代替としての用途が想定されていること、セタン価が高いためディーゼル用燃料としての可能性も有していること、また、硫黄分を含まないため燃焼させても硫黄酸化物(SOx)や粒子状物質(PM)が発生せず、窒素酸化物(NOx)の発生も低く抑えられること、等が挙げられます(第133-4-6)。

【第133-4-6】DMEの合成方法

【第133-4-6】DMEの合成方法

天然ガスは気体のため液体燃料に比べて輸送・貯蔵が難しく、現在の天然ガス開発プロジェクトは、LNG化かパイプライン輸送に適合するプロジェクトのみに限られています。こうした中、天然ガスから液体燃料を製造する新たな利用技術であるGTLやDMEは、これまで開発の対象とならなかった未開発ガス田に対する新たな開発手法として、我が国のエネルギーの安定供給に資するものと期待されています(第133-4-7)。

【第133-4-7】世界の主要なGTLプロジェクト(単位:千B/D)

【第133-4-7】世界の主要なGTLプロジェクト(単位:千B/D)

【第133-4-7】世界の主要なGTLプロジェクト(単位:千B/D)(xls形式:18KB)

〔4〕産ガス国との関係強化

石油・天然ガス分野のみならず幅広い分野において、産油・産ガス国との共同技術研究、研修生の受入れ・専門家の派遣等の人的交流事業、産油・産ガス国への直接投資促進事業等の施策を、引き続き積極的に実施しています。

〔5〕LPガス

我が国のLPガス需要の約77%が海外からの輸入で賄われており、さらにそのうち約84%を中東に依存していることから、LPガスの安定供給のためのLPガス供給(輸入)ソースの多角化を図るためにこれまで様々な調査を実施してきています。

具体的には、世界の新しいLPガスソースの開発等供給多様化調査として、オーストラリア、ナイジェリア、アルジェリア、北海地域(イギリス、ノルウェー)等において、我が国へのLPガス輸出可能性等を調査し、安定供給に資する方策の検討を行ってきました。

これらの調査等を通じて、近年これらの地域から我が国へ供給されるLPガスが増加(1995年度:約47万トン(全輸入量に占めるシェア約3%)→2003年度:約220万トン(同約16%))していますが、引き続き今後もより一層の供給多様化・安定供給を図っていくことが重要です。

LPガスは我が国における国民生活を支える重要なエネルギーである一方、その供給基盤は脆弱であることから、安定供給の確保に資することを目的として、LPガス関係諸国との協調と対話の促進を図るため、毎年LPガス国際セミナーを開催しています。

5.石炭

(1)エネルギー政策上の位置づけ

石炭は、可採埋蔵量が約200年あり、世界各国に幅広く分布する等、他の化石燃料に比べ供給安定性が高く、経済性にも優れていることから、今後も重要なエネルギーです(第133-5-1)。

【第133-5-1】豊富な石炭資源量と石油・ガスと大きく異なる地域分布

【第133-5-1】豊富な石炭資源量と石油・ガスと大きく異なる地域分布

【第133-5-1】豊富な石炭資源量と石油・ガスと大きく異なる地域分布(xls形式:49KB)

他方、他の化石燃料に比し、燃焼過程における単位当たり二酸化炭素の排出量が大きいこと等、環境面での制約要因が多いという課題を抱えています。このため、クリーン・コール・テクノロジーの開発・普及によりこれらの課題の克服に努めるとともに、産炭国との関係を強化しつつ海外からの安定的な供給を確保し、環境適合的な石炭利用の拡大を図ることが必要です。特に世界最先端の石炭採掘・利用技術をもつ我が国として、クリーンな石炭利用技術等をアジアを始めとする途上国に提供していくことは、地球環境問題の解決と安定供給の確保の双方に有用であり、こうした取組を促進することとします。

(2)これまでの政策の変遷

我が国の石炭政策は、大きく、〔1〕国内石炭鉱業の構造調整を中心とする国内政策としての石炭政策、〔2〕海外炭の安定供給確保と環境調和的な石炭利用の促進を柱とするエネルギー環境政策としての石炭政策、の2つに分けられます。

国内石炭政策については、1962年10月石炭鉱業審議会答申以降、構造的不況に陥った国内石炭産業の合理化・構造調整を進めるとともに、産炭地域における地域経済への影響を是正する産炭振興対策、鉱害対策等が進められてきました。その後、1999年8月、石炭鉱業審議会答申を受け、2001年度末における石炭関係諸法の廃止及び廃止に伴う所要の経過措置の整備等を内容とする「石炭鉱業の構造調整の完了等に伴う関係法律の整備等に関する法律(以下、整備法)」が2000年3月に成立し、同法の施行に伴い、石炭関係諸法は2001年度末をもって廃止され、第一次の石炭鉱業審議会答申以降、全9次、約40年にわたる国内石炭政策は終了を迎えました(第133-5-2)。

【第133-5-2】石炭政策の推移

【第133-5-2】石炭政策の推移

【第133-5-2】石炭政策の推移(xls形式:29KB)

(3)最近の取組

〔1〕新しい石炭政策の展開

近年、地球環境問題に対する関心の高まりを背景に、石炭のより一層の環境調和的な利用の拡大が求められています。また、2003年後半以降、近年例を見ないほど石炭価格が高騰しており、今後中国等アジア諸国の石炭需要が増加する中で、需要増加に対応した新規炭鉱の開発、炭鉱の拡張、必要な輸送インフラの整備等が必要とされています(第133-5-3)。

【第133-5-3】我が国の輸入炭FOB価格の推移

【第133-5-3】我が国の輸入炭FOB価格の推移

【第133-5-3】我が国の輸入炭FOB価格の推移(xls形式:45KB)

このような石炭をめぐる情勢変化を踏まえ、新しい石炭政策についてクリーン・コール・サイクル(C3)研究会(資源エネルギー庁石炭課長の私的研究会)において、次の視点から検討を行い、2004年6月に中間報告を取りまとめました。今後、本報告において提唱された3重点分野、7つのアクション・プランからなるクリーン・コール・サイクル(C3)イニシアティブを推進し、海外炭の安定供給の確保及び環境に配慮した石炭利用技術の開発・実証・普及を積極的に進めていくこととしています(第133-5-4)。

【第133-5-4】新しい石炭政策のアクション・プログラム

【第133-5-4】新しい石炭政策のアクション・プログラム

COLUMN

クリーン・コール・サイクル(C3)イニシアティブの概要

1)検討の視点

○アジア大のエネルギー安定供給・環境問題対応

エネルギー・環境問題は一国の枠を越える問題であり、石炭の需給安定化と効率的・環境調和的利用をアジア域内の共通の問題として捉え、対応策を検討していくことが重要。

○2030年を見据えた中長期的な展望

エネルギー分野における技術革新や資源量の差は、中長期的に各エネルギー源の位置付けを大きく変える可能性があるため、2030年を見据えた中長期的な展望が必要。

○上流から下流までの総合的な取組み 石炭の開発から利用までの一連の課題の最適な解決を図るため、上流から下流まで総合的な取組みを展開していくことが必要(第133-5-5)。

【第133-5-5】新しい石炭政策の基本的考え方

【第133-5-5】新しい石炭政策の基本的考え方

2)クリーン・コール・サイクルの確立に向けたC3イニシアティブ

(I)石炭利用の最大の課題たる環境負荷の克服等に向けたクリーン・コール・テクノロジー(CCT)の開発・実証・普及の推進

i)ゼロエミッションの実現に向けた革新的なCCTの開発推進

2030年のゼロエミッション実現に向け、高効率石炭ガス化技術やCO2固定化技術等の革新的な環境調和型石炭利用技術(CCT)の開発を推進。

ii)石炭ガス化を核とする多様なCCTモデル実証の展開

上記技術開発過程において鍵となる石炭ガス化技術を核として、ハイブリッドガス化(他の物質との共ガス化)やコプロダクション(化学原料等の併産)、水素製造等のモデル実証を展開(第133-5-6)。

【第133-5-6】石炭ガス化を核とする多様なCCTモデル実証の展開

【第133-5-6】石炭ガス化を核とする多様なCCTモデル実証の展開

iii)環境と経済の両立を図る内外へのCCTの普及促進

CDMの活用や政策対話を通じたアジア諸国の環境規制適正化、省エネ設備の導入に対する支援制度の活用促進等によりCCTの国内外へのビジネスベースでの普及を促進。

(II)石炭の最大の魅力たる価格の低位安定性の維持・強化に向けた環境整備

iv)迅速な需給調整の図られる柔軟で強靱な石炭需給構造の構築

需要の変化に応じた需給体制の構築のため、政策金融の機動的な運用等によるインフラ整備の促進や低品位炭改質技術の実用化に向けた取組の強化等を実施(第133-5-7)。

【第133-5-7】迅速な需給調整の実現に向けた課題(石炭供給フロー図)

【第133-5-7】迅速な需給調整の実現に向けた課題(石炭供給フロー図)

v)安定調達の確保に向けた多様なリスク管理手法の確立

石炭消費者の需要変動や数量確保、石炭価格の変動に伴うリスクを適切に管理できる手法について検討。

(III)政策実施のためのインフラ整備

vi)国際的なエネルギー・環境問題対応の基盤となるアジア大の石炭ネットワークの構築

アジア大の石炭ネットワークの構築を支援するべく、産炭国との2国間の政策対話を通じた関係強化を図るとともに、ASEAN+3等のマルチの場を活用した情報共有等を実施。

vii)政策効果の最大化に向け体制の効率化・政策評価の徹底と広報の強化

政策効果の最大化を図るため、各政策主体の役割を明確化するとともに、各施策のフォローアップ等の政策評価の徹底や広報の強化を実施。