第3節 市場原理の活用を巡る課題への対応の基本的考え方

1.市場原理の活用の意義

鉄道、電信、電話、水道、都市ガス、電気等の事業は、公共の利益に不可欠の事業であり、公益事業といわれています。

このような事業の多くは、「自然独占性」といわれる特性を持つといわれ、サービスの供給システム(線路、通信線、電線等)整備に多大なコストを要するとともに、当該コストは、サービスの多寡に応じて変動しないため、需要量が多いほど需要単位当たりの固定費用が小さくなるので規模の経済性が働きます。また、このようなインフラを複数の事業者が重複して建設することは、非効率となること等の理由から、政府が事業者の独占を認める代わりに規制を行うことが望ましいとされてきました。

例えば、我が国の電気事業を例にすると、一定の地域を、供給区域として認めその区域内においては、独占的に供給を認める代わりに政府が料金設定等について規制を行ってきました。料金規制により、各電力会社は自由に料金設定を行うことが制限されましたが、一方で、各電力会社がそれぞれの供給区域内の全需要家への供給義務を果たすために必要な発電所や送電配電施設の建設に要した投資は、総括原価として料金の中に含められ、認可された電気料金の中で回収する制度となっていました。

公益事業では、近年参入の一部自由化等、市場原理の活用が除々に進められてきており、市場原理を導入して、新規参入の増加による事業全体への効率活性化、料金の低下等国民へのメリットが増加した事例として情報通信産業が挙げられます。

我が国の電気通信業界は、1985年まで、長らく日本電信電話公社及び国際電信電話株式会社の独占体制下にありました。1985年に電電公社が民営化されるとともに電気通信事業分野に競争原理が導入され多数の新規事業者(NCC)の参入が実現し、企業間の競争環境が創出されました。その後、90年代から現代に至るまでに累次にわたる規制改革を行い、携帯電話やインターネット等の情報通信の新しい形態が発展・普及したこと等により、電気通信業界における競争環境が大きく加速しました。

市場原理の導入が進むと〔1〕需要家における選択肢の拡大につながる、〔2〕価格の低減を通じて、国民生活の向上に寄与するとともに熾烈な国際競争にさらされている産業の競争力強化にも貢献する、〔3〕産業における効率的経営を促すことによって産業自体の体質強化につながるといったメリットがあるものと考えられています。

2.市場原理の活用にあたっての基本的考え方

一方で、エネルギーについては、供給インフラの整備に長期間を要する場合が多いこと、石油輸出国を始め国の関与の度合いが強い場合が多いこと、市場原理だけに委ねた場合には安定供給面や環境面において問題のあるエネルギー構成にシフトしたり、エネルギー消費量が増大する可能性があること等、「安定供給の確保」、「環境への適合」に照らして問題が生じる可能性があります。このため、エネルギー分野における市場原理の活用に当たっては、事業者の自主性及び創造性を損なわないように配慮しつつ、国が適切な関与を行うことが必要な場合があることに留意しなければなりません。

このため、市場原理の活用を進めるに当たっては、エネルギー政策基本法に定められているとおり、前述した「安定供給の確保」、「環境への適合」という課題を十分考慮した上で、エネルギー市場の制度改革を進めています。その際、我が国の実情に適合する形での市場原理の活用策を設計することが重要です。また、市場原理を活用する中で、安全の確保をおろそかにすることがあってはならず、国及び事業者は、それぞれの責務を果たすことにより、安全の確保を確実に行うことが必要です。

このような考え方に立ち、市場原理を活用することが持つ意義を活かすとともに、エネルギー分野において市場原理を活用することによって生じるおそれがある様々な問題を回避すべく、国は、当該問題の内容に応じて、その解決に資する多様な手段を講じることとします。