第3節 環境への適合を巡る課題

1.地球温暖化問題

(1)温室効果のメカニズム

太陽から可視光として送られてくる日射エネルギーは、大気を通過して地表に吸収され熱に変わります。この熱エネルギーによって暖められた地表面からは赤外線が地球外に向けて放射されますが、大気中に存在する「温室効果ガス(Greenhouse Gases:GHGs)」がこの一部を吸収し、再びその一部の熱を地球に向けて放出して地表面の平均温度を保ち、生命が活動するために適した環境を維持しています。これが「温室効果」です(第113-1-1)。

【第113-1-1】温室効果の概念

【第113-1-1】温室効果の概念

温室効果ガスには、二酸化炭素(CO2)やメタン(CH4)、一酸化二窒素(N2O)といったものがありますが、近年では、こうしたガスの排出量が人間の社会活動の拡大によって増加しています。また、フロン等も大きな温室効果を有しており、その利用量の増加に伴って大気中への排出量が増加しています。このように、人為的な社会活動の拡大に伴い温室効果ガスの排出量が増加して大気に蓄積し、温室効果によって地球の気温上昇がもたらされるのが地球温暖化問題です。

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)によると、地球の平均地上気温は1990年から2100年までの間に1.4~5.8度C上昇すると予測されています(第113-1-2)。そして、地球温暖化が進むことによって、様々な影響が懸念されています。

【第113-1-2】IPCCによる気温変化の予測

【第113-1-2】IPCCによる気温変化の予測

(2)京都議定書

〔1〕京都議定書採択まで

地球温暖化問題への国際的な対応としては、まず、1992年に国連気候変動枠組条約(UNFCCC)が採択され、同条約は1994年に発効しました。この中では「気候系に対して危険な人為的干渉を及ぼすこととならない水準において大気中の温室効果ガスの濃度を安定化させる」という究極的な目標が掲げられています。さらに、京都議定書(Kyoto Protocol)は、UNFCCCにおける温暖化防止行動をより具体的なものとするため、付属書I国(先進国及び市場経済移行国)の温室効果ガス排出量について、法的拘束力のある数値約束を各国毎に設定したもので、1997年に京都で開かれた国連気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3)において採択されました。

〔2〕京都議定書の概要

京都議定書では、対象となる温室効果ガスとして二酸化炭素(CO2)、メタン(CH4)、一酸化二窒素(N2O)、代替フロン等3ガス(HFCs、PFCs、SF6)の6種類を規定するとともに、同議定書の附属書Bに記載された先進国及び市場経済移行国等(附属書B国)が、それぞれ基準年(原則として1990年。ただし代替フロン等3ガスについては1995年を基準年とすることもできる。)比の温室効果ガス削減約束を設定され、第1約束期間(2008年から2012年)の毎年の総排出量の合計について、その約束を達成することとされています。主な国・地域の削減約束は、日本が-6%、アメリカが-7%、EUは-8%、そしてロシアが±0%等となっています(第113-1-3)。

【第113-1-3】京都議定書における各国の数値約束

【第113-1-3】京都議定書における各国の数値約束

また、各国が取組を行う上での柔軟性措置が導入されています(京都メカニズムについては第2章を参照)。

さらに、1990年以降に行われた新規植林、再植林、森林減少の3つの活動に限定し、その吸収量を計上するとともに、人為的活動として、森林経営、農用地管理等による追加的人為的活動に関し、1990年以降に実施された分についてその吸収量を計上できるものとしています。

〔3〕京都議定書の発効

京都議定書の発効には、〔1〕55カ国以上の条約締結国、〔2〕条約付属書Iに掲げる締結国の1990年における二酸化炭素の総排出量の55%以上を占める国が締結すること、が条件となっていました。〔1〕については、以前より満たされていましたが、〔2〕については、2004年11月のロシアの批准により条件が満たされたため、2005年2月16日に京都議定書が発効しました。これにより我が国は、2008年から2012年までの第1約束期間に、温室効果ガスを基準年レベルから6%削減する国際的な義務が生じることとなりました。

一方で、京都議定書では、2013年以降の次期約束については、2005年末までに国際的な検討を開始することとしています。2004年12月にアルゼンチン・ブエノスアイレスにおいて開催されたCOP10では、2013年以降の将来枠組の議論の足がかりとなる「政府専門家セミナー」の開催が合意されました。

COLUMN

マラケシュ合意(COP4~COP7までの議論)

京都議定書は、2008年から2012年までの第1約束期間における約束達成を実現するための基本的なルールが記載されているのみであり、その詳細な運用ルールの構築についてはその後に開かれた締約国会議(COP)において議論されました。各国の京都議定書の締結を促進するには、この運用ルールの決定が不可欠でしたが、京都メカニズムの活用方法等で各国の意見が纏まらず、最終的な運用ルールの策定には時間を要することになりました。

2001年に開催されたCOP6再開会合では、会議の開始直後においてEU、開発途上国が従来の姿勢を主張したものの、吸収源や補足性(京都メカニズムによる目標達成量は、国内対策に対して補足的でなければならず、量的制限を設定すべきというEU等の主張)、開発途上国の資金問題等が徐々に調整され、閣僚級会議において合意(ボン合意)に至ったことで、運用ルールの大枠について決定がなされました。この合意内容を受けて、モロッコのマラケシュで開かれたCOP7において最終的な調整を行い採択されたのが「マラケシュ合意」です。COP3から4年を経て、ボン合意の内容に沿って、ようやく京都メカニズム、吸収源、遵守制度、開発途上国問題等を実施する仕組みや詳細な運用ルールの最終案が確定しました。

〔4〕京都議定書目標達成計画の策定

我が国は、2002年6月に京都議定書を締結し、その目標達成に向けて、地球温暖化対策推進大綱(2002年)に基づき、省エネルギー・新エネルギー対策などの温室効果ガスの排出削減対策・施策を積極的に推進してきました。また、2004年度は同大綱の評価・見直しの年となっており、政府全体で評価・見直し作業を行ってきました。

「地球温暖化対策の推進に関する法律」では、京都議定書発効の際に京都議定書目標達成計画を定めることとしており、2005年2月に京都議定書が発効したことを受け、2004年度に行った地球温暖化対策推進大綱の評価・見直し作業の成果として、同大綱を引き継ぐ「京都議定書目標達成計画」を策定しました(2005年4月28日閣議決定)。

同計画では、「6%削減約束の確実な達成」と「地球規模での温室効果ガスの更なる長期的・継続的な排出削減」を目指す方向とし、「環境と経済の両立」、「技術革新の促進」、「すべての主体の参加・連携の促進とそのための透明性の確保、情報の共有」、「多様な政策手段の活用」、「評価・見直しプロセス(PDCA)の重視」、「地球温暖化対策の国際的連携の確保」を基本的考え方としています。

また、第1約束期間(2008年~2012年)における我が国の温室効果ガスの排出量を基準年(1990年)総排出量比▲0.5%、我が国の森林経営による温室効果ガスの吸収量を1,300万t-C(▲3.9%)とすることを目標としており、これらをあわせた国内対策による排出抑制・吸収量(▲4.4%)と削減目標(▲6%)の差分(▲1.6%と見込まれる)については京都メカニズムを活用することにより、第1約束期間における基準年総排出量比▲6%の削減目標を達成することとしています。

さらに、温室効果ガスごとの目標については、合理性・透明性をもって見通した活動量と、エネルギー利用効率や代替フロン排出原単位等の原単位の改善効果を踏まえて、本計画の実施により排出抑制が図られる水準として設定しました。具体的には、〔1〕エネルギー起源の二酸化炭素の排出量を基準年総排出量比+0.6%、〔2〕非エネルギー起源二酸化炭素の排出量を▲0.3%、〔3〕メタンの排出量を▲0.4%、〔4〕一酸化二窒素の排出量を▲0.5%、〔5〕代替フロン等3ガスの排出量を+0.1%の水準にすることを目標とし、上記のように我が国の温室効果ガスの排出量を▲0.5%とすることを目標としています。

こうした目標を達成するための具体的裏付けのある対策と対策を推進するための国の施策等の全体像が同計画には記載されており、今後、計画の着実な実施に向けて、国、地方公共団体、事業者、国民といった国民各界各層が一体となって取り組んでいくことが必要です。

(3)我が国における温室効果ガスの排出状況

我が国における温室効果ガスの排出量は、87%をエネルギー起源の二酸化炭素が占めています(第113-1-4)。

【第113-1-4】我が国の温室効果ガス排出量のガス別割合(2002年単年度)

【第113-1-4】我が国の温室効果ガス排出量のガス別割合(2002年単年度)

【第113-1-4】我が国の温室効果ガス排出量のガス別割合(2002年単年度)(xls形式:30KB)

エネルギー起源二酸化炭素排出量について部門別でみると、排出量全体の約40%が産業部門、次いで運輸部門(約22%)、業務その他部門(約17%)、そして家庭部門(約14%)の順となっています(第113-1-5)。

【第113-1-5】我が国のエネルギー起源二酸化炭素排出量の部門別割合(2002年単年度)

【第113-1-5】我が国のエネルギー起源二酸化炭素排出量の部門別割合(2002年単年度)

【第113-1-5】我が国のエネルギー起源二酸化炭素排出量の部門別割合(2002年単年度)(xls形式:30KB)

我が国の2002年度のエネルギー起源の二酸化炭素の総排出量は、11億3,856万トンであり、前年度と比べると3.1%増加していますが、1990年の当該総排出量と比べると12.0%上回っています。部門別に1990年度比でみると、産業部門が-1.7%、家庭部門が+20.4%、業務その他部門が+36.7%、運輸部門が+28.8%となっています(第113-1-6)。

【第113-1-6】我が国のエネルギー利用に伴う二酸化炭素排出量の部門別の推移

【第113-1-6】我が国のエネルギー利用に伴う二酸化炭素排出量の部門別の推移

【第113-1-6】我が国のエネルギー利用に伴う二酸化炭素排出量の部門別の推移(xls形式:61KB)

業務その他・家庭・運輸部門(自家用乗用車)における二酸化炭素排出量は引き続き増加傾向にあります。これは、産業部門及び運輸(貨物自動車及び公共交通機関等)部門においては産業構造の高度化やエネルギーの利用効率化努力等によって排出量がほぼ横ばいに止まっている一方、オフィスビルや商業施設等の床面積の増大、世帯数の増加や家庭における家電製品の使用の増加、自家用自動車の保有台数の増加等により、業務その他・家庭・運輸部門(自家用乗用車)における増加が著しいことを表しているといえます。こうした状況も踏まえ、今後は、「京都議定書目標達成計画」にしたがって産業、運輸、民生にわたる省エネルギー対策の抜本強化などに取り組んでいきます。

(4)比較的低いGDP、一人当たりの温室効果ガス排出量

国内総生産(GDP)当たりの温室効果ガス排出量水準を見ると、北米や豪州は高く、我が国は最も低くなっています(第113-1-7)。これは、我が国では、過去2回の石油ショックを通して、産業部門を中心としたエネルギー消費効率の改善が行われたために、エネルギー起源の二酸化炭素排出量が低い水準で推移していることに起因します。また特に、1980年代後半の二酸化炭素排出量は、エネルギー消費量と比較して、より低い水準で抑えられています。これは、炭素集約度(エネルギー当たりの炭素量)の高い石炭等の燃料から炭素集約度の低い天然ガス、二酸化炭素をほとんど排出しない原子力への発電部門による燃料転換に起因しています。さらに、経済成長とともに、エネルギー多消費産業から高付加価値産業(エネルギー消費あたりの生産額が高い産業)への産業構造の変化によっても、二酸化炭素排出原単位が改善しています。これらの要因から、一人当たりの温室効果ガス排出量においても、我が国は低い水準にあります(第113-1-8)。

【第113-1-7】主要先進国におけるGDP当たりの温室効果ガス排出量

【第113-1-7】主要先進国におけるGDP当たりの温室効果ガス排出量

【第113-1-7】主要先進国におけるGDP当たりの温室効果ガス排出量(xls形式:35KB)

【第113-1-8】主要先進国における1人当たりの温室効果ガス排出量

【第113-1-8】主要先進国における1人当たりの温室効果ガス排出量

【第113-1-8】主要先進国における1人当たりの温室効果ガス排出量(xls形式:36KB)

上記のように、我が国においては、様々な要因が相まって、エネルギー消費の効率化と低炭素化が図られてきた結果、主要先進国と比較した場合、二酸化炭素排出原単位はもっとも低い水準であるといえます。

(5)世界の二酸化炭素排出量の状況

温室効果ガスの中で二酸化炭素が地球温暖化に与える影響は、世界全体で見ても最も大きくなっています。2002年のエネルギー起源の二酸化炭素排出量は、全体の約1/4を占めるアメリカ、次いで中国が大きくなっています。しかし、アメリカは京都議定書を締結しておらず(2004年度末現在)、中国も温室効果ガスの削減義務が課されていません。

このため、現状では、京都議定書の温室効果ガスの削減義務を保有する国の二酸化炭素排出量は、世界の総排出量の31%を占めるにとどまっています(第113-1-9)。

【第113-1-9】国別二酸化炭素排出量(2002年)

【第113-1-9】国別二酸化炭素排出量(2002年)

【第113-1-9】国別二酸化炭素排出量(2002年)(xls形式:41KB)

これまでは、先進国から温室効果ガスの大半が排出されていましたが、今後は経済発展に伴う生活水準の向上、モータリゼーションの進展、産業部門の発達等が見込まれる中国、インド等の開発途上国の温室効果ガス排出量が急増することが予測されており、現在京都議定書の温室効果ガスの削減義務を保有する国のシェアは減少することが予想されます(第113-1-10)。IEAの見通しによれば、中国のエネルギー関連の二酸化炭素排出量は2002年の33億700万トンから2030年には71億4400万トンまで2倍以上に増大すると予測されています。中国における排出増加分だけで、世界全体の増加分の約3割を占めているのです。またアジア全体では世界の二酸化炭素排出増加の5割強を占めることになると予想されています(第113-1-11)。

【第113-1-10】IEAによる将来の地域別二酸化炭素排出量割合予測(2030年)

【第113-1-10】IEAによる将来の地域別二酸化炭素排出量割合予測(2030年)

【第113-1-10】IEAによる将来の地域別二酸化炭素排出量割合予測(2030年)(xls形式:47KB)

【第113-1-11】世界のCO2排出量の見込み

【第113-1-11】世界のCO2排出量の見込み

【第113-1-11】世界のCO2排出量の見込み(xls形式:33KB)

一方、アメリカは1998年に京都議定書に署名はしたものの、2001年3月に自国経済への悪影響と途上国の削減義務への不参加を理由に離脱を表明しました。その一方で、2002年2月には、GDP当たりの温室効果ガス排出量を削減させる目標の設定を行いました。また、アメリカは、気候変動対策として、技術を基軸とした解決を目指しており、国際的なイニシアティブとして、中長期的な観点から炭素隔離、水素利用、原子力などの革新的な技術開発を進めるとともに、最近では既存技術を活用した途上国でのメタン回収のパートナーシップ構築にも着手しています。

地球温暖化問題は、限られた国のみならず世界全体で取り組むべき問題であると言えます。将来の地球温暖化を防止するためには、これらの主要排出国による排出をどのように抑制するかが大きな課題であり、将来の枠組みにおいては、主要排出国が排出抑制に取り組むことを促すような実効ある枠組みの構築が不可欠です。

2.エネルギー利用に伴う大気汚染

(1)エネルギー利用に伴い発生する大気汚染

エネルギー利用に伴い発生する大気汚染として、以下のものがあります。

〔1〕酸性雨

主として化石燃料等の燃焼によって発生する工場からの排煙や、自動車の排気ガスには、硫黄酸化物(SOx)や窒素酸化物(NOx)が含まれています。これらは大気中で化学反応を起こして硫酸や硝酸に変わります。これが雲粒に取り込まれると硫酸雲や硝酸雲となり、強い酸性をもつ硫酸雨や硝酸雨となります。これらの雨を「酸性雨」と呼びます。酸性雨の被害はさまざまです。湖沼や河川等の陸水が酸性化され魚貝類が死ぬ、土壌の酸化によって樹木が枯れる等の影響が報告されています。

〔2〕光化学スモッグ

光化学オキシダント(オゾン等の強い酸化力をもった物質の総称)は、自動車や工場等から排出される窒素酸化物と揮発性有機化合物(VOC)が太陽の強い紫外線を受け、光化学反応が起こることにより発生します。気象条件によっては、光化学反応によって生成されたこれらの二次汚染物質が、大気中で拡散されずに(薄まらずに)滞留します。その結果、この光化学オキシダントが大気中で白く、もやがかかったような状態になることがあり、この状態を「光化学スモッグ」と呼びます。光化学オキシダントは強い酸化力をもち、高濃度においては目や喉を刺激して呼吸器系に影響を及ぼし、また農作物にも影響を与えます。

〔3〕粒子状物質

粒子状物質(PM)は、燃焼または熱源としての電気の使用時に発生する物質(ばいじん)と、物の粉砕、選別、その他の機械的処理または堆積に伴い発生し、飛散する物質(粉じん)に分けられています。ばいじんは主にボイラー施設、ディーゼル施設(自動車を含む)、廃棄物焼却炉、粉じんは粉砕機、コークス炉等から発生します。浮遊粒子状物質(SPM)は粒径が小さいため、空中に浮遊する粒子を人が吸った場合、呼吸器の最深部である肺胞まで到達し、急性・慢性的な疾患(急性気管支炎、気管支喘息、肺気腫等の呼吸器系疾患や心臓血管系疾患)を引き起こすことが懸念されています(第113-2-1、第113-2-2)。

【第113-2-1】汚染物質の発生メカニズム

【第113-2-1】汚染物質の発生メカニズム

【第113-2-2】汚染物質の環境への影響と対策

【第113-2-2】汚染物質の環境への影響と対策

(2)大気汚染の状況

我が国においては、大気環境を保全するため、1968年に「大気汚染防止法」が制定されました。この法律は大気汚染に関して国民の健康を保護するとともに、生活環境を保全することを目的としています。同法では固定発生源(工場や事業場)や自動車等から排出される大気汚染物質について、物質の種類ごと、排出施設の種類・規模ごとに厳しい排出基準等が定められています。この大気汚染防止法制定以来、工場や事業所における省エネ、脱硝・脱硫装置の設置及び燃料の低硫黄化等が進み、硫黄酸化物等の大気汚染物質の排出量の着実な削減が行われています(第113-2-3)。

【第113-2-3】二酸化硫黄濃度の年平均推移(一般局・自排局)

【第113-2-3】二酸化硫黄濃度の年平均推移(一般局・自排局)

【第113-2-3】二酸化硫黄濃度の年平均推移(一般局・自排局)(xls形式:36KB)

しかし、環境基準達成という観点からは、二酸化窒素、浮遊粒子状物質等による大気汚染は依然として厳しい状態です。発生の主原因である自動車排出ガス対策では、自動車単体からの排出ガス削減等で技術開発の進展がみられますが、自動車交通量の増大等によりその効果が十分に現れていないのが現状です。特に自動車から排出される窒素酸化物及び粒子状物質の特定地域における総量の削減等に関する特別措置法(自動車NOx・PM法)で定められている首都圏等の対策地域全体の二酸化窒素・浮遊粒子状物質の環境基準達成率は、依然として低い状況が続いています(第113-2-4、第113-2-5)。

【第113-2-4】対策地域における二酸化窒素の環境基準達成状況の推移(自排局)(1992年度~2003年度)

【第113-2-4】対策地域における二酸化窒素の環境基準達成状況の推移(自排局)(1992年度~2003年度)

【第113-2-4】対策地域における二酸化窒素の環境基準達成状況の推移(自排局)(1992年度~2003年度)(xls形式:37KB)

【第113-2-5】対策地域における浮遊粒子状物質の環境基準達成状況の推移(自排局)(1993年度~2003年度)

【第113-2-5】対策地域における浮遊粒子状物質の環境基準達成状況の推移(自排局)(1993年度~2003年度)

【第113-2-5】対策地域における浮遊粒子状物質の環境基準達成状況の推移(自排局)(1993年度~2003年度)(xls形式:32KB)

また、近年、アジア諸国においてもエネルギー使用の増加に伴う大気汚染が深刻な課題となっています。特に、世界第二のエネルギー消費大国であり、世界最大の石炭消費国である中国のSO2の排出量は世界一で、しかも増加を続けています。一方で、火力発電所をはじめとするほとんどの設備に脱硫等の環境対策が遅れていると言われています。また、中国の自動車保有台数は2002年末現在1950万台に達し、都市近郊でのNOxによる汚染も深刻になっています。このような環境汚染は中国各地で大気環境の悪化と深刻な酸性雨汚染をもたらしており、中国の発展、特に都市の経済と社会の発展にとって重大な障害といえるでしょう(第113-2-6)。

【第113-2-6】中国の大気汚染物質排出量

【第113-2-6】中国の大気汚染物質排出量

【第113-2-6】中国の大気汚染物質排出量(xls形式:29KB)

また、日本の硫黄酸化物の沈着量の大きな割合が中国等のアジア諸国からのものであることに示されるように、中国などアジアにおける環境問題は、地球の大気と水の循環を通じて広がり、それらの国内だけでなく、国際的にも大きな影響を与えています(第113-2-7)。

【第113-2-7】1999年1月15日~2月15日の間の日本の硫黄酸化物沈着量とその発生源地域別割合(推定)

【第113-2-7】1999年1月15日~2月15日の間の日本の硫黄酸化物沈着量とその発生源地域別割合(推定)

3.省エネ・環境対策等に向けたアジアでの取組の強化の必要性

第2節では、経済成長に伴い、アジアではエネルギー需要の大幅な増大による、エネルギーの輸入依存度の上昇等によりエネルギーセキュリティ問題が重要視されるようになっていることは既に述べました。一方で、エネルギー需要の増大は、アジアにおける環境問題の深刻化という課題がクローズアップさせています。特に、エネルギー消費が大幅に増加し、その供給の大半を石炭に依存する中国では、第1節でも述べたように環境問題が深刻な問題となりつつあります。第2節において我が国のエネルギー安全保障を確保する上でのアジア諸国との協力の必要性について言及しましたが、環境問題についても同様にアジアでの協力のフレームワークを強化していく必要があります。

前述のようにアジア諸国では、石炭火力発電所等の環境対応が十分ではないため、硫黄酸化物等の排出増加が見込まれる等大気汚染等の環境問題の深刻化が懸念されるとともに、石炭等の化石燃料の消費増大によるCO2排出量の大幅増加も見込まれています。このため、省エネルギーの推進、クリーン・コール・テクノロジーの普及等について、各国の一層の取組が必要とされています。また、中国では、エネルギー需要の著しい伸びに対応するため、原子力発電の導入を更に進めようとしています。さらに、太陽光、風力、地熱、水力、バイオマス等の再生可能エネルギーの利用を促進することも重要な課題です。我が国は、このような環境・省エネルギー分野、新エネルギー分野、原子力等のすぐれた技術やノウハウを有しており、アジア諸国等でこれらの活用がなされれば、地球温暖化対策への貢献という観点からも大きな効果を上げることが期待できます。このため、地球温暖化に関する将来の実効的な国際ルールの構築も視野に入れつつ、アジア諸国との関係では、〔1〕省エネルギー・環境に係る制度構築の慫慂、〔2〕省エネルギー・環境・新エネルギー推進の面における我が国エネルギー企業の国際競争力の強化や、その高度な技術・ノウハウに基づく国際的な事業展開の側面支援、〔3〕安全の確保を大前提とする原子力の利用についての積極的支援等を各国の状況に応じて重点的に進めることが不可欠です。