第2節 安定供給の確保を巡る課題

1.なぜエネルギーの安定供給確保が必要なのか

エネルギーは、国民生活や経済活動を営んでいく上で必要不可欠なものです。エネルギーは、日常生活で利用する自動車、暖房・冷房、給湯等の動力や燃料として、ガソリン、灯油、電気、都市ガス、LPガス等の形態で供給されています。また、工場やオフィス等でも動力等として幅広く消費されています。さらには、公共交通、情報通信、金融、医療等の利用・運営のため等にもエネルギーは必要不可欠なものです。

こうしたエネルギーが需要家の手元に届くまでには、様々な経路をたどります(序章図1.参照)。エネルギーは、もともと石油(原油)、天然ガス、石炭、ウラン等の天然資源の形で存在しており、我が国のようにこれらの資源が国内にあまりない国では、海外で地下資源として存在するものを開発し、タンカー等を利用して輸入する必要があります。これに加えて、例えば、石油の場合には、最終的にエネルギーとして利用するためには、原油を精製してガソリン、灯油等を作る石油精製工場が必要であるとともに、それらの石油製品を販売する給油所(ガソリンスタンド)や石油製品を運ぶためのタンクローリー等運搬手段も必要となります。天然ガスの場合、我が国では、液化天然ガス(LNG)という形で輸入しています。このため、海外の天然ガス田の近くに建設された天然ガスの液化設備から、液化したガスを運ぶための専用のタンカーを使って輸入し、輸入したLNGをもう一度ガスにするための設備や消費者までガスを運ぶパイプラインを通して需要家の手元までガスが届きます。また、電気を作るためには、石炭、天然ガス、石油等を燃料とする火力発電所やウラン等の原子燃料を用いる原子力発電所が必要であり、その電気を需要家まで運ぶには、送配電網が必要不可欠になります。

こうしてエネルギーは様々な経路を通って需要家に供給されることになるので、その経路のどこかに何らかの「問題」が起こればエネルギーの安定供給に支障が出ることになります。その場合、どのような問題が発生するのでしょうか。

まず第一に、エネルギーの供給が不足し、必要なエネルギーが行き渡らなくなる可能性が考えられます。その場合には、自動車の利用や暖房・冷房等、日常生活におけるエネルギー利用に制約が生じることもあるでしょう。また、エネルギーの不足から工場の操業や事業活動等を低下させざるを得なくなり、その結果、景気後退や失業の増大等経済全般が深刻な影響を受けることも考えられます。

また、第二に、エネルギー供給に何らかの問題が発生するとエネルギー価格が上昇することになります。もしエネルギー価格が急激・大幅に上昇すると、エネルギーを購入することを控えざるを得なくなり、結果として、利用が制約されることになります。また、経済全般については、エネルギー価格の高騰による物価上昇(インフレ)の発生等の悪影響が考えられます。さらに、価格高騰が海外エネルギー市場での価格高騰によってもたらされた場合、我が国のようなエネルギー輸入国はエネルギーの輸入代金が増大し、その支払いを通して国民所得が海外に移転・流出し、国内経済を冷やすこととなります。こうしてエネルギー価格の高騰も経済全般に大きな影響を及ぼすことになるのです。

したがって、円滑な国民生活や経済活動の運営・維持あるいは社会の持続可能な発展のためには、エネルギーの安定供給すなわち、必要十分な量のエネルギーを合理的で妥当な価格で安定的に確保することが必要です。

2.エネルギーの安定供給に関する我が国の特徴

国民生活や経済活動に極めて重要なエネルギーの安定供給に関して、原子力を含め2割という低いエネルギー自給率、エネルギー供給の5割を占める石油の9割近い中東依存度という特徴があり、国内や近隣地域に石油、天然ガス等の資源が豊富にある欧米諸国と比較してエネルギー供給構造は大変脆弱です。このため、このような特徴を踏まえた上で、エネルギーの安定供給を確保していくことは、優先度の高い極めて重要な課題です。

(1)極めて低いエネルギー自給率

我が国には、石油、石炭、天然ガス等の主要なエネルギー資源がほとんどありません。このため、我が国のエネルギー自給率は、主要先進国(G7)の中でも最低の4%(国際エネルギー機関(IEA)による。)となっています。この4%のほとんどは、水力発電によるものです。

なお、原子力の燃料となるウランは、一度輸入され、原子力発電用の燃料として使用されると数年間利用できること等から、原子力を「準国産エネルギー」と考えることができます。原子力を自給率に含めた場合でも、我が国のエネルギー自給率は19%と、イタリアに次いで低い水準にあります(第112-2-1)。

【第112-2-1】主要国のエネルギー自給率

【第112-2-1】主要国のエネルギー自給率

【第112-2-1】主要国のエネルギー自給率(xls形式:34KB)

(2)地理的制約

上記のように、我が国は国内にエネルギー資源がほとんどないことから、エネルギーの供給について海外からの輸入に依存しなければなりません。しかも、我が国はエネルギーの供給の約5割を石油に頼っていますが、その石油の供給のほぼ全てを輸入に依存しており、その上、原油輸入に占める中東依存度が約9割近くに達しています(第112-2-2)。これは、中国やインドネシア等の非中東産油国からの輸入が、これら産油国の国内需要の増加等により減少したこと、世界の石油埋蔵量の約3分の2が中東地域に存在し、アフリカ、中南米等の産油地域と比較すると中東地域は我が国からの距離が近く、石油の輸送に要するコスト等の観点でより経済性に優れること、等の理由によるものと考えられます。

【第112-2-2】我が国の原油の中東依存度の推移

【第112-2-2】我が国の原油の中東依存度の推移

【第112-2-2】我が国の原油の中東依存度の推移(xls形式:43KB)

一方、北米地域の石油供給が自地域(北米)での生産、中南米、欧州、アフリカ、中東からの輸入に分散されていること、欧州も自地域(欧州)での生産、旧ソ連、アフリカ、中東からの輸入に分散されていることと対照的な状況にあります(第112-2-3、第112-2-4)。

【第112-2-3】主要国におけるエネルギー供給構造(2002年)

【第112-2-3】主要国におけるエネルギー供給構造(2002年)

【第112-2-3】主要国におけるエネルギー供給構造(2002年)(xls形式:22KB)

【第112-2-4】世界の石油の主な移動

【第112-2-4】世界の石油の主な移動

また、北米、欧州では石油や天然ガスのパイプライン網や送電線が国境を越えて繋がっており、これらのエネルギーの輸出入がこれらのネットワークを通して容易に行える状況になっています(第112-2-5)。これに対して我が国は、島国であるという地理的な理由から、近隣のアジア諸国との間でエネルギーのネットワークは接続されていません。

【第112-2-5】欧州の天然ガスパイプライン網

【第112-2-5】欧州の天然ガスパイプライン網

3.我が国におけるエネルギー安定供給を巡る状況

(1)我が国におけるエネルギー安定供給を巡るこれまでの推移

それでは次に、我が国におけるエネルギーの安定供給を巡る状況がこれまでどのように変化・推移し、どのようなことが課題となってきたかを振り返ってみましょう。

〔1〕石油の依存度の高まり(高度成長期)

我が国の戦後復興期に主力エネルギーとして重要な役割を果たしたのは国産の石炭でした。しかし、その後の高度成長期には、急激に増大するエネルギー需要に対応して、特に中東からの輸入石油が急速に主力エネルギー源として成長しました。その結果、我が国の一次エネルギーにおける石油依存度、原油輸入における中東依存度は1970年にはそれぞれ72%、85%にまで高まりました。

そうした中で、2度にわたる石油ショックが発生し、エネルギー安定供給の問題が重要視されるようになりました。

〔2〕第一次および第二次石油ショック(1973年~80年代中頃)

1973年10月に勃発した第四次中東戦争とその後のアラブ石油禁輸によって発生した第一次石油ショックは、我が国の社会・経済に大きな影響を与えました。アラブ石油禁輸に際しては、実際には生じなかったものの、我が国での深刻な石油供給不足が懸念されるに至りました。原油価格はOPEC(石油輸出国機構)による価格引き上げによって危機前の1バレル2ドル前後の水準から10ドルを上回るまで大幅に上昇しました。石油供給不足に対する懸念と原油価格高騰によって経済活動の停滞や社会の混乱が生じ、一部では物資の不足が懸念される等の騒ぎさえ起こりました(第112-3-1)。こうした原油価格高騰の影響もあって、高度経済成長期には2桁台の伸びを記録してきた経済成長率は、1974年度にはマイナス(対前年度比0.5%減)となりました。

【第112-3-1】第一次石油ショック -灯油不足でできた行列-

【第112-3-1】第一次石油ショック -灯油不足でできた行列-

また、1978年のイラン革命を契機とする第二次石油ショックも我が国に大きな影響を及ぼしました。革命の混乱期には当時世界第2位の産油国であったイランの石油生産は完全に停止しました。さらに、イラン革命に続いて発生したイラン・イラク戦争を背景に1980年には、原油価格は1バレル35ドル台となりました。こうした原油価格高騰の影響もあって、1980年度の経済成長率は前年度の5.1%から2.6%に低下しました。

一次エネルギーにおける石油依存度が高く、中東への石油輸入依存度が高いことは、我が国におけるエネルギー安定供給にとって極めて深刻な問題であるとの認識が、2度にわたる石油ショックによって一気に高まったことから、原子力、石炭、天然ガスの導入促進等によるエネルギー源の多様化、省エネルギーの推進、国家石油備蓄の創設等、エネルギー安定供給確保に向けた取組が本格化しました(第112-3-2、第112-3-3)。

【第112-3-2】長期的原油価格の推移

【第112-3-2】長期的原油価格の推移

【第112-3-2】長期的原油価格の推移(xls形式:KB)

【第112-3-3】我が国の一次エネルギー供給の推移

【第112-3-3】我が国の一次エネルギー供給の推移

【第112-3-3】我が国の一次エネルギー供給の推移(xls形式:22KB)

〔3〕石油市場の安定化(1980年代後半~90年代)

1980年代の前半、国際石油市場では原油価格上昇の結果、石油需要の低迷、非OPECによる石油生産の増大が生じ、次第に需給緩和傾向が強まり、1986年には原油価格の大幅な下落も生しました。その後、産油国は、販売する原油価格を、市場におけるスポット価格に連動させる「市場連動方式」に移行させました。こうした中で湾岸戦争時を除き、1980年後半から1990年半ばまでは、原油価格は1バレル13~19ドルと概ね6ドル程度の変動幅の中で推移しました。また、石油のスポット市場や先物市場等国際石油市場が発達して石油の取引や価格形成に関する透明性が向上する等の構造的な変化が起こりました。

こうした状況下、1990年8月にはイラクがクウェートに侵攻し、湾岸危機が発生しました(第112-3-4)。そのため原油価格は一時期1バレル40ドル近くまで高騰しましたが、エネルギー源の多様化、石油備蓄の強化等、1970年代から先進諸国が進めてきた安定供給対策の結果として危機に対する抵抗力や備えが向上していたこともあり、第一次・第二次石油ショック時に比べて世界の石油需給への影響は限定的なものでした。また、この時は、イラクとクウェートからの石油供給が失われた分をサウジアラビアをはじめとする主要産油国が湾岸戦争の期間中に増産したこと、IEA(国際エネルギー機関)に加盟する主要消費国が民間備蓄の一部取り崩し等をはじめとする努力を協調して実施したこと等、エネルギー安定供給のためには国際的な協力・連携が非常に重要であることが改めて認識されました。

【第112-3-4】湾岸戦争(1991年1月17日)にさらされるバグダッド

【第112-3-4】湾岸戦争(1991年1月17日)にさらされるバグダッド

〔4〕原油価格の変動幅(ボラティリティー)の拡大(1990年後半以降)

1990年代後半頃から、原油価格の変動幅が拡大しており、アジア経済危機後の1998年に、10ドル/バレル(ニューヨーク市場、以下同じ)まで下落し、その後、米国の好調な需要等を背景に、2000年にはアメリカ市場で1バレル37ドル台まで高騰しましたが、その後、2001年後半までの米国経済の落ち込みにより、価格は急落し、2001年末には18ドル/バレル程度まで下落しました。その後、中東情勢の緊迫化等により、イラクに対する軍事行動開始前には38ドル/バレルまで高騰しましたが、軍事行動開始直後には再び下がっています。このように原油価格は、短期間に大きく変動しました。

(ア)供給弾力性の減少

原油価格は、主に、石油の需給バランスや石油需要に対する原油生産能力の余力や、供給能力の弾力性(石油精製能力や石油輸送能力、石油製品在庫等)の水準等が勘案され、国際市場で決まります。近年、産油国や国際石油企業は、コスト削減や効率追及の観点から、低在庫政策や投資抑制を行っています。このため、石油輸送能力や石油製品在庫が減少し、供給能力の弾力性が低下しています。加えて、こうした需給状況に対して石油先物市場の取引が過剰に反応して価格変動を増幅するとの指摘もあります。

こうしたことにより、原油価格の変動は、石油輸出国機構(OPEC)の生産調整といった上流側の要因にだけでなく、消費国における石油製品需給や天然ガス需給等、下流側の要因も大きく影響するようになりました。2000年以降のアメリカ市場で、ガソリン、暖房油、天然ガスの価格が高騰し、これに引きずられるように原油価格が高騰したことは、この実例といえます。

原油価格が不安定化することの最も大きな問題は、不確実性が高まるためにエネルギー部門における長期設備投資の実行が難しくなることです。設備投資が遅れると、すでに述べた需給の変動に対応するための供給能力の弾力性の脆弱化にもつながり、一種の悪循環に陥る可能性もあります。エネルギー分野における設備投資の確保の重要性についてはIEA等でも指摘されています。

(イ)国際情勢の変化

1990年代後半以降に原油価格に大きな影響を及ぼした国際情勢の変化としては、次のようなものがあります。

2001年9月11日に発生したアメリカにおける同時多発テロは、国民・社会の安全・安定や経済に対するテロの脅威を再認識させ、その一環としてエネルギーの安定供給に対する重要性を再認識させるに至りました(第112-3-5)。これによりアメリカでは一時的に景気が後退し、原油価格は大幅に低下しましたが、その後、OPEC及び非OPECの協調減産、中東等の情勢悪化、アメリカの景気回復等から、2002年始めから原油価格は上昇を始めました。

【第112-3-5】米同時多発テロ(2001年9月11日)-崩壊した世界貿易センタービル-

【第112-3-5】米同時多発テロ(2001年9月11日)-崩壊した世界貿易センタービル-

また、2002年12月にはベネズエラでゼネストが発生、石油生産が大幅に低下する等の事態も起り、原油価格を更に押し上げる要因となりました。

さらに、2003年3月には対イラクに対する軍事行動が開始されました。軍事行動開始による国際石油市場の混乱、原油価格の更なる高騰が懸念されましたが、軍事行動開始後、IEA加盟国が協調して必要があれば備蓄放出の用意があるとのメッセージを繰り返し送ったこと、中東産油国を中心にOPECが市場安定化のため増産を行ったこと、軍事行動が早期に終結するとの観測があったこと、供給途絶のおそれが限定的であったこと(イラクによる原油の輸出量はOPEC生産量の約5%)等もあり、対イラク軍事行動の開始直前に1バレル38ドル(米国市場の原油価格)と、2000年の高騰時のレベルまで高騰していた原油価格は安定を取り戻し、市場の大きな混乱は回避することができました。日本国内でも対イラク軍事行動に際して大きな混乱がなかったことは、国内消費量の約170日分に相当する石油備蓄が存在することによる安心感に加え、第一次、第二次石油ショック、湾岸危機の経験を踏まえ、国民が冷静に対処したことによるものと考えられます。

(2)最近のエネルギー価格の高騰

〔1〕構造的要因等による原油価格の上昇

2004年には、前年から上昇を続けていた原油価格は激しい変動を繰り返しながら、さらに高騰しました。2004年の10月22、26日にはWTI原油の価格が史上最高値(当時)である55.17ドル/バレルを記録し、2004年のWTI原油の平均価格も41ドル/バレル台と過去最高水準となっています。さらに、2005年に入ってもWTI原油価格は、再び上昇傾向にあり、4月1日には史上最高値を更新し(57.27ドル/バレル)、その後も高い水準で推移しています(第112-3-6)。ドバイ原油価格も4月4日に史上最高値を更新しており(50.20ドル/バレル)、また、日本の原油の輸入価格(CIF価格)は、2005年3月には、42.51ドル/バレルを付けています。

【第112-3-6】国際石油市場での原油価格の推移

【第112-3-6】国際石油市場での原油価格の推移

【第112-3-6】国際石油市場での原油価格の推移(xls形式:307KB)

この原油価格高騰は、中国等をはじめとする世界の石油需要の増加、80年代後半の低い原油価格を背景とした石油生産投資ペースの鈍化といった構造的要因と、産油国における供給リスクの顕在化、自然災害、欧米の厳しい寒波等といった短期的要因に、石油市場への投機資金の流入が加わり、これらの諸要因が複合的に作用した結果、もたらされたものと考えられています。

しかし、今回の原油価格高騰は、以下の要因等から第一次石油ショック、第二次石油ショックの際に比べ、我が国の経済に与える影響は相対的に小さいものとなっています。

(ア)省エネルギー政策、エネルギー源多様化政策の推進、産業構造の変化により、(i)~(iii)に見られるように我が国の経済活動における石油依存度は低下し、原油価格上昇による影響を受けにくい構造に変化しています。

(i)総輸入額に占める原油・石油製品輸入額の割合は、第一次、第二次石油ショック時に比べ半分以下に低下しています。

(ii)石油消費量・実質GDP比率(同じGDPを生み出すのに必要な石油)は、第一次石油ショック時に比べ大幅に減少しています。

(iii)総合卸売物価における原油・石油製品のウェイトは第一次、第二次石油ショック時の半分以下に低下しています。

(イ)現在は、過去の石油ショック時に比べて為替レートが円高傾向にあるため、円ベースでの輸入価格(実質CIF価格)への影響は小さくなっています。

さらに、石油備蓄の水準も第一次、第二次石油ショック時に比べ、大幅に向上しており、エネルギーセキュリティ面でも強化がなされています(第112-3-7)。

【第112-3-7】過去の石油ショック時との比較

【第112-3-7】過去の石油ショック時との比較

【第112-3-7】過去の石油ショック時との比較(xls形式:25KB)

また、産業への影響については、規模・業種によって違いはあるものの、2004年8月、2005年3月の調査では、深刻なものとはなっていませんでした。しかし、昨年来の原油価格上昇により、原油及び石油製品を多く使用する素材関連の業種では、コスト上昇による直接的な影響が懸念されており、その他の業種でも、電力や原材料価格の上昇を通じた二次的な影響や海外経済の動向を通じた影響が懸念されています。影響は未だ顕在化していない面もあると見られ、今後も原油価格の上昇が継続する場合には、間接的な影響も含め、企業経営・収益への影響が懸念されることから、中東情勢、内外の需給、価格の動向とともに、それが我が国経済・産業に及ぼす影響については、引き続き注意することが必要です。

〔2〕各種エネルギー価格の上昇

近年、原油だけでなく、天然ガス、石炭、LPガス、ウラン等全てのエネルギーの価格が上昇しています。日本への輸入価格等を見ると、2002年1月の価格と比較して、全てのエネルギー源について上昇しています(第112-3-8)。

【第112-3-8】一次エネルギー価格の上昇

【第112-3-8】一次エネルギー価格の上昇

【第112-3-8】一次エネルギー価格の上昇(xls形式:48KB)

天然ガス、石炭、LPガスの価格の高騰の背景としては、中国等をはじめとする需要の増加、原油価格上昇からの影響等が考えられています。ウランの価格上昇の要因については、2003年4月のマッカーサーリバー鉱山の事故、ロシアが解体核を希釈した低濃縮ウランの一部を国内で消費する方針を表明したこと、余剰在庫の減少等主に供給面による事情等が考えられています。

また、国内のガソリン、灯油、軽油、電気、ガス(都市ガス、LPガス)等の二次エネルギーの価格も一次エネルギーほどではないものの、その影響を受けて、上昇を続けています(第112-3-9)。

【第112-3-9】二次エネルギー価格の上昇

【第112-3-9】二次エネルギー価格の上昇

【第112-3-9】二次エネルギー価格の上昇(xls形式:50KB)

(3)国内でのエネルギー供給システムの安定性と信頼性の確保

これまで、エネルギーの安定供給での問題としては、第一次石油ショック、第二次石油ショックのように国際的な要因がクローズアップされてきました。しかしながら、近年、国内的な要因でエネルギーの安定供給に懸念を生む事態も生じています。

2003年には、我が国では、原子力発電所の自主点検検査記録不正問題等に端を発した関東圏における電力需給の逼迫問題が発生しました。また、海外でも、ニューヨークを含む北米北東部やイタリア、イギリス等欧州において停電が発生しました。欧米、特にアメリカにおけるガソリン、暖房油等石油製品価格の高騰、天然ガス需給の逼迫と価格高騰等もその事例として挙げられます。

2004年においても、海外においては、例えば、大型ハリケーンの「アイヴァン」がメキシコ湾岸の産油施設に損害を与える等して、それが米国におけるエネルギー価格の高騰の要因の一つとして指摘されています。また、日本国内においても、2004年10月の「新潟県中越地震」「台風第23号」等大きな災害が相次ぎ、電力やガス等のエネルギーのインフラの損傷等によるエネルギーの供給停止等の事態が発生しました。

4.アジアのエネルギー需要増を巡る課題と対応

(1)経済成長とエネルギー需要の増大・相互関係の進化

〔1〕経済成長とエネルギー需要の増大

最近のエネルギー価格高騰の一因として、中国等のエネルギー需要の増大があげられていることに代表されるように、近年アジアのエネルギーの需要の増大が世界のエネルギー需給やエネルギーの国際市場に大きな影響を与えるようになっています。これ以下、アジアのエネルギー需要の増大を巡る課題と対応について、概説することとします。

アジアでは、特に発展途上国を中心に、活発な経済成長が持続してきました。1971年から2001年にかけて、アジア主要10カ国の実質GDPの合計は、2兆6990億ドルから8兆9570億ドルまで、年平均4.1%で増加しています(第112-4-1)。この間、特に堅調な経済成長を示したのが中国(8.5%)、韓国(7.2%)、台湾(7.5%)、シンガポール(7.6%)、マレーシア(6.8%)、タイ(6.3%)等です。

【第112-4-1】アジア主要国の実質GDPの推移

【第112-4-1】アジア主要国の実質GDPの推移

【第112-4-1】アジア主要国の実質GDPの推移(xls形式:38KB)

アジアでは人口も着実に増加しています。1971年から2001年にかけてのアジア主要10カ国の総人口は17億6200万人から28億7700万人へと年平均1.6%で増加してきました(第112-4-2)。この30年間でアジア全体として11億人以上も人口が増加したことになります。その中でも特に大きな人口を抱えているのが、中国、インドであり、2001年の人口は各々12億7200万人、10億3200万人となっています。

【第112-4-2】アジア主要国の人口の推移

【第112-4-2】アジア主要国の人口の推移

【第112-4-2】アジア主要国の人口の推移(xls形式:38KB)

一人当たりの一次エネルギー消費量について見ても着実に増加しているほか、GDP当たりの一次エネルギー消費量についても従来エネルギー効率が悪かった中国以外は増加傾向にあります(第112-4-3、第112-4-4)。

【第112-4-3】アジア主要国のGDP当たりのエネルギー消費量の推移

【第112-4-3】アジア主要国のGDP当たりのエネルギー消費量の推移

【第112-4-3】アジア主要国のGDP当たりのエネルギー消費量の推移(xls形式:36KB)

【第112-4-4】アジア主要国の一人当たりの一次エネルギー消費量の推移

【第112-4-4】アジア主要国の一人当たりの一次エネルギー消費量の推移

【第112-4-4】アジア主要国の一人当たりの一次エネルギー消費量の推移(xls形式:39KB)

アジアの一次エネルギー消費は1971年の7億3600万石油換算トン(以下、TOEと略)から2003年の27億7450万TOEまで、年平均4.2%で堅調に増加しています。この間、世界全体での一次エネルギー消費増加率は年平均2.0%であり、アジアでは世界平均を大きく上回るエネルギー消費増加が持続してきました。また、この間のアジアでの一次エネルギー消費増加分(20億3850万TOE)は、世界全体でのエネルギー消費増分の実に45%に相当しています。こうした堅調な需要増加によって、アジアのエネルギー消費が世界全体に占めるシェアも1971年の14.1%から2003年には28.5%へと大きく拡大しました(第112-4-5)。

【第112-4-5】世界の地域別一次エネルギー消費の推移

【第112-4-5】世界の地域別一次エネルギー消費の推移

【第112-4-5】世界の地域別一次エネルギー消費の推移(xls形式:48KB)

国別に見ると、大幅にエネルギー需要が増加したのは、韓国、インド、中国、ASEAN諸国等です。2003年時点で見ると、アジアで最大のエネルギー消費国は中国(消費量11億9930万TOE、アジア中のシェア45.2%)で、あり、以下、わが国(同5億480万TOE、同シェア18.2%)、インド(同3億4530万TOE、同シェア12.4%)、韓国(同2億1200万TOE、同シェア7.6%)、インドネシア(同1億700万TOE、同シェア3.9%)となっており、この上位5カ国を合計すると、アジアのエネルギー消費全体の8割強を占めることになります(第112-4-6)。

【第112-4-6】アジアの国別一次エネルギー消費の推移

【第112-4-6】アジアの国別一次エネルギー消費の推移

【第112-4-6】アジアの国別一次エネルギー消費の推移(xls形式:54KB)

2003年時点でのアジアのエネルギー消費をエネルギー源別に見ると、石炭が12億5400万TOE(シェア45.2%)で第1位、次いで石油10億410万トン(同36.2%)、天然ガス2億8310万TOE(同10.2%)、水力1億2830万TOE(同4.6%)、原子力1億470万TOE(同3.8%)となっています。このように、アジアのエネルギー消費においては、石炭と石油で全体の80%強のシェアを占めていて、化石燃料に依存したエネルギー消費構造となっていることがわかります(第112-4-7)。

【第112-4-7】アジアのエネルギー源別消費の推移

【第112-4-7】アジアのエネルギー源別消費の推移

【第112-4-7】アジアのエネルギー源別消費の推移(xls形式:47KB)

エネルギー源別の消費増加率を見ると、アジアで最大のエネルギー源である石炭は1971年から2003年にかけて年平均4.2%の増加を示しました。この増加率はエネルギー消費全体の伸びとほぼ同じであったため、一次エネルギー源における石炭の構成比は1971年の45.7%から2003年の45.2%へとほぼ横ばいで推移しています。

一方、原子力、天然ガスの増加率は、この間各々13.5%、9.8%と高く、そのため、各々の一次エネルギー全体に占める構成比は1971年から2003年で0.2%から3.8%へ、1.9%から10.2%へと大きく増大しています。なお、石油消費の増加率は3.4%と一次エネルギー全体の伸びより低くなったため、一次エネルギー全体における構成比は1971年の46.8%から2003年の36.2%へと低下しています。

*アジアの範囲

BP統計における「アジア太平洋」の定義からオセアニア(オーストラリア、ニュージーランド)を除いたもの(ブルネイ、カンボジア、中国(香港含む)、インドネシア、日本、ラオス、マレーシア、モンゴル、北朝鮮、フィリピン、シンガポール、アフガニスタン、バングラデシュ、インド、ミャンマー、ネパール、パキスタン、スリランカ、韓国、台湾、タイ、ベトナム、パプアニューギニア他。)。以下、この節において数値を伴う場合において、特段の標記ない場合同じ。

今後もアジアではエネルギー需要増加が持続する可能性が高いと考えられています。IEAの最新のエネルギー需給見通し(World Energy Outlook 2004)では、アジアのエネルギー需要(非商用エネルギー(籾殻、牛ふん等)需要を含む)は2002年の31億4000万TOEから年平均2.3%で増加し、2030年には59億6700万TOEに達するものと予測されています。この見通しでは、2030年までの世界全体でのエネルギー需要増加分(61億4200万TOE)のうち、アジアでの増加分が46%を占めると見込まれており、今後もアジアでのエネルギー需要増加が世界全体での増加の中心となることが示されています(第112-4-8)。

【第112-4-8】世界のエネルギー需要見通し

【第112-4-8】世界のエネルギー需要見通し

【第112-4-8】世界のエネルギー需要見通し(xls形式:31KB)

アジア内での地域別に見ると、特に中国の需要増大が著しいと予想されており、2002年の12億4200万TOEから2030年には25億3900万TOEまで年平均2.6%の増加が予想されています。この結果、中国でのエネルギー需要増加分だけで、世界全体での需要増分の21%を占めることになります。 

また、エネルギー源別に見ると、天然ガスの堅調な需要増加が予測されており、一次エネルギーにおけるシェア拡大が見込まれる一方、石炭需要の伸びは一次エネルギー全体の伸びとほぼ同じで、構成比はあまり変化しないものと見られています(第112-4-9)。

【第112-4-9】アジアのエネルギー需要見通し

【第112-4-9】アジアのエネルギー需要見通し

【第112-4-9】アジアのエネルギー需要見通し(xls形式:43KB)

ここでアジア主要国(日本、中国、韓国、インドネシア)のエネルギー効率やエネルギー消費の構造について見てみましょう。

各国のエネルギー分析用産業連関表より、財・サービスの生産に要するエネルギー消費原単位を作成し、日本とアジア各国の1995年(中国は1997年)における第一次、第二次、第三次産業別の産業別エネルギー消費原単位と国内生産額シェアを試算しました(第112-4-10)。

【第112-4-10】財・サービスの生産に要するエネルギー消費原単位と国内生産額シェア(1995年)

【第112-4-10】財・サービスの生産に要するエネルギー消費原単位と国内生産額シェア(1995年)

なお、ここでは、原単位の分子には財・サービスの生産に要したエネルギー消費量(石油換算トン、toe)、分母には生産額をドル換算したものを用い、物価格差を取り除いて生産額を評価すべきである、為替レートが事実上固定されている国がある、等の理由により、ドル換算には購買力平価※7を用いました。

※7:購買力平価(PPP:Purchasing Power Parity)財やサービスの価格は通貨の購買力を示しているため、同一の財・サービスの価格を基に2国間の為替相場を決めるという考えによって求められた外国為替交換レート。実際には、世界銀行の発表するGDPとGDPの購買力平価換算値から計算されており、ここでの分析では日本(1995年)が176円/ドル(当時の実際の為替相場は、94.06円/ドル)、中国(1997年)が1.9968元/ドル(同8.28982元/ドル)を用いている。

これによると、財・サービスの生産に要するエネルギー消費原単位が全産業平均で最も低いのがインドネシア、次いで日本、韓国、中国の順となっています。さらに、産業を大まかに第一次、第二次、第三次産業に分けて、それぞれの特色を見ることにします。

第一次産業では、日本と韓国のエネルギー消費原単位が、中国やインドネシアと比較して高くなっています。これは、日本や韓国においてビニールハウス栽培や養殖等、エネルギーで温度管理を行う農業・漁業が普及していることが背景にあると思われます。

第二次産業のエネルギー消費原単位は、インドネシアが一番低く、次いで日本、韓国、中国の順となっています。この理由の一つに、産業構造の違いがあると考えられます。インドネシアでは原単位の低い軽工業が第二次産業の国内生産の半分を占めており、それが第二次産業全体の原単位を押し下げていると思われます。日本と韓国は産業構造が比較的似ていることもあり、原単位もほぼ同じ水準となっています。中国は軽工業のシェアが約4割となっているのにもかかわらず、第二次産業全体の原単位が高くなっています。これは各産業のエネルギー効率が悪いことに起因すると思われます(第112-4-11、第112-4-12)。

【第112-4-11】一貫製鉄所のエネルギー原単位

【第112-4-11】一貫製鉄所のエネルギー原単位

【第112-4-11】一貫製鉄所のエネルギー原単位(xls形式:26KB)

【第112-4-12】石炭、石油、ガス火力発電効率の比較(電気事業者)

【第112-4-12】石炭、石油、ガス火力発電効率の比較(電気事業者)

【第112-4-12】石炭、石油、ガス火力発電効率の比較(電気事業者)(xls形式:51KB)

第三次産業のエネルギー消費原単位は、日本が最も低く、次いでインドネシア、中国、韓国の順となっています。韓国の原単位が高い理由の1つには地理的な要因(冬が寒いため暖房・給湯需要が原単位の上昇に寄与)があると考えられます。

〔2〕アジア大の経済関係の深化とエネルギー消費

(ア)アジア内のエネルギー貿易の動向

前述のように、増加するエネルギー需要に対応して、かつてアジアのエネルギー輸出国の代表であった中国、エネルギー輸入国の代表である日本及びその他の地域とのエネルギーの貿易の推移を追うことにより、アジア内でのエネルギー貿易の状況がどのように推移しているかについて、見てみましょう。

1990年、1995年、2003年の日本、中国、その他の地域のエネルギー貿易について、原油、石油製品、石炭を見てみると、日中間の石油貿易は減少する一方で、中国とその他の地域の石油貿易は増加しています。また、石油製品については、その他の地域と中国との貿易が増加しています。逆に石炭の貿易については、日中間の貿易が増加しています(第112-4-13)。

【第112-4-13】日本・中国の原油、石油製品、石炭貿易フロー

【第112-4-13】日本・中国の原油、石油製品、石炭貿易フロー

これを我が国へのエネルギーの輸入という観点で見てみましょう。我が国は第一次石油ショック以来、石油の安定供給を確保するために輸入源の多様化を進め、中国、インドネシア、マレーシア等アジアの産油国からの原油輸入を拡大しました。しかし、1990年代後半に入ると、アジア諸国は経済発展に伴う国内石油消費の拡大と原油生産の頭打ちによって、輸出量を減少させました。我が国の原油輸入量に占める中国とASEANからの輸入のシェアは、1990年度の23.5%から2003年度の7%まで急減しました(第112-4-14)。

【第112-4-14】我が国のアジアからの石油輸入の推移

【第112-4-14】我が国のアジアからの石油輸入の推移

【第112-4-14】我が国のアジアからの石油輸入の推移(xls形式:45KB)

これに対し、我が国のLNGの輸入先はアジア地域のインドネシア・マレーシアが主体となっており、中東依存度は石油ほど高くありません。

しかし、近年はアジアからの輸入量が頭打ちとなる一方で、LNG輸入量の増大とともにカタールやアラブ首長国連邦などの中東諸国からの輸入が拡大しており、インドネシアとマレーシアからの輸入依存度は1990年度の67.6%から2003年度の50.7%と減少傾向にあります。

一方、石炭の輸入量は1990年代以降順調に拡大し、特にアジア(主に中国とインドネシア)からの輸入依存度は1990年度の5.5%から2003年度の30.2%まで急上昇しています(第112-4-15)。

【第112-4-15】我が国のアジアからの石炭輸入の推移

【第112-4-15】我が国のアジアからの石炭輸入の推移

【第112-4-15】我が国のアジアからの石炭輸入の推移(xls形式:39KB)

このようにアジア内でのエネルギー貿易の状況は、エネルギー毎に違った状況にあります。

(イ)経済関係の密接化

経済成長とともに、アジア域内の経済関係の密接化も着実に進展しています。これを貿易面、投資面で見てみましょう。

貿易の面では、日本とNIEs (韓国、台湾、シンガポール)、日本とASEAN4諸国(タイ、インドネシア、マレーシア、フィリピン)、日本と中国の間の貿易量が急速に拡大しています(第112-4-16)。

【第112-4-16】日本及び東アジア各国・地域間の輸出動向

【第112-4-16】日本及び東アジア各国・地域間の輸出動向

1990年代に、東アジア諸国・地域は、積極的に海外からの直接投資を受け入れ、先進生産設備・技術を導入し、製造業の発展を促進しました。その結果、より付加価値の高い工業品の生産が拡大し、工業品の貿易量が盛んに行われます。一般機械、電気機械をはじめとして工業品貿易の拡大が見られました。1990年から2000年の10年間に、一般機械の東アジア域内の輸出合計額は359億ドルから1,204億ドル(年平均13%増)まで、電気機械は同436億ドルから1,929億ドル(同16%増)まで拡大しました。

また、1990年代には域内の直接投資が拡大しました。1990年代前半に比べ後半は域内からの投資が271億ドルから351億ドルまで拡大しました。域内からの直接投資額は受け入れ投資額全体の27%から29%まで拡大し、投資面における域内の緊密化が進んでいます。具体的には、日本を中心に日本-NIEs(15億ドル→33億ドル)、日本-ASEAN4諸国(60億ドル→73億ドル)、日本-中国(31億ドル→35億ドル)と投資が拡大しているほか、NIEs諸国・地域間(1億ドル→10億ドル)、ASEAN4諸国間(8億ドル→16億ドル)等、拡大しています(第112-4-17)。

【第112-4-17】日本及び東アジアにおける直接投資の動向

【第112-4-17】日本及び東アジアにおける直接投資の動向

(ウ)財の貿易を通じたエネルギーの誘発について

このような経済関係の緊密化に対応し、財の貿易を通じたエネルギーの誘発がどのようになっているかを見るために、前述のエネルギー分析用産業連関表を用いて、韓国、中国、インドネシア各国における対日輸出(および、対日以外の輸出、内需)による生産誘発額、エネルギー消費誘発量を推計しました(第112-4-18)。

【第112-4-18】対日輸出によるエネルギー消費誘発量

【第112-4-18】対日輸出によるエネルギー消費誘発量

【第112-4-18】対日輸出によるエネルギー消費誘発量(xls形式:32KB)

対日輸出額のシェアを見ると、韓国と中国では15~20%、インドネシアでは30~40%で、日本は最大もしくは第2位の輸出相手国となっています。グローバル化の進展により日本以外への輸出も増加しているため、対日輸出額のシェアは1995年(中国は1997年)では1990年に比べ縮小していますが、いずれの国も対日輸出の額自体は増加しています。

このような対日輸出による生産誘発は韓国、中国では全体の3~5%、インドネシアでは6~8%、対日輸出によるエネルギー消費の誘発は韓国、中国では全体の3~7%、インドネシアでは5~12%になっています。生産誘発額、およびエネルギー消費誘発量は、輸出動向(と各国の産業構造、エネルギー消費原単位)を反映しますので、輸出額同様に対日輸出による誘発は全体のシェアとしては減少していますが、生産誘発額、エネルギー消費誘発量自体は増加しています。

また、対日輸出による1995年(中国は1997年)の各国のエネルギー消費誘発量は、韓国で約600万トン、中国で約2700万トン、インドネシアで約200万トンに達しており、このうち中国の2,700万トンは、マレーシアの最終エネルギー消費量である2,600万トンを凌駕しています。

このように経済関係の密接化とともにアジアでは、エネルギー需要においても関係が拡大していると考えられます。

なお、仮に同様の財を我が国において生産するとして、それに要するエネルギー消費を推計したところ、エネルギー消費効率の観点からこれらの国において生産を行うよりも低く抑えることができるとの結果が出ています。このため、今後、我が国の高効率発電や省エネルギー技術等のノウハウがこれらの国におけるエネルギー消費効率の改善に貢献できる可能性があります。

(2)アジアのエネルギー輸入依存および中東依存の高まり等

これまで見てきたとおり、アジアにおいては、経済成長に伴いエネルギー需要の大幅な増加が見られます。これに伴い、エネルギー安定供給上の課題も浮上しています。

〔1〕エネルギー輸入依存の上昇

現在、アジア全体でエネルギーの輸入依存の上昇が進展しています。アジア全体でのエネルギーの生産と域外からの輸入の動向を見てみましょう。

まず、エネルギー生産の状況を見ると、アジアにおいては、石炭については中国やインド、石油については中国やインドネシア等、天然ガスについてはインドネシアやマレーシア等が主要な生産国となっています。

2003年時点でのアジアの一次エネルギー生産を国別に見ると、中国が第1位(11億1640万TOE、シェア56%)であり、次いでインド(2億5770万TOE、シェア13%)、インドネシア(1億9560万TOE、シェア10%)、マレーシア(8860万TOE、シェア5%)、日本(7570万TOE、シェア4%)等の順になっています。

ここからエネルギー生産の面でも、中国とインドの存在が非常に大きいことがよくわかります。また、2003年のアジアのエネルギー生産をエネルギー源別に見ると、石炭が最大のエネルギー源(11億2590万TOE、シェア57%)であり、次いで石油(3億4910万TOE、シェア18%)、天然ガス(2億4470万TOE、シェア13%)、水力(1億2850万TOE、シェア7%)、原子力(1億460万TOE、シェア5%)の順になっています(第112-4-19)。

【第112-4-19】アジアの一次エネルギー生産(2003年)

【第112-4-19】アジアの一次エネルギー生産(2003年)

【第112-4-19】アジアの一次エネルギー生産(2003年)(xls形式:44KB)

次に、このような一次エネルギー生産状況の経年変化を見てみましょう。1981年時点でのアジアの一次エネルギー生産は石油、石炭、天然ガス、原子力、水力の合計で7億8060万TOEとなっていました。この生産量は、同年のアジアの一次エネルギー消費量(10億9470万TOE)を下回っています。そのため、アジア全体で見ると、1981年には一次エネルギー合計で3億1410万TOEの純輸入となっていました。その後、アジア全体のエネルギー生産は緩やかに増加を続け、2003年には19億5280万TOEになりました(第112-4-20)。

【第112-4-20】アジアのエネルギー需給バランスの推移

【第112-4-20】アジアのエネルギー需給バランスの推移

【第112-4-20】アジアのエネルギー需給バランスの推移(xls形式:41KB)

この間の増加の内訳を見ると、増加率としては天然ガス、原子力が年率7.4%、7.1%と高く、以下、石炭、水力、石油の順になっています。ただし、生産量の増加でみると

石炭が最大で、この間の生産増加分は6億9800万TOEと全エネルギー生産増加分の60%を占めています。

このように、徐々にエネルギー生産が増加してきましたが、エネルギー消費の伸びに追いつかず、アジア全体としての2003年時点でのエネルギー純輸入量は8億2170万TOEに達しました。エネルギー純輸入量は、1981年比で2倍強となっています。また、アジア全体で見ると、エネルギー純輸入をエネルギー消費で除したエネルギー純輸入依存度は2003年には29.6%に達しています。

以上は、アジアの一次エネルギー需給を全体として見たバランスですが、その状況をエネルギー源ごとに見ると、大きな違いがあることがわかります。例えば、最大のエネルギー源である石炭の場合、2003年の消費量12億5420万TOEに対して、生産量は11億2580万TOEで、純輸入量は1億2840万TOEとなっています。

輸入依存度は10.2%であり、アジア域内の生産が供給の主力であることがわかります。天然ガスも同様で、消費量2億8310万TOEに対して生産量は2億4490万TOE、純輸入量が3820万TOEで輸入依存度は同13.5%となっています。

これに対し、石油の場合、消費量10億410万トンに対して域内の生産量は3億4910万トンにとどまっています。その結果、石油の純輸入量は6億5500万トンに達しており、アジアの石油輸入依存度は65.2%と、圧倒的に域外輸入に依存している構造となっています。前述のように、アジアではエネルギー需要の増大とともにエネルギー全体として輸入依存度が徐々に上昇していますが、国産エネルギーと考えられる水力、原子力の他、石炭と天然ガスも域内生産が主力であり、輸入依存が高いのは石油である、という状況にあります(第112-4-21)。

【第112-4-21】アジアのエネルギー源別需給バランス(2003年)

【第112-4-21】アジアのエネルギー源別需給バランス(2003年)

【第112-4-21】アジアのエネルギー源別需給バランス(2003年)(xls形式:30KB)

そこで次に、アジアの石油需給バランスの推移を見ると、アジアの石油需要は1990年の6億1800万トンから年平均3.8%で増加し、2003年には10億410万トンに達しています。2003年時点で見ると、アジア最大の石油消費国は中国(消費量2億7520万トン、シェア27.4%)であり、次いで日本(2億4870万トン、24.8%)、インド(1億1330万トン、11.3%)、韓国(1億570万トン、10.5%)となっています。

なお、1990年から2003年にかけての年平均増加率で見ると、中国が7.3%と最大の伸びを示しており、韓国6.0%、インド5.3%等経済成長の著しい国での石油需要の増加が特に大きいことがわかります。一方、我が国の石油需要は同期間でほぼ横ばいにとどまっており、その他のアジア諸国とは対照的な動きとなっています。

一方、石油の生産状況を見ると、アジアには中国(2003年の石油生産量1億6930万トン)、インドネシア(同5750万トン)、マレーシア(同3880万トン)、インド(同3670万トン)等の産油国があります。しかし、基本的には各国とも生産量はほぼ横ばいから微増傾向にとどまっており、アジアの石油生産量は1990年の2億9670万トンから2003年には3億4910万トンまで増加しましたが、この間の年平均増加率はわずか1.3%であり、石油消費の伸びに追いつかない状況となっています。このためアジアの石油純輸入量は1990年の3億2130万トンから2003年には6億5500万トンへとほぼ倍増し、石油消費に占める純輸入の比率(石油輸入依存度)は同期間で52.0%から65.2%へと上昇しています。

また、注目すべき点として、アジアの石油輸入の中心が中東からの輸入であり、石油輸入の増大と共に中東依存を高めているということがあります(第112-4-22)。1990年のアジアの石油輸入は4億2280万トンで、そのうち中東からの輸入は3億1440万トンでしたが、2003年には中東からの石油輸入量は5億9390万トンまで増大しました。この間における石油輸入の増分の約7割は中東からの輸入増加によって賄われたことになりますが、2003年時点におけるアジアの石油輸入に占める中東依存度は71.4%です。他地域と比較すると、アジアの中東依存度は、アメリカ(20.8%)や欧州(26.0%)等と比べて圧倒的に高いという特徴が浮き彫りになります(第112-4-23)。

【第112-4-22】アジアの石油輸入源

【第112-4-22】アジアの石油輸入源

【第112-4-22】アジアの石油輸入源(xls形式:32KB)

【第112-4-23】石油輸入における中東依存度の国際比較(2003年)

【第112-4-23】石油輸入における中東依存度の国際比較(2003年)

【第112-4-23】石油輸入における中東依存度の国際比較(2003年)(xls形式:31KB)

以上のように、アジアでは、石油の輸入依存の上昇が進展していますが、40年間新規油田発見は低下し続け、ここ20年間では、発見資源量の増加は生産量を下回る状態にある等、資源量の頭打ちの懸念もあります。

さらに、アジア地域は、域内に石油の主要な供給源がないこと、輸送コストの問題といった地理的制約から、今後も石油の中東依存度が更に高まることが予測されています。

このようにアジアの石油の輸入依存、中東依存はエネルギー安定供給上の大きな課題となっています。

また、アジアでは天然ガスの輸入も堅調に拡大しています。特に我が国、韓国、台湾は天然ガスを液化天然ガス(LNG)の形で輸入しており、その輸入量は2003年には合計で1135億立方メートル(LNG換算約8300万トン)に達しました。この結果、アジアは世界のLNG貿易の67%のシェアを有する最大のLNG輸入市場となっています。

なお、石油の場合と異なり、アジアのLNG消費国の輸入先は同じアジア地域のLNG生産国(インドネシア、マレーシア等)が主体となっており、中東依存度は石油の場合ほど高くありません。しかし、近年はLNGの輸入量の大幅増大と共に、中東からのLNG輸入が拡大しており、中東からのLNG輸入の比率も上昇する傾向にあります(第112-4-24)。

【第112-4-24】アジアの相手先別LNG輸入の推移

【第112-4-24】アジアの相手先別LNG輸入の推移

【第112-4-24】アジアの相手先別LNG輸入の推移(xls形式:31KB)

〔2〕生産国と消費国の関係

前述してきたようにアジアにおいては、中東原油がエネルギー輸入の主力として極めて大きな役割を果たしています。

しかし、アジア向けの原油価格については、供給国が主に中東に限られていること等から十分に競争的な価格形成がなされていない(アジア向けのFOB 価格が欧米向けに比べて高い、いわゆる「アジアプレミアムの存在等」)と指摘されており、また、価格の指標となるスポット・先物市場が発達している欧米に比し市場が未発達であることから、価格形成の透明性も不十分であることが指摘されています(第112-4-25)。

【第112-4-25】原油価格の三極比較

【第112-4-25】原油価格の三極比較

【第112-4-25】原油価格の三極比較(xls形式:93KB)

また、石油製品についても、アジア地域では、欧米に比べ域内の取引が活発とは言えず、十分に発達した製品スポット・先物市場が存在しないことから、域内における市場メカニズムを通じた効率的な配分がなされているとは言い難い状況にあります。

天然ガス(LNG)も、アジア市場向けの価格は欧米より平均的に見て割高で推移してきました。アジアのLNG輸入価格が割高である背景には、アジアのLNG価格が主に日本の原油輸入価格を基準としており、その原油価格に前述の「アジアプレミアム」が存在していることや、アジアでは欧米に比してガスパイプライン網の発達が遅れる等市場の整備や競争条件に違いがあること、等の問題があると考えられています(第112-4-26)。

【第112-4-26】天然ガス価格の国際比較

【第112-4-26】天然ガス価格の国際比較

【第112-4-26】天然ガス価格の国際比較(xls形式:38KB)

ただし、これらアジアプレミアムについては、近年、アメリカにおける原油価格の高騰等により縮小の傾向が見られます。

〔3〕輸送経路上の紛争等

これまで見てきたとおり、アジアではエネルギーの輸入依存増加に伴い、中東へのエネルギー依存も高まってきていますが、その中東地域においては様々な政治的社会的緊張が存在しています。

我が国は、原油輸入のためホルムズ海峡、マラッカ海峡等を経由する中東からのおよそ1万2千kmに及ぶ遠距離の輸送経路を使用しています。また、中国、韓国等のアジア諸国も同じ経路を利用しています。

特にマラッカ海峡は全長800kmなのに対して、最狭部は幅2kmで水深も浅く、かつ海流も速いことから航行には高い技術と細心の注意が必要です。同海峡は、日本の原油消費量の80%、世界の船舶の3分の1が通過すると言われています。この付近の地域においては、領有権を巡る対立や少数民族問題、分離独立運動、イスラム過激派等の存在が不安定要素となっています。さらに、近年、マラッカ海峡やインドネシア領海においては、船舶への襲撃事件が増加傾向にあります(第112-4-27、第112-4-28、第112-4-29)。

【第112-4-27】輸送経路と海峡

【第112-4-27】輸送経路と海峡

【第112-4-28】マラッカ海峡・インドネシア領海における船舶襲撃事件

【第112-4-28】マラッカ海峡・インドネシア領海における船舶襲撃事件

【第112-4-28】マラッカ海峡・インドネシア領海における船舶襲撃事件(xls形式:33KB)

【第112-4-29】海賊行為による銃弾の跡

【第112-4-29】海賊行為による銃弾の跡

(3)アジア大でのエネルギー安全保障に対する取組

(2)で述べたような事情や近年のエネルギー価格の高騰等を受けて、アジア諸国ではエネルギー安全保障への関心が高まりつつあります。

現在、アジア各国は、それぞれの資源賦存状況、経済発展状況、エネルギー産業の構造等の差異に応じて、石油備蓄制度の創設、エネルギー源の多様化、省エネルギー政策等、エネルギー安全保障の強化に向けた様々な取組を行っています。

我が国は、エネルギー安全保障を安定供給、環境対応、経済性の3点から捉え、それらを確保すべく施策を講じていますが、エネルギー安全保障は、我が国一国による対応だけでは十分ではありません。エネルギー生産国や他の消費国と連携して、需給の変動(短期・中長期双方)に柔軟に対処し、安定供給、環境との調和を実現しつつ、持続的に発展可能な「国際エネルギーシステム」の実現を図っていく必要があります。

我が国はこのシステムを有効に機能させるため、IEF(国際エネルギーフォーラム)やIEA(国際エネルギー機関)等グローバルな場、アジア等の地域単位の協力の場に加え、消費国間、生産国と消費国間の二国間協力等、重層的・多角的なフレームワークにおける協力に貢献してきており、中でも、エネルギーに関し多くの課題を共有するアジア諸国(日・中・韓・ASEAN 等)との協力のフレームワークを強化しつつあります。

具体的な取組として、2004 年5月22 日から開催された第9回IEF では、アジア地域のエネルギー協力及びアジアと中東との対話の強化等が議論されました。また、その議論を受けて2005年1月6日には、第1回アジア石油天然ガス産消国ラウンドテーブル会合(ニューデリー)が開催され、日本、中国、韓国等の消費国及びサウジサウジアラビア、イラン、クウェート等の産油国から計12カ国のエネルギー関係閣僚等が一堂に会し、地域のエネルギー安全保障に向けて取り組むことに合意しました。

また、2004年6月9日には、我が国のリーダーシップの下、ASEAN・日中韓エネルギー大臣会合(マニラ)において閣僚共同宣言「より緊密なアセアン+3エネルギー・パートナーシップに向けて」が採択され、〔1〕アジアの石油備蓄の強化、〔2〕透明で競争的な石油市場の整備、〔3〕天然ガスや再生可能エネルギーの開発・利用の拡大、〔4〕省エネルギーの推進、〔5〕クリーン・コール・テクノロジーの普及、の重要性が改めて確認されるとともに、同会合が今後のアジア協力の公式枠組みとして確立されました。

我が国は、この共同宣言を重要な第一歩として、アジアのエネルギー諸国との間で連携・責任分担・マーケット志向を基本理念とする「アジア・エネルギー・パートナーシップ」の構築を目指して、以下の取組を進めてきており、今後もさらに強化していくことにしています。これにより、アジア全体で安定的で効率的なエネルギー供給基盤と外的な状況変化に対する対応能力が強化されることが期待されます。

(ア)アジア諸国における石油備蓄制度の導入・強化

中国やインドなどアジアの一部の国ではで石油備蓄に係る計画を具体化させつつあります(第112-4-30、第112-4-31)。IEA において、アジアの石油需要の拡大を踏まえ、備蓄制度の構築についてのノウハウ提供等の取組がなされていますが、IEA 加盟国として長い経験を持つ我が国としても、各国の取組への資金面・技術面での協力等を通じ、アジア諸国の石油備蓄制度の導入・強化を図ることが喫緊の課題となっています。

【第112-4-30】アジア地域の石油備蓄状況

【第112-4-30】アジア地域の石油備蓄状況

【第112-4-30】アジア地域の石油備蓄状況(xls形式:20KB)

【第112-4-31】国家備蓄基地の例:苫小牧東部石油備蓄基地(北海道)

【第112-4-31】国家備蓄基地の例:苫小牧東部石油備蓄基地(北海道)

2004年6月のASEAN・日中韓エネルギー大臣会合では、中川経済産業大臣が石油備蓄制度の導入・強化に向けたフィージビリティスタディの実施に係る協力を行う旨表明しており、参加国からも歓迎されました。これを受けて、タイ及びフィリピンとの協力が既に開始されており、このような協力を今後更に発展させていくことにしています。

(イ)アジア太平洋地域における原油・石油製品・天然ガス市場の整備と機能強化

前述のようにアジア向け原油の価格については、供給国が中東に限られている事等から十分に競争的な価格形成がされていないことが指摘されています。

相互に密接な関連性をもった原油市場・石油製品市場の存在は、消費国サイドの需給条件を反映した、透明で競争的な価格形成・需給調整機能を実現する上で効果があり、その整備が課題となります。そのためには、製品のスペック等の市場のルールを整備するとともに、アジア・太平洋地域において、原油・石油製品や天然ガスの貿易や投資に係る制約を最大限除去することにより、市場への参加が容易になるよう環境整備を行うことが重要です。

こうした取組は、我が国のエネルギー企業にとっても、調達方法の多様化やリスクヘッジの選択肢を提供するものであり、経営基盤の強化にも資するものといえます。

(ウ)省エネルギー・環境対策等に向けたアジアでの取組の強化

アジア諸国では、石炭火力発電所などの環境対応が十分でない結果、硫黄酸化物等の排出増加が見込まれるなど大気汚染等の環境問題の深刻化が懸念されるとともに、化石燃料の消費増大によるCO2排出量の大幅増加も見込まれています。このため、省エネルギーの推進、クリーンコールテクノロジーの普及など各国の取組が必要とされています。また、中国では、エネルギー需要の著しい伸びに対応するため、原子力発電の導入を更に進めています。

我が国は、このような環境・省エネルギー分野、原子力などに優れた技術やノウハウを有しており、アジア諸国等での活用がなされれば、地球温暖化対策への貢献という観点からも大きな効果を上げることが期待できます。このような観点から、我が国は、〔1〕省エネルギー・環境における制度構築の支援、〔2〕エネルギー・環境政策に資する我が国エネルギー企業の国際的な事業展開の側面支援、〔3〕安全の確保を大前提とする原子力の利用についての積極的支援、などを各国の状況に応じて行ってきています。

特に〔2〕については、2004年10月に「エネルギー関連産業のアジア展開に関する研究会」を設置し、官民関係者による検討を進め、2005年3月に今後の取り組みの方向性に関する中間報告がまとめられました。