第1節 エネルギー需給の今後の見通し

1.国内の見通し(2030年のエネルギー需給展望)

我が国は、今後、人口減少・少子高齢化の進展による人口構造の変化をはじめ、産業構造や社会構造、国民のライフスタイルも含めた経済社会構造が長期的に変化していくことが想定され、この変化はエネルギー需給構造にも大きな影響をもたらすことが考えられます。

このような認識のもと、将来の不確実性を十分に踏まえ、2030年頃を念頭に我が国のエネルギー需給構造を見通すとともに、エネルギー戦略の検討を行うため、2003年12月から総合資源エネルギー調査会需給部会において、長期エネルギー需給見通しの見直しに向けた審議が行われ、さらに、2005年3月に答申されました。 以下では、その報告書の概要を紹介します。

(1)人口の減少とエネルギー需要

我が国の総人口は、2006年をピーク(1億2,774万人)に、2030年には1億1,800万人程度になると予測されます(第111-1-1)。そして、このような人口推移に伴い、高齢者比率は、2000年度の17%から、2030年度には約30%にまで増加すると予測されます。

【第111-1-1】我が国の人口の推移

【第111-1-1】我が国の人口の推移

【第111-1-1】我が国の人口の推移(xls形式:61KB)

人口の減少や少子高齢化は、経済的な需要の減少や労働力人口の減少などを通じて、経済成長の制約要因となり、エネルギー需要全体を押し下げる要因となる可能性があります。しかしながら、技術革新や労働生産性の向上を促すことができれば、我が国経済は、成長率は低下するものの、今後とも安定的な成長が可能になると考えられます。また、このとき、一人当たりのGDPが増大し、国民の経済的な豊かさが向上すると考えられます。

中長期的に見ると、少子高齢化に端を発する就業形態の変化や個人の価値観の多様化、環境意識の高まりは、我々の生産・消費活動パターンを大きく変化させるでしょう。そして、余暇時間の増加に伴う家庭・サービス施設などへのエネルギー需要の重心のシフト、ITの普及によるエネルギー利用の効率化、都市化に伴う交通負荷の低減など、社会構造の変化はエネルギー需要に大きな影響を及ぼしていくと予想されます。

(2)2030年までの見通し

2030年までのエネルギー需要は、レファレンスケース※1の場合、人口・経済・社会構造の変化を踏まえて、構造的に伸びは鈍化し、2021年度には頭打ちとなり減少に転じると予想されます(第111-1-2)。これを部門別に見てみると、産業部門は横ばい、運輸(貨物)部門は漸減で推移すると予想されます。また、家庭部門、業務部門、運輸(旅客)部門は、活動水準(世帯数、床面積、旅客輸送需要)の増加に伴い、引き続きエネルギー需要も増加すると予想されますが、その一方で省エネ機器・技術の浸透と活動水準の伸び率の鈍化の相乗効果によって、長期的にはエネルギー需要は減少に転じると予想されます。

※1:現行の技術体系と既に実施済みの施策を前提とした上で、経済社会や人口構造、マーケットや需要家の嗜好、民間ベースの取組が、今後ともこれまでの趨勢的変化で推移した場合を想定した試算。なお、経済成長は、2000年度~2030年度に関して年平均0.1%の伸び率を想定。また、原子力設備に関する前提としては、2010年度~2030年度までに合計9基が新設されると想定。さらに、原油価格については、2010年度に21$/B、2030年度に29 $/Bとなると想定(2000年度基準のアメリカの実質価格)。

【第111-1-2】最終エネルギー消費量の推移

【第111-1-2】最終エネルギー消費量の推移

なお、省エネ技術の実用化・普及による省エネポテンシャルは極めて大きいものと考えられ、新技術やヒートポンプの導入などの進展を前提とすれば(省エネ進展ケース※2)、2030年のエネルギー需要は、レファレンスケースよりも、5,000万kl程度減少すると予想されます。

※2:現行の省エネルギー取組や現在開発中の省エネルギー技術、ヒートポンプ、燃料電池、分散型エネルギーが大きく進展し、そのポテンシャルが最大限に発揮された場合を想定した試算。

エネルギー供給構造は、緩やかに変化すると考えられます。一次エネルギー供給構成については、石油はシェアが下がるものの、依然として約4割程度を占める重要なエネルギー源であり、石炭は横ばいで推移すると予想されます(第111-1-3)。また、発電電力構成については、原子力とLNGのシェアが大幅に増加する一方で、石油・石炭のシェアが低下すると予想されます(第111-1-4)。

【第111-1-3】一次エネルギー供給構成の推移

【第111-1-3】一次エネルギー供給構成の推移

【第111-1-3】一次エネルギー供給構成の推移(xls形式:32KB)

【第111-1-4】発電電力構成(電気事業者)の推移

【第111-1-4】発電電力構成(電気事業者)の推移

【第111-1-4】発電電力構成(電気事業者)の推移(xls形式:35KB)

天然ガスについては、系統電力需要の低下によって天然ガス火力発電所の減少につながる可能性がある一方、分散型電源が総発電量の約2割程度まで拡大する可能性があるため、一次エネルギー供給ベースでは現在よりもシェアを増すと予想されます。原子力は、ベースロードに対応した電源として、引き続き安定的なシェアが維持されると予想されます。今後、新エネルギーの導入が進展した場合、一次エネルギー供給ベースでの再生可能エネルギー・新エネルギーは、約10%に達する可能性もあります。

エネルギー起源CO2排出量は、70年代~80年代半ばにかけては、国際エネルギー情勢や国内経済情勢の影響を受けて大きく乱高下しました。その後、エネルギー起源CO2排出量は、80年代後半以降から急速に増加しましたが、90年代後半以降は安定的に推移してきており、今後は頭打ちとなり減少に転じることが見込まれます(第111-1-5)。

【第111-1-5】エネルギー起源CO2排出量の推移

【第111-1-5】エネルギー起源CO<sub>2</sub>排出量の推移

燃料電池や分散型エネルギーなど省エネ技術が進展した場合、現行の原子力発電水準を維持すれば、2030年のCO2排出量は、レファレンスケースよりも約5,000t-C(炭素換算トン)削減される可能性があります(省エネ進展ケース)。また、エネルギー技術の進展・普及による省エネポテンシャルは極めて大きいことから、たとえ原子力発電水準が低く抑えられ、経済成長が比較的高めで推移した場合であっても、CO2排出量は1990年レベルを下回る可能性があります(省エネ進展+高成長+原子力Lowケース※3)。したがって、エネルギー技術の進展・普及は、経済と環境の両立のためのキーファクターであるといえます。

※3:省エネ進展ケースの前提条件のほか、2000年度~2030年度で平均0.3%の経済成長率を想定し、さらに2030年度までに7基の原子力施設が新設されるとの想定を基にした試算。

新エネルギーの利用が進展すれば、再生可能エネルギーによるエネルギー供給は、2030年には現在の倍程度まで拡大し、一次供給エネルギーベースで約1割に達する可能性があります(第111-1-6)。このような新エネルギー利用の進展を前提とした場合は、レファレンスケースに対して、2030年のCO2排出量を約1,000t-C追加的に削減できる可能性があり(第111-1-7)、さらにエネルギー自給率の向上にも資する可能性があります(第111-1-8)。

【第111-1-6】再生可能エネルギーの導入見通し

【第111-1-6】再生可能エネルギーの導入見通し

【第111-1-6】再生可能エネルギーの導入見通し(xls形式:27KB)

【第111-1-7】新エネルギーの進展によるCO2排出量変化の比較

【第111-1-7】新エネルギーの進展によるCO<sub>2</sub>排出量変化の比較

【第111-1-7】新エネルギーの進展によるCO2排出量変化の比較(xls形式:27KB)

【第111-1-8】新エネルギーの進展によるエネルギー自給率の比較

【第111-1-8】新エネルギーの進展によるエネルギー自給率の比較

【第111-1-8】新エネルギーの進展によるエネルギー自給率の比較(xls形式:28KB)

原子力の進展(第111-1-9)は、化石燃料消費量の大幅な削減に寄与する(第111-1-10)とともに、エネルギー自給率の向上(第111-1-11)とCO2排出量の減少(第111-1-12)に貢献します。

【第111-1-9】原子力設備容量・設備利用率の見通し

【第111-1-9】原子力設備容量・設備利用率の見通し】

【第111-1-9】原子力設備容量・設備利用率の見通し(xls形式:20KB)

【第111-1-10】原子力の進展と化石エネルギー国内供給の推移

【第111-1-10】原子力の進展と化石エネルギー国内供給の推移

【第111-1-11】原子力の進展によるエネルギー自給率の予測

【第111-1-11】原子力の進展によるエネルギー自給率の予測

【第111-1-11】原子力の進展によるエネルギー自給率の予測(xls形式:28KB)

【第111-1-12】原子力の進展とCO2排出量変化の比較

【第111-1-12】原子力の進展とCO<sub>2</sub>排出量変化の比較

【第111-1-12】原子力の進展とCO2排出量変化の比較(xls形式:26KB)

経済成長率の動向は、生産活動やライフスタイルの変化などを通じて、潜在的エネルギー需要やエネルギー効率の動向に大きな影響を与えると考えられます。そこで、今後2030年までの経済成長率が年率2%前後と想定した経済成長Highケースと、年率1%前後と想定した経済成長Lowケースについて、最終エネルギー消費を試算したところ、両ケースとも2030年度までに頭打ちになり、2030年度には両ケースに10%以上(約6,000万kl)の差が生じると予想されます(第111-1-13)。また、CO2排出量を試算したところ、両ケースとも2030年度までに頭打ちとなった後で、減少に転じると予想されます(第111-1-14)。

【第111-1-13】経済成長率の動向による最終エネルギー消費の見通し

【第111-1-13】経済成長率の動向による最終エネルギー消費の見通し

【第111-1-14】経済成長率の動向によるCO2排出量の予測

【第111-1-14】経済成長率の動向によるCO2排出量の予測

原油価格の動向は、我が国のエネルギー需給に影響を与えると考えられますが、現在想定しうる価格変化の範囲では、それほど大きくはないと予想されます(第111-1-15)※4。一方で、一次エネルギー供給への影響については、原油価格が低迷した場合(原油Low)では石油シェアが増加し、原油価格が高止まりした場合(原油High)には原油・天然ガスのシェアが低下し、石炭シェアが拡大すると予想されます(第111-1-16)。

※4:原油価格の2030年度までの想定は、原油価格Lowケースが15$/B、原油価格Highケースが35$/Bである。

【第111-1-15】原油価格の変化による最終エネルギー消費の見通し

【第111-1-15】原油価格の変化による最終エネルギー消費の見通し

【第111-1-16】原油価格の変化による一次エネルギー供給構成の見通し

【第111-1-16】原油価格の変化による一次エネルギー供給構成の見通し

【第111-1-16】原油価格の変化による一次エネルギー供給構成の見通し(xls形式:36KB)

(3)2010年までの見通し

ここで、2010年のエネルギー需給見通しを見てみましょう。2010年度におけるエネルギー起源CO2排出量は、現行の趨勢的変化で推移した場合のレファレンスケース※5では3億2,200万t-C、2002年3月に策定された地球温暖化対策推進大綱に提示された対策を着実に推進した場合に期待される効果を折り込んだ現行対策推進ケースでは3億400万t-Cになると予想されます(第111-1-17)。地球温暖化対策推進大綱では、第一約束期間において、エネルギー起源CO2排出量を1990年度と同水準(2億8,600万t-C)に抑制することが目標とされています。したがって、目標達成のためには、新たに1,800万t-CのCO2排出量を削減する追加対策が必要です。

※5:2010年までの見通しにおけるレファレンスケースは、2010年までの経済成長の前提条件を最新のものに改めた結果、2030年までのレファレンスケースとは異なっていることに注意を要する。

【第111-1-17】2010年までのエネルギー起源CO2排出量の見通し

【第111-1-17】2010年までのエネルギー起源CO<sub>2</sub>排出量の見通し

【第111-1-17】2010年までのエネルギー起源CO2排出量の見通し(xls形式:25KB)

また、2010年度における最終エネルギー消費については、現行対策推進ケースでは、産業部門が1990年度比10%増に留まる一方で、民生部門が37%、運輸部門が20%とそれぞれ大きく増加すると予想されます(第111-1-18)。

【第111-1-18】2010年までの最終エネルギー消費量の見通し

【第111-1-18】2010年までの最終エネルギー消費量の見通し

【第111-1-18】2010年までの最終エネルギー消費量の見通し(xls形式:21KB)

2010年度の一次エネルギー供給構成については、天然ガスと原子力の増加等を踏まえて、より一層の多様化が進展すると考えられます(第111-1-19)。発電電力量について見てみると、原子力は、既建設中の4基が2010年までに稼動すると見込まれるため、3,753億kWhになると予想されます(第111-1-20)。

【第111-1-19】2010年までの一次エネルギー供給構成の見通し

【第111-1-19】2010年までの一次エネルギー供給構成の見通し

【第111-1-19】2010年までの一次エネルギー供給構成の見通し(xls形式:22KB)

【第111-1-20】2010年までの発電電力量(電気事業者)の見通し

【第111-1-20】2010年までの発電電力量(電気事業者)の見通し

【第111-1-20】2010年までの発電電力量(電気事業者)の見通し(xls形式:24KB)

(4)エネルギー需給見通しを踏まえた4つの戦略

以上、2010年~2030年までの国内エネルギー需給を展望してきましたが、これらを踏まえると、我が国の中長期的なエネルギー戦略の在り方としては、以下の4つの項目が重要であることが指摘されます。

〔1〕アジアのエネルギー需要増加をにらんだ国際エネルギー戦略の確立

今後は、エネルギーに関し多くの課題を共有するアジア諸国(日・中・韓・ASEAN等)との協力のフレームワークを強化すべきであり、以下のような取組を通じてアジア諸国との間で連携・責任分担・マーケット志向を基本理念とする「アジア・エネルギー・パートナーシップ」を構築していくことが重要です。

(ア)アジア諸国における石油備蓄制度の導入・強化

(イ)アジア太平洋地域における原油・石油製品・天然ガス市場の整備と機能強化

(ウ)省エネ・環境対策等に向けたアジアでの取組の強化

〔2〕国民や産業界の省エネルギー・環境対応努力の好循環実現

省エネルギーは、エネルギー安定供給と環境対応の両面に資する極めて効果的な手段です。今後とも省エネルギー対策を徹底していくとともに、国民一人一人の省エネルギーの必要性に関する意識を高めることが出来れば、省エネ機器やサービス市場の拡大、技術開発の一層の進展、新たな製品開発の促進という好循環を生み出し「経済と環境の両立」に資することが期待されます。

以下のような方向で省エネルギー政策を再構成し、施策の重点化を図る必要があります。

(ア)技術革新及びその成果の普及

(イ)需要家に対する情報提供と需要家の省エネルギー意識の喚起

(ウ)都市政策等との連携

(エ)省エネルギー広報・省エネルギー教育・学習の充実等

〔3〕エネルギー供給の分散と多様化による変化への対応力強化

我が国は、エネルギー輸入依存度が高く、脆弱なエネルギー需給構造となっています。今後アジア諸国のエネルギー需要は増大を続けると予測され、外的な環境変化に対応出来るような柔軟性を有するエネルギー需給構造となるように、以下のような取組によりエネルギー供給の最大限の分散と多様化を図っていくことが重要です。

(ア)ガス体エネルギーの開発・導入及び利用

(イ)水素社会への取組

(ウ)原子力の推進

(エ)再生可能エネルギーなどの更なる導入促進

(オ)自動車燃料を始めとした燃料の多様化

(カ)石炭・石油の効率的かつ環境調和的利用

〔4〕これまでのエネルギー産業の業態の垣根を超えた柔軟で強靭なエネルギー供給システムの実現

エネルギー需要の減少と新しい技術の進展という状況の中で、エネルギー産業における事業形態の変化が生じつつあるということを前提として、そのメリットを生かしつつ、安定供給や環境面に生ずるおそれがある問題点を克服していくため、以下のような戦略を持つことが必要です。

(ア)大規模集中型と分散型の適切な組合せによるエネルギー供給システムの最適化

(イ)分散型エネルギーの推進や自由化の進展と環境の両立

(5)中長期的エネルギー戦略実現に当たっての留意事項

中長期的な視点に立ったエネルギー戦略を実現していくに当たっては、技術開発の効率化、エネルギー関係特別会計の効果的な活用が重要です。エネルギーベストミックスに関しては、2003年秋に閣議決定されたエネルギー基本計画において基本的な枠組が示されており、その理念に沿って努力を続けていく必要があります。また我が国が世界最先端のエネルギー効率型社会を目指すとともに柔軟なエネルギー供給構成を実現するためには、エネルギーの供給・利用実態を正確に把握することが最初の一歩であり、今後一層信頼出来るエネルギー関連統計を早急に整備していく必要があります。

(6)京都議定書目標達成計画の策定

京都議定書は、2004年11月のロシアの批准を受け、2005年2月16日に発効しました。これにより、既に公布されている「地球温暖化対策の推進に関する法律の一部を改正する法律」が施行され、2004年度に行った「地球温暖化対策推進大綱」の評価・見直し作業の成果として、同大綱を引き継ぐ「京都議定書目標達成計画」を策定しました。この京都議定書目標達成計画においては、以下のような考え方を基本的考え方としています。

i)温室効果ガスの排出は経済活動と国民生活に密接に関連していることから、「環境と経済の両立」という基本的考え方に立って、地球温暖化対策を大胆に実行する。

ii)世界をリードする環境立国を目指し、技術革新の促進を図るとともに、国、地方公共団体、事業者、国民の参加と連携を図り、そのための透明性の確保、情報の共有を図る。

iii)多様な政策手段を活用して対策の推進を図るとともに、対策の定量的な評価・見直しを行うことにより、6%削減約束の達成を確実なものとする。また、地球温暖化対策の国際的連携を確保する。

さらに、同計画では、エネルギー起源CO2については、以下のような基本的考え方に基づき各種対策・施策を実施することとしています。

〔1〕点から面へ

これまでの個別のエネルギー関連機器や事業所ごとの対策を引き続き推進するとともに、我が国のエネルギー需給構造そのものを省CO2型に変えていくため、面的な広がりを持った視点からエネルギー需給構造を捉え直すこととする。すなわち、都市や地域の構造、公共交通インフラを含め、我が国の経済社会構造を変革し、省CO2型の都市や交通システムをデザインすること等を通じて、省CO2効果の最大化を図る。

〔2〕主体間の垣根を越える

エネルギーの需要・供給に関連するそれぞれの主体は自らの役割を適切に認識し、自らが直接管理する範囲にとどまらず、他のエネルギー需要・供給者と連携してエネルギー効率の更なる向上を目指すとともに、例えば産業界が民生・運輸部門における省CO2化に積極的に貢献すること等により、できる限り幅広い分野において二酸化炭素排出量の抑制を図る。

〔3〕需要対策に重点を置いた需給両面からのアプローチ

省CO2対策を効果的に実施するためにはエネルギー需給両面の対応が必要であるが、第1約束期間までに対策の効果を顕在化させるため、まずはエネルギー需要面の対策に重点を置き、「世界の模範となる省エネルギー国家」たることを我が国の目標として取り組む。エネルギー供給面の対策については、インフラ整備・改革に一定の時間を要するものの、引き続き着実な対策の推進に最大限努力する。

〔4〕原単位の改善に重点を置いたアプローチ

省CO2対策を着実に進展させるため、エネルギー利用の効率化を通じてエネルギー消費原単位及びエネルギー消費量当たりの二酸化炭素排出原単位を改善していくことに重点を置く。

具体的には、産業界の自主行動計画、省エネルギー法、トップランナー制度等の枠組みの活用、省エネルギー機器・自動車の普及、エネルギー効率の高い建築物・住宅の導入、交通流対策・物流の効率化や、地域単位でのエネルギー相互融通等に取り組む。

また、エネルギー供給部門における二酸化炭素排出原単位の改善を図るため、原子力発電の推進や新エネルギーの導入等を着実に進める。

〔5〕排出量の増大要因に対応した効果的な取組

部門別の二酸化炭素排出量の動向を見ると、需要サイドにおいて排出量の約4割を占める産業部門、約1割を占める運輸(貨物自動車及び公共交通機関等)部門からの排出量がほぼ横ばいにとどまっている一方、約2割を占める業務その他部門、約1割を占める家庭部門、約1割を占める運輸(自家用乗用車)部門からの排出量は大幅に増大している。このため、産業・運輸(貨物自動車及び公共交通機関等)部門における対策の着実な推進を図るとともに、業務その他・家庭・運輸(自家用乗用車)部門において効果的な対策を重点的に講ずる。

こうした考え方に基づき、同計画においては、各種対策・施策を講じることにより、将来の活動量の見通しについての一定の前提のもと、エネルギー起源CO2については、京都議定書の基準年である1990年度の水準から、総排出量比で+0.6%の水準にすることが目標とされています。

今後、目標達成に向けて、国、地方公共団体、事業者、国民といった国民各界各層が一体となって取り組むことが必要です。

2.国外の見通し(世界エネルギー展望)

国際エネルギー機関(IEA:International Energy Agency)は、1993年以降、中長期的な世界のエネルギー需給見通しに関する分析報告書として「世界エネルギー展望(World Energy Outlook)」を発行しています。この中で発表される世界のエネルギー需給見通しは、世界でも良く知られている分析の1つです。以下では、2004年10月に発行された「World Energy Outlook 2004」の概要を紹介します。

各国政府の現行施策を所与としたレファレンス・シナリオでは、世界の一次エネルギー需要は、2002年から2030年までに年率平均1.7%で増加し、約1.6倍に達すると予想されています(第111-2-1)。この平均増加率は、エネルギー効率の向上と世界経済の重工業依存度の低下により、過去30年の平均伸び率(2%)よりは低いものとなっています。また、この期間の増加分の3分の2は途上国によるものであり、これは急速な経済成長と人口増加の結果であると見込まれています。世界の一次エネルギー需要の見通しを、経済状況別に見てみると、途上国のシェアは2002年の38%から2030年には48%へ増加する一方、OECD諸国は52%から43%へ、旧ソ連など市場経済移行諸国は10%から9%へ減少すると予想されています(第111-2-2)。

【第111-2-1】世界の一次エネルギー需要の見通し

【第111-2-1】世界の一次エネルギー需要の見通し

【第111-2-1】世界の一次エネルギー需要の見通し(xls形式:20KB)

【第111-2-2】世界の一次エネルギー需要の経済状況別割合

【第111-2-2】世界の一次エネルギー需要の経済状況別割合

【第111-2-2】世界の一次エネルギー需要の経済状況別割合(xls形式:31KB)

これを地域別に見てみると、中国やインドをはじめとするアジア地域のエネルギー需要の伸びが最も著しく、今後の世界のエネルギー需要増加の中心となっていくものと見込まれています(第111-2-3)。なお、化石燃料(石油、天然ガス、石炭)は、2030年までの一次エネルギー需要予測の増加分の約85%を占め、今後も主たるエネルギー源であり続けると予想されています。特に、天然ガス需要は倍増すると予想され、その増加分の大半は発電向けに消費されると見込まれています。また、石油需要は年1.6%で上昇すると予想され、その増加分の大半は運輸部門から生じると見込まれています。

【第111-2-3】世界の一次エネルギー需要の地域別見通し

【第111-2-3】世界の一次エネルギー需要の地域別見通し

【第111-2-3】世界の一次エネルギー需要の地域別見通し(xls形式:54KB)

世界の最終エネルギー消費量は、2030年まで年平均1.6%で増加すると予想されており、一次エネルギー需要に占める割合は安定的に68%で推移すると予想されています。ただし、運輸部門のエネルギー消費量は、年平均2.1%と大きく増加すると予想されています。

世界には、今後予測されるエネルギー需要を充足するのに十分なエネルギー資源が存在しています。しかしながら、予測されるエネルギー需要を満たすためには、エネルギー供給設備に対して、2030年までに累計で約16兆ドルの投資が必要とされています(第111-2-4)。この投資の大半は発電部門に対するものと考えられており、またエネルギー需要の増加が著しい途上国がこの投資の半分を必要とすると予想されています。ただし、途上国は、経済規模に比べてエネルギー投資に必要な金額が大きく、また投資リスクも高いことから、資金調達が困難であるとも予想されています。

【第111-2-4】2003年から2030年までに必要な累積エネルギー投資額

【第111-2-4】2003年から2030年までに必要な累積エネルギー投資額

【第111-2-4】2003年から2030年までに必要な累積エネルギー投資額(xls形式:34KB)

エネルギーに関連したCO2排出量は、最終エネルギー消費量の伸びをやや上回る年平均1.7%で増加すると予想されており、2030年の排出量は、2002年に比べて1.6倍以上に増加すると予想されています。そして、このCO2排出量の増加分のうち、約3分の2は途上国によるものであり、また伸びの大半は発電や運輸部門が占めると考えられます(第111-2-5)。特に、中国は、急速な経済発展と石炭依存型の産業形態・発電形態により、世界のCO2排出量の増加分の25%以上を占めると予想されています。なお、過去30年間においては、CO2排出量の伸び(年率1.7%)は世界の一次エネルギー需要の伸び(年率2%)よりも低く推移していたのですが、今後の30年間においては、どちらも同じ増加率(年率1.7%)で推移すると予想されています。

【第111-2-5】エネルギー関連のCO2排出量の見通し

【第111-2-5】エネルギー関連のCO<sub>2</sub>排出量の見通し

【第111-2-5】エネルギー関連のCO2排出量の見通し(xls形式:21KB)

以上のような世界のエネルギー需要に関する見通しは、各国政府の現行政策を所与とした場合(レファレンス・シナリオ)の趨勢から予想されたものですが、これに対して各国政府が積極的なエネルギー対策を行った場合(代替政策シナリオ※6)の効果も分析されています。この代替政策シナリオによる見通しでは、レファレンス・シナリオの場合に比べて、世界の一次エネルギー需要が約10%低下、石油需要が11%低下、天然ガス需要が10%低下すると予想されるほか、CO2排出量も16%削減されると予想されています(第111-2-6)。また、そのCO2排出量の減少分の60%近くは、非OECD諸国によるものと考えられており、その半分は自動車や家電、照明、産業におけるエネルギー利用の効率化によって達成され、残りは発電部門における再生可能エネルギー利用と原子力へのシフトによって達成されると予想されています。

※6:各国政府が現在検討中の環境政策・エネルギー安全保障政策を推進し、エネルギー効率の高い技術が迅速に普及するとのシナリオ。

【第111-2-6】エネルギー関連CO2排出量のシナリオ別予測

【第111-2-6】エネルギー関連CO<sub>2</sub>排出量のシナリオ別予測

【第111-2-6】エネルギー関連CO2排出量のシナリオ別予測(xls形式:35KB)