イメージ画像

2016年11月に発効した「パリ協定」では、「世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をする」という「2℃目標」が打ち出されました(「今さら聞けない『パリ協定』 ~何が決まったのか?私たちは何をすべきか?~」参照)。その実現のためには、CO2など温室効果ガスの排出量をできるだけ減らす「低炭素化」の取り組みが必要です。

エネルギーにも、低炭素化が求められています。そのためにはどのような取り組みが必要なのでしょうか。

1.非化石エネルギーの利用促進

エネルギーをどのようにして低炭素化するか?

まず考えられる方法は、CO2を排出しないエネルギー、たとえば再生可能エネルギー(再エネ)の導入量を拡大することです。原子力も、発電時にCO2を排出しないエネルギーとして知られています。また次世代エネルギーである水素エネルギーも、使用時にCO2を排出しないことから、注目すべき新エネルギーとして研究が進められています(「『水素エネルギー』は何がどのようにすごいのか?」参照)。

エネルギーの低炭素化には、このような、CO2排出量ゼロ(ゼロ・エミッション)である「非化石燃料(非化石エネルギー)」の導入拡大が求められます。

しかし、日本におけるエネルギー供給は、その8割を化石燃料が占め、またそのほとんどを海外に依存しています。こうした状況は、環境負荷を低減するという観点からはもちろん、エネルギーの安定供給という観点からも大きな課題です。

非化石エネルギーの利用を促す「高度化法」

そこで、非化石エネルギー源の利用拡大、および化石燃料の高効率化による有効利用を促進することを狙うしくみとして、「エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律」、通称「エネルギー供給構造高度化法(高度化法)」という制度があります。

高度化法では、小売電気事業者に対して、供給する電気のうち「非化石電源(非化石エネルギーを使って発電する方式)」でつくられた電気が占める比率(非化石電源比率)を、2030年度に44%以上にするよう求めています。

非化石エネルギーの「価値」を取引する

この「非化石電源比率44%」という調達目標の達成を後押しするため、さまざまな政策が進められています。現在まさに検討が進められている「非化石価値取引市場」もそのひとつです。

これは、2017年2月の「電力システム改革貫徹のための政策小委員会」中間取りまとめにおいて提言されたもので、具体的には、非化石エネルギーで発電された電力のもつ「非化石価値」を電気と分離して市場で取引することとします。

「非化石価値取引市場」のしくみと流れ
「非化石価値取引市場」のしくみと流れ、メリットを示した図です。

大きい画像で見る

まず市場の取引対象となるのは、FIT制度の対象となっている太陽光発電や風力発電など、「FIT電源」の非化石証書です。この非化石証書は、2017年度に発電された電気について、2018年5月から取引を開始する予定です。

なお、FITの対象になっていない電源(非FIT電源)、たとえば大型水力発電や原子力発電などについては、住宅用太陽光のFIT買取期間が初めて終了する2019年度の電気を対象にすることを目途に、できるだけ早い時期の取引開始が目指されています。

「非化石価値取引市場」創設のメリット

非化石価値取引市場の創設は、何に役立つのでしょうか。まず、取引される非化石証書は、高度化法が求める「非化石電源比率44%」に計上できるということです。小売電気事業者はこれを購入することで、非化石電源の比率を高めることができるのです。

一方、電力を使う需要家は、「CO2排出量の少ない電気を使いたい」という希望を、非化石証書を組み合わせた電力を選ぶことでかなえることができます。たとえば、企業が非化石価値のある電力を利用することで、自社のCO2排出量削減目標に役立てることなどが考えられます。

さらに、非化石価値に対して価格がつき、非化石価値取引市場にて多くの非化石証書が取引されると、FIT制度によって国民が負担している賦課金が、軽減されることも見込まれています。

一覧に戻る

2.化石エネルギーを燃料とする火力発電の低炭素化

まだまだ必要な火力発電

こうした非化石エネルギーの利用を促進する一方で、化石エネルギーを燃料とする火力発電の低炭素化についての取り組みも必要です。非化石エネルギーの代表格である再エネには、発電量が季節や天候に左右されるものがあるため、安定的に一定量の電気を供給できる化石エネルギー由来の電力がまだまだ欠かせません。

火力発電には、主に、石炭・石油・LNGを使った発電方法があり、「再生可能エネルギー拡大に欠かせないのは『火力発電』!?」でご紹介したように、再エネの調整電源という役割もあるため、今後もしばらくは重要な電源のひとつであり続けると予想されます。2030年度のエネルギーのあり方を示した「長期エネルギー需給見通し(エネルギーミックス)」でも、2030年度の電源構成のうち、LNG火力発電は27%、石炭火力発電は26%、石油火力発電は3%を占めるとされています。

長期エネルギー需給見通し(エネルギーミックス)
2030年度のエネルギーミックスを表した図です。

そこで、火力発電のCO2排出量をできるだけ削減しようという、低炭素化に向けた取り組みが進められています。

火力発電の効率をアップして低炭素化する

火力発電は、燃料を燃やしてつくった水蒸気で蒸気タービンを回し電気をつくるしくみですが、もし効率をアップできれば、燃料使用量の削減、ひいてはCO2排出量の削減につながります。そこで、高効率化に向けたさまざまな技術開発が行われています。下記は、すでに各発電所で導入されている最新鋭の方式です。

●超々臨界圧発電方式(USC)
燃料を燃やして蒸気をつくる際に、極限まで高温、高圧にして蒸気タービンを回すシステム

●コンバインド・サイクル発電
高温のガスを燃やしてまずガスタービンを回し、その排ガスの熱を再利用して蒸気をつくることで蒸気タービンも回すシステム

●石炭ガス化複合発電(IGCC)
コンバインド・サイクル発電でガスタービンを回すのに使われる「高温ガス」を、石炭をガス化して作るシステム

ほかにも、さまざまな次世代火力発電技術の研究が進められています。こうした高効率化が進めば、さらなる火力発電の低炭素化が期待できます。

次世代火力発電技術の高効率化、低炭素化の見通し
将来開発が見込まれる次世代火力発電技術の一覧を示した図です。

(出典)2016年6月「次世代火力発電に係る技術ロードマップ技術参考資料集」

大きい画像で見る

電力会社の自主的な取り組み

電力会社10社や新電力会社などの電力業界有志は、2015年7月、「電気事業における低炭素社会実行計画」を策定しました。これは、低炭素社会の実現に向けた自主的な枠組みとしてつくられたもので、2030年度の「エネルギーミックス」と整合的な以下の目標が掲げられています。ここでも、火力発電の高効率化に努めることが打ち出されています。

リストアイコン 2030年度に排出係数0.37kg-CO2/kWh程度をめざす
リストアイコン 火力発電所の新設などにあたり、経済的に利用可能な最良の技術を活用することなどによって、最大削減ポテンシャルとして約1,100万t-CO2の排出削減を見込む

※排出係数…電力をつくる際に、どれだけのCO2を排出したかを測る指標

火力発電の高効率化を図る法制度①省エネ法

こうした事業者の自主的な取り組みを支え、火力発電の高効率化を図るべく、法制度も整備されています。ひとつは、発電段階で課される「省エネ法」です。

「省エネ法」は、事業者を対象に、省エネへの取り組みを求める制度です(「省エネ大国・ニッポン ~省エネ政策はなぜ始まった?そして、今求められている取り組みとは?~」参照)。

電力分野では、発電事業者に対して火力発電の高効率化を求め、火力発電を新設する場合の「効率基準」が、石炭、LNG、石油などの燃料種ごとに設定されています。

燃料種基準     基準設定の根拠
石炭新設:
42.0%
商用プラントとしてすでに運転を開始している最新鋭の発電所(USC)の発電効率をふまえて設定
LNG新設:
50.5%
商用プラントとしてすでに運転を開始している最新鋭の発電所(コンバインド・サイクル発電)の発電効率をふまえて設定
石油など新設:
39.0% 
最新鋭の発電設備の発電効率をふまえて設定

さらに、既設の火力発電についても効率化を促すべく、エネルギーミックスと整合的な効率基準が事業者単位で設定されています。具体的には、燃料種ごとの効率基準(A指標)を「1.00以上」、事業者の総合的な効率基準(B指標)を「44.3%以上」 とすることが求められます(「総合資源エネルギー調査会 省エネルギー・新エネルギー分科会省エネルギー小委員会 火力発電に係る判断基準ワーキンググループ 最終取りまとめ(平成28年3月29日)」(PDF形式:2.10MB)参照。A指標はP17-22、B指標はP22-23に記載あり)。なお、燃料種別で見ると、石炭火力は41%、LNG火力は48%、石油火力は39%が、「発電効率の目標値」として設定されています。

火力発電の高効率化を図る法制度②高度化法

もうひとつの制度は、前述した高度化法です。高度化法では、小売電気事業者に、低炭素な電源の調達も求めています。これによって、高効率な火力発電の導入が促されます。

経済産業大臣は、これらの法制度に基づき、各電力事業者の実績を踏まえながら、指導・助言や勧告、命令などを行います。この3つの取り組みを進めることで、火力発電の高効率化についての実効性と透明性を確保しているのです。

電力事業者の自主的な枠組みと、支えるしくみ
低炭素化を図るための電力事業者の取り組みと、支える制度を示した図です。

大きい画像で見る

一覧に戻る

3.日本の技術を世界の低炭素化に活かす

世界的に高い日本の火力発電高効率化技術

こうした日本の火力発電の高効率化技術は、世界の中でも非常に高いものです。たとえば石炭火力発電を例にとると、石油火力発電やLNG火力発電よりはCO2排出量が多いものの、世界平均よりは少なく、USCやIGCCなどではさらに削減されることがわかります。

世界における火力発電のCO2排出量の比較
世界の火力発電のCO2排出量を比較した図です。

(出典)電⼒中央研究所報告書(2016)や各研究事業の開発目標をもとに推計 ※国内USCについては、最新鋭の発電技術の商用化及び開発状況(BATの参考表)をもとに算出 ※海外については、「CO2 Emissions from Fuel Combustion 2016」をもとに算出

大きい画像で見る

日本の高効率化・低炭素化技術を海外へ展開する

国際エネルギー機関(IEA)の調べによれば、火力発電は、新興国を中心に、今後も重要な発電方法のひとつであり続けることが見込まれています。

石炭火力発電については、欧米では今後減っていくものの、インドや中国、東南アジア諸国を中心とした新興国で、経済発展とともに需要がさらに拡大すると予想されています。さらに、LNGをふくむガス火力発電については、全世界的に増加する見通しとなっています。

主要地域における石炭およびガス火力発電容量の増減見通し(2015-2040)
世界の石炭火力とガス火力について2040年までの見通しを示したグラフです。

(出典)IEA World Energy Outlook 2017

もし、こうした国々に、日本の持つ高効率化技術を展開できれば、世界のCO2排出量削減に寄与することができます。下の図は、もし、日本の最高効率のUSC技術を、中国やインド、米国の石炭火力発電に適用すると、どのようなCO2削減効果が得られるかを示したグラフです。IEAのデータを基にした試算では、約12億トンのCO2削減効果が見込まれます。つまり、主要国が日本のもつ技術を導入すれば、日本全体のCO2排出量(約13億トン)に匹敵するCO2を削減できる、ということを意味します。

石炭火力発電からのCO2排出量実績(2014年)と日本の最高効率適用ケース
日本の最高高率な火力発電技術を海外の火力発電に適用した場合のCO2排出量と削減量を示したグラフです

(出典)IEA World Energy Outlook 2016などから作成

大きい画像で見る

前述した「電気事業における低炭素社会実行計画」でも、「技術・ノウハウの海外展開による諸外国のCO2削減への貢献」が目標の一つに掲げられています。また、二国間クレジット制度(JCM)を利用した技術展開も進められています(「『二国間クレジット制度』は日本にも途上国にも地球にもうれしい温暖化対策」参照)。

世界のすべての化石エネルギーが非化石エネルギーに置き換わるまでには、ある程度の時間がかかることが見込まれます。2030年のエネルギーミックスを鑑みながら、さまざまなエネルギーについて、低炭素化の取り組みを進めていくことが求められます。

お問合せ先

記事内容について

電力・ガス事業部 電力基盤整備課

スペシャルコンテンツについて

長官官房 総務課 調査広報室