特集記事

『原子力』 第5回

世界の原子力技術の動向を追う

イメージ画像

1950年代に実用化された、原子力技術の発電への利用。さまざまな炉型が開発される中、安全性や経済性に関する技術がだんだんと磨かれ、軽水炉と高速炉を中心として、技術開発や研究開発が行われてきました。

また最近では、新興国による原子炉の開発と輸出、さらにはベンチャー企業や異業種などによる新たなイノベーションも加わりつつあります。原子力技術の歴史と、最近の動向を見てみましょう。

1.「減速材」と「冷却材」で分かれる原子炉の種類

原子力技術の変遷は、技術の発展や時代の要請、環境の変化に密接に結びついています。その変遷の歴史を見る前に、まずは基本的な知識として、原子炉の種類をあらためてご紹介しましょう。

原子炉の基本

一般的な原子力発電では、火力発電と同じく、水を沸騰させて蒸気をつくり、蒸気の力でタービンや発電機を回して電気をつくります。この蒸気をつくる際に利用されるのが、炉内の核分裂により発生した熱です。

原子炉は使用する「減速材」や「冷却材」などによって、分類されています。「減速材」とは、核分裂の過程でウランやプルトニウムから飛び出した中性子の速度を遅くするためのものです。また「冷却材」は、核分裂で発生する熱エネルギーを原子炉の外に取り出す役割をするものです。

軽水炉

軽水炉とは、減速材に軽水(普通の水)を使ったものをいい、この水が冷却材を兼ねているのが特徴です。炉内は常に水あるいは水蒸気で満たされ、この中に濃縮ウランを含んだ燃料が入っています。日本はもちろん、世界でもっとも利用されている原子炉です。

軽水炉は蒸気を発生させるしくみによって、「沸騰水型炉(BWR)」と「加圧水型炉(PWR)」の2種類に分けられます。

「沸騰水型」は、圧力容器内で熱せられた冷却水が蒸気となり、そのままタービンに送られて発電機を回します。シンプルな構造ですが、発生する蒸気が放射性物質を含んでいるため、タービンや復水器についても放射線の管理が必要です。

「加圧水型」は、圧力容器内の圧力を高くすることで冷却水を沸騰させずに高温にし、この高温・高圧の水を熱源として蒸気発生器で蒸気をつくります。沸騰水型に比べて構造は複雑になりますが、タービンや復水器では放射性物質を含んだ水が使われないことが特徴です。

沸騰水型炉(BWR)と加圧水型炉(PWR)
沸騰水型炉(BWR)と加圧水型炉(PWR)の図解です。

(出典)日本原子力文化財団HP

大きい画像で見る

高速炉

1950年代から研究開発されてきた原子炉であり、主な原子力利用国において次世代の原子炉として期待されているものです。

主にウランを燃料として使う軽水炉では、物理的な特性上、核分裂を引き起こす中性子の速度を遅くする必要がありますが、高速炉ではプルトニウムを燃料として使い、中性子を減速させずに、高速の中性子で燃料を核分裂させます。このため、高速炉は減速材を必要としません。

日本は、資源の有効利用、高レベル放射性廃棄物の減容化・有害度低減などの観点から、使用済燃料を再処理し、回収されるプルトニウムなどを有効利用する核燃料サイクルの推進を基本的方針としています( 「核燃料サイクルの今」参照)。中性子を高速のまま利用する高速炉はこれらのメリットが軽水炉よりも大きいため、「核燃料サイクル」にとっても重要です。

冷却材の種類によって、高速炉は「ナトリウム冷却高速炉」や「鉛冷却高速炉」、「ガス冷却高速炉」などが考えられています。いずれの高速炉も実用化には今後更なる研究開発が必要です。

そのほかの原子炉

現在、実用化されている原子炉としては、「重水炉」「黒鉛炉」などがあります。

重水炉は、通常の水より比重の大きい水(重水)を減速材として利用するものです。また、黒鉛を減速材として用いるのが黒鉛炉です。いずれも、濃縮ウランより安価な天然ウランを燃料とすることができます。そのほかにも世界各国で様々な種類の原子炉の研究開発が進んでいます。

一覧に戻る

2.原子力技術の進展の歴史

米国エネルギー省(DOE)の定義では、原子力の技術は、開発時期によって大きく第1世代から第4世代にまで分けることができます。

世界の原子力技術をめぐる動向
1950年からの原子力技術の発達をあらわした表です

大きい画像で見る

第1世代(1950年代~)

米国シカゴ大学において、世界で初めて原子炉が臨界(核分裂を継続的に起こしている状態)に達したのは1942年。これ以降、1953年の国連総会におけるアイゼンハワー米国大統領の演説『Atoms for Peace』、さらに1957年の国際原子力機関(IAEA)設立など、原子力の平和利用が目指され始めます(「世界の原発利用の歴史と今」 参照)。これに伴い、1950年代から60年代にかけて、原子力技術の発電への導入・実用化をめざした研究開発が開始されました。

この時期、各国でさまざまなタイプの原子炉が研究されました。

現在、原子力発電の主流となっている軽水炉や、次世代の炉として期待される高速炉などの研究は、この時期からスタートしています。このほか重水炉やガス炉など、多様な原子炉が開発されました。とはいえ、この時はいずれも発電量が小さく、まだまだ本格的な商業化ができるようなものではありませんでした。

第2世代(1970年代~)

原子力が積極的に導入されるきっかけとなったのは、1973年の第一次オイルショックです。世界的な石油危機を経験したことによって、各国では石油への過剰な依存を抜け出すべきだと考えられ始めたのです( 「石油がとまると何が起こるのか? ~歴史から学ぶ、日本のエネルギー供給のリスク?」参照))。そこで、石油に代わるエネルギーとして、原子力の利用が加速しました。その結果、火力などと並ぶ主力電源のひとつとなっていったのです。

第2世代は、この頃から1990年代頃までに設計された初期の商業用原子炉です。またこの頃から、軽水炉の普及にあわせて、高速炉が研究開発の中心となっていきます。

しかしそんな折、スリーマイル島原発事故(1979年)、チェルノブイリ原発事故(1986年)が発生。これらの重大事故を契機に、原発の安全性に対する要求はより厳しくなり、年代とともに改良が加えられていきました。

第3世代(1990年代~)

1990年代になると、第2世代の原子炉をもとに、さまざまな改良を加えた第3世代の原子炉が登場します。その背景には、地球温暖化への対策が求められるようになり、発電時に温室効果ガスを排出しない原子力発電の需要が高まったこと、また新興国によるエネルギー需要が拡大したことなどがありました。

これにより、既存の原子炉については稼働率の向上が、第3世代の原子炉についてはより高い安全性を備えた原子炉の開発が進みました。なお、第3世代炉よりもさらに安全性を向上させ、「第3+世代」と呼ばれる原子炉も登場しています。

一方、2000年代になると、世界各地で電力自由化が進み始めます。次いで、シェールガスや再生可能エネルギーなど新しいエネルギーも普及し始め、これらの国では、電源間での競争がより意識されるようになりました。そして2011年には福島第一原発事故が起こりました。この結果、商業用軽水炉については、さらなる安全性の向上が求められるようになるなど、原子力市場を取り巻く環境はさらに大きく変化しました。

第4世代(2030年代~?)

第4世代の原子炉は、2030年以降の実用化を目指して研究開発が行われてきており、まだ本格的な実用化にはいたっていません。燃料の効率的な利用や、使用済燃料の最小化、より高い信頼性の確保などを目指して、世界各国で研究開発が進められています。

近年の原子力を取り巻く環境変化のひとつとして、新興国が自国産の原発を建設し、さらには輸出を行い始めたということがあげられます。また、環境変化をふまえたイノベーションが活発化し、これまで主に研究開発が行われてきた軽水炉と高速炉に加え、従来にはない発想や技術を応用した革新的概念の原子炉も登場するようになっています。

原子力を取り巻く最新技術の状況については、また別の記事で詳しくご紹介しましょう。

お問合せ先

記事内容について

電力・ガス事業部 原子力政策課

スペシャルコンテンツについて

長官官房 総務課 調査広報室