特集記事

『原子力』 第2回

原発のコストを考える

イメージ画像

エネルギー政策の基本は、3E+S(Energy Security:安定供給、Economic Efficiency:経済効率、Environment:環境適合 + Safety:安全)をバランスよく達成することです。このすべての面において完璧なエネルギー源はありません。こうした中で、国内でエネルギーをまかなうことができない日本は、さまざまなエネルギー源を利用して、バランスの取れた電源構成(電力をつくる方法の組み合わせ)を構築することが重要です。

いっぽうで、3E+Sそれぞれの要素が重要であることもまた事実です。原発については、前回の記事(「原発の安全を高めるための取組 ~新規制基準のポイント」)で安全性について説明しました。今回は、安全性とならんで注目されることが多い「経済効率」、すなわちコストについて、なぜ原発が安いとされているのか、その考え方について見てみましょう。

1.発電効率を比べてみよう

発電方法で5倍から10倍も異なる燃料量

まず、各発電方法の発電効率について見てみましょう。発電効率については、実際に生み出した熱エネルギーをどれくらい電気に変換できるかという「熱効率」という考え方もありますが、ここではよりシンプルに、同じ電気を生み出すのにどれくらいの燃料を使うのかという観点から考えてみます。

たとえば、100万kWの電力をつくりだしたいと考えたとします。原発を使った場合、100万kWの電力を生み出す原発を1年間運転したとすると、そのために必要な燃料は21トンです。原発で使われる燃料はウランですが、天然ウランでは濃度が足りないため、濃縮させたウラン(濃縮ウラン)を使用します。

では、同じ規模(100万kW)の出力(電力量)の火力発電を、同じように1年間運転した場合にはどうなるでしょう。火力発電を動かすために天然ガスを使った場合には95万トン、石油を使った場合には155万トン、石炭を使った場合には235万トン必要となります。

日本はこれらの化石燃料資源にとぼしく、ほとんどを輸入に頼っているため、輸送コストもかかります。これは原発でも同じ条件ですが、必要な燃料の量が大きく異なるということは、かかる輸送コストの大きさも変わってくるということです。こうしたことが、原発と火力発電における燃料費の大きな差につながります。

再エネ発電には広大な敷地が必要

次に、再生可能エネルギー(再エネ)をつかった発電方法の場合を見てみましょう。100万kWの原子力発電所が1年間運転したときにつくられる電気の量と同じだけの電気を再エネでつくるケースで比べてみます。

再エネを使えば、燃料費はかかりません。ところが、太陽光発電でこれだけの量の電力をつくるためには、約58km2の敷地に太陽光パネルを敷き詰める必要があります。約58km2という広さは、だいたい山手線の内側いっぱいの広さだと考えればわかりやすいでしょう。風力発電でつくる場合には、さらに214km2の敷地が必要となります。これは山手線の3.4倍です。風車同士はある程度の間隔を空けて設置する必要があり、どうしても敷地面積が広くなってしまいます。

いっぽう、燃料の面で効率性の高さを見せた原発では、約0.6km2の敷地が必要です。

効率性のカギは「設備利用率」

なぜこのような大きな差が生まれるのかというと、再エネ由来の発電は、面積あたりの発電量(エネルギー密度)が小さく、また稼働している時間が短いという特徴があるためです。

たとえば太陽光発電は、夜間や雨・曇りの日などには発電できません。風力発電も、風が止んでいる時はもちろん、台風のような強風の時にも設備故障のリスクがあるため運転しません。原発の平均設備利用率が80%ほどになるいっぽうで、再エネを使った発電では、太陽光発電の場合は15%ほど、日本の陸上にある風力発電で20%ほど、風況の良い欧州の海上風力発電でも40%ほどです。そうした非効率性を補うために、原発や火力発電と比べて、再エネによる発電は広大な敷地が必要となるのです。

一覧に戻る

2.発電コストを比べてみよう

原発の発電コストは10.1円/1kWh

では、発電コストはどうなっているのでしょうか。発電方法の比較は、2015年、「総合資源エネルギー調査会 発電コスト検証ワーキンググループ」で行われました。ここからの数字は、同グループが発表した資料をもとに見ていきます。

その比較結果を見てみる前に、まずは原発にかかるコストの内訳を整理しておきましょう。

原発のコストは「発電原価」と「社会的費用」に分けることができます。発電原価とは、発電施設の建設と運用に関わるコストのことで、具体的には施設の建設費、燃料費、運転維持費、また使用済みの核燃料を加工して再度燃料として利用する核燃料サイクル費(「核燃料サイクルの今」 )や、廃炉措置をとった場合にかかるコストなどを含みます。また、2013年に定められた新規制基準にもとづく追加の安全対策費などもここに含みます(「原発の安全を高めるための取組~新規制基準のポイント」 ) 。

いっぽう、社会的費用とは、賠償費用などの事故リスク対応費用と原発建設地への立地交付金など(税金)のことで、原発の運用に間接的に関わるコストといってよいでしょう。

試算では、設備容量120万kWの原子力発電所が、設備利用率60%・70%・80%で、40年あるいは60年稼働した場合という複数のケースを想定して計算しました。事故リスク対応費用は、福島第一原発での事故対応費用を参考に、120万kWの原発1基が事故を起こした場合を想定して、約9.1兆円と想定しました。設備利用率70%の場合、合算すると、原発にかかる発電コストは1kWhあたり10.1円となります。

原発にかかるコストの内訳を示しています。

火力は燃料費が高く、再エネは建設費・工事費が高い

他の発電方法のコストはどのくらいなのでしょうか。「発電コスト検証ワーキンググループ」では、原発と同じように電源ごとにモデルプラントを想定し、総費用を発電電力量で割る方式で数値を求めました 。

1kWhあたりの火力発電のコストは、石炭を使った場合が12.3円、天然ガスを使った場合が13.7円、石油を使った場合が30.6〜43.4円です。コストの内訳を見ると、火力発電は燃料費(石炭、天然ガス、石油)が高く、さらに原発ではかからないコストであるCO2対策費が、社会的費用としてかかっている点が特徴といえます。

再エネを使った発電のコスト(1kWhあたり)はどうでしょう。再エネを使った発電の中心である風力(陸上に設置した風力発電の場合)は21.6円、太陽光(メガソーラーの場合)は24.2円です。内訳の特徴としては、燃料費がかからないという大きなメリットがあるいっぽう、原発や火力発電と比べて発電コストに占める建設費や工事費などの資本費が高くなっています(「再エネのコストを考える」 参照) 。

このように比較してみると、原発は火力発電よりも安く、再エネとの比較では約半分のコストに収まることがわかります。原発の経済性の根拠は、このようにして計算されているのです。

一覧に戻る

3.原発のコストはもっと高いはず?

原発のコストへの誤解

原発のコストについては、「もっと高いのではないか」と感じる人がいるかもしれません。福島第一原発の事故対応費用が20兆円を超えたことや、新規制基準の追加安全対策費がかかるのではないかということが気になっているのではないでしょうか。

確かに、20兆円は大金です。安全性強化のために追加コストがかかっていることも事実です。しかし、稼働中の原発は複数あり、また原発は、福島第一原発のような重大な事故が起こらない限りは、約40年にわたって長期的に運用することのできる設備です。このため、原発が生み出すことのできる電気の量も膨大なものになります。この生み出す電気の量で追加コストを割り算すれば、発電コストに与える影響は限定的になります。「発電コスト検証ワーキンググループ」では、コストが増えた場合の影響も分析しています。

賠償費用が増えた時の影響は?

たとえば、原発にかかるコストの計算方法に関しては、「事故の賠償費用がさらに増えるのでは?」といった指摘もあります。そこで、そのような可能性も踏まえて、事故リスク対応費が増加した場合の原発のコストも試算しています。この試算に基づくと、福島第一原発の事故費用が1兆円増加した場合には1kWhあたり0.01円~0.03円、仮に10兆円増加した場合には0.1~0.3円の増加となります(計算結果については「東電改革委員会」(PDF形式:1,289KB)での資料を参照)。


また、もし新規制基準に対応する追加の安全対策費が2倍になった場合には、1kWhあたりの単価が0.6円増加し、廃止措置費用が2倍になった場合は0.1円増加するという試算が出ています。

しかし、試算においてはこれらのケースが現実化しても火力や再エネ発電より高くなることはなく、発電コストの面で原発に優位性があることに変わりはないだろうと見られています。

もちろん、政策などの影響によってこの数値が変わることもありますし、計算方法に関する新たな検討すべき課題が出てくる可能性もあります。また再エネを使った発電や火力発電のコストも、世界情勢やイノベーションによって変動します。こうした現状も踏まえ、8月からは「エネルギー情勢懇談会」(「エネルギーの未来を皆で考えよう ~「エネルギー情勢懇談会」スタート」)において、今後のエネルギー政策の在り方について議論が行われています。

経済産業省では今後もさまざまなデータや情報をわかりやすく公表していく予定です。

お問合せ先

記事内容について

電力・ガス事業部 原子力政策課

スペシャルコンテンツについて

長官官房 総務課 調査広報室

2017/10/31に公開した記事の一部に誤りがありました。『賠償費用が増えたときの影響は?』の項で、「1兆円に増加した場合には1kWあたり0.01円~0.03円」としておりましたが、正しくは「1兆円に増加した場合には1kWhあたり0.01円~0.03円」です。また、「1kWあたりの単価が0.6円増加し、廃止措置費用が2倍になった場合は0.1円増加するという試算が出ています」としておりましたが、正しくは「1kWhあたりの単価が0.6円増加し、廃止措置費用が2倍になった場合は0.1円増加するという試算が出ています」です。
お詫びして訂正いたします。本文は修正しております。(2017/11/1 13:30)