イトーヨーカドーとイオンの店頭に並ぶ福島県産品の写真です。

店頭にも戻ってきた福島県産品(左・イトーヨーカドー、右・イオン)

2011年3月11日に起こった東日本大震災と、それにともなって発生した福島第一原子力発電所の事故から7年。原発事故によって放出された放射性物質の影響により、福島県では、農林水産品の需要拡大にブレーキがかかっていました。しかし、そんな福島県から、このところ嬉しいニュースが続々と届いています。福島の農林水産品の信頼を回復し、販路を拡大すべく行われている、さまざまな取り組みをご紹介します。

1.世界一厳しい基準と検査を通じて証明された「福島県産品の信頼性」

信頼を回復するために

福島県の農林水産品には、東日本大震災後、震災による被害に加えて、原発事故による被害が重くのしかかりました。住民避難や被災による出荷量の減少、国内外からの出荷制限、海外への輸入規制、さらに買い控えなどが、大きな障壁となって立ちふさがったためです。

2017年冬、そんな福島県に嬉しい一報がもたらされました。これまで日本産の農水産物の輸入を規制してきたEU欧州委員会が、2017年12月1日から規制緩和を実施すると発表したのです。規制緩和の対象は、福島県産のコメを含んだ周辺10県の農産品の一部、または全部におよんでいます。

この決定は、福島県の農林水産品に関する課題解決と信頼回復のために、県内の生産者や、生産者を支える人たちによって行われてきたさまざまな取り組みが、実を結んだ結果と言えるでしょう。

世界一厳しい基準と検査

信頼回復の基盤となったのは、2012年から始まった、“世界一厳しい基準と検査”といわれる、「コメの全量全袋検査」と「牛の全頭検査」です。これにより、放射性物質に関する「食品としての基準値」を超過する恐れが少しでもあるコメや肉については、1袋あるいは1頭たりとも流通させないことを徹底しています。

生産されたコメや牛の全てを検査するという大規模な取り組みは、世界的にもまれなこと。コメの全量全袋検査だけを取り上げてみても、初年度は約85億円、翌年以降も54億円~58億円ほどがかけられています。

こうした厳しい取り組み、さらに、2015年産以降、基準値を超えるコメは見つかっていないといったことが、「福島のコメは安心できる」という信頼を育むことにつながっています。

また、幅広い農産物・水産物について、モニタリング検査を実施しています。野菜、果実、原乳、鶏卵、水産物(海産、河川・湖沼)山菜、きのこ(野生、栽培)などを検査。この検査では、2017年度に基準値を超えた食品は、果実の625件中1件、水産物(河川・湖沼)の677件中8件、山菜(野生)の619件中1件と、ごくわずかにとどまっています(2018年2月28日現在)。もちろん、ここで基準値を超えたものは、市場に出回ることはありません。

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2.信頼と販路の回復に向けて

福島県や生産者による取り組み

これらの検査を通じて安全性が確認されている福島県の農林水産品について、日本全国および世界中に広く知ってもらおうと、福島県では、県をあげて農林水産品の販路回復と拡大を後押ししています。

そのひとつが、フェアなどのイベント開催と対面販売の強化です。首都圏を中心に、時には福島県知事自らが先頭に立って、福島県産の農林水産物の安全性をアピールしてきました。県が主催する「ふくしま大交流フェスタ」は、県内の約100団体が出展するなど大型イベントに成長しており、2017年12月の開催で11回目を迎えています。また対面販売も、首都圏の情報発信拠点である「日本橋ふくしま館 MIDETTE」をはじめ、全国各地で繰り返し行っています。

海外の販路開拓では、県知事による積極的なトップセールスが敢行されています。2017年度だけでも、マレーシアでコメや桃の輸出に関する会談を行ったほか、クアラルンプールのスーパーでは、店頭で県産のコメと桃のプロモーションに参加。交流推進を図ったベトナムでも、梨のプロモーションで店頭に立ちました。

クアラルンプールのスーパーで福島県産品をアピールする県知事の写真です。

クアラルンプールのスーパーで県知事が福島県のコメをアピール

ネットの活用、アニメーションを使ったPRなど新しい取り組みも

さらに、さまざまな新しい取り組みも始まっています。

福島県では、福島県産品の質の高さを全国に知ってもらおうと、「ふくしまプライド。」を合言葉に各種施策を実施していますが、その取り組みを発展させ、福島の旬のものがネットで買える「ふくしまプライド体感キャンペーン」を2017年より開始。Amazon、楽天市場、Yahoo!ショッピングなどと連携して、各ECサイトで特設ページを設置しています。2018年3月22日時点における同年度の総売上は、15億円を超えました。

ユニークなPRも行っています。県が三春町のアニメ制作会社「福島ガイナックス」と共同制作したアニメーションでは、あんぽ柿やヒラメ、コメなどの県産品をキャラクター化。人気声優の水樹奈々さんらが出演し、YouTubeでの動画配信では4言語の字幕もつくなど、若者や海外に向けて発信しています。

GAP認証の取得に向けて

安全性を客観的に証明し、消費者の信頼を得るため、生産現場での認証の取得にも注力しています。「農業生産工程管理(GAP)」と呼ばれる、食の安全性を確保する取り組みの普及と、その取り組みが行われていることを証明する「GAP認証」の取得です。

GAPとは、「Good Agricultural Practice」の頭文字をとったもので、生産現場において、食品の安全、環境の保全、労働の安全を持続的に確保し、より良い農業生産を目指すものです。このGAPに適合し、GAP認証を取得することは、世界的に不可欠なものになりつつあります。

認証にはさまざまな審査機関が実施しているものがあり、国際的な「GLOBAL G.A.P.」、日本の農業者・JA・小売業者が開発した「JGAP」などがあります。福島県では、農林水産省のガイドラインに準拠した県独自の公的認証GAPとして、「FGAP(ふくしま県GAP)」を設けています。国の定めた必須項目に加えて、放射性物質対策項目があるのが特徴です。対象となる品目は、コメ、ムギ、大豆、そば、野菜、果樹、きのこと広範囲です。

このGAP認証を取得した農産物は、より高い信頼性を確保できます。さらに、認証取得によって、2020年のオリンピック、パラリンピックへの食材供給も可能となります。オリンピック、パラリンピックは福島の農産物の安全性を世界へアピールするための好機となる可能性があります。そこで、福島県では、県内の農業者に対してGAP認証取得を推進し、GAPに関する情報を伝えたり、認証取得のための研修の実施、マニュアル作成などを行なったりしています。

また、水産物についても、マリン・エコラベル(MEL)という規格・認証スキームにより、資源と生態系の保護に積極的に取り組む、環境に配慮した操業が進められています。

国による後押し

このような福島県の取り組みを、国も全面的に支援しています。

前述したような、EU各国など海外での輸入規制緩和に向けては、国による働きかけも行われました。安倍首相は、2017年7月に、日・EU経済連携協定及び戦略的パートナーシップ協定の合意形成のため、ベルギーの首都ブリュッセルを訪問。この席で、福島県産などの食品の輸入規制緩和を要請しました。その結果、欧州委員会のユンカー委員長から、共同記者会見において、緩和に向けた対応の表明が得られたのです。

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3.見えてきた復調のきざし

アジアに向けた福島県産物輸出の復調

これらの取り組みの成果として、東南アジアでは、福島産農産物の復調が見られています。

福島県の主要農産物の一つである桃は、原発事故のあった2011年時点で輸出がストップしてしまったものの、その後、東南アジア向けを中心にじりじりと回復。2016年には、震災前(2010年)の22.9トンを凌駕する30.6トンという輸出量にまで達しています。

お店の棚に福島産が戻ってきた

小売店における、福島県産の農林水産品の展開も活発化しています。

イオンリテールは、福島のブランド肉「福島牛」の常設販売を2018年3月から開始。これまではフェアなど期間限定の取り扱いだったものが、定番商品として店頭に並ぶことになりました。常設店は、東京都のイオン板橋店など、福島県内外の6店です。

一方、イトーヨーカ堂などを傘下にするセブン&アイ・ホールディングスも、「食べて応援しよう!」の合言葉のもと、被災地応援の「東北かけはしプロジェクト」に連携したフェアを繰り返し開催してきました。被災地のさまざまなアイテムを販売するなか、福島の農産物も、季節ごとに商品を入れ替えながら販売をしています。特に、都内のアリオ北砂店やアリオ亀有店などの7店舗で、福島産の米を定番商品として販売するなど、積極的な取り組みを進めています。

こうした小売店での取り組みによって、「出荷される福島県産品は安全」という認識が、消費者にも広がりつつあります。今後、この動きが、市場にさらに拡大・浸透していくことが期待されます。

イオンの店頭で販売されている福島県産品

イトーヨーカドーの店頭で販売されている福島県産品

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4.民間企業の力も活用し、さらなる販路の拡大へ

さまざまな日本企業も福島県産品を支援

福島の農林水産品の販路拡大には、小売業以外の日本企業も協力しています。

さまざまな業種の企業が参加する「ふくしま応援企業ネットワーク」は、大手企業が協力して福島県を支援しようと、2014年に発足しました。会員企業数は2018年3月1日現在で103社となっており、今も増加中です。

各会員企業では、自社の社員食堂で福島県産の食材を使ったり、メニューの中で福島県の郷土料理を採用したりしています。また、企業内マルシェも開催し、贈答品や記念品で福島県産品を活用するなど、購入促進に動いています。加えて、福島食材の安全性の周知活動や、福島県の観光施設の利用も推進しています。

2016年度実績では、社員食堂での県産米消費量は816トン、特別メニュー提供は約43,000食となっています。同年の企業マルシェ開催は354回、約1億4,000万円の売り上げがありました。これまでの累計では、わかっているだけでも、食堂での福島県食材利用で約7.4億円、企業内マルシェで約3.5億円という実績があります。

社員食堂での福島県食材の購入促進
2014年度実績2015年度実績2016年度上期実績2017年度上期実績
県産米消費量278トン764トン816トン456トン
特別メニュー提供約13,000食約31,000食約43,000食約18,000食
企業マルシェの開催(産直市)
2014年度実績2015年度実績2016年度実績2017年度上期実績
開催回数127回306回354回115回
売上金額約4,900万円約11,500万円約14,000万円約5,600万円
贈答品、記念品での福島県産品の普及拡大
2014年度実績2015年度実績2016年度実績2017年度上期実績
購入金額約400万円約900万円約2,000万円約400万円

福島県産品の復調が復興の力に

東京電力も、もちろん、事故の当事者としての主体性と責任を持って、福島の農林水産品の販路拡大に取り組んでいます。同社は「風評被害に対する行動計画」を策定、社員食堂での福島県食材の利用や、企業内マルシェを開催しています。また、社員有志による定期購入活動も行っています。

さらに、首都圏で福島県産品を取り扱う店舗の情報を収集し、社内イントラネット上のサイトに加え、ふくしま応援企業ネットワークの会員専用ページでも地図も含めて掲載することで、購入を促しています。なお、前述した「ふくしま応援企業ネットワーク」の事務局は東京電力内にあり、他会員企業の取り組みを支援しています。

福島県産品の復調は、福島県の人々を勇気づけ、復興への大きな力となります。生産者、県、国、企業が一層連携を深めて、さらなる取り組みを進めていくことが望まれます。

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