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『エネルギー安全保障・資源』 第5回

世界の産業を支える鉱物資源について知ろう

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レアメタルをはじめとした鉱物資源は、いまや世界の産業を支える重要なものとなっています。「レアメタル」や、鉱物資源が含まれた家電や携帯電話の廃棄物を指す「都市鉱山」など、記憶にある話題も多いのではないでしょうか。私たちの見えないところで、さまざまな役割を果たしている鉱物資源についてご紹介します。

1.鉱物資源の重要性

鉱物資源とは?

地下に埋蔵されていて、人間にとって有益な鉱物を「鉱物資源」と呼びます。その種類はたいへん幅広く、鉱物によってさまざまな特性があります。

埋蔵量・産出量ともに多く、精錬が比較的簡単な鉄、アルミ、銅などの金属は「ベースメタル」と呼ばれています。一方、産出量が少なかったり、抽出がむずかしい希少な金属を「レアメタル」と呼んでいます。チタンやコバルト、ニッケルなどがそうです。さらに、レアメタルの一部である17元素は「レアアース」と呼ばれ、先端技術を用いた製品には不可欠な素材となっています。このほか、貴金属として扱われる金や銀などがあります。

元素記号表
鉄・ベースメタル、貴金属、レアアース、レアメタルを含む元素記号の一覧表です

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それぞれに独自の特性を持つ鉱物資源は、産業に欠かせない素材です。たとえば自動車には、車体はもちろん内部のモーターやバッテリーなど、たくさんの鉱物資源があらゆるところに使われています。いまや鉱物資源なしでは、工業製品は成り立たないのです。

輸入に頼る鉱物資源

日本はベースメタル、レアメタルのいずれも、ほぼすべてを輸入に頼っています。国内にも鉱物資源がないわけではないのですが、産出量が少なかったり、環境問題などから生産コストが見合わず、利用されていません。

ベースメタルとレアメタルの種類と、100%が輸入であることを示したグラフです。

鉱物資源は産出する国に偏りがあり、中南米・アフリカなど政治リスクがある国から産出される鉱物も多くあります。こうした資源国から、安定的な供給を確保できるかどうかが、大きな問題となります。

日本の鉱物資源の輸入・国別シェア
銅、亜鉛、ニッケルそれぞれについて、輸入量と輸入元別シェアを表した円グラフです。

(出典)財務省貿易統計、鉱物資源マテリアルフローより経済産業省作成

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2.鉱物資源の最近の市場環境

金属価格の動向

近年、金属価格の動きは激しくなっています。

電線などにも使われる銅は、2002~2010年にかけて中国の需要が急激に伸びて価格が高騰しました。資源バブルの様相となりましたが、2015年からは中国の景気後退により価格が低迷します。さらに近年は、世界経済の回復や大規模銅鉱山でのストなどを背景にふたたび上昇に転じています。その他の金属も供給不足や世界の景気の影響を受けて、乱高下をくり返しています。

銅・亜鉛・ニッケルの価格推移
2005年から2017年にかけての、銅・亜鉛・ニッケルの価格推移を示した折れ線グラフです。

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価格が高騰することはあまり好ましくありませんが、かといってひどく低迷することも、鉱物市場にはあまりいい影響を与えません。たとえば価格が低迷すると、採掘などの採算がとれなくなり、新規の鉱床を発見するなどの開発が進まなくなります。その結果、中長期的に供給不足となり、ふたたび価格高騰をくり返すという悪循環を生み出します。

とりわけ中国がほとんどの市場をにぎっている、ジスプロシウムやネオジムなどのレアアースについては、2010年に中国が輸出規制を行ったため、価格が最大約10倍に高騰しました。現在の価格は落ち着いていますが、同じような事態が起こる可能性もあります。

近年はこうした需給構造の変化に加えて、鉱物資源が金融商品として注目されるようになり、投資的な資金も流入しています。

鉱山開発のリスク

鉱物資源を得るための鉱山開発はさまざまなリスクがともないます。まず商業的に十分な量の鉱床を発見する確率が非常に低いこと。また生産できるようになるまでに巨額の資金と10~20年ほどの期間を要します。加えて鉱物資源のある場所はカントリーリスクのある国であることが多いのです。このため鉱山開発ができるのは資金力や体力のある一部の企業に限られています。

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3.安定供給確保に向けた取組み

政策の5本柱

鉱物資源を輸入に頼る日本では、価格の高騰や供給不足は産業活動に直接影響します。鉱物資源の安定供給を確保するためには、それぞれの鉱種ごとに実態を把握し、関係機関と連携して取り組んでいくことが大切です。政策においては以下の5本柱を総合的に実施しています。

① 海外資源確保の推進
② 備蓄
③ 省資源・代替材料の開発
④ リサイクル
⑤ 海洋資源開発

このなかでも、③省資源・代替材料の開発、④リサイクルについては、高い産業技術を持つ日本が得意とするところです。

鉱物資源政策の全体像
鉱物資源の生産からリサイクルまでの流れと、政策の5本柱を示した図です。

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①資源国との関係強化による海外資源確保の推進

中国、インドネシア、フィリピン、メキシコ、南アフリカ共和国、ジンバブエ、タンザニアといった鉱物資源を持つ国では、輸出に規制をかけたり、大幅な増税をするなどの動きが広がっています。

こうした資源ナショナリズムの先鋭化の動きは、世界経済に大きな影響を与えます。そのため日本では、供給源の多角化や資源国との関係強化を図るため、首脳・閣僚レベルでの資源外交を展開しています。

②レアメタルの備蓄

日本は過去2度のオイルショックを経験しました。その経験を鉱物資源にも活かし、経済の安全保障という観点から、1983年に官民協力によるレアメタルの備蓄制度をつくりました。

現在、国家備蓄と民間備蓄をあわせてレアメタル34鉱種(55元素)を備蓄対象鉱種としており、国内基準消費量の60日分に相当する量を備蓄目標量としています。

国家備蓄・民間備蓄の比較
鉱物資源に関する国家備蓄と民間備蓄について、対象や保管場所、目標などを示した表です。

(注)国内基準消費量は、過去5年の国内消費量の年平均

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③代替材料と省資源化

レアメタルは、ベースメタルに比べると市場も小さく、需給の関連で価格も変動しやすくなっています。こうしたリスクを避けるため、積極的に技術開発が行われているのが、代替材料や省資源化の試みです。

元素ごとにリスク評価を行い、リスクが大きくなると予想される元素については、代替材料の開発や、より少ない使用量で生産できる技術の開発を急いでいます。また、産業界全体でレアメタルの使用量を少なくするため、民間企業から広く研究テーマを募集し、活用が期待される研究開発には助成を行っています。

④リサイクルと都市鉱山

リサイクルの推進も、鉱物資源の使用量をおさえるには効果的な方法です。埋蔵量、生産、輸出などの供給リスクに今後の需要見通しを加え、さらにリサイクルのしやすさなどを考慮して、5つの鉱種(タングステン、コバルトなど)が「リサイクルを重点的に行うべき鉱種」として選ばれています。

また、リサイクルを考える際に見逃せないのが「都市鉱山」の存在です。携帯電話、デジタルカメラ、オーディオプレーヤーなど、身近な製品にはかなりの金属が含まれており、レアメタルも少なくありません。これら廃棄される製品から鉱物資源を回収することで、レアメタルなどの輸入量を減らすことができます。

⑤海洋鉱物資源の開発

日本は世界第6位の領海・排他的経済水域(EEZ)を持つ国で、この海域には鉱物資源が存在していると見られています。海底の鉱物資源の開発が可能になれば、新たな供給源として多いに期待できます。

海洋には大きく4つの海洋鉱物資源(海底熱水鉱床、コバルトリッチクラスト、マンガン団塊、レアアース泥)があり、それぞれに含まれる金属が違います。水深や分布の状態も異なるため、それぞれに合わせた技術開発が行われています。

海洋鉱物資源の4つのフィールド
海洋鉱物資源について、4つのフィールドとそれが海底のどこにあるかを示した絵です。

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①海底熱水鉱床②コバルトリッチクラスト③マンガン団塊④レアアース泥
特徴海底から噴出する熱水に含まれる金属成分が沈殿してできたもの【沖縄、伊豆・小笠原海域(EEZ)】海底の岩石を皮殻状に覆う、厚さ数mm~10数cmのマンガン酸化物【南鳥島海域等(EEZ, 公海)】直径2~15cmの楕円体のマンガン酸化物で、海底面上に分布【太平洋(公海)】海底下に粘土状の堆積物として広く分布【南鳥島海域(EEZ)】
含有する金属銅、鉛、亜鉛など(金、銀も含む)コバルト、ニッケル、銅、白金、マンガンなど銅、ニッケル、コバルト、マンガンなどレアアース(重希土を含む)
分布する水深700m~2,000m800m~2,400m4,000m~6,000m5,000m~6,000m

また、資源エネルギー庁では、「海洋基本法」に基づく海洋基本計画に従って、海洋エネルギー・鉱物資源の商業化へ向けた中長期計画を立てて推進しています。

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4.これからの鉱物資源

「海底熱水鉱床プロジェクト」で世界初の海底から鉱石を揚げることに成功

最後に、鉱物資源に関する最近のトピックをいくつか見てみましょう。

先ほどご紹介したように、海底に分布する鉱物資源は、これからの日本にとって重要な資源になると考えられています。そのため積極的に技術開発をつづけていますが、近年大きな成果をあげることができています。世界で初めて、海底の海底熱水鉱床の鉱石を連続して揚げることに成功したのです。

2012年に海底熱水鉱床を対象とした世界初の深海での掘削試験に成功。2014年には世界初の24時間以上の試験機の海底での連続運転にも成功しています。さらに2017年には、水深約10mのドック試験で鉱石の収集から海上に揚げる一連の模擬試験に成功しています。

こうした成果を受けて、沖縄の海域で発見された鉱床で「採鉱・揚鉱パイロット試験」が、2017年に行われました。海象条件がいい日を選び、事前に採掘試験で掘削した海底熱水鉱床の鉱石を、集鉱試験機で海水とともに集め、水中ポンプを用いて水深約1,600mの海底から洋上まで揚げました。今後、資源量や環境調査の結果もふまえて、経済性を含めた総合評価が行われます。

「採鉱・揚鉱パイロット試験」概念図
採鉱・揚鉱パイロット試験の様子をあらわした概念図です。

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実際に海中に投入される集鉱試験機と、船上に揚がった鉱石の様子を示した写真です。

海中に投入される集鉱試験機と船上に揚がった鉱石

バーゼル法

有害物を含む廃棄物(廃棄された電気電子機器や使用済の鉛蓄電池など)が国境を越えて移動する際に、環境の観点から適正に管理されることを目的として、輸出国から輸出先に事前の告知や同意などを義務づけた国際的な取り決めが、「バーゼル条約」です。このバーゼル条約を円滑に実施していくために、国内で整備された法律を「バーゼル法」と呼んでいます。

このバーゼル法は、制定以来20年以上にわたって大きな見直しが行われておらず、めまぐるしく変わる世界の情勢や経済状況に対応できていませんでした。しかし、近年、廃棄された電気電子機器や使用済鉛蓄電池について、国内で適正にリサイクルされず海外に輸出されたり、ほかの廃棄物に混入したまま不適正に輸出されて環境汚染のリスクをはらむなど、問題が生じています。

そこで2017年、環境や経済をめぐる多くの問題に対応するため、バーゼル法の一部見直しが行われました。規制対象物の範囲を明確にし、輸出先で有害廃棄物とされているものを規制対象に追加するなどの改正が行われています。

EVの普及と今後の方向性

もうひとつ注目を集める動きとしては、EV(電気自動車)の普及によって、レアメタルの需要が拡大していることがあげられます。これについては、また別の記事でくわしくご紹介します。

鉱物資源を持たない日本では、必要な資源の安定供給がなによりも大切です。今後も官民が協力して、さまざまな方策のもとで安定供給を実現していく計画です。

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