課題をどう解決する?再エネの安全性を高め長期安定的な電源にするためには②

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「大雨でも太陽光パネルは大丈夫?再エネの安全性を高め長期安定的な電源にするためには①」 では、さまざまな自然災害を通じて顕在化してきた、再生可能エネルギー(再エネ)が抱える課題についてご紹介しました。安全を第一に考えることで、それらの課題を克服し、再エネを長期で安定的に稼動するエネルギーとするために、どのような施策が進められようとしているのか見てみましょう。

再エネの課題解決に向けて動き出した新たな取り組み

再エネを「主力電源化」するために解決されるべき問題を議論する「再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会」。2018年10月15日に開かれた小委員会では、以下の観点に立った施策が必要ではないかという議論が交わされました。

リストアイコン よりいっそうの安全の確保
リストアイコン 地域住民や自治体との調整の円滑化
リストアイコン 太陽光パネル廃棄対策

そこで実施が検討されているのが、以下の5つの施策です(「太陽光パネルの適切な廃棄」については、今後の小委員会で議論される予定です)。このうち、論点1、2、3は「安全の確保」、論点4、5は「地域との共生」のための施策です。また、論点1と4はすでに実施されている施策の強化案、論点2、3、5は新しく検討をはじめる取り組み案です。それぞれの施策内容について、詳しく見てみましょう。

再エネの安全性を高め、地域との共生をはかる5つの施策

論点①「技術基準」の適合性確認を強化する

再エネの中でもっとも普及の進んでいる太陽光発電ですが、事業者には、「電気事業法」という法律で決められた「技術の基準」を守る義務があります。その際、技術基準に合致しているかどうか、つまり「適合性の確認」は、以下のような方法でおこなわれています。

リストアイコン 50kW以上の太陽光発電:
工事開始時以降、保安規程にもとづいて専門家(電気主任技術者)が、点検をおこなう
リストアイコン 500kW以上2,000kW未満の太陽光発電:
使用開始前に、規程にもとづいて事業者が自己確認をおこない、結果を国に届け出る
リストアイコン 2,000kW以上の太陽光発電:
工事計画を国が確認する

一方で、50kW未満の小規模な太陽光発電は、技術基準に適合させる義務は課せられているものの、専門家による確認は義務付けられていません。しかし、「大雨でも太陽光パネルは大丈夫?再エネの安全性を高め長期安定的な電源にするためには①」 でもご紹介したように、固定価格買取制度(FIT制度)の創設以来、50kW未満の太陽光発電は急激に増加しています。また、2018年に起こった自然災害による太陽光発電の被害状況をふまえると、一部の50kW未満の太陽光発電所は、安全上必要な性能を満たしていない懸念があると考えられます。

そこで、技術基準の適合性に疑いがあると思われる発電案件については、電気事業法やFIT法がさだめる立ち入り検査などを実施して、指導・改善命令・認定取り消しなどの厳格な対応を速やかにおこなう案が検討されています。

論点②技術基準がさだめた「性能」を満たす「仕様」を具体的に設定し、原則化する

前述した電気事業法がさだめる電気設備の「技術基準」とは、国が「安全上必要な性能」をさだめているものです。その「性能」を満たすために具体的にどの設備が必要かという点については、各事業者が自分の責任で、技術基準を満たすよう発電設備を設計・工事・確認し、設置することとなっています。

しかし、50kW未満の売電事業者の一部は、電気保安に関する専門性をもっておらず、専門家による確認も法定化されていないので、構造的な強度がじゅうぶんではない疑いのある設備を設置している可能性があります。

そのため、50kW未満の小規模な太陽光発電については、技術基準がさだめた「性能」を満たすために必要となる部材や設置方法などの「仕様」をさだめ、この利用を原則としてはどうかという提案がおこなわれました。

論点③「斜面」に設置する時のルールを見直す

2018年の自然災害による再エネ発電施設の被災では、山の斜面に設置された太陽光発電設備が崩落している写真が、報道やSNSで話題となりました。

発電設備を“斜面”に設置する場合は、平地に設置することとくらべて土砂災害のリスクが高くなり、「砂防法」、「地すべり等防止法」、「急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律(急傾斜地法)」などの土地の利用に関する決まりを守って設置される必要があります。また、電気事業法は、「急傾斜地法」にもとづき指定された“斜面”(急傾斜地崩壊危険区域)に太陽光発電設備を設置する場合は、急傾斜地の崩壊を助長することのないように設置することを求めています。ただ、都道府県知事が急傾斜地法にもとづく指定をしていない“斜面”については、特に設備に関する技術基準などは設けられていませんでした。

しかし、2018年7月の西日本豪雨では、このような「急傾斜地崩壊危険区域」の指定を受けていない“斜面”に設置された太陽光発電設備が崩落してしまいました。

そこで、 “斜面”に太陽光発電設備を設置する際は、どのような技術基準とすれば安全に設置できるかについて検討してはどうかと提案されています。これは2018年の災害を受けて、新しく検討され始めたポイントです。

論点④標識、柵や塀を設置していない案件をさらに厳しく取り締まる

2017年4月に施行した「改正FIT法」(「FIT法改正で私たちの生活はどうなる?」参照)では、FITの認定を受けた再エネ発電事業者に対して、設置した発電設備に標識や柵・塀などの設置を義務づけています。設置していない事業者に対しては、必要に応じて口頭で指導もおこなっています。

しかし、改正FIT法施行から1年が経過し、改正法施行前に認定を受けた発電設備に対する経過措置が過ぎた現在になっても、まだ標識や柵・塀などを設置していなかったり、設置方法が適切でなかったりする設備の情報がよせられています。

これを受け、2018年11月8日には、FIT認定事業者に対し、標識および柵・塀などの設置義務について、あらためて注意喚起をおこないました。その中で、適切な事例や適切でない事例を具体的に提示しています。また、注意喚起をおこなった後も標識や柵・塀を未設置のままの事業者に対しては、口頭での指導や現場確認をおこなった上で、認定基準違反として改正FIT法にもとづく厳しい対応をおこなうことも議論されています。

適切な事例/適切でない事例の具体的な提示イメージ
適切な事例および適切でない事例の具体的な提示イメージを示した写真です。

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論点⑤地域との共生を実現している自治体のノウハウを共有する

全国の各地域でトラブルになる再エネ設備が増加しているため、改正FIT法では、各自治体がさだめた条例も含めた関係法令を遵守することを義務づけ、違反した場合には、指導・助言・改善命令・認定取り消しなどの対応をおこなうこととしています。

このしくみが実効性のあるものとなるためには、各地方自治体が自分たちの地域に合った条例を策定するなど、自立的な制度の整備をおこなうこと、また、国もそれをサポートしていくことが求められます。

そこで、再エネに対する地域の理解を促進するため、先進的な取り組みを進めている自治体の事例などを全国に共有する場を設けます。2018年10月30日に、地方自治体と関係省庁が参加する連絡会を新たに設置し、活発な議論がおこなわれました。また、この連絡会では、地域に根付いた再エネの事業化や事業をおこなう企業・組織などの育成、長期安定的な事業継続のためのメンテナンス体制の構築などについても、テーマとして取り扱うこととしています。

再エネ拡大のためには、再エネを地域で役立つ存在にすることが重要

2018年の自然災害では、浸水したり破損した太陽光発電設備には、感電の恐れがあるため近づかないようにという注意喚起もおこなわれました。

太陽光発電はたとえ浸水・破損しても、光が当たれば発電をすることが可能です。当然のことではありますが、これまで改めて考えたことがなかったという人も多かったためか、SNSでは注意をうながすつぶやきが話題となりました。また、事業者に対しては、台風前の保守点検をうながす周知活動もおこなわれています。

一方で、再エネが災害時に役立ったケースもありました。2018年9月に発生した北海道胆振東部地震にともない、北海道全域で停電が起こりましたが(「日本初の“ブラックアウト”、その時一体何が起きたのか」参照)、家庭用太陽光発電設備を持つ人の約85%から、「自立運転モード」を活用することで、「冷蔵庫の食品が腐らずにすんだ」「スマホの充電ができた」などの声がありました(太陽光発電協会HP「災害時における太陽光発電の自立運転についての実態調査結果」参照)。太陽光発電が、災害時にも電気を供給できたのです。

再エネが長期安定的に地域で定着していくためには、一カ所に集中せずさまざまな発電所が分散して発電する「分散型電源」として地域で活用され、地域経済の活性化や、地方創生の礎(いしずえ)となることが求められます。再エネがそのような、“地域に役立つ”存在となれるよう、安全・保安を追求し、法の遵守に努め、地域との共生をはかりながら発電事業を進めていくことが、今求められているのです。

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