再エネの長期安定電源化に欠かせないのは「地域との共生」

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太陽光発電を中心とした再生可能エネルギー(再エネ)の導入は、ここ10年ほどで着実に拡大してきました。2030年の日本のエネルギーの姿を示した「エネルギーミックス」では、再エネが電源構成の22~24%を占めるとしており、これからも再エネの導入量は増えていくと考えられています。

その中で、クローズアップされているのが、再エネと地域との関係性です。再エネ発電事業が長期にわたり安定的に実施されるためには、発電施設が設置される地域との信頼関係を築き、地域とともに生きていくよう努めること、つまり「共生」をはかることが必要不可欠です。今回は、再エネと地域について、太陽光発電のケースを参照しながら、現状の問題点や対応策についてご紹介します。

太陽光発電事業者と住民とのトラブル

再エネで発電した電気をあらかじめ決められた値段で買い取る「固定価格買取制度(FIT)」が2012年に創設されて以降、日本各地でたくさんの再エネ発電事業者が誕生しました。太陽光発電については、FIT開始の前から住宅やビルの太陽光パネル設置が進んでいましたが、FITが始まった後では、野原や山などにずらりと並ぶ太陽光パネルを見ることも増えてきました。

そうした中で、地域住民とトラブルになる太陽光発電設備が現れています。

そもそも、太陽光発電事業に使う土地や周辺環境に関する調査、あるいは土地の選定や開発などにあたっては、

・土砂災害の防止
・土砂流出の防止
・水害の防止
・水資源の保護
・植生(ある地域で生育している植物の集団)の保護
・希少野生動植物の個体および生息・生育環境の保全
・周辺の景観との調和

など、さまざまなことに配慮する必要があります。また、太陽光パネルに反射する光が地域住民の住環境に影響をおよぼさないように配慮することも重要です。

太陽光発電事業の実施にあたって、もし、このような適切な配慮がされなかった場合、周辺への雨水や土砂の流出、地すべりなどを発生させるおそれがあります。そうなれば、発電設備が破損するだけでなく、周辺に被害があれば、その賠償責任が発電事業者に生じることもあります。

残念ながら、新しく太陽光発電事業に参入した再エネ事業者の中には、専門的な知識が不足している事業者もいて、そのため、防災や環境の面で不安をもった地域住民と事業者の関係が悪化するなど、問題が生じているのです。

地域との関係の構築

トラブルを回避するために、まず何よりも欠かせないのは、地域住民とのコミュニケーションをはかることです。

もちろん、自治体の条例などもふくめた関係法令を守ることは必須です。もし違反があれば、FIT認定が取り消される可能性があります。ただし、たとえ法令や条例を守り、適切な土地開発をおこなったとしても、事業者が住民に事前に周知することなく開発を進めると、地域との関係を悪化させることがあります。実際に、地域住民の理解が得られずに計画の修正・撤回をおこなうこととなったケースや、訴訟に発展したケースもあります。

そこで、2017年4月に施行された「改正FIT法」(「FIT法改正で私たちの生活はどうなる?」参照)にもとづく発電事業者向けの「事業計画策定ガイドライン」では、地域住民とコミュニケーションをはかることが、事業者の努力義務として新たに定められました。コミュニケーションをおこたっていると認められる場合には、必要に応じて指導がおこなわれます。

ガイドライン記載事項の具体例(すべての電源に共通の事項)
「事業計画策定ガイドライン」に記載されている事項の例です。

(出典)再生可能エネルギー固定価格買取制度ガイドブック 2018年度版(PDF形式:926KB)

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ガイドラインでは、発電事業の計画を作成する初期段階から、地域住民に対して、一方的な説明だけに終わらないような適切なコミュニケーションをはかるとともに、地域住民にじゅうぶん配慮して事業を実施するよう努めることが求められています。事業について地域の理解を得るには、説明会を開催することが効果的で、「配慮すべき地域住民」の範囲、説明会や戸別訪問など具体的なコミュニケーションの方法については、自治体と相談することをすすめています。

現在のガイドラインで、地域住民とのコミュニケーションが「努力義務」とされていることについては、「義務化すべき」との声もあがっています。ただ、地域住民とのコミュニケーションのありかたは一律ではなく、各ケースや地域の特性に応じた、きめこまやかな対応を必要とするものです。もし国が一律に義務化すれば、「説明会をおこなったか否か」などの形式的な要件を基準に、義務が果たされたかどうかを判断することになってしまう恐れがあります。そこで、現状では、地域住民とのコミュニケーションを「義務化」するのではなく、地域の事情に応じてつくられた条例を遵守するように義務付けることで、地域の問題に対応できると考えています。

大切な再エネだからこそ住民に配慮しトラブルをふせぐ

「地域との共生」は、事業の開発段階だけの問題ではありません。発電設備の運転を開始したあとも、適切に設備を管理し、地域へ配慮することが求められます。たとえば、防災や設備の安全、環境保全、景観保全などに関する対策が、計画どおり適切に実施されているか、事業者はいつも確認することが必要です。また、周辺環境や地域住民に対して危険がおよんだり、生活環境をそこなったりすることがないよう管理する必要もあります。

さらに、事業の終了時には、発電設備の撤去や処分をおこなわなければなりません。2040年頃には、FITの適用が終わった太陽光発電施設から大量の太陽光パネルの廃棄物が出ることが予想されており、放置や不法投棄の懸念ももたれています。

こうした懸念をなくすため、発電事業者は、事業終了後の適切な対応について、地域と話しあっておくことも重要です。

太陽光発電などの再エネは、日本のエネルギー安全保障の観点からも、CO2削減という環境の観点からも、さらなる導入を目指すべき大切なエネルギーです。再エネ発電事業者と地域住民が手をたずさえて再エネをはぐくんでいけるよう、トラブルを未然にふせぐ施策を進めていきます。

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