「水素エネルギー」は何がどのようにすごいのか?

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「水素社会」という言葉を聞いたことがありますか?「水素」は数年前、燃料電池自動車の商用化とともに、次世代エネルギーのひとつとして、メディアで特集が組まれるなど大きな話題になりました。現在も各分野で研究が着実に進められており、2017年12月26日には、府省庁横断の国家戦略として「水素基本戦略」が打ち出されています。その内容を見る前に、今回はあらためて、水素がなぜ新エネルギーとして注目されているのかをおさらいしてみましょう。

水素がもつ2つの特徴

エネルギー資源として見た場合、水素には2つの特徴があります。

さまざまな資源からつくることができる

水素は、電気を使って水から取り出すことができるのはもちろん、石油や天然ガスなどの化石燃料、メタノールやエタノール、下水汚泥、廃プラスチックなど、さまざまな資源からつくることができます。また、製鉄所や化学工場などでも、プロセスの中で副次的に水素が発生します。

エネルギーとして利用してもCO2を出さない

水素は、酸素と結びつけることで発電したり、燃焼させて熱エネルギーとして利用することができます。その際、CO2を排出しません。

環境にやさしく、エネルギー安全保障に役立つ

この2つの特徴から、水素は日本にとって究極のエネルギー源となる可能性があります。

第一に、さまざまな資源からつくることができるということは、多様なエネルギー資源の利用が可能になるということです。日本は90%以上の一次エネルギーを海外から輸入する化石燃料に頼っており、特に特定地域への依存度が高いことから国際情勢の影響を受けやすいなど、「エネルギー安全保障」の観点から大きな課題を抱えています( 「石油がとまると何が起こるのか?~歴史から学ぶ、日本のエネルギー供給のリスク?」 参照)。海外の未利用エネルギーや豊富な再生可能エネルギー(再エネ)など、安価な資源から水素をつくり、代替エネルギーとして利用することができれば、エネルギーコストを抑制しつつ、エネルギーおよびエネルギー調達先の多角化につなげることができます。

また、今後、太陽光や風力などの再エネの導入が拡大することで、季節や時間帯によって使い切れない再エネから水素をつくるアプローチも、国内外で注目を集めています。日本国内の資源を水素の原料に利用できれば、エネルギー自給率が向上します。

第二に、利用時にCO2を排出しないエネルギーとして、CO2削減など環境対策に役立てることができます。化石燃料から水素をつくる時にはCO2が排出されますが、海外では実用化されているCO2を地中に貯蔵する技術(CCS、 「知っておきたいエネルギーの基礎用語 ~CO2を集めて埋めて役立てる『CCUS』」参照)と組み合わせることで、CO2を抑えることができます。また、生ゴミや植物など、全体で見れば大気中のCO2量に影響を与えない「カーボンニュートラル」なバイオマス燃料( 「知っておきたいエネルギーの基礎用語~地域のさまざまなモノが資源になる『バイオマス・エネルギー』」参照)を原料にして水素をつくれば、大気への影響を防ぐことが可能です。さらに、再エネを使って水素をつくることができれば、製造から使用までトータルでCO2を排出しない「カーボンフリー」なエネルギーにすることが可能になります。

そして第三に、日本は水素エネルギーに関連する高い技術を持っています。たとえば、後述する「燃料電池」分野における特許出願件数は、日本が世界一です。水素社会の実現を進めることは、日本の産業競争力の強化にも役立つのです。また、そうした技術を海外展開することは、国際社会への貢献ともなります。

水素エネルギー利活用の3つの視点
水素エネルギーは環境、エネルギーセキュリティ、産業競争力の3つに点で役立つことを示した図です。

このような理由から、水素エネルギーの利活用が期待されているのです。

水素エネルギーの利用先

現在、期待されている水素の利用先には、まず燃料電池自動車(FCV)や燃料電池バス(FCバス)があげられます。搭載されている「燃料電池」で水素を使って電気をつくり、自動車の動力に利用するもので、乗用車や貨物車の低炭素化を図ることができます。また、フォークリフトなどの産業用車両での水素利用もすでに始まっています。

燃料電池は運輸分野以外でも使われています。皆さんにもおなじみの家庭用燃料電池「エネファーム」もそのひとつです。これは、ガスから水素を取り出して、酸素と化学反応を起こして効率よく電気をつくり、その時生まれる熱(排熱)も利用するしくみです。エネルギーを有効活用することで、一般家庭では25%の省エネと40%のCO2削減を実現します。世界に先駆けて販売がスタートした2009年の販売価格は300万円超でしたが、2017年には103万円まで低下し、すでに23万台以上が普及しています。

エネファームの価格・台数の推移
2009年~2017年におけるエネファームの価格と台数の推移を表したグラフです。

資源エネルギー庁作成 ※2017年12月末現在

また、従来の発電所のように大規模な「水素発電所」の実現も期待されています。今月から、神戸市のポートアイランドにおいて、水素をエネルギー源として電気と熱を街区供給する実証事業が始まります。

水素社会の構築に向けて

このような水素をさまざまな分野で利活用していく水素社会を構築するには、クリアすべき課題がまだまだ多く残っています。たとえば、海外資源などから水素を大量に調達・利用するための、製造、貯蔵、輸送技術、水素発電技術。また、FCVやエネファームなどにおける燃料電池システムの性能向上とコストダウン。ガソリンスタンドのように水素を充填できる「水素ステーション」のインフラネットワークの拡充、規制の見直しなどです。

こうした課題を解決するべく、2014年4月に政府が策定した「第4次エネルギー基本計画」では、「水素社会」について検討を進めるべき時期であるという記載が盛り込まれました。これを受けて2014年6月には「水素・燃料電池戦略ロードマップ」がとりまとめられました(2016年3月に改訂)。

2017年末に閣僚会議で決定した「水素基本戦略」は、このロードマップの内容を包括しつつ、水素を「カーボンフリーなエネルギー」の新しい選択肢のひとつとして位置づけ、政府全体として取り組んでいくことを目指した方針です。次回は、この「水素基本戦略」の具体的な内容についてご紹介します。

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