災害から学び、強い「石油供給網」をつくる②~災害時にもスムーズに供給するために

製油所で自衛隊のタンクローリーに燃料を積み込む訓練の様子の写真です。

製油所で自衛隊のタンクローリーに燃料を積み込む訓練の様子(提供:全国石油商業組合連合会)

未曾有の大災害に襲われた東日本大震災以降、災害の教訓を活かし(「災害から学び、強い『石油供給網』をつくる①~東日本大震災などから得られた教訓」参照)、石油供給網における課題を一歩ずつ克服していくための取り組みが進められています。資源エネルギー庁と関係機関は、これまでさまざまな対策を実施してきましたが、2018年はさらなる新しい課題への対応策を検討する動きも始まっています。強い石油供給網をつくるためのこれまでの取り組みと動きについてご紹介しましょう。

災害時にも石油製品を必要な所に届ける

まずは、石油製品の出荷や輸送に関する主な取り組みの例を見てみましょう。

災害に強い燃料供給拠点をつくる

日本の製油所は、太平洋ベルト地帯に集中して立地しています。もし、首都直下地震や南海トラフ巨大地震など震度6以上の地震が起これば、以下のようなことが起こる可能性があります。

リストアイコン 石油精製設備が停止した後、仮に設備に損傷がなくても運転再開までは7日前後かかり、また損傷が大きければさらに長期化する可能性
リストアイコン 停電により、復旧に時間がかかる可能性
リストアイコン 地盤の液状化が発生し、海上・陸上の入出荷ができなくなる可能性

特に大規模な液状化が起こると、コンビナートの地盤全体が大きく海に押し出される「側方流動」が発生し、タンカーを製油所へ着けることが難しくなったり、製油所の配管類が破損・切断したり、石油タンクが傾いて沈下したりする可能性もあります。このようなことが起これば、広範囲かつ長期間にわたる、石油製品の供給障害につながってしまいます。

そこで、2012年には、首都直下地震や南海トラフ巨大地震の被災想定地域にある、製油所や化学工場など26事業所について、災害耐性の「総点検」を実施し、地震や液状化に対する耐性などを確認しました。

また2013年以降は、点検結果に基づき、耐震・液状化・津波対策や、二次被害防止のための設備の安全停止対策、入出荷バックアップ能力の増強対策などに、官民が協力しながら取り組んでいます。

輸送網を早期回復させ、通行をスムーズに

災害時には、燃料の輸送を担うタンクローリーやタンカーが、スムーズかつ確実に被災地へ燃料を運ぶことができることが重要です。そこで、内閣府や国土交通省と協力して、製油所・油槽所につながるアクセス道路や航路について、早期に、啓開作業(瓦礫の除去など)をおこなうことをルール化しています。

また、2015年には、石油精製・元売会社8社(当時)を、「災害対策基本法」が定める「指定公共機関」として追加指定しました。これにより、災害時に政府に協力することを義務付ける一方、タンクローリーが被災地をスムーズに移動できるよう、緊急通行車両として事前に登録しておくことを可能にしています。また、民間による輸送が難しい場合には、自衛隊などとも協力できるよう、毎年、国内各地で輸送協力訓練を実施しています(トップ写真参照)。

石油会社間や系列間の連携を強化する

2012年には、災害時の情報収集や共有をスムーズに実施しやすくなるとともに、緊急要請への対応や貯蔵施設の共同利用などを、独占禁止法に抵触することを心配せずにおこなうことができるよう、「石油備蓄法」が改正され、「災害時石油供給連携計画」制度が誕生しました。これにより、石油会社間で連携することが容易になりました。

また、系列グループごとの連携を強化するため、資源エネルギー庁から石油会社に対して、「系列BCP(業務継続計画)」の策定を要請しました。自社だけでなく、運送会社やSSなども含んだ系列の供給網全体で、災害時にも事業を継続できるような体制づくり(ルール・マニュアル整備、訓練の実施、司令塔機能の移転など)を求めています。

系列石油供給網の危機対応イメージ
系列石油供給網のBCPイメージを示した図です。

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各地の給油拠点も災害対応能力をアップ

さらに、被災地で重要な供給拠点となるSSや、石油を必要とする重要施設においても、災害対応能力をアップさせるための取り組みが進められています。

全国に「中核SS」を整備

SSは、被災地に石油を供給するための「最後の砦」としての機能を果たします。そこで、全国の石油組合では地元自治体などと「災害時協定」を結び、平常時からの燃料確保を推し進めるとともに、災害時のスムーズな連絡体制を構築するなどの取り組みを進めています。また、各県や地域における総合防災訓練に積極的に参加するなど、地域との連携強化に取り組んでいます。

加えて、自家発電機を備え、災害時にはパトカー・消防車・救急車や自衛隊車両といった緊急通行車両などに優先して給油をおこなう「中核SS」を、全国で約1600カ所(2018年4月1日現在)整備しました。

重要施設に備蓄を促進

災害時には燃料供給網の回復に一定の時間がかかるため、災害拠点病院などの重要施設に対しては、災害時においても事業の継続を可能にする、自衛措置としての燃料備蓄を呼びかけています。さらに、災害時の緊急の燃料要請への対応をスムーズにおこなうため、各自治体に対して、地域内の重要施設をあらかじめ把握することや、その施設が使用する燃料の種類や担当者の連絡先などの情報を事前に共有する「情報共有覚書」を石油連盟と交わすことを促しています。2018年3月現在、47都道府県で覚書を締結し、情報提供をおこなっています。

頻発する自然災害、新たな課題に対応していくために

このように、未曽有の大災害に襲われた東日本大震災以降、出荷から輸送、末端の販売まで、石油サプライチェーンの強じん化に向けた取り組みがおこなわれてきました(熊本地震や北海道胆振東部地震などをふまえた対応については、また別の回でご紹介します)。

しかし、ここ数年自然災害が頻発しており、その結果、さらに検討が必要な課題が多く確認されています。今後、いつ、どこで起きるかわからない大規模な災害に備えるため、石油流通網のさらなる強じん化が必要となっています。

そこで、資源エネルギー庁では2018年10月から、東日本大震災後の取り組みについて点検をおこない、さらなる課題への対応策を検討していくための有識者会議を開催します(「災害時の燃料供給の強靭化に向けた有識者会議」参照)。このスペシャルコンテンツでもあらためて解説する予定ですので、ぜひチェックしてみてください。

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