より強い電力インフラ・システムをつくるために~災害を教訓に進化する電力供給の姿

北海道の苫東厚真火力発電所の写真です。

北海道の苫東厚真火力発電所

2018年11月27日、経済産業省が開催する「電力レジリエンスワーキンググループ」において、“レジリエンス”の高い電力インフラ・システムの構築に向けた今後の対策についての中間取りまとめが公表されました。最近さまざまなところで耳にする“レジリエンス”とは、日本語で「強靭性」と訳される言葉です。電力インフラ・システムにおける「強靭性」とは、いったいどういうことを指しているのでしょう?また、どのような取り組みをすれば強靭性が高まるのでしょう?取りまとめのポイントを見ていきましょう。

工学・法律・防災…さまざまな識者が結集したワーキンググループ

2018年は、自然災害の多い年でした。夏以降、「平成30年7月豪雨」、「平成30年台風21号・台風24号」、「平成30年北海道胆振東部地震」などの災害が次々に起こったのです。これによって大規模停電が発生するなど、電力の供給に大きな被害がもたらされました。

「電力レジリエンスワーキンググループ」は、こうした災害に強い電力の供給体制を構築するために解決が必要な課題や対策について、工学、法律、防災分野などの識者が集い、議論するために設けられた会議です。2018年10月9日に、経済産業省が開催する「総合資源エネルギー調査会 電力・ガス基本政策小委員会」と、同じく経済産業省が開催する「産業構造審議会 電力安全小委員会」の下に、合同の会議として新たに設置されました。

では、中間取りまとめの内容を具体的に見ていきましょう。

北海道における主要電源・連系線の開発の変遷
北海道における主要電源・連系線の開発の変遷を示した図表です。

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中間取りまとめのポイント①~北海道電力の設備の構成には問題がなかったのか?

北海道胆振東部地震では、大規模停電(ブラックアウト)が発生しました。その発生原因や、ブラックアウトが発生してから復旧するまでの対応が妥当だったかについては、国の関連機関である「電力広域的運営推進機関」に設置された第三者委員会において議論された通りです(「日本初の“ブラックアウト”、その時一体何が起きたのか」参照)。そこでこのワーキンググループでは、北海道電力の設備形成や投資判断について問題がなかったかが論点になりました。設備形成とは、つまり、北海道電力の電源(電気をつくる方法)や発電所、送電線の組み合わせや配置など、発電~送配電に関する設備の構成がどのようになっていたか、今後どのような構成としていくかということです。

実際に、今回のブラックアウトで止まった苫東厚真火力発電所といった、大規模電源に電力供給力が集中しすぎているのではないか、という批判もありました。
しかしながら議論の結果、北海道電力は、2011年3月の東日本大震災が発生した後、大型電源の脱落リスクにも備えて、下記のような電気を供給するチカラ、つまり「供給力」の分散化に積極的に取り組んでいることが確認されました。

リストアイコン 「京極揚水発電所1、2号機」の運転開始(2014年、2015年にそれぞれ運転開始済み)
リストアイコン 「石狩湾新港LNG火力発電所」の建設
リストアイコン 北海道と本州を結ぶ電線「北海道・本州間連系設備(北本連系線)」の増強

また、石狩湾新港LNG火力発電所については、運転開始期間を約2年前倒しているほか、北海道電力の設備投資は、その経営規模から見ても、他の電力にくらべても低くない水準でおこなわれているなど、設備形成や投資判断において不適切なポイントや不合理な遅れなどは認められませんでした。

中間取りまとめのポイント②~他の地域でブラックアウトは起きないの?

北海道でのブラックアウトの原因のひとつとして、地震によって一部の発電所が停止してしまったことで、電力の需要量が供給量を上回ってしまい、周波数が低下してしまった結果、広い範囲で電力の供給がストップしてしまったことが、検証結果により明らかになっています(「日本初の“ブラックアウト”、その時一体何が起きたのか」参照)。

こうした事情をふまえ、ワーキンググループでは、もしも東日本エリアや中西日本エリアにおいて同じような事象が発生した場合、ブラックアウトが発生するかどうかについて検証をおこないました。

検証にあたって選んだのは、供給量が急激に変化することによって周波数がもっとも影響を受けやすい「電力の需要がもっとも低い時間」と、太陽光出力が最大となる「昼間の時間」の2つの時間帯です。これらの時間帯に大規模な電源が停止することでブラックアウトが発生するかどうか、確認することとしました。

検証の結果、必要に応じて運用対策などを実施すれば、すべてのエリアにおいて「ブラックアウトには至らない」ことが確認されました。また、火力発電設備や送電・配電・変電設備についてもあわせて点検をおこない、耐震性や健全性に問題のある設備はないことが確認されています。

中間取りまとめのポイント③~電力供給体制をさらに強くするための対策

このような総点検の結果として、ブラックアウトの再発は防止できることや、問題のある設備がないことが確認されました。ワーキンググループでは、さらに、一連の災害から得られた反省と教訓を最大限に活かすべく、電力の供給体制の強化に向けた対策を取りまとめることとしました。

対策は、すみやかに実行に着手する「緊急対策」と、すみやかに検討に着手する「中期対策」に分かれています。情報発信の観点では、復旧見込みや節電情報などの、皆にとって重要な情報を、Twitterを活用して迅速に発信するという対策があげられています。それとともに、災害時にインターネットが使用できない人に対しても情報が行きわたるよう、広報車、避難所での貼り紙、配布用チラシなどの多様なチャネルを活用して必要な情報を周知することとしています。また、非常時には電力会社のWebサイトがアクセス集中により閲覧しづらくなることがあります。そうした問題を防ぐため、「キャッシュサイト」(アクセスの集中による負荷を分散するため一時的につくる複製サイト)をスムーズに開設できるように、電力会社には大手ポータルサイトとの連携も求めています。

さらに、大規模電源の停止などによって周波数が多少変動しても、継続して電力を供給できるような再生可能エネルギーの導入の促進を行うことなどが掲げられています。また、災害などにより火力発電などの電源からの供給が困難になっても、蓄電池やコージェネレーションシステム(「知っておきたいエネルギーの基礎用語~『コジェネ』でエネルギーを効率的に使う」参照)、さらにはディマンドリスポンスなどの分散型エネルギーリソースを活用するなど、需要サイドにおけるレジリエンスを向上させる取り組みも進められています。

また、北海道については、この冬に向けては、大規模電源である苫東厚真火力発電所が停止した場合にすぐさま足りなくなった供給力を補てんできる揚水発電所(水をくみ上げて落とす発電所)を同時に稼働するなど、運用上の対策をおこなうこととしています。さらに、本州と北海道間で電力を融通できる北本連系線の増強(60万kW→90万kW)や新たな連系線の設置については、その完成に向けてすでに作業が進められています。これに加えて、これらの連系線の整備後にさらなる増強が必要であるかどうかについても、シミュレーションなどによって増強にどのくらい効果が出ているかを確認した上で、来春までを目途に増強の是非を確認することとしています。

中間取りまとめのポイント
中間取りまとめのポイントを示した表です。

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電力の安定供給を目指して

電力政策を含むエネルギー政策における基本的な考え方のひとつは、今年2018年7月に改訂・閣議決定された「第5次エネルギー基本計画」にも示された(「新しくなった『エネルギー基本計画』、2050年に向けたエネルギー政策とは?」参照)、「3つのE(エネルギーの安定供給、経済効率性の向上、環境への適合)+S(安全性)」のバランスを適切にとった政策体系をつくるということにあります。

今回の一連の災害をふまえて、このバランスにおける安定供給の重要性が再確認された、という見方をすることもできます。ただ、一方で、安全性はもとより、効率性・経済性を追求することによってもたらされる国民負担の軽減や、地球温暖化対策など環境への配慮とのバランスも引き続き重要であることは言うまでもありません。

今後、資源エネルギー庁としても、このバランスを考えながら、今回取りまとめられた対策の実施・検討にできるだけ早く着手し、電力会社や関係機関と連携して、こうした災害対策に関連する情報を国内外に積極的に発信するとともに、電力の安定供給に努めていきます。

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