【インタビュー】「“主力電源化”をめざす太陽光発電のコミットメント」―平野敦彦 氏(前編)

平野敦彦氏

ソーラーパネルと並ぶ平野一般社団法人太陽光発電協会(JPEA)代表理事

近年、日本でも拡大しつつある再生可能エネルギー(再エネ)を使った電気の中でも、とりわけ急速に普及が進んでいるのが太陽光発電です。今回は、太陽光発電協会(JPEA)代表理事の平野敦彦氏に、協会が掲げる目標と取り組みについておうかがいしました。再エネの導入量が拡大するにつれて、安全性の確保や事業の継続性、あるいは系統接続などの課題が顕在化してきています。協会が描く、課題への取り組み方と太陽光発電の今後の道筋はどのようなものなのでしょうか。前後編の2回に分けてお届けします。

基本計画を上回る自主目標の達成に向けて

—2018年7月に閣議決定された「第5次エネルギー基本計画」では、再エネの主力電源化が明確に打ち出されました(「新しくなった『エネルギー基本計画」、2050年に向けたエネルギー政策とは?」参照)。これをどのように捉えていらっしゃいますか?

平野 新しいエネルギー基本計画では、2030年には再エネを主力電源にすることをめざすこと、また2030年時点で再エネの導入水準をすべての発電量の22~24%、うち太陽光発電を7%とすると示されました。これは、再エネ業界・太陽光発電業界にとって大きな出来事だと考えています。

ご存じのとおり、再エネは“脱炭素化の切り札”(脱炭素:石油や石炭など「化石燃料」への依存度を引き下げることなどによって、CO2を低減していくこと)として世界的に注目されており、また日本においては重要な純国産エネルギーとしても期待されています。第5次エネルギー基本計画の方針は、再エネの産業発展の大きな推進力になり、再エネ導入の機運がさらに高まることは間違いありません。

期待する一方で、気が引き締まる思いでもあります。主力電源の役割を果たすということは、同時にその責任も大きくなるということ。長期にわたって安定的に電気を供給するという責務を果たし、地域との共生もこれまで以上に努力しなければならないと認識しています。我々協会ではシンポジウムなどを通じて、協会内外にこの点を強く発信しているところです。

―太陽光発電協会では、政府の「エネルギー基本計画」とは別に独自の長期ビジョン「JPEA PV OUTLOOK2050」を発表されていますね。その概略と狙いをお聞かせください。

平野敦彦氏

平野 我々がまとめたビジョン(太陽光発電協会「太陽光発電2050年の黎明」(PDF形式:3.85MB))では、太陽光発電の目標を2030年には全発電量の11%、2050年には18%に設定しています。政府の設定した2030年の比率7%と比べると相当高い目標ではありますが、主力電源としての責任を果たす覚悟のあらわれです。2050年の18%についても、「太陽光の課題」と言われる発電コストの面で、ほかの電源に負けない競争力をつけることで、実現できるものと考えています。

このようなチャレンジングな目標を掲げたのには、理由があります。過去の業績からの積み上げ式で目標を立てると、一時的に痛みをともなう局面や調整を必要とする局面で立ち止まってしまい、本来できうるレベルにさえ到達できなくなってしまうというケースが、しばしば起こるためです。そこで発想を逆転させ、高い目標を設定し、実現のために何をなすべきかを明確にしようというのが、この長期ビジョンの狙いです。この考え方は、再エネ先進国にならったものです。

当協会ではアカデミアの方々とも深い関係を築いています。産官学で協力して知恵を出し合うことで、高い目標設定からあぶりだされた課題を解決し、目標達成に向け取り組んでいく所存です。

主力電源としての責務を全うする

―太陽光発電が普及し、課題も目立つようになってきました。たとえば、景観や環境面で地元とトラブルを抱える事例や、不適切な設計によって台風や豪雨でパネル破損が起きた事例もあります(「大雨でも太陽光パネルは大丈夫?再エネの安全性を高め長期安定的な電源にするためには①」参照)。また2012年に固定価格買取制度(FIT)ができて加速度的に増えた太陽光パネルがいずれ大量廃棄の時期を迎えるという懸念、さらには体力のない事業者は廃棄処分ができず、パネルが放置されるのではといった懸念の声も聞かれます(「2040年、太陽光パネルのゴミが大量に出てくる?再エネの廃棄物問題」参照)。今後、主力電源としての責任が増す中で、「地域との共生」、「安全性の確保」、また「長期にわたって安定的に電気を供給する責務」などについて、協会は具体的にどのような取り組みをおこなっているのでしょう?

平野敦彦氏

平野 「地域との共生」という観点では、2017年のFIT法改正により、設備認定から事業認定となり、事業をおこなうに際して地域との共生に努めることが認定条件となりました(「再エネの長期安定電源化に欠かせないのは『地域との共生』」参照)。我々もこの趣旨に賛同し、協会員への徹底を図っているところです。

「安全性の確保」という観点では、協会は以前から「地上設置型太陽光発電システムの設計ガイドライン」(太陽光発電協会)を策定しており、より構造安全性の高い設備をめざしアップデートを重ねています。新規設計についてはこのガイドラインを基準にしてもらうことで、自然災害による破損も極力少なくなるものと考えます。

また既存設備についても2018年6月に「太陽光発電事業の評価ガイド」(太陽光発電協会)を策定し、政府からも参照を推奨していただいています。チェックリストを設けており、このガイドラインにしたがって適正なメンテナンスをおこなうことで、安全性の確保をめざします(「太陽光発電の“リスク”を評価して、継続的な事業を目指す」参照)。

「長期にわたって安定的に電気を供給する責務」については、設備の長期利用をうながすしくみをつくることで、問題に対処しようとしています。具体的には、現在、次の3つのアプローチでのぞんでいます。

まずもっとも重要なのは、廃棄量を減らすこと。太陽光パネルの保証期間は一般に20年ほどですが、保証期間イコール寿命というわけではありません。20年で廃棄するのではなく、適切なメンテナンスをおこないながら40年使えば、廃棄量は半分になるわけです。そのメンテナンスを各事業者にうながすのが、先にお話しした「評価ガイド」のひとつの役割でもあります。できるかぎり設備を長く利用し、時期がきたら設備をリプレイスしていくことで、発電所としては80年~100年の事業継続をめざします。

また、さまざまな事情により事業の継続が困難になった場合には、別の事業主に発電設備を適切な価格で譲渡できるよう、セカンダリーマーケットの整備を進めることも大切です。これにも「評価ガイド」が一役買います。発電所の価値づけに関して、売り手買い手の両者が納得できる明確な基準ができるため、2次マーケットが生まれ、設備が放置されるのを防ぐことができます。

また、リサイクル技術の向上に取り組むメーカーもあらわれています。廃棄するよりリサイクルするほうがコストが抑えられるという経済原理が成り立てば、廃棄は減ります。現在、業界側と、経済産業省、環境省が集まり、リサイクルの推進体制についての検討が進められており、制度面の検討と技術面の向上でリサイクル率を高めていきます。

―さまざまな取り組みを通じて、懸念される大量廃棄を防ぎ、主力電源として安定的に電力を供給できるよう努めていらっしゃるのですね。

競争力のある発電コストの実現は可能

―日本でも太陽光発電の存在感はますます高まっていますが、それでも、海外に比べれば日本の再エネはまだコストが高いとされ、課題のひとつといわれています。そのようなコストの問題については、どのようにお考えでしょうか?

平野 日本の太陽光発電のコストはヨーロッパの2倍といわれていますが、その内訳はハードウエア、すなわち太陽光パネルと発電のために必要な周辺機器が1.3倍。設置するための土壌整備や電力系統との連系をおこなう費用など、ソフトコストが3倍。その総平均で2倍になっていると我々は分析しています。

もちろんハードのコストダウンや流通の効率化もさらなる努力が必要ですが、それ以上に大きいのがソフトの部分です。土壌整備や連系の負担がなければ、きわめて競争力のある発電コストが実現できるでしょう。

そこで今後注力したいと考えているのが、土壌整備の必要がない、大規模工場などの屋根を利用した太陽光発電です。屋根で作って工場で使うため、電力系統に連系する必要もありません。事業活動に使うすべての電力を再エネでまかなうことを目標に掲げる「RE100(Renewable Energy 100%)」に、日本でも加盟する企業が増えるなど、グリーン電力への企業のニーズは高まっています。ですから、FITに頼らない再エネ由来電力の市場も成り立つと考えています。

政府は以前、2030年時点の太陽光発電単価の目標を7円/kWhにしていましたが、第5次エネルギー基本計画で「再エネの主力電源化」を打ち出したことも踏まえ、7円の実現を数年前倒しにするという有識者会議の意見が取りまとめられました。主力電源として太陽光のシェア拡大を図るためには、ほかの電源に対してコスト優位性が必要だと考えているためです。先ほど述べたような、工場での太陽光発電の利用促進策などを進めていけば、実現は可能であると考えています。

平野敦彦氏

―なるほど。「分散型電源」としても使える太陽光発電の強みを活かした利用方法を推すことで、コストダウンにもつなげていくわけですね。

後編では、電力系統への接続問題や、先日おこなわれた九州での太陽光発電の出力制御、そして出力制御を回避する将来の展望について、引き続きお話をうかがいます。

プロフィール
平野 敦彦(ひらの あつひこ)
1985年、昭和シェル石油株式会社入社。2009年、昭和シェルソーラー株式会社(現:ソーラーフロンティア株式会社)取締役就任、2014年より代表取締役社長。2017年6月、一般社団法人太陽光発電協会(JPEA)代表理事に就任。

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