2018年5月から始まる「非化石証書」で、CO2フリーの電気の購入も可能に?

イメージ画像

2018年5月、まもなく「非化石証書」の取引が始まります。「非化石証書」とはいったいなんでしょう?今回は、「非化石証書」とその取引がどんな問題を解決するのか、その意義や効果をご紹介しましょう。

CO2削減のため小売電気事業者が求められていること

現在、私達がつかっている電気の約8割は、天然ガスや石炭、石油などの化石燃料をつかって発電されています。化石燃料をつかうときに排出されるCO2は、地球温暖化の原因となるといわれており、その排出量を減らすことが世界的にとても重要な課題となっています。そこで、電気の発電につかわれる化石燃料を減らし、再生可能エネルギーなどCO2の排出量の少ない非化石エネルギー源に置き換えていくことが求められています。

これを法律で定めたものが「エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律」(高度化法)です。発電事業者から電気を調達して住宅や企業に電気を販売する事業をいとなむ「小売電気事業者」は、この高度化法により、みずから調達する電気のうち、非化石電源比率(化石燃料をつかわない発電所からの電気の比率)を、2030年度までに44%以上にすることが求められています。

現在、日本には、小売電気事業者や発電事業者などが電気の売買をおこなっている「卸電力取引所」があります。特に、電力自由化後に新たに小売電気事業をはじめた企業は、取引所から多くの電気を調達し、住宅や企業に電気を販売しています。この取引所では、「化石電源」「非化石電源」などの電源の種類を問わず、価格にしたがって安いものから買い取られていくしくみがとられています。

このしくみのもとで、小売電気事業者は、できるだけ安く電気を調達することができますが、「非化石電源」からの電気だけを選んで調達することはできません。そこで、小売電気事業者が、取引所からできるだけ安く電気を調達しながら、同時に非化石電源比率を高めることができるようなしくみが求められていました。

非化石エネルギーが持つ「価値」とは?

一方、別の課題もありました。現在、太陽光発電など再生可能エネルギーでつくられた電気は、固定価格買取制度(FIT)にもとづいて、一定の価格で買い取られています。こうして買い取られた「FIT電気」が持つ「環境価値」を、もっと活かすことができないかという課題です。

環境意識の高い企業を中心として、電気をつかうときにも、CO2の排出量の少ないものを選ぶ取り組みが始まっています。また、法律により、エネルギーの使用量が多い企業は、エネルギーの使用によって排出されたCO2の量を国に報告する制度(温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度)もあり、その点からも、CO2排出量の少ない電気が求められます。皆さんの家庭でも、なるべくCO2を出さない電気を使いたいと思われているかもしれません。FIT電気のようなCO2の排出量が少ない電気には、本来、そうした企業や家庭から選ばれる「価値」、つまり環境価値があるのです。

たとえば小売電気事業者が販売した電気が、発電の際にどれぐらいのCO2を排出したかを示す数値(「排出係数」)については、多くの小売電気事業者がホームページなどで開示しています。これは環境価値を見える化する手法のひとつです。

しかしFIT電気については、買い取りコストは国民(需要家)の皆さんが負担している「賦課金」によってまかなわれているため、その環境価値は、「賦課金」の負担額に応じ、すべての需要家に配分されるしくみとなっています。小売電気事業者が、FIT電気の「環境価値」を利用した商品(CO2フリーの電気)を販売することはできないことになっています。

もし、このFIT電気の「環境価値」を、その価値を利用した商品を販売したい小売電気事業者に購入してもらえれば、その売上によって賦課金による国民負担の軽減につながる可能性があります。

「非化石価値」を証書にして取引できるように

こうしたことから、新しい市場「非化石価値取引市場」が創設されることとなったのです。

「非化石価値」は、電気の持つ「環境価値」の一種で、「非化石電源からつくられた電気である」という価値です。

この市場では、非化石価値は「証書」の形で見える化され、取引が可能になります。非化石証書の取引は、まずはFIT電気の非化石証書からスタートします。

小売電気事業者は、購入した非化石証書を高度化法の義務の履行(非化石電源比率を2030年度までに44%にすること)に利用することができます。また、証書を購入した分だけ、販売する電気のCO2排出量が少なくなるとみなされます。小売電気事業者から電気を買う私たち需要家にとっても、非化石電源からの電気を買う選択肢が広がることが期待されます。

さらに、この取引で生まれたFIT電気の非化石証書の売り上げは、FIT賦課金の原資にあてられます。これによって、国民の賦課金負担の軽減が期待できます。

CO2フリーの電気が選べる未来も

2018年5月におこなわれる初回オークションで取引される非化石証書は、2017年にFIT電源から発電された電気の証書です。この証書は、2017年度に販売された電気と組み合わせてCO2フリーの電気の商品をつくることができますが、2017年度にCO2フリーの電気を販売していた小売事業者は、わずかだったと考えられます。もし非化石証書が売れ残った場合、その環境価値は、これまでのFIT電気の環境価値と同じように、販売電力量に応じてすべての需要家に配分される予定です(なお、次回の非化石証書のオークションは2018年の8月頃におこなわれ、以降は3ヶ月ごとにおこなわれる予定です)。

とはいえ、今、企業など環境意識の高い需要家は増えています。それに伴ってCO2フリーの電気に対する需要が増えていけば、そうした需要に応えようと、小売電気事業者がCO2フリーの電気の販売を開始し、非化石証書の購入量を増やしていくことが予想されます。非化石証書の取引開始が、国民の負担をおさえつつ、CO2フリーの電気を、より身近なものにするきっかけになることが期待されています。

お問合せ先

記事内容について

電力・ガス事業部 電力基盤整備課 電力供給室

スペシャルコンテンツについて

長官官房 総務課 調査広報室