日本が抱えているエネルギー問題

イメージ画像

1.世界から見た日本のエネルギー事情

朝食にガスコンロで卵を焼いてトースターでパンを焼く。電車に乗って会社や学校へ向かいながら、スマートホンでニュースをチェックする。日中、パソコンに向かって仕事や勉強をし、夜には冷房が効いた快適な部屋で、宅配便で届いた本を読む…。

日本のこうした便利な暮らしを支えているのは、電気や都市ガス、ガソリンといったエネルギーです。エネルギーなくして成立し得ない現代の生活スタイルですが、実は、日本の実質GDP当たりのエネルギー消費は世界平均を大きく下回ることに成功しています。GDP世界第1位のアメリカと比べ約2分の1、同じ非資源国の韓国と比べ約3分の1程度の消費に抑えられているのです。これは、1970年代、2度に渡って生じた石油ショックを教訓として、官民を挙げて省エネルギー対策に注力してきた結果といえるでしょう。

<実質GDP当たりのエネルギー消費の主要国比較(2014年)>
日本を1とした場合の実質GDP当たりのエネルギー消費は、アメリカが1.8、韓国が2.8。

(注)一次エネルギー消費量(石油換算トン)/実質GDP(米ドル、2010年基準)を日本=1として換算。
(出典)IEA「World Energy Balances 2016 Edition」、World Bank「World Development Indicators 2016」を基に作成

詳しく知りたい
エネルギー白書2017「第2部 / 第1章 / 第1節 / 2.海外との比較」

しかし、エネルギー利用効率が非常に良い一方で、日本のエネルギー需要量そのものは、石油ショック後拡大しています。経済成長と共に生活が便利になり、家庭や企業でのエネルギー利用機器や自動車の利用が増えていったことがその原因です。最終エネルギー消費量は2004年度まで増え続けましたが、その後は減少傾向となり、第1次石油ショック当時の1973年度に比べ、2015年度では全体で1.2倍のエネルギー需要量となっています。

<最終エネルギー消費と実質GDPの推移>
日本の最終エネルギー消費量は、1973年度が11.1エクサジュール、2004年度が15.74エクサジュール、2015年度が13.55エクサジュール。

大きい画像で見る

(注1)J(ジュール)=エネルギーの大きさを示す指標の一つで、1MJ=0.0258×10-3原油換算kl。
(注2)「総合エネルギー統計」は、1990年度以降の数値について算出方法が変更されている。
(注3)産業部門は農林水産鉱建設業と製造業の合計。
(注4)小売全面自由化後も、需要家保護の観点から、競争が進展していない地域においては、経過措置として小売料金規制を存続させる。
(出典)1993年度以前のGDPは日本エネルギー経済研究所推計。

詳しく知りたい
エネルギー白書2017「第2部 / 第1章 / 第1節 / 1.エネルギー消費の動向」

また、日本のエネルギー自給率は総じて低い状況が続いています。エネルギーの供給構成は、需要量の拡大や産業構造の変化とともに、国内の天然資源であった石炭から輸入中心の石油へと転換が進みました。さらに石油ショック後には、石油に依存しない供給構造を目指すべく天然ガスの普及も進みましたが、これもやはり輸入に頼るしかありません。

東日本大震災後全ての原子力発電所が停止したこともあり、2014年度には、日本のエネルギー自給率は過去最低の6.0%になりました。その後、新エネルギーの導入の拡大や原子力発電所の再稼動が一部で進み、2015年度には7.0%(推計値)になったものの、他の先進諸国に比較すれば極めて低い水準です。

<主要国の一次エネルギー自給率比較(2014年)>
2014年の主要国の1次エネルギー自給率を比較すると、アメリカが90.8%、フランスが56.5%、ドイツが39.1%、日本が6%。

(出典)IEA「Energy Balance of OECD Countries 2016」を基に作成(※表内の順位はOECD34カ国中の順位です。)

詳しく知りたい
日本のエネルギー2016(P.3)「Q1 日本は、国内の資源でどのくらいエネルギーを自給できていますか?」(PDF形式:1,953KB)

<日本の一次エネルギー国内供給構成及び自給率の推移>
日本の1次エネルギー国内供給構成は東日本大震災以降、9割以上を石油や石炭、天然ガスに依存している。

大きい画像で見る

(注1)IEAは原子力を国産エネルギーとしている。
(注2)エネルギー自給率(%)=国内産出/一次エネルギー供給×100。
(注3)2015年はIEAによる推計値である。
(出典)IEA「World Energy Balances 2016 Edition」を基に作成

詳しく知りたい
エネルギー白書2017「第2部 / 第1章 / 第1節 / 4.エネルギー自給率の動向」

2.エネルギー自給率が低いと何が問題なのか?

我が国のエネルギー自給率が低いと、何が問題なのでしょう。日本はもともと資源の少ない国で、他の国からいろんな物を輸入して成り立っている国なのだから、なぜエネルギーの自給率の低さをあえてリスクと考える必要があるのだろう、という指摘もあるかと思います。

その疑問に答えるには、我が国の1次エネルギー源の9割以上が化石燃料である、という供給構造をまず理解する必要があります。

<主要国の化石エネルギー依存度(2014年)>
2014年度の主要国の化石エネルギー依存度を比較すると、アメリカが82.9%、フランスが46.2%、ドイツが79.7%、日本が94.7%。

(注)化石エネルギー依存度(%)=(一次エネルギー供給のうち原油・石油製品、石炭、天然ガスの供給)/(一次エネルギー供給)×100。
(出典)IEA 「World Energy Balances 2016 Edition」を基に作成

詳しく知りたい
エネルギー白書2017「第2部 / 第1章 / 第1節 / 3.エネルギー供給の動向」

また、我が国の電源構成の多くも化石燃料が占めており、そのほとんどを輸入に頼っています。電源ベースでも海外依存度は88%にも達しております。

<我が国の電源構成(発電のためのエネルギー源)の推移>
 日本の電源構成は2010年度で化石燃料依存度が62%、2014年度で88%。

大きい画像で見る

(出典)電気事業連合会「電源別発電電力量構成比」等より作成:発電電力量を用いて%を算出。「その他ガス」とは、一般電気事業者において、都市ガス、天然ガス、コークス炉ガスが混焼用として使用されているものが中心。(※当資料で扱うパーセンテージ表示については、四捨五入の関係上、合計が100%にならない場合があります。)

詳しく知りたい
日本のエネルギー2016(P.4)「Q2 日本はどのような資源に依存していますか?」(PDF形式:1,953KB)

こうした化石燃料のうち約4割を占める原油は80%以上を中東地域に依存しています。これら地域の国際情勢は複雑で、近年でも「アラブの春」や「イラン核問題」といった地政学的リスクが生じていることは、皆さんも覚えておられるでしょう。このような地域の資源には、安定的に供給が行われるかという懸念はもちろん、価格が不安定な傾向にあるという問題点もあります。原油価格は、地政学的リスクや新興国での化石燃料需要の急増、環境制約の強化などの課題を背景に大きく変動します。国際エネルギー機関(IEA)などでは、長期的には上昇する見通しを出しています。

このような「供給の安定性に関する懸念」「価格の不安定さ」という課題は、実は皆さんの生活に直結しています。例えば、電力価格を考えてみましょう。2010年度に比べて、2014年度の家庭向け電気料金は約25%、産業向けの電気料金は約39%まで上昇しています。これは、2011年以降、原油が100ドル/バレル前後で高止まりしていたことで化石燃料由来の発電コストが上昇したこと、東日本大震災後の原子力発電停止で火力発電割合が高まったこと、再エネ導入の賦課金の上昇などが一因です。

<電気料金の推移>
2010年度の電気料金は、家庭向けが1キロワットアワーあたり20.4円、産業向けが13.6円。2014年度は家庭向けが25.5円、産業向けが18.9円。

(出典)電力需要実績確報(電気事業連合会)、各電力会社決算資料等を基に作成

詳しく知りたい
日本のエネルギー2016(P.6)「Q4 電力コストはどのように変化していますか?」(PDF形式:1,953KB)

為替の影響などもあるため、単純な比較は困難ですが、電気料金を国際比較すると、日本は決して低い水準にあるとは言えません。燃料高や再エネ導入などによる電気料金の値上げは、家計へはもちろんのこと、国際市場の中で戦う日本企業などへの悪影響があることも懸念されます。

<電気料金の国際比較(2015年)>
2015年の電気料金は、産業用で日本が1キロワットアワーあたり16.2セント、アメリカが6.9セント、フランスが11セント。

大きい画像で見る

(注)米国は本体価格と税額の内訳不明。
(出典)IEA「Energy Prices and Taxes 4th Quarter 2016」を基に作成

詳しく知りたい
エネルギー白書2017「第2部 / 第2章 / 第4節 / 6.電気料金の国際比較」

これらの状況を打破するため、化石エネルギーの安定供給確保に向けた、石油・天然ガスの採取権限取得など上流開発の強化や、流動性の高い市場の実現に向けた取組、国内資源の調査や開発などを進めているところです。また同時に、そもそもの問題である「エネルギー自給率の低さ」を克服する努力も進めていく必要があります。そこで、経済産業省では、再生可能エネルギーや準国産エネルギーとされる原子力発電などの「国産エネルギー」の活用を進め、自給率を高めることを目指しています。

3.エネルギー問題と環境問題の切っても切れない関係

化石燃料に大きく依存した日本のエネルギー構造は、環境問題にも密接に関連しています。温室効果ガスの約9割は、エネルギー由来の二酸化炭素が占めているからです。2015年に採択された「パリ協定」の掲げる「産業革命前と比して、世界の平均気温の上昇を約2℃より十分下方に抑制する」という長期目標の達成に向け、我が国は「2030年までに温室効果ガスを2013年度比で26%削減すること」を目標として設定しています。これはつまり、エネルギー分野での削減が相当程度求められていることを意味しています。

しかし、東日本大震災後の原子力発電停止を受け、石炭火力発電や、LNG発電などの化石燃料由来の火力発電が焚き増しされたことなどにより、日本の温室効果ガス排出量は2013年度まで増加し続けてきました。2014年度は電力消費量の低下などなどによってようやく減少しましたが、それでも東日本大震災前の水準には戻っていません。

<日本の温室効果ガス排出量>
日本の温室効果ガス排出量は、2010年度で13億400万トン、2014年度で13億6400万トン。

(出典)総合エネルギー統計、環境行動計画(電気事業連合会)、日本の温室効果ガス排出量の算定結果(環境省)を基に作成。

詳しく知りたい
日本のエネルギー2016(P.7)「Q5 日本は温室効果ガスをどれくらい排出していますか?」(PDF形式:1,953KB)

パリ協定を遵守し、将来世代に対して環境問題を先送りしないためにも、CO2抑制に向けた対策を強化していかなければなりません。それと同時に、私たちの生活のライフラインであるエネルギーを安定的に供給し、かつ経済成長を達成するという観点にも配慮する必要があります。CO2抑制と経済成長、両立が難しいように聞こえる2つの柱ですが、世界の他の国がどのように取り組んでいるのか、電力分野を中心に概況をご紹介します。

イギリス

環境問題対策として、CO2を排出しない電源である再生可能エネルギーと原子力発電を推進。ただ、太陽光発電や風力発電などは、日照時間が短い、風が弱いといった自然条件によって、望むような発電量が出せない可能性があります。日本と同様の島国で、他国からの電力融通が期待できないため、こうした再生可能エネルギーの調整電源(バックアップとして準備しておく電源)としての火力発電をどう確保するかが課題です。また、再エネ賦課金などの影響で電気料金が高騰傾向にあることも問題の一つです。

アメリカ

再生可能エネルギーの拡大や原子力発電の利用推進に加え、シェール革命を受けた天然ガスの生産・消費を増加させていく方針です。オバマ政権下では、脱石炭火力の方向性が打ち出されていましたが、トランプ大統領に代わり、パリ協定からの脱退表明がなされました。今後も気候変動枠組条約の締約国としてCO2排出削減に取り組む方針ではありますが、パリ協定再加入に向けた米国の今後の動向が注視されるところです。

ドイツ

再生可能エネルギーを拡大する一方、原子力発電の廃止を進めています。他方で、陸続きの他国から電力融通を受けており、また、安定的な電力供給のために石炭火力発電への依存水準は比較的高い状況です。これらの結果、電力料金が上昇傾向にあります。また、大量に導入された再生可能エネルギー由来の発電設備によって、供給量が需要量を大きく上回り、電力系統に与える負荷が問題となっています。

中国・インド

現時点では両国とも石炭火力発電が主要な電源になっていますが、将来はともに再生可能エネルギー、原子力発電を拡大する方針です。環境対策として、中国は石炭火力発電を将来的には抑制する方針ですが、インドは活用を続けるものの、なるべくCO2排出量を抑えることができる高効率なプラントを導入していくとしています。両国はエネルギー需要が現在も大きく拡大している途上であり、CO2排出量は増加を続けています。

このように各国ともにおかれている状況に応じてそれぞれのエネルギー政策がとられております。こうした違いも踏まえながら、国民1人1人が日本のおかれているエネルギー状況を理解し、考えていく必要が高まっています。

お問合せ先

資源エネルギー庁 長官官房 総務課 調査広報室